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【雇用保険の加入条件】教育訓練給付の支給を受けられる被保険者の範囲 _ pr
雇用保険の被保険者

【雇用保険の加入条件】教育訓練給付の支給を受けられる被保険者の範囲

教育訓練給付は「雇用保険法」で定められた給付なので、教育訓練の受講開始日までに一度も雇用保険に加入したことがない人は対象とはなりません。

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1.雇用保険と教育訓練給付

雇用保険給付

教育訓練給付とは、雇用保険の保険料を払った人が給付として受けることができる雇用保険給付の一つです。現在雇用保険に加入している在職者または、雇用保険に加入していた労働者が離職して1年以内であれば、教育訓練給付の対象となります。

また、雇用保険の加入期間が原則として3年以上(初回に限り1年以上または2年以上)なければ教育訓練給付の対象とはなりません。

雇用保険の加入条件

雇用保険法は、業種や規模を問わず、労働者が雇用される事業すべてに対して適用されます。1人以上の労働者が雇用される事業は、業種を問わずすべて雇用保険の適用事業(強制適用)となり、当該事業に雇用される労働者は当然に雇用保険の被保険者となります。

ただし、農林水産業の事業のうち常時5人以上の労働者を雇用する事業以外の事業については当分の間、暫定的に任意適用事業とされています。

参考法令
雇用保険法 第5条第1項  この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする。

雇用されている労働者は、正社員・パート・アルバイト・派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、原則として雇用保険法の適用を受けます。適用除外に該当しない限り、本人の意思のいかんにかかわらず、被保険者となります。

雇用保険法の適用を受ける労働者は、本人が希望するか否かにかかわらず加入義務があり、雇用保険料の納付が必要です。事業主に届け出の義務があります。

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2.雇用保険に加入できない人

労働者ではない人

雇用保険に加入するには「雇用される労働者」でなければなりません。

雇用されている労働者ではない人は被保険者にはなれません。つまり、経営者側ではなく、雇われる側でなければなりません。例えば、会社の社長や役員は、雇用保険に加入できないので教育訓練給付の対象にはなりません。

ただし、「役員」とは言っても雇われ店長みたいな人もいますので例外はあります。

参考法令
雇用保険法 第4条第1項  この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のものをいう。

短時間労働者、短期間労働者など

労働者であっても、1週間の所定労働時間が20時間未満、雇用期間が30日以下などの失業時のリスクの少ない人は適用除外となっています(後述)。適用除外の人は雇用保険法が適用されません。

自分が労働者だと思っていても、雇用保険の労働者ではないというケースが多くあります。被保険者になる場合やならない場合があります。

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3.労働者と雇用保険

労働者

労働者」とは、事業主に雇用され、事業主から支給される賃金によって生活している者をいい、「雇用されている労働者」でなければ雇用保険に入ることができません。

この雇用されている労働者というのは、会社の事情でいつ解雇されるかわからない(失業に備える必要がある)労働者のことです。

1人でも労働者を雇用する事業は雇用保険法が適用されるので、雇用される労働者は従業員の数にかかわらず被保険者となります。また、外国人経営の事業であっても、日本国内で行う事業については雇用保険法が適用されます。

事業主と雇用関係のある労働者

「雇用される労働者」とは、事業主に雇用され、事業主から支給される賃金によって生活しようとする雇用関係があればよく、雇用関係の存在については服務の態様、賃金支払いの実態等から総合的、実体的に判断されます。就業規則、社内規則、労働協約等が存在しないからといって直ちに雇用関係が否定されるものではありませんし、定額制の報酬が支給されるからといって直ちに雇用関係があるとみなすことはできません。

いっぱんに、事業主の指揮監督を受けて業務活動を行い、勤務時間や作業場所等の管理、拘束を受けて従属的な労務供給を行ったことに対する対価(仕事完成に対する謝礼ではない)として報酬を支給した場合に雇用関係があると認められます。

なぜ労働者だけに限定しているのか

雇用保険はもともと、自らの労働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定等を図る制度です。教育訓練給付も失業や職業安定のための制度です。

労働者は、事業主によって雇用され、事業主から支給される賃金によって生活しているので、事業主の都合で仕事を失い、突然、生活ができなくなる危険性があります。そのため、失業のリスクのある労働者のみを雇用保険の対象としています。

事業主は、倒産防止共済や保険、事業助成金等の事業主向けの制度を利用することができるので、雇用保険の対象外となっています。

4.労働者の基準

原則として、雇われている人はみな「労働者」です。

労働者か経営者かが微妙なケースは、肩書や契約内容を問わず、実態として労働者として勤務していると認められる場合は労働者として扱われます。これを「労働者性がある」といいます。

次のように、労働者性の判断を要する場合や労働者の特性・状況を考慮して判断する場合は、それぞれの判断基準に従い、「労働者」であるか否かを判断します。

労働者性の判断を要する場合

雇用されていることが明確でない人については、個別に労働者性を判断します。

注:個人事業主のように、他人から業務を請け負って独立して仕事をしている場合は「雇用」ではないので、労働者ではありません。
業務委託、業務請負、委任は、雇用ではありません。

「労働者」に該当するかどうかの判断基準について、詳しくはそれぞれの記事をご覧ください。

労働者の特性・状況を考慮して判断する場合

特殊な雇用関係や状況にある場合はそれを考慮して判断します。「労働者」に該当するかどうかの判断基準について、詳しくはそれぞれの記事をご覧ください。

5.例外として被保険者とならない労働者

短時間労働者、短期間労働者などは雇用保険に加入することができません。労働者で、雇用保険に入りたくなければ週の労働時間を20時間未満にするか、1か月限定の仕事を探すしかありません。

雇用保険の適用除外

雇用保険法第6条には、雇用保険法が適用されない者として、次の6つを挙げています。これらに該当する人は労働者であっても雇用保険に加入することはできません。

さらに細かい基準について、詳しくはそれぞれの記事をご覧ください。

短時間労働者、短期間労働者を適用除外とする理由

1週間の所定労働時間が20時間未満である者、継続して31日以上雇用されることが見込まれない者、季節的に雇用される者といった短時間労働者、短期間労働者は雇用保険の対象外です。

雇用保険は、自らの労働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定等を図る制度です。仕事を失ったときに今までの快適な生活が完全に奪われるほどのダメージが無いので対象とはならないのです。

また、教育訓練給付は国庫からの支出を一切使わず、労働者や事業主が支払う保険料だけで運営されています。労働時間が短すぎる、短期間だけ臨時に働く、副業として収入を得ている等の人は支払う保険料が少なすぎるのに、他の人と同じ割合の教育訓練給付を受けるのは不公平だからです。

もともとの収入が少ない人は教育訓練給付ではなく公共職業訓練を利用すれば良いし、雇用保険ではなく別の社会保障制度で国費を投入して救済したほうがよいのです。

6.被保険者の種類

4種類の被保険者

雇用保険法の被保険者は、年齢や就労の実態に応じて、一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者の4種類に分類されています

このうち一般被保険者と高年齢被保険者の違いは年齢だけ(65歳未満、65歳以上)であり、短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者以外の被保険者は年齢によっていずれかに該当します。

教育訓練給付対象者

教育訓練給付が給付されるのは、一般被保険者または一般被保険者であった人です。さらに、法令の改正により2017年(平成29年)1月1日以降は、高年齢被保険者または高年齢被保険者であった人も対象となりました。

なお、いままで一度も雇用保険に加入したことが無ければ教育訓練給付の対象とはなりませんが、雇用保険の被保険者が離職して1年以内(最大20年以内)であれば教育訓練給付の対象となる場合があります。

短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者は対象外です。ただし、支給要件期間には短期雇用特例被保険者であった期間も通算することができます。

7.補足説明

被保険者資格の得喪、被保険者資格の確認

一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者については、被保険者たる身分を「被保険者資格」といいます。

また、被保険者となったこと、被保険者資格を得たことを「被保険者資格の取得」といい、被保険者でなくなったこと、被保険者資格を失ったことを「被保険者資格の喪失」といいます。

被保険者資格の得喪については、ハローワークに対してその照会や確認を求めることができます。雇用保険に加入すべき労働者が加入していなかった場合は、ハローワークで被保険者資格取得の確認を受けることができます。ただし、過去にさかのぼって確認できるのは原則2年以内です。

自治体独自の支援制度もある

ここまでの話は、雇用保険の保険給付としての教育訓練給付の話ですが、教育訓練の支援制度は国が実施するものだけではありません。

各自治体(都道府県・市町村)が自立支援対策として実施しているものもありますから、雇用保険に入ったことが無い人や対象外の人は自治体の制度を活用してみてください。この場合はハローワークではなく、各自治体が相談の窓口となります。

社労士過去問

雇用保険の被保険者の範囲と労働者性に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。