特定一般教育訓練給付金は、1年以内の短期の特定一般教育訓練を受講し、修了するとハローワークから教育訓練経費の40%が支給される制度です。在職者と1年以内の離職者が対象となります。
1.特定一般教育訓練給付金の概要
特定一般教育訓練給付金とは
特定一般教育訓練給付金は雇用保険の教育訓練給付の一つであり、2019年(令和元年)10月1日に創設された制度です。
まず、事前の受給資格確認を受けた後、厚生労働大臣が指定した特定一般教育訓練を申し込み、最初に入学料と受講料を支払います(いったん全額支払う)。その後、講座を修了してハローワークに申請すると、支払った費用の40%が一括で支給されます。
特定一般教育訓練給付金は、国(ハローワーク)が雇用保険の失業等給付として実施する教育訓練給付です。正式名称は「特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金」です(雇用保険法施行規則第101条の2の11の2)。
ハローワークの教育訓練給付について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
年齢制限、回数制限など
特定一般教育訓練給付金の年齢制限、回数制限はありません(給付金額の上限はあります)。ただし、2回目以降の受給の場合は、前回の受給から3年超経過している必要があります。
他の教育訓練給付金との違い
他の給付金との違いについて、詳しくはこちらをご覧ください。
2.特定一般教育訓練給付金の手続きの流れ
講座を申し込んだだけでは支給されません。特定一般教育訓練給付金を申請するには修了証明書の提出が必要となります。
- Step1受給資格確認(必須)
・ジョブ・カードを事前に作成しておく
・訓練前キャリアコンサルティングを受ける(受講開始前の1年以内)
・ジョブ・カードを、キャリアコンサルタントのチェックを受けて完成させる
・受講開始の1か月前までにハローワークで受給資格の確認を受ける - Step2特定一般教育訓練の受講と修了
・特定一般教育訓練の申込をする(いったん全額支払う)。
・特定一般教育訓練の受講
・修了(修了条件をクリアすること) - Step3申請手続き
・講習修了日の翌日から1か月以内に、ハローワークで支給申請を行う。
・支給決定後7日以内に口座振り込み(40%給付)
3.特定一般教育訓練とは
特定一般教育訓練とは、民間事業者の行う講座のうち、即効性のあるキャリア形成ができ、社会的ニーズが高く、かつ、特に就職実現・キャリアアップとの結びつきの強さを客観的に評価できる教育訓練として厚生労働大臣が指定したものをいいます。原則として1か月以上1年以内の短期の講座を想定したものであり、「特定一般」は一般教育訓練のなかでも特に職業の安定につながりやすいものを指します。
- 資格取得:介護職員初任者研修、大型自動車第一種・第二種免許、税理士など
- デジタル関係:ITSSレベル2以上(基本情報技術者相当)
特定一般教育訓練指定講座についてはハローワークで閲覧できるほか、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で探すこともできます。
4.特定一般教育訓練給付金の支給条件
特定一般教育訓練給付金の支給を受けるためには、雇用保険に加入し、過去3年間給付を受けていないこと等が条件となります。
特定一般教育訓練給付金の支給条件
- 在職者または1年以内の離職者
- 雇用保険に原則として3年以上加入している(初回の場合は1年以上)
- 3年以内に給付を受けていないこと
- 特定一般教育訓練を修了したこと
在職者または1年以内の離職者
特定一般教育訓練の受講開始日に、雇用保険の被保険者である人(在職者)または被保険者であった人(離職者)に限られます。離職者だけでなく、現在在職している人も対象となります。受講開始日までに雇用保険に加入したことが無い人は対象とはなりません。
なお、離職者については、離職の翌日から1年以内(最大20年以内)に限ります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
雇用保険に原則として3年以上加入している
教育訓練の受講開始日までの間に雇用保険に加入していた期間を「支給要件期間」といいますが、支給要件期間が3年以上であることが条件となっています。ただし、初めて特定一般教育訓練給付金を受給する場合、支給要件期間は3年ではなく、1年でよいです。
この支給要件期間は、同一の事業主である必要はなく、転職しても通算されます。しかし、雇用保険の被保険者になっていた期間が全て通算されるのではなく、1年以上雇用保険に加入していない未加入期間があると、それ以前の期間は通算されません。
3年以内に給付を受けていないこと
2014年(平成26年)10月1日以降、教育訓練給付金を受給したことがある場合は、前回の教育訓練給付金の支給決定日から今回受講開始日前までに3年以上経過していることが必要です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
特定一般教育訓練を修了したこと
特定一般教育訓練が始まる前に教育訓練施設に対して受講申し込みをしますが、このとき、教育訓練施設に対して入学料、受講料をいったん全額支払います。講座を申し込んだだけでは支給されません。
特定一般教育訓練給付金を申請するには、各講座で定められた修了認定基準(出席率、確認テスト、レポート、修了試験など)をクリアし、教育訓練施設に「修了」を認定してもらわなければなりません。特定一般教育訓練の修了後にハローワークで支給申請をすると支給されます。
特定一般教育訓練給付金の支給申請には、教育訓練施設が発行する「教育訓練修了証明書」の提出が必要となります。
5.特定一般教育訓練を受講する前の手続き(必須)
特定一般教育訓練の受講申し込みする前に、住居所を管轄するハローワークに行って、訓練前キャリアコンサルティング、ジョブ・カード作成、受給資格確認の手続きをする必要があります。この手続きは必須です。
これらの事前手続きを終えたことを証明する「受給資格確認通知書」がなければ、特定一般教育訓練給付金の支給を受けることができません。
訓練前キャリアコンサルティング
特定一般教育訓練給付金の支給を受けたい人はあらかじめジョブ・カード(キャリアプラン、職務経歴、職業能力証明を記入する書類)を作成します。
そして、特定一般教育訓練の受講を前提として「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。このとき、事前に作成したジョブ・カードの添削を受けながら、受講予定の特定一般教育訓練についてコンサルティングを受けます。ジョブ・カード作成の相談をすることも可能です。
訓練前キャリアコンサルティングは受講申し込みをする前に行います。訓練前キャリアコンサルティングと受給資格確認が終わるまで受講申し込みをしてはいけません。
受給資格確認、受給資格決定
特定一般教育訓練の受講開始1か月前までにハローワークに「受給資格確認票」を提出して、受給資格確認の手続きをしなければなりません。受給資格確認の手続きには、訓練前キャリアコンサルティングの時の担当コンサルタントが、受講予定の特定一般教育訓練についてのコメントを記載したジョブ・カードを提出します。
ハローワークで受給資格決定を受けると受給資格確認通知書が交付されます。修了後の特定一般教育訓練給付金の支給申請には、受給資格確認通知書を添付しなければなりません。
6.特定一般教育訓練給付金の計算方法
特定一般教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の40%となります。ただし、支給額の上限は20万円とし、4,000円を超えない場合は支給されません。
なお、特定一般教育訓練給付金の計算の基礎となる「教育訓練経費」は、本人が教育訓練施設に対して支払ったすべての経費ではありません。教育訓練経費の対象とならない経費を含めて給付金の支給申請をしてはいけません。
7.特定一般教育訓練給付金の申請手続き
支給要件照会、受給資格確認
受給資格があるかどうかをハローワークで調べてもらうことができますので、あらかじめ確認しておいたほうが良いです。さらに、受講を希望する教育訓練講座が厚生労働大臣の指定を受けているかどうかについても、ハローワークに照会することができます。
特定一般教育訓練給付金の支給を受けたい人は、訓練前キャリアコンサルティングを受ける必要があります。そして、受講開始日の1か月前までに住所地を管轄するハローワークに行って、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」を提出して、受給資格の確認を受けます。
特定一般教育訓練の申し込みと受講
特定一般教育訓練の申込をするときには受講費用(入学金、教材費、授業料など)を全額支払います。教育訓練施設には「特定一般教育訓練給付金の受給資格がある」ことを必ず伝えてください。
修了後の支給申請
特定一般教育訓練給付金の申請は、原則として受講修了日の翌日から起算して1か月以内に、住居所を管轄するハローワークに行って「教育訓練給付金支給申請書」を提出します。このとき教育訓練施設が発行する「教育訓練修了証明書」を添付します。
やむを得ない理由によりハローワークへの出頭が困難な場合は、代理人または郵送により手続きを行うことができます。
いつもらえるのか
ハローワークで支給が決定されたら、決定から7日以内に支給されます。特定一般教育訓練給付金は、支給決定を受けた本人の普通預(貯)金口座への口座振込みによって支給します。
8.補足説明
未支給の特定一般教育訓練給付金の請求
特定一般教育訓練給付金の支給を受けることができる者が支給されることなく死亡した場合、その遺族が特定一般教育訓練給付金の支給を請求することができます。
未支給の特定一般教育訓練給付金の請求について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
不正受給処分
偽りその他不正の行為により特定一般教育訓練給付金の支給を受けた場合、不正受給処分(返還命令、納付命令等)を受けます。不正受給処分について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
受給権の保護、非課税
特定一般教育訓練給付金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、差し押さえることができません。
また、特定一般教育訓練給付金は課税されません。つまり、特定一般教育訓練給付金の支給を受けたとしても、所得税、相続税、住民税等の税金は非課税となりますから、確定申告をする必要はありません。また、扶養に入る際の配偶者控除や扶養控除の所得金額に含める必要もありません。
社会保険(健康保険)においても、特定一般教育訓練給付金は一時的な収入(一時金)に該当するため、被扶養者の「年間収入」には含まれません。
デメリットと注意点
教育訓練給付制度のデメリットと教育訓練を受ける前の注意点について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
社労士過去問
教育訓練給付金の概要、支給日、支給方法に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。