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失業等給付と教育訓練給付、教育訓練給付の非課税、受給権の保護 _ pr
教育訓練給付金の概要

失業等給付と教育訓練給付、教育訓練給付の非課税、受給権の保護

教育訓練給付は雇用保険の「失業等給付」の一つです。教育訓練給付は原則として所得税、住民税等の税金の対象ではありません。また、受給権が保護され、譲渡が禁止されています。

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1.失業等給付と教育訓練給付

厚生労働省・ハローワークが実施する教育訓練給付は雇用保険事業の一つです。雇用保険事業には失業等給付、育児休業給付、雇用保険二事業(雇用安定事業、能力開発事業)があります。教育訓練給付はこのなかの「失業等給付」の一つです。

失業等給付と教育訓練給付、教育訓練給付の非課税、受給権の保護 _ 201-8

教育訓練給付は失業等給付の一つなので、雇用保険法上、「失業等給付」のすべてに適用される規定は当然、すべての教育訓練給付(3種類の教育訓練給付金と教育訓練支援給付金)にも適用されます。

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2.受給権の保護

教育訓練給付の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、差し押さえることができません。

参考法令
雇用保険法 第11条  失業等給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

一身専属権

失業等給付は、労働者が失業した場合に失業者の最低生活を保障するための給付を行い、職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより労働者の生活及び雇用の安定を図ることを目的とする給付です(雇用保険法第1条)。つまり、当該労働者のために支給されるものであって、他人が代わりに受け取るものではありません。

仮に、失業等給付を受ける権利が自由に譲渡され、担保に供され、差し押さえの対象となることを許すと、受給者自らが生存権、勤労権を放棄せざるを得ない結果となり、「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」(日本国憲法第25条第2項)が達成されないことになります。

失業等給付がその目的のために使用されることを確保するため、一般債権とは異なり、受給者の一身専属的な権利として受給権が保護され、他人に譲り渡すことはできず、担保に供することも差し押さえることも禁止されています。このことは、国民年金法による給付を受ける権利、生活保護法による生活保護を受ける権利が保護されていることと同様の趣旨です。

譲渡、担保、差押の禁止

教育訓練給付の支給を受ける権利の譲渡は禁止されています。譲渡とは、受給権を第三者に移転することをいい、移転することに対する報酬または対価の有無は問いません。なお、教育訓練給付の支給を受ける前にその権利を譲渡するのは禁止ですが、本人に支給された後の金銭については他人に譲渡してもかまいません。

教育訓練給付の支給を受ける権利を担保に供することは禁止されています。「担保に供する」とは、受給者が債権者に対する何らかの支払い(借金返済など)を保証するために、持っている権利を債権者に差し出すことを言います。

教育訓練給付の支給を受ける権利の差押は禁止されています。差押えは国または裁判所が債務者の財産の処分を禁止することです。仮差押えも禁止です。

相殺、相続の禁止

教育訓練給付の支給を受ける権利は差押が禁止されているので、民法第510条により相殺も禁止されています。また、一身専属的な権利なので民法第896条により相続の対象でもありません。

参考法令
民法 第510条  債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
民法 第896条  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
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3.非課税

税法上の非課税

受給者が教育訓練給付として支給を受けた金銭に対しては租税その他の公課は課されません。つまり、教育訓練給付の支給を受けたとしても、所得税、相続税、住民税等の税金は非課税となりますから、確定申告をする必要はありません。

教育訓練給付は、労働者が自ら負担した教育訓練経費の一定割合を支給して労働者の職業能力開発に係る取り組みを支援することにより、労働者の生活及び雇用の安定を図ることを目的とするものであり(雇用保険法第1条)、これに課税することは、こうした労働者の積極的な取り組みを阻害し、給付目的に反することから、租税その他の公課を課さないこととされています。

参考法令
雇用保険法 第12条  租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。

ちなみに、「公課」とは、国または地方公共団体が公の目的のために徴収する金銭のことで、各種の負担金、手数料、賦課金、会費などです。

控除の基準となる所得金額

教育訓練給付は、税法上、扶養に入る際の配偶者控除や扶養控除の「所得金額」に含める必要もありません。つまり、税金を計算するうえで教育訓練給付は一切無視してよいということです。

社会保険の報酬月額、年間収入

社会保険においても、教育訓練給付は計算の基礎となる報酬に含まれません。例えば、健康保険料、厚生年金保険料の標準となる「標準報酬月額」に教育訓練給付は含まれません。

ただし、社会保険の扶養の基準となる「年間収入」には、非課税の収入や手当も含みますので注意が必要です。

一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金については一時的な収入(一時金)に該当するため、被扶養者の「年間収入」には含まれません。しかし、専門実践教育訓練給付金と教育訓練支援給付金は継続的収入なので、非課税であっても被扶養者の「年間収入」に含まれます

4.未支給の教育訓練給付の請求

上記のとおり教育訓練給付の支給を受ける権利を相続することはできませんが、教育訓練給付の支給を受けることができる者が支給されることなく死亡した場合、その遺族が未支給の教育訓練給付の支給を請求することができます。これは相続ではなく雇用保険法が特別に認めた受給権です。

参考法令
雇用保険法 第10条の3第1項  失業等給付の支給を受けることができる者が死亡した場合において、その者に支給されるべき失業等給付でまだ支給されていないものがあるときは、その者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の失業等給付の支給を請求することができる。

未支給の教育訓練給付の請求について、詳しくは次の記事をご覧ください。

5.不正受給処分

偽りその他不正の行為により教育訓練給付の支給を受けた場合は不正受給処分を受けます。返還命令、納付命令等のほか、特に悪質の場合は詐欺罪として処罰されることもあります。

参考法令
雇用保険法 第10条の4  偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部を返還することを命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた失業等給付の額の二倍に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。

不正受給処分について、詳しくは次の記事をご覧ください。

6.補足説明

その他の共通点

すべての教育訓練給付(3種類の教育訓練給付金と教育訓練支援給付金)に適用されるものとして、時効や不服申し立て手続きなどがあります。

社労士過去問

失業等給付の定義、通則に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。