特定一般、専門実践教育訓練給付金の給付率を引き上げる改正がありました(令和6年10月1日)
特定一般、専門実践教育訓練給付金の給付率を引き上げる改正(令和6年10月1日施行)【法令改正】 _ pr
法令解説・雑記

特定一般、専門実践教育訓練給付金の給付率を引き上げる改正(令和6年10月1日施行)【法令改正】

特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の受講を2024年(令和6年)10月1日以降に開始する場合、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げ、教育訓練受講による賃金増加や資格取得等を要件とした追加給付(10%)が新たに創設されました。

スポンサーリンク

1.改正の要点(給付率の引き上げ)

特定一般教育訓練給付金専門実践教育訓練給付金について、それぞれ10%の追加給付の制度が創設されました。教育訓練の訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のための給付率引き上げの改正です。

これにより特定一般教育訓練給付金は40%と50%の2種類、専門実践教育訓練給付金は50%、70%、80%の3種類となりました。

改正前

  • 特定一般教育訓練給付金は、受講費用の40%が訓練修了後に支給されます。
  • 専門実践教育訓練給付金は、受講費用の50%が訓練受講中6か月ごとに支給されます。さらに、資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%が追加で支給されます。
特定一般、専門実践教育訓練給付金の給付率を引き上げる改正(令和6年10月1日施行)【法令改正】 _ 7923-2

改正後

特定一般教育訓練給付金について、資格取得し、就職等したことを要件とした追加給付が創設されました。いままで専門実践教育訓練にしか無かった追加給付が特定一般教育訓練にも追加されました。

  • 受講費用の40%が訓練修了後に支給されます。
  • さらに、資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の10%が追加で支給されます。

専門実践教育訓練給付金について、教育訓練の受講後に賃金が一定割合上昇したことを要件とした追加給付が創設されました。追加給付が2つになりました。

  • 受講費用の50%が訓練受講中6か月ごとに支給されます。
  • さらに、資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%が追加で支給されます。
  • 20%追加給付の条件を満たしたうえで、さらに、訓練修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合は、受講費用の10%が追加で支給されます。
特定一般、専門実践教育訓練給付金の給付率を引き上げる改正(令和6年10月1日施行)【法令改正】 _ 7923-3

経過措置

この改正の施行日は2024年(令和6年)10月1日です。

ただし、給付率の引き上げの改正の基準日は教育訓練受講開始日とされています(改正法附則第4条)。すなわち、新しい規定が適用されるのは2024年(令和6年)10月1日以後に教育訓練の受講を開始した場合に限られます。同年9月30日までに教育訓練の受講を開始した場合は、同年10月1日以降も改正前の法令が適用されます。

特定一般、専門実践教育訓練給付金の給付率を引き上げる改正(令和6年10月1日施行)【法令改正】 _ 7923-1

なお、事業主等の証明書交付義務(後述)については同年9月30日までに教育訓練の受講を開始した場合にも適用されます。

参考法令
雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年5月17日法律第26号)附則第1条第2号

二 第一条中雇用保険法第六十条の二第四項及び第七十六条第四項の改正規定並びに附則第四条の規定 令和六年十月一日
雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年5月17日法律第26号)附則第4条

第一条の規定(附則第一条第二号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の雇用保険法第六十条の二第四項の規定は、同号に掲げる規定の施行の日以後に雇用保険法第六十条の二第一項に規定する教育訓練を開始した者について適用し、同日前に当該教育訓練を開始した同項各号のいずれかに該当する者に対する教育訓練給付金については、なお従前の例による。
スポンサーリンク

2.給付率引き上げに伴うその他の改正

上限の引き上げ

もともと各給付金には上限がありましたが、追加給付の創設にともない、追加給付を含む上限と年間上限が設定されました。なお、改正前の上限に変更はありません。

特定一般、専門実践教育訓練給付金の給付率を引き上げる改正(令和6年10月1日施行)【法令改正】 _ 7923-5

専門実践教育訓練給付金の支給限度期間

専門実践教育訓練給付金については、支給限度期間(10年間)ごとに支給される給付金額に上限がありましたが、追加給付の創設にともない、上限が引き上げられました。なお、支給限度期間の上限についてはその期間内に追加給付があったか否かは関係ありません。

特定一般、専門実践教育訓練給付金の給付率を引き上げる改正(令和6年10月1日施行)【法令改正】 _ 7923-6

事業主等の証明書交付義務

事業主等が賃金を証明する

専門実践教育訓練給付金について新たに創設された「賃金上昇を要件とした追加給付」を申請するには、教育訓練受講前と受講後の賃金を証明する書類(事業主等が証明書を交付する)を提出して「賃金が5%以上上昇」したことを証明しなければなりません。

雇用保険法第76条第4項にはもともと、雇用継続給付又は育児休業給付の支給を受けるために必要な証明書の交付義務が規定されていましたが、「教育訓練給付」も追加されました。すなわち、被保険者又は被保険者であった者が教育訓練給付を受けるために必要な証明書の交付を当該被保険者等を雇用し、若しくは雇用していた事業主又は労働保険事務組合に請求したときは、当該事業主等は、その請求に係る証明書を交付しなければならないこととされました。

追加給付(賃金上昇)に限られない

改正により、事業主等が交付すべき証明書は教育訓練給付に必要な証明書全般です。

  • 「追加給付」に限定されたものではありません。
  • 「賃金上昇」に限定されたものではありません。
  • 「専門実践教育訓練」に限定されたものではありません。

追加給付の対象ではない受講者が証明書を請求することもありえます(教育訓練給付の手続きに必要であれば適用される)。

当該事業主等が証明書の交付を拒んだ場合は罰則があります(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。なお、証明書の請求を受け交付を拒んだ事実が2024年(令和6年)10月1日以降であれば適用されます(基準日が受講開始日ではないので注意)。したがって、同年9月30日までに教育訓練の受講を開始した場合にも適用されます。

注:「教育訓練給付」の支給を受けるのに必要な証明書はすべて発行義務があります。また、改正前の教育訓練にも適用されます。

スポンサーリンク

3.新旧対照

雇用保険法の改正

雇用保険法第60条の2第4項は教育訓練給付金の給付率を定めていますが、最大70%から80%に引き上げる改正が行われました。これにともない、事業主等に対して追加給付にかかる証明書の交付義務が追加されました。いずれも「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和6年5月17日法律第26号)による改正です。

給付率の引き上げ(第60条の2)

専門実践教育訓練給付金の最高給付率80%にあわせて改正されました。

参考法令
雇用保険法 第60条の2第4項 改正前

教育訓練給付金の額は、教育訓練給付対象者が第一項に規定する教育訓練の受講のために支払つた費用(厚生労働省令で定める範囲内のものに限る。)の額(当該教育訓練の受講のために支払つた費用の額であることについて当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により証明がされたものに限る。)に百分の二十以上百分の七十以下の範囲内において厚生労働省令で定める率を乗じて得た額(その額が厚生労働省令で定める額を超えるときは、その定める額)とする。
雇用保険法 第60条の2第4項 改正後

教育訓練給付金の額は、教育訓練給付対象者が第一項に規定する教育訓練の受講のために支払つた費用(厚生労働省令で定める範囲内のものに限る。)の額(当該教育訓練の受講のために支払つた費用の額であることについて当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により証明がされたものに限る。)に百分の二十以上百分の八十以下の範囲内において厚生労働省令で定める率を乗じて得た額(その額が厚生労働省令で定める額を超えるときは、その定める額)とする。

事業主等の証明書交付義務(第76条)

事業主等の証明書交付義務に「教育訓練給付」が追加されました。

参考法令
雇用保険法 第76条第4項 改正前

前項の規定は、雇用継続給付又は育児休業給付の支給を受けるために必要な証明書の交付の請求について準用する。この場合において、同項中「離職した者」とあるのは「被保険者又は被保険者であつた者」と、「従前の事業主」とあるのは「当該被保険者若しくは被保険者であつた者を雇用し、若しくは雇用していた事業主」と読み替えるものとする。
雇用保険法 第76条第4項 改正後

前項の規定は、教育訓練給付、雇用継続給付又は育児休業給付の支給を受けるために必要な証明書の交付の請求について準用する。この場合において、同項中「離職した者」とあるのは「被保険者又は被保険者であつた者」と、「従前の事業主」とあるのは「当該被保険者若しくは被保険者であつた者を雇用し、若しくは雇用していた事業主」と読み替えるものとする。

雇用保険法施行規則の改正

雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(令和6年9月30日厚生労働省令第132号、令和6年10月1日施行)による改正です。

上限の引き上げ、支給限度期間(第101条の2の8)

参考法令
雇用保険法施行規則 第101条の2の8第1項 改正前

法第六十条の二第四項の厚生労働省令で定める額は、次の各号に掲げる者の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 前条第一号に掲げる者 十万円
一の二 前条第一号の二に掲げる者 二十万円
二 前条第二号に掲げる者 百二十万円(連続した二支給単位期間(第百一条の二の十二第四項に規定する支給単位期間をいう。以下この条において同じ。)(当該専門実践教育訓練を修了した日が属する場合であつて、支給単位期間が連続して二ないときは一支給単位期間)ごとに支給する額は、四十万円を限度とし、一の支給限度期間ごとに支給する額は、百六十八万円を限度とする。)
三 前条第三号に掲げる者 百六十八万円(連続した二支給単位期間(当該専門実践教育訓練を修了した日が属する場合であつて、支給単位期間が連続して二ないときは一支給単位期間)ごとに支給する額は、五十六万円を限度とし、一の支給限度期間ごとに支給する額は、百六十八万円を限度とする。)
雇用保険法施行規則 第101条の2の8第1項 改正後

法第六十条の二第四項の厚生労働省令で定める額は、次の各号に掲げる者の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 前条第一号に掲げる者 十万円
二 前条第二号に掲げる者 二十万円
三 前条第三号に掲げる者 二十五万円
四 前条第四号に掲げる者 百二十万円(連続した二支給単位期間(第百一条の二の十二第四項に規定する支給単位期間をいう。以下この条において同じ。)(当該専門実践教育訓練を修了した日が属する場合であつて、支給単位期間が連続して二ないときは一支給単位期間)ごとに支給する額は、四十万円を限度とし、一の支給限度期間ごとに支給する額は、百九十二万円を限度とする。)
五 前条第五号に掲げる者 百六十八万円(連続した二支給単位期間(当該専門実践教育訓練を修了した日が属する場合であつて、支給単位期間が連続して二ないときは一支給単位期間)ごとに支給する額は、五十六万円を限度とし、一の支給限度期間ごとに支給する額は、百九十二万円を限度とする。)
六 前条第六号に掲げる者 百九十二万円(連続した二支給単位期間(当該専門実践教育訓練を修了した日が属する場合であつて、支給単位期間が連続して二ないときは一支給単位期間)ごとに支給する額は、六十四万円を限度とし、一の支給限度期間ごとに支給する額は、百九十二万円を限度とする。)