児童扶養手当の支給を受けているかまたは同様の所得水準にあるひとり親家庭(母子家庭、父子家庭)については、就労につながる教育訓練の受講を支援するための給付金があり、雇用保険の教育訓練給付より多く支給される場合があります。詳しくは各自治体へご相談ください。
1.ひとり親家庭の支援
相談窓口は各自治体
母子家庭、父子家庭(これらをあわせて「ひとり親家庭」という)の支援には主に、子育て、就労、養育費確保、経済的支援、女性保護といった支援が必要とされています。
そして、相談窓口もそれぞれ異なります。具体的にはハローワーク、弁護士、公営住宅担当、保育所担当、婦人相談所、社会福祉協議会などがあり、たらい回しにされたり、どこに相談に行けばいいかわからないこともあります。
また、子育てや仕事で相談するための時間に限りがあることから、ひとり親家庭の相談窓口を自治体の福祉事務所等(自立支援員)に一本化することで、関係機関と連携しながら支援を必要とするひとり親が容易に支援を受けられるような体制となっています。
そのため、厚生労働省が基本方針を定め、基本方針に即して各自治体が地域の事情に即した支援を行っています。
実施していない自治体もある
教育訓練の受講支援だけでも次のような事業があり、給付金については資金貸付以外は返済不要です。
ただし、自治体単位で支援を行っているため、その都道府県または市町村の住民であることが条件です。
ひとり親家庭自立支援事業(教育訓練受講関連)
- ひとり親家庭自立支援給付金事業
- ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付
- ひとり親家庭高等学校卒業程度認定試験合格支援事業
自治体の財政状況によってはこれらの支援事業の一部または全部を実施していない自治体もあります。
各自治体の実施状況は厚生労働省のサイトで公開されているほか、各自治体のサイトでも確認することができます。
2.母子家庭の母、父子家庭の父とは
母子家庭の母、父子家庭の父とは、現に児童(20歳未満)を扶養している、配偶者のない女子または男子です。
「配偶者のない」とは、配偶者との間で次のような事情がある状態のことです。
なお、配偶者には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も含みます。
「配偶者のない」
- 配偶者と死別して、現に婚姻をしていない
- 離婚して、現に婚姻をしていない
- 配偶者の生死が明らかでない
- 配偶者から遺棄された
- 配偶者が海外にあるためその扶養を受けることができない
- 配偶者が精神又は身体の障害により長期にわたって労働能力を失っている
- 配偶者が法令により長期にわたって拘禁されているためその扶養を受けることができない
- 婚姻によらないで母または父となって、現に婚姻をしていない
ひとり親家庭自立支援事業はそれぞれ次のような目的で実施されています。
- 母子家庭の母
- 母子家庭となる直前において、職に就いていた者ばかりでなく、結婚、出産により離職し、専業主婦等であったために、職業経験が乏しく技能も十分でない者も多く、就職に際し充分な準備がないまま、生活のために職に就かなければならない状況にある。
- 父子家庭の父
- 所得の状況や就業の状況などから母子家庭と同様の困難を抱える家庭がある。
3.ひとり親家庭自立支援給付金事業
ひとり親家庭自立支援給付金事業(母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業)には、自立支援教育訓練給付金、高等職業訓練促進給付金、高等職業訓練修了支援給付金の3種類の給付金があり、いずれも返済不要です。
市または福祉事務所が設置されている町村に居住している場合は福祉事務所が総合窓口となります(福祉事務所は役所の中にある場合が多いです)。福祉事務所が設置されていない町村の場合は都道府県が窓口となります。
ひとり親家庭自立支援給付金事業
- ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金
- ひとり親家庭高等職業訓練促進給付金
- ひとり親家庭高等職業訓練修了支援給付金
ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金
ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金(母子家庭自立支援教育訓練給付金、父子家庭自立支援教育訓練給付金)は、対象となる教育訓練講座を受講した母子家庭の母、父子家庭の父に対して、講座終了後に、教育訓練経費の60%を支給するものです。
自立支援教育訓練給付金事業の対象となる講座は、雇用保険制度の教育訓練給付の指定教育訓練講座と、実施主体である都道府県、市及び福祉事務所設置町村が地域の実情に応じて指定した講座です。ただし、雇用保険法に基づく教育訓練給付金を申請することもできますが、教育訓練給付金の支給を受けることができる場合はその支給額との差額となります。
ひとり親家庭高等職業訓練促進給付金
ひとり親家庭高等職業訓練促進給付金(母子家庭高等職業訓練促進給付金、父子家庭高等職業訓練促進給付金)は、母子家庭の母、父子家庭の父が経済的自立に効果的な資格取得のため就学する場合に、修業する全期間(上限4年)において、市町村民税非課税世帯は月額100,000円、課税世帯は月額70,500円を支給し、生活費の負担を軽減するものです。
対象資格については、看護師、保健師、助産師、介護福祉士、保育士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、調理師、シスコシステムズ認定資格、LPI認定資格等、資格取得後に就職の際に有利となる専門的資格であって、かつ養成機関において1年以上のカリキュラムの修業が予定されているものについて都道府県知事等が地域の実情に応じて定めることになっています。
ただし、2021年(令和3年)4月1日から2023年(令和5年)3月31日までに修業を開始する場合には、訓練期間6か月以上のカリキュラムの修業が予定されているもの(雇用保険制度の一般教育訓練給付の指定講座を受講する場合には、情報関係の資格や講座)から定めることになっています。
ひとり親家庭修了支援給付金
ひとり親家庭修了支援給付金(母子家庭修了支援給付金、父子家庭修了支援給付金)は、ひとり親家庭高等職業訓練促進給付金が支給される母子家庭の母、父子家庭の父が教育訓練を修了した際に、市町村民税非課税世帯は50,000円、課税世帯は25,000円を支給し、入学時の負担を軽減するものです。
ひとり親家庭修了支援給付金は、修了後に支給されます。
4.ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業
ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付は、ひとり親家庭高等職業訓練促進給付金が支給される母子家庭の母、父子家庭の父に対し、入学準備金、就職準備金、住宅支援資金等(自治体によって内容が異なる)を貸付けることにより、養成機関での修学を容易なものとし、資格取得を促進することにより、ひとり親家庭の自立の促進を図るものです。
原則として貸付は返済が必要ですが、教育訓練を修了し、資格取得した日から1年以内に就職し、資格を活かして一定の期間継続して就業した場合には返還免除となる制度があります。
5.ひとり親高等学校卒業程度認定試験合格支援事業
ひとり親高等学校卒業程度認定試験合格支援事業は、ひとり親家庭の親や子どもの学び直しを支援することで、より良い条件での就職や転職に向けた可能性を広げ、正規雇用を中心とした就業につなげていくために、ひとり親家庭の親や子どもが高等学校卒業程度認定試験合格のための講座を受け、これを修了した時及び合格した時に受講費用の一部(最大6割、上限15万円)を支給する事業です。
高等学校卒業程度認定試験合格支援については母子家庭の母、父子家庭の父のほか、ひとり親家庭の子どもも対象となります。
6.職業訓練受講給付金(求職者支援制度)
職業訓練受講給付金は、雇用保険を受給できない者を対象として、3か月~6か月の職業訓練(最長2年)を受講する間、本人収入、世帯収入、資産要件等の一定の要件を満たす場合に、職業訓練受講給付金(月10万円+交通費)を支給する制度です。受講費用の負担はありません。