専門実践教育訓練給付金教育訓練給付金制度まとめ

【専門実践教育訓練給付金まとめ】専門実践教育訓練給付制度をわかりやすく解説します

専門実践教育訓練給付金とは、雇用保険の加入者や離職者が厚生労働大臣の指定する教育訓練(4年以内の専門実践教育訓練)を受講すると、ハローワークから教育訓練経費の50%が支給される制度です。対象者は一定の雇用保険加入期間を満たす必要があります。さらに条件を満たした場合は支給率が70%~80%となります。

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1.専門実践教育訓練給付金のざっくりとした説明

まず、ハローワークで「訓練前キャリアコンサルティング」を受けた後、受給資格の確認を受けます。

厚生労働大臣から「専門実践教育訓練」の指定を受けている講座を申し込み、最初に入学料と初回の受講料を支払います(いったん全額支払う)。

その後、受講中に6か月ごとにハローワークに申請すると、支払った費用の50%が「専門実践教育訓練給付金」として一括で支給されます。さらに修了後に一定の条件を満たした場合は支給率が70%~80%となります。

2.対象者【誰が】

専門実践教育訓練給付金の対象者は、雇用保険に2年または3年以上加入した人です。

注:雇用保険に加入したことが無い人は対象とはなりません。ただし、他の給付制度を利用できる場合があります(詳しくは後述)。

在職者または1年以内の離職者

専門実践教育訓練の受講開始日に、雇用保険の被保険者である人(在職者)または被保険者であった人(離職者)に限られます。離職者だけでなく、現在在職している人も対象となります。なお、離職者については、離職の翌日から1年以内(最大20年まで延長できる)に教育訓練を開始する場合に限ります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

年齢制限、回数制限、給付制限

専門実践教育訓練給付金のみの受給の場合、年齢制限、回数制限はありません(給付金額の上限はあります)。ただし、教育訓練給付金を受給したことがある場合は、今回の受講開始日が、前回の教育訓練給付金の支給決定日から3年以上経過していることが必要です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

教育訓練支援給付金を受給する場合は受講開始時の年齢が45歳未満の制限があり、人生で1回限りです。

雇用保険に2年または3年以上加入している

教育訓練の受講開始日までの間に雇用保険に加入していた期間(支給要件期間)が3年以上であることが条件となっています。ただし、2014年(平成26年)10月1日以降に教育訓練給付金を受給したことがなく、初めて専門実践教育訓練給付金を受給する場合、支給要件期間は3年ではなく、2年でよいです。

  • 初めて受給する:支給要件期間2年以上
  • 過去に受給したことがある:支給要件期間3年以上

この支給要件期間は、同一の事業主である必要はなく、転職しても通算されます。ただし、1年以上雇用保険に加入していない未加入期間があると、それ以前の期間は通算されません。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

3.対象となる教育訓練【何を】

専門実践教育訓練

専門実践教育訓練給付金の対象となる講座は、民間事業者の行う講座のうち、あらかじめ厚生労働大臣が「専門実践教育訓練」として指定した講座です。

注:指定を受けた講座は必ず「専門実践教育訓練」と表示されていますので、そうではない講座を受けても給付の対象外です。

専門実践教育訓練とは、民間事業者の行う講座のうち、難関の資格取得を目標とする講座、専門学校の職業実践専門課程、専門職大学院など、中長期的なキャリア形成を支援する専門的・実践的な教育訓練として厚生労働大臣が指定したものをいいます。

  • 業務独占資格:介護福祉士、社会福祉士、看護師、美容師、歯科衛生士、保育士、調理師など
  • デジタル関係:ITSSレベル3以上(応用情報技術者相当)
  • 大学、大学院など:MBA、法科大学院、教職大学院、職業実践力育成プログラム、キャリア形成促進プログラムなど

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

専門実践教育訓練の探し方

専門実践教育訓練指定講座についてはハローワークで閲覧できるほか、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で探すこともできます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

4.給付される条件

専門実践教育訓練給付金は、対象者専門実践教育訓練修了の見込みをもって受講するか、または修了することで給付されます。

専門実践教育訓練が始まる前に教育訓練施設に対して受講申し込みをしますが、このとき、教育訓練施設に対して入学料と初回の受講料をいったん支払います。

専門実践教育訓練給付金を申請するには、6か月ごとに、各講座で定められた受講認定基準または修了認定基準(出席率、確認テスト、レポート、修了試験など)をクリアし、教育訓練施設に「修了の見込みがあること」または「修了したこと」を認定してもらわなければなりません。

6か月間の授業の後、ハローワークで支給申請をすると6か月分が支給されます。

専門実践教育訓練給付金の支給申請には、教育訓練施設が発行する「教育訓練給付受講証明書」または「専門実践教育訓練修了証明書」の提出が必要となります。途中で教育訓練をやめてしまったり、成績不良などで修了の見込みがなくなった場合、それ以降は支給を受けることができなくなります。

5.給付金額【いくら】

専門実践教育訓練給付金の計算方法(50%の場合)

専門実践教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の50%となります(追加給付の条件を満たして給付率が70%80%となる場合については後述)。

6か月ごとに計算して支給されます。ただし、支給額の上限は、40万円×年数(3年間の講座なら120万円)とし、4,000円を超えない場合は支給されません。また、支給限度期間(10年)の上限があります。

専門実践教育訓練給付金の支給額=教育訓練経費×50%

専門実践教育訓練給付⾦は原則として3年間支給されますが、4年課程の教育訓練(長期専門実践教育訓練)を受講する場合、4年目も支給されます。ただし、「4年目」の支給には条件があります。

教育訓練経費

専門実践教育訓練給付金の計算の基礎となる「教育訓練経費」は、本人が教育訓練施設に対して支払ったすべての経費ではありません。教育訓練経費の対象とならない経費を含めて給付金の支給申請をしてはいけません。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

注:教育訓練経費の対象外の経費を含めて支給申請をすると不正受給となります。

6.手続きの場所【どこで】

専門実践教育訓練給付金は、雇用保険給付として国(ハローワーク)の予算で実施しています。つまり、国が徴収した雇用保険料を使って、ハローワークが給付しています。

修了証明書などの申請に必要な書類は教育訓練施設が発行しますが、給付金の申請はハローワークでしなければなりません。郵送または電子申請の場合もハローワーク宛てです。

注:教育訓練施設が授業料を返金してくれるわけではありません。

ハローワークは、原則として申請者本人の住居署を管轄するハローワークです。

7.申請方法【どのように】

給付までの流れ

講座を申し込んだだけでは支給されません。専門実践教育訓練給付金を申請するには受講証明書または修了証明書の提出が必要となります。

専門実践教育訓練給付金の手続き
  • Step
    受給資格確認(必須)

    ・ジョブ・カードを事前に作成しておく
    ・訓練前キャリアコンサルティングを受ける(受講開始前の1年以内)
    ・ジョブ・カードを、キャリアコンサルタントのチェックを受けて完成させる
    ・受講開始の1か月前までにハローワークで受給資格の確認を受ける

  • Step
    専門実践教育訓練の申し込み

    ・専門実践教育訓練の申込をする(入学金等をいったん全額支払う)。

  • Step
    専門実践教育訓練の受講と給付金の申請

    ・6か月ごとに、ハローワークで支給申請を行う。
    ・支給決定後7日以内に口座振り込み(50%給付)

  • Step
    追加給付(条件を満たした場合)

    ・教育訓練の修了、資格の取得、一般被保険者としての就職をしたら、ハローワークで追加給付の支給申請を行う。
    ・支給決定後7日以内に口座振り込み(20%分、30%分追加給付)

支給要件照会

専門実践教育訓練給付金の受給資格があるかどうかをハローワークで調べてもらうこと(支給要件照会)ができますので、あらかじめ確認しておいたほうが良いです。

注:雇用保険の加入実績はハローワークにしかない個人情報です。教育訓練施設に問い合わせても回答できません。

さらに、受講を希望する教育訓練講座が本当に厚生労働大臣の指定を受けているかどうかについても、ハローワークに照会することができます。あらかじめ確認しておいた方が良いでしょう。

受給資格確認(必須)

専門実践教育訓練の受講申し込みする前に、住居所を管轄するハローワークに行って、訓練前キャリアコンサルティング、ジョブ・カード作成、受給資格確認の手続きをする必要があります。この手続きは必須です。

これらの事前手続きを終えたことを証明する「教育訓練給付金受給資格者証」がなければ、専門実践教育訓練給付金の支給を受けることができません。

訓練前キャリアコンサルティング

専門実践教育訓練給付金の支給を受けたい人はあらかじめジョブ・カード(キャリアプラン、職務経歴、職業能力証明を記入する書類)を作成します。

そして、専門実践教育訓練の受講を前提として「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。このとき、事前に作成したジョブ・カードの添削を受けながら、受講予定の専門実践教育訓練についてコンサルティングを受けます。ジョブ・カード作成の相談をすることも可能です。

訓練前キャリアコンサルティングは受講申し込みをする前に行います。訓練前キャリアコンサルティングと受給資格確認が終わるまで受講申し込みをしてはいけません。

受給資格確認、受給資格決定

専門実践教育訓練の受講開始14日前までにハローワークに「受給資格確認票」を提出して、受給資格確認の手続きをしなければなりません。受給資格確認の手続きには、訓練前キャリアコンサルティングの時の担当コンサルタントが、受講予定の専門実践教育訓練についてのコメントを記載したジョブ・カードを提出します。

ハローワークで受給資格決定を受けると受給資格確認通知書が交付されます。修了後の専門実践教育訓練給付金の支給申請には、受給資格確認通知書を添付しなければなりません。

専門実践教育訓練の申し込みと受講

専門実践教育訓練の申込をするときには受講費用(入学金、教材費、初回授業料など)を全額支払います。

注:申し込みの際には必ず、教育訓練施設に、「専門実践教育訓練給付金の制度を利用し、専門実践教育訓練給付金の支給申請を行う」ことを伝えてください。

専門実践教育訓練給付金の支給申請(50%)

専門実践教育訓練給付金の支給申請は、原則として受講開始の6か月ごとの期間(支給単位期間)の終了から1か月以内に、住居所を管轄するハローワークに行って「教育訓練給付金支給申請書」を提出します。このとき教育訓練施設が発行する「受講証明書」を添付します。

やむを得ない理由によりハローワークへの出頭が困難な場合は、代理人または郵送により手続きを行うことができます。

8.給付金の支給【いつもらえるのか】

ハローワークで支給が決定されたら、決定から7日以内に支給されます。専門実践教育訓練給付金は、支給決定を受けた本人の普通預(貯)金口座への口座振込みによって支給します。

9.追加給付

追加給付の条件を満たした場合(70%)

専門実践教育訓練を修了し、あらかじめ定められた資格の取得等をし、受講修了日の翌日から起算して1年以内に雇用された場合または雇用されている場合、教育訓練経費の70%をあらためて計算します。50%相当額として既に支給されている額との差額を支給します。

詳しくはこちらをご覧ください。

追加給付の条件を満たした場合(80%)

さらに、2024年(令和6年)10月1日以降に専門実践教育訓練の受講を開始し、当該教育訓練受講開始前から雇用後または資格取得後に、賃金が5%以上上昇した場合は、教育訓練経費の80%をあらためて計算します。70%相当額として既に支給されている額との差額を支給します。

10.教育訓練支援給付金について

専門実践教育訓練給付金の受給資格者のうち、受講開始時の年齢が45歳未満の失業者の場合、失業中の生活を支援するため、基本手当日額の80%を支給する教育訓練支援給付金の制度があります。専門実践教育訓練給付金を6か月ごとに受給するのと同時に、2か月ごとに教育訓練支援給付金を受給することができます。

教育訓練支援給付金について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

補足:詳しいルールとよくある質問

補足1:雇用保険の教育訓練給付制度

専門実践教育訓練給付金は雇用保険の教育訓練給付の一つであり、2014年(平成26年)10月1日に創設された制度です。原則として1年以上4年以内の長期の教育訓練を想定した制度で、学校に通いながら半年ごとに支給を受けるものです。正式名称は「専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金」です(雇用保険法施行規則第101条の2の12)。

教育訓練給付制度について、詳しくはこちらをご覧ください。

他の給付金との違いについて、詳しくはこちらをご覧ください。

雇用保険について、詳しくはこちらをご覧ください。

雇用保険の教育訓練給付以外の給付金について、詳しくはこちらをご覧ください。

補足2:非課税

専門実践教育訓練給付金は課税されません。つまり、専門実践教育訓練給付金の支給を受けたとしても、所得税、相続税、住民税等の税金は非課税となりますから、確定申告をする必要はありません。また、税法上の、扶養に入る際の配偶者控除や扶養控除の「所得金額」に含まれません。

ただし、社会保険(健康保険)の扶養については、専門実践教育訓練給付金は6か月ごとに支給されるものであり、恒常的、継続的に得られる収入に該当するため、非課税であっても原則として被扶養者の「年間収入」には含まれます。

注:税法上の「所得」には含まれませんが、専門実践教育訓練給付金は社会保険制度の「収入」には含まれます。

補足3:不正受給処分

偽りその他不正の行為により専門実践教育訓練給付金の支給を受けた場合、不正受給処分(返還命令、納付命令等)を受けます。不正受給処分について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

補足4:未支給の専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金の支給を受けることができる者が支給されることなく死亡した場合、その遺族が専門実践教育訓練給付金の支給を請求することができます。

未支給の専門実践教育訓練給付金の請求について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

補足5:法令の改正

支給要件期間

2017年(平成29年)までは、専門実践訓練給付金における支給要件期間は「10年以上」でしたが、2018年(平成30年)1月1日から「3年以上」になりました。

給付率の変更

2017年(平成29年)12月31日以前に受講開始した場合の、専門実践教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の40%(年間上限32万円)となります。追加給付は、教育訓練経費の60%(年間上限48万円)です。

補足6:社労士過去問

教育訓練給付金の概要、支給日、支給方法に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。