教育訓練給付の申請期限は1か月、6か月などと決められていますが、この申請期限は迅速な給付を行うための原則です。支給を受ける権利の時効は2年なので、2年以内であれば申請することが可能です。
1.教育訓練給付金の申請期限(原則)
給付金の支給申請には迅速な給付のため、申請期限がそれぞれ定められています。原則として申請期限を守りましょう。
一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金
一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金は、教育訓練の受講修了日の翌日から起算して1か月以内に、支給申請書の他にその教育訓練施設に支払った経費を証明する領収書などをハローワークに提出する必要があります。例えば、受講修了日が5月20日の場合、申請期間はその翌日の5月21日から起算して1か月間(6月20日まで)です。
専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は、教育訓練を受講中の場合はハローワークが通知する支給単位期間(6か月)の末日の翌日から起算して1か月以内、修了した時は受講修了日の翌日から起算して1か月以内に、支給申請書の他にその教育訓練施設に支払った経費を証明する領収書などをハローワークに提出する必要があります。
また、専門実践教育訓練を修了のうえ資格取得などをし、一般被保険者として雇用された場合に支給される追加給付は、追加給付の条件を満たした日の翌日から起算して1か月以内となります。
教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金は、ハローワークがあらかじめ指定した、失業の認定を受けるべき日(失業認定日、2か月ごと)に出頭して失業認定を受けなければなりません。失業認定日に出頭しなければ原則として支給されません。
未支給給付金
未支給教育訓練給付金を受けようとする遺族は、死亡者が死亡した日の翌日から起算して6か月以内にハローワークに未支給失業等給付請求書を提出する必要があります。
2.時効について
時効は雇用保険法の規定であり、教育訓練給付にも適用されます。
2年の短期消滅時効
時効とは、同じ状態が一定期間継続した場合に、真実の法律関係のいかんにかかわらず、権利の取得または消滅を強制的に認める制度であり、雇用保険法第74条は2年経過による消滅時効を定めています。
この規定は、民法と会計法に対する特別法的規定として定められています。
つまり、民法第167条では一般債権の消滅時効を10年とし、会計法第30条では金銭の給付を目的とする国の権利または国に対する権利の消滅時効を5年と定めていますが、雇用保険法上の権利行使は比較的容易であり、また権利関係をいたずらに長期にわたって不安定な状態の下に置くことは煩雑な雇用保険事務をますます複雑化するおそれがあるため、権利を行使することができる時から2年の経過により権利を消滅させることとしたものです。
2年の時効で消滅する権利
申請者が失業等給付等(教育訓練給付を含む)を受ける権利は、国に対して権利を行使できるときから2年の経過により消滅します。また、不正受給処分による返還命令、納付命令により金銭を徴収する権利は、国が不正受給者に対して権利を行使できるときから2年の経過により消滅します。
2年で時効消滅する権利
- 失業等給付等の支給を受ける権利
- 不正受給により支給を受けた失業等給付等の返還を受ける権利
- 不正受給処分の納付命令により納付をすべきことを命ぜられた金額を徴収する権利
時効の援用、完成猶予、更新
雇用保険法上の時効は「2年」であること以外は、民法と会計法の規定が適用されます。
雇用保険法上の権利は2年の経過による消滅時効の完成によって当然に消滅し、わざわざ相手方にその旨を伝えること(援用)は必要はありません。なお、消滅時効の完成猶予、更新については民法の規定が準用されます(会計法第31条)。
3.申請期限を過ぎても申請できる理由
申請期限を過ぎても2年以内ならOK
上記のとおり、教育訓練給付の支給を受ける権利は行使することができるときから2年経過すると消滅します。時効が完成するまでは権利としては有効です。そのため、教育訓練給付の申請期限を過ぎてしまった場合であっても2年以内であれば申請することができます。
申請期限は「原則」であって、期限を過ぎた場合でも、時効が完成するまでの期間(2年以内)であれば申請することができます。
やむを得ない理由も不要
2015年(平成27年)3月31日までは、雇用保険の受給者保護と迅速な給付を行うために申請期限を厳守しなければならないこととされ、「天災その他やむを得ない理由がある場合」を除いて、申請期限を過ぎると時効とは関係なく申請が受理されませんでした。
2015年(平成27年)4月1日からは、雇用保険法施行規則の改正により、申請期限を過ぎた場合でも、時効が完成するまでであれば申請が可能となりました。「やむを得ない理由」が無くても申請可能です。手続きが遅れたことの理由を言う必要もありません。
過去に申請期限を過ぎたことを理由として支給申請を受け付けられなかったとしても、2年以内であれば申請可能ですので再度申請すればよいです。
4.2年以内であれば申請できます
一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金
一般教育訓練給付金・特定一般教育訓練給付金は、教育訓練の修了日の翌日から起算して2年以内であれば申請することができます。2年を経過すると申請することができなくなります。
専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は、ハローワークが通知する支給単位期間の末日の翌日から起算して2年以内であれば申請することができます。修了したときは修了日の翌日から起算して2年以内であれば申請することができます。
ただし、受講開始日より前にキャリアコンサルティングを受け、受給資格確認を受けている必要があります。
専門実践教育訓練給付金(追加給付)
専門実践教育訓練を修了のうえ資格取得などをし、一般被保険者として雇用された場合に支給される専門実践教育訓練給付金(追加給付)は、追加給付の条件を満たした日の翌日から起算して2年以内であれば申請することができます。
教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金は、支給単位期間(2か月)の末日の翌日から起算して2年以内であれば申請することができます。ただし、ハローワークに出頭して失業認定を受けなければ支給されません。
未支給給付金
未支給給付金は、当該受給資格者等が死亡した日の翌日から起算して2年以内であれば申請することができます。
短期訓練受講費
短期訓練受講費については、雇用保険法施行規則に記載されている申請期限は、受講修了日の翌日から起算して1か月以内ですが、受講修了日の翌日から起算して2年以内であれば申請することができます。
5.できるだけお早めに
時効が完成する2年以内であれば申請可能ではありますが、申請期限が設けられているのは給付の事務を迅速に行うためです。
ハローワークは「申請期限内に支給申請が行われない場合は、通常より各給付金の支給が遅くなったり、上記の雇用保険の他の給付金が返還になる場合もありますので、申請期限内に支給申請を行っていただくようお願いします。」と呼びかけています。
給付金の計算のやりなおし等が発生する恐れがあることから、給付金を請求する権利が確定したらできるだけ早く請求するようにしたほうがよさそうです。
6.補足説明
社労士過去問
時効に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。