申請手続き

教育訓練給付の不正受給処分のペナルティ、返還命令、納付命令

偽りその他不正の行為により教育訓練給付の支給を受けた場合、その全部または一部の返還を命じられます。教育訓練経費の申告が不正である場合のほか、教育訓練の受講が不正である場合も不正受給となります。

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1.不正に受給した給付金の返還

教育訓練給付に関する支給申請は正しく行わなければなりません。ハローワークに提出する申請書類には事実をありのままに記載しなければなりません。また、不正の行為があるにも関わらず、教育訓練給付の支給申請に係るハローワークの調査・質問に虚偽の陳述をした場合は納付命令の対象となることがあります。

返還命令・納付命令

偽りの記載をして提出した場合には次のようなペナルティを受けることがあります。返還命令は不正に受給した金額の全部または一部、納付命令は返還額の2倍以下です。

また、不正受給した日の翌日から延滞金が課せられます。

不正受給処分

  • 不正に受給した給付金の全部または一部の返還を命ぜられる(返還命令
  • 厚生労働大臣の定める基準によりさらに返還額の2倍以下の金額の納付を命ぜられる(納付命令
  • 不正受給した日の翌日から延滞金が課せられる
  • 悪質な場合は詐欺罪等で刑罰に処せられることがある
参考法令
雇用保険法 第10条の4

偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部を返還することを命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた失業等給付の額の二倍に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。

督促、差押

不正受給によって返還命令または納付命令を受けたにもかかわらず、返還金または納付金を納付しないときは納付義務者に対して督促状を発せられます(労働保険徴収法第27条準用)。さらに、督促を受けた者がその指定の期限までに納付しないときは、国税滞納処分の例によって財産の差押が行われます。

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2.教育訓練給付制度上のペナルティ

支給停止

偽りの記載をして提出した場合等不正な行為によって給付金の支給を受けたり、受けようとした場合には、当該教育訓練給付の支給を受けることができなくなります。すでにハローワークが支給決定したものについてはその決定を取り消します。

また、不正に支給を受け、又は受けようとした日以後、教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金の支給を受ける権利がなくなります。

ただし、不正に支給を受け、又は受けようとした日以後、新たに支給要件期間(3年間)を満たせば、教育訓練給付金の支給を受けることができます(取り消しの対象とはならない)。

参考法令
雇用保険法 第60条の3第1項、第2項
(教育訓練支援給付金については同法附則第11条の2後段で準用)

偽りその他不正の行為により教育訓練給付金の支給を受け、又は受けようとした者には、当該給付金の支給を受け、又は受けようとした日以後、教育訓練給付金を支給しない。ただし、やむを得ない理由がある場合には、教育訓練給付金の全部又は一部を支給することができる。
2 前項の規定により教育訓練給付金の支給を受けることができない者とされたものが、同項に規定する日以後、新たに教育訓練給付金の支給を受けることができる者となつた場合には、同項の規定にかかわらず、教育訓練給付金を支給する。

支給要件期間の不算入

支給停止になった場合であっても、支給要件期間(3年間)の計算上は支給されたものとみなされます。そして、不正受給処分を受けた教育訓練の受講開始日より前の被保険者であった期間はなかったものとみなされます(支給要件期間に算入しない)。

そのため、少なくとも3年間は他の教育訓練受講についても教育訓練給付金(一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金)の支給を受けることができなくなります。

教育訓練給付金を受給する権利がはく奪されるので、不正受給があった日以降にハローワークが教育訓練給付金の支給を決定したものがあればその決定をすべて取り消します。もちろん、取り消した給付金についても返還命令・納付命令の対象になります。

参考法令
雇用保険法 第60条の3

偽りその他不正の行為により教育訓練給付金の支給を受け、又は受けようとした者には、当該給付金の支給を受け、又は受けようとした日以後、教育訓練給付金を支給しない。ただし、やむを得ない理由がある場合には、教育訓練給付金の全部又は一部を支給することができる。
2 前項の規定により教育訓練給付金の支給を受けることができない者とされたものが、同項に規定する日以後、新たに教育訓練給付金の支給を受けることができる者となつた場合には、同項の規定にかかわらず、教育訓練給付金を支給する。
3 第一項の規定により教育訓練給付金の支給を受けることができなくなつた場合においても、前条第二項の規定の適用については、当該給付金の支給があつたものとみなす
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3.不正受給の例

次のような場合は、「偽りその他不正の行為により教育訓練給付金の支給を受け、又は受けようとした者」に該当します。

代理受講

受講申込者が他の人に当該講座を受講させ、受講申込者の名義で支給申請を行った場合は、実際に受講申込者が給付を受けたか否かにかかわらず、当該受講申込者の不正受給となります。

カンニング、不正受験

講座の修了に必要な試験について、教育訓練施設や販売代理店等から解答の提供を受けて受験した場合等は、受講証明書または教育訓練修了証明書が交付されても、実質的に修了していないことから、教育訓練給付金の支給申請を行うことはできません。

この点を承知した上で虚偽の受講証明書または教育訓練修了証明書により支給申請を行った場合には不正受給となります。

受講費用の割引、返還

教育訓練経費の割引サービスを受けた場合や経費の返還があったときはそれを差し引いて申告しなければなりません。また、教育訓練経費を支払った後で、教育訓練施設、販売代理店等から教育訓練経費の全部または一部が還付されることが予定されている場合は、その還付予定額を差し引いて教育訓練経費を申告しなければなりません。

現金による還付だけでなくパソコン等の無償提供等を含みます。パソコン等の器材を含めた教育訓練経費の申告は不正受給となります。

会社が負担した場合

教育訓練経費は受講者本人が負担したものに限られます。事業所等が本人の代わりに教育訓練経費を負担したときは負担額を差し引いて教育訓練経費を申告しなければなりません。

事業所等が負担した金額、事業所等から補助を受けた金額を含めて教育訓練経費を申告した場合は不正受給となります。

4.教育訓練支援給付金の場合

教育訓練支援給付金の場合も、雇用保険法第60条の3の不正受給処分の規定が準用されています(雇用保険法附則第11条の2)。

参考法令
雇用保険法 附則第11条の2第1項後段

この場合における第十条第五項、第六十条の三及び第七十二条第一項の規定の適用については、第十条第五項中「教育訓練給付金」とあるのは「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金」と、第六十条の三第一項中「により教育訓練給付金」とあるのは「により教育訓練給付金又は教育訓練支援給付金」と、「、教育訓練給付金」とあるのは「、教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金」と、同条第二項中「により教育訓練給付金」とあるのは「により教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金」と、同条第三項中「教育訓練給付金」とあるのは「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金」と、「前条第二項」とあるのは「前条第二項及び附則第十一条の二第一項」と、第七十二条第一項中「若しくは第二十四条の二第一項」とあるのは「、第二十四条の二第一項若しくは附則第十一条の二第一項」とする。

次の場合は不正受給となります。

受講証明書の虚偽の申告

受講証明書に虚偽の記載をし、または教育訓練支援給付金の支給にかかわる事実を申告しなかった場合は不正受給となります。

  • 出席の実績がないにもかかわらず、その実績について虚偽の申告をした。
  • 事業主に雇用された場合(雇用の形態は問いません。試用(研修)期間も含みます。一時的な就職は除きます。)に、そのことを申告しなかったり、採用日、雇用された事実等を偽った申告をした。
  • 労災保険の休業(補償)給付や健康保険の傷病手当金等の支給を受けていることを申告しなかった(教育訓練支援給付金の支給終了後、教育訓練支援給付金を受給した期間について、労災保険の休業補償給付の支給を遡って受ける場合を含む。)。
  • 短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者になったことを申告しなかった。
  • 会社の役員等に就任したことを申告しなかった。

虚偽の書類

偽りの記載をした離職票(離職理由を含む。)を提出した場合は不正受給となります。

5.連帯返還命令・連帯納付命令

事業主等が偽りの届出、報告または証明をしたため不正に支給された場合は、政府は、その事業主等に対し、その受給者と連帯して、返還命令・納付命令の金額の納付をすることを命ずることができます(雇用保険法第10条の4第2項)。

連帯返還命令・連帯納付命令の対象

  • 事業主
  • 職業紹介事業者等
    労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第2条に規定する職業紹介機関又は業として職業安定法第4条第4項に規定する職業指導(職業に就こうとする者の適性、職業経験その他の実情に応じて行うものに限る。)を行う者(公共職業安定所その他の職業安定機関を除く。)
  • 募集情報等提供事業を行う者
    職業安定法第4条第6項に規定する募集情報等提供を業として行う者をいい、職業安定法第4条第6項第3号に掲げる行為(労働者になろうとする者の依頼を受けて行う場合に限る。)を行う者に限る。
  • 指定教育訓練実施者

指定教育訓練実施者が虚偽の届出、報告または証明を行い、不正受給者がそれを利用して教育訓練給付を不正に受給した場合、不正受給者と指定教育訓練実施者の双方に対して、連帯返還命令連帯納付命令を行います。

6.返還命令、納付命令の時効

返還命令または納付命令によって返還金または納付金を徴収する権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときに時効となります。なお、督促状が発せられたときは督促によって時効が更新(リセット)されますので、その督促から2年間となります。

参考法令
雇用保険法 第74条第1項

失業等給付等の支給を受け、又はその返還を受ける権利及び第十条の四第一項又は第二項の規定(これらの規定を第六十一条の六第二項において準用する場合を含む。)により納付をすべきことを命ぜられた金額を徴収する権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によつて消滅する。

返還命令や納付命令については、労働保険徴収法第27条(督促及び滞納処分)と第41条第2項の規定がそれぞれ準用されるので、督促を受けたときは時効が更新(リセット)されます。督促状が発せられたときは督促によって時効が更新されますので、その督促から2年間となります。

時効の更新とは、民法改正前の時効中断と同じ意味で、それまで進行してきた時効期間をリセットしてあらたに2年間の時効期間が始まるという意味です。2年以内に督促されたら時効消滅しなくなります。

参考法令
雇用保険法 第74条第3項

徴収法第二十七条及び第四十一条第二項の規定は、前二項の規定により返還又は納付を命ぜられた金額の納付を怠つた場合に準用する。
労働保険徴収法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律)第41条第2項

政府が行う労働保険料その他この法律の規定による徴収金の徴収の告知又は督促は、時効の更新の効力を生ずる。

7.補足

短期訓練受講費

短期訓練受講費は就職促進給付なので、不正受給をしたときは就職促進給付が支給されないだけで、教育訓練給付は無関係です。

社労士過去問

令和4年(2022年実施、第54回)社労士試験・択一式試験・雇用保険法問7選択肢B

偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合に政府が納付をすべきことを命じた金額を徴収する権利は、これを行使することができる時から2年を経過したときは時効によって消滅する。
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