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指定教育訓練実施者と教育訓練施設、指定教育訓練実施者が適正に行うべき事務 _ pr
教育訓練の指定基準

指定教育訓練実施者と教育訓練施設、指定教育訓練実施者が適正に行うべき事務

教育訓練給付金対象講座を実施する指定教育訓練実施者とその運営する教育訓練施設、各教室は厚生労働省が定める指定基準に従い、当該教育訓練とそれに付随する事務処理を適切に行う義務があり、怠った場合は指定の取り消しとなります。

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1.指定教育訓練実施者と教育訓練施設

指定教育訓練実施者とは、雇用保険法第60条の2の厚生労働大臣の指定を受けて教育訓練給付金対象講座を実施する者のことです。指定を受けるには厚生労働省告示に定める指定基準をクリアし、指定後も指定基準に定める内容を適切に実施しなければなりません。

指定教育訓練実施者が運営する教育訓練施設には、教育訓練を実施する上で必要となる教室、設備、備品等が常に使用できる状態で設置され、教育訓練講座を適切に実施するだけでなく、教育訓練給付制度に係る事務等を適正に実施できる組織体制が整備されている必要があります。なお、当該教育訓練施設の長が事前に届出をすれば複数の教室で授業または事務を行うことができ、その場所で実施された対象教育訓練は教育訓練給付金の支給対象となります。

  • 指定教育訓練実施者:施設を運営する法人または団体(例:株式会社○○○○○)
  • 教育訓練施設:授業と付随する事務処理等の全部を統括する本部または本校(例:○○○○○学校)
  • 教室:1つの教育訓練施設の管理下にある複数の授業場所(校舎、分校、教室等の名称を問わない)

教育訓練実施者については、事業の継続性及び安定性を確実なものとする観点から、日本国内の法人に限られます。ただし、学校教育法上の個人設置の専修学校または各種学校であって、都道府県知事の設置認可を受けた者についてはこの限りではありません。また、教育訓練施設も日本国内に設置される施設であることが必要です。

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2.教育訓練実施者の責務と指定の取消し

協力義務

厚生労働大臣が指定する教育訓練の指定基準には、「厚生労働省が行う調査等に協力し、かつ、その指導及び助言に従うものであること」、「教育訓練給付制度に係る事務等を適正に実施するものであること」との条件があり、当該教育訓練を適正に実施するだけでなく、教育訓練給付制度全般の適正実施に協力する責務があり、事務等を迅速かつ適正に処理することが求められています。

参考法令
雇用保険法第60条の2第1項に規定する厚生労働大臣が指定する教育訓練の指定基準(平成26年5月16日厚生労働省告示第237号)第1項(抜粋)  1 雇用保険法第六十条の二第一項の規定により、厚生労働大臣が指定する教育訓練を実施する者は、次のいずれにも該当するものであることとする。  当該教育訓練を継続的に安定して遂行する能力を有するものであること。  厚生労働省が行う調査等に協力し、かつ、その指導及び助言に従うものであること。  教育訓練給付制度に係る事務等を適正に実施するものであること。

指定基準を満たさなくなったときの指定の取消し

指定教育訓練実施者とその運営する教育訓練施設に対する厚生労働大臣の指定は、指定後この基準に適合しなくなったと認められるときは取消し等の対象となります。また、受講者の支給申請に当たって必要な証明をせずまたは偽りの証明をしたとき、誤った教示を繰り返している事実があるときその他教育訓練給付制度に関して不正な行為を行ったときは、指定が取り消されることとなります。

特に受講者に対する教育訓練修了証明書を不正に発行した場合や、実際に受講者が納付した額と異なる額を記載した不正な領収書の発行等があった場合、これにより給付を受けることは、不正受給に該当し、教育訓練実施者は、不正受給者と連帯して不正に受給した金額の返還または当該額の2倍の金額の納付を命ぜられることがあります。

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3.受講希望者に対する周知

教育訓練給付制度に関して不正を前提としたまたは不正を誘発するような勧誘、不適切な説明による強引な勧誘等を行った場合は指定取消しの対象となります。また、販売代理店等における販売活動等における不適正な行為等が確認された場合には、当該教育訓練実施者の具体的関与のいかんを問わず、そのすべての対象教育訓練の指定が取り消される場合があります。

教育訓練給付制度の適正周知

指定教育訓練実施者はトラブルを未然に防止するため、教育訓練給付金の支給を受けようとする受講希望者が受講を申し込む際に、教育訓練給付制度についてあらかじめ周知しなければなりません。

  • 受給資格:雇用保険の被保険者または被保険者であった者のうち一定の要件に該当するものが給付の対象となること
  • 支給要件照会:受給資格があるか否かの確認を希望する場合はハローワークに照会を行うことができること
  • 支給申請:定められた期間内に、修了証明書または受講証明書を添付してハローワークで行う必要があること
  • マイナンバー:手続きの際には個人番号(マイナンバー)の記載が必要であること
  • 証明書の発行:修了認定基準または受講認定基準を満たさなければ支給申請に必要な証明書が発行されないこと
  • 教育訓練経費の範囲:教育訓練給付金の対象となる教育訓練経費の範囲に関すること

なお、教育訓練給付金の支給申請手続は、申請者本人がハローワークに対して行うものであるため、教育訓練実施者、教育訓練施設、販売代理店等が手続きの代行をしてはならないことはもちろんのこと、個人番号(マイナンバー)の提供を要求してはいけません。

適正な広告、販売に関する責任

対象教育訓練について誤解を生じさせるおそれのある表示や広告等を行うことは禁止されています。募集パンフレット等に表示したり、広告等を行う場合には正確な表現を使用しなければなりません。また、教育訓練給付制度に関して誤った表現を用いてはいけません。

指定教育訓練実施者は、当該対象教育訓練に関して、その販売、募集、勧誘等が適正になされることを管理する責務を有するとともに、販売代理店等(契約関係の有無及びいかなる名称によるかを問わず、販売代理店、販売取次店、販売代理員その他当該教育訓練を販売する者の全てをいう。)が行う販売行為等の一切の責任を負います。そのため、販売代理店等が行う販売活動等の実態を把握するとともに、教育訓練給付制度の趣旨に照らし不適正と認められる販売活動等が行われることがないように管理する義務があります。

明示書の公開等

修了認定基準または受講認定基準は、受講者との間でその判断に関するトラブルが生じないよう、出席率や修了試験の合格点など客観的な指標によって定めることとともに、教育訓練給付金の支給を受けようとする受講希望者が受講を申し込む際に明示する必要があります。

指定教育訓練実施者は、認定基準のほか運営管理する教育訓練施設に係る事項について明示書を作成し、受講希望者等が広く閲覧できる状況に置く必要があります。対象教育訓練に係る目標資格についても、受験等の状況(受験率等)やその結果(合格率等)を適切な方法により把握し、「明示書」への記載も必要です。明示書の作成を怠った場合、指定の取消し等となります。

4.受講生に対する事務

虚偽の証明書、領収書により支給申請を行った場合には不正受給となり、指定取り消しの対象となります。

適正な領収書等の発行

教育訓練給付金は指定教育訓練実施者が証明した教育訓練経費をもとに計算されるため、受講者本人が直接、指定教育訓練実施者に対して支払った金額について証明しなければなりません。実質的な返還があった場合はその分を差し引くか、返還金明細書を発行します。

受講証明書、修了証明書の発行

指定教育訓練実施者は修了認定基準または受講認定基準を学則や教育規程等に明記し、これに基づいて修了の事実を適正に判断したうえで修了確認を行う必要があり、これは、教育訓練について指定を受けるための条件となっています。

なお、次のような場合は教育訓練給付金の対象外であり、支給申請を行った場合には不正受給となります。

  • 対象教育訓練に係る講座の修了試験等について、教育訓練実施者や販売代理店等から解答の提供を受けて受験した場合、あらかじめ解答が添付されている場合
  • 本人以外の者が受講し、または修了試験等を受験した場合

指定教育訓練実施者は、受講者ごとに受講状況を的確に把握した上で、修了認定基準または受講認定基準により認定された者に限って修了証明書を発行します。支給申請期限があるため、受講修了後速やかに発行し、本人に対して直接交付しなければなりません。なお、証明書発行に際して事務手数料を徴収してはいけません。

また、認定されなかった者に対しては、その事実と理由を文書により必ず通知します。

受講開始日の通知

受講開始日は、受講者の受給資格の可否を決定する重要な日付であることから、受講開始後速やかに受講者に対して文書により通知し、トラブルを未然に防止しなければなりません。

離職者である受講者への配慮

昼間の通学制の場合等の対象教育訓練を受講する受講者が、雇用保険の基本手当の受給資格の決定を受けた場合、原則として28日ごとに公共職業安定所へ来所して失業の認定を受ける必要がありますが、受講日の変更が困難である場合以外は失業認定日の変更は認められません。教育訓練施設は、公共職業安定所からの職業紹介呼出日、本人の就職面接日、失業認定日が受講日と重なった場合、受講日の振替等について配慮しなければなりません。

また、教育訓練施設は離職者である受講者から請求があったときは、本人に対して「教育訓練受講証明書」を発行します。

5.厚生労働省の調査等への協力、指導助言に従う責務

指定教育訓練実施者は、厚生労働省が行う調査、報告の求め等に協力するとともに、厚生労働省が行う助言や指導等を受け、必要な対応を行う義務があります。厚生労働省への報告や検証等への協力を忌避した場合、厚生労働省が行う指導及び助言等に従わなかった場合、当該定期報告や変更手続を怠った場合等には、指定教育訓練実施者として不適格と判断され、指定取消しとなる場合があります。

住所変更に伴う届出等

指定教育訓練実施者は、住所の変更、講座の廃止、教育訓練経費の変更をする場合等、必要な手続が発生した際には、速やかに、所要の手続を取る義務があります。住所変更の届出を怠ったことにより、厚生労働省が送付した文書が未達となったときには、指定取消し等となることがあります。

照会等への対応

指定教育訓練実施者が受講者に対して発行した書類に不備がある場合、ハローワークでは原則としてこれを受理せず、申請者本人から指定教育訓練実施者に対して照会を行うよう指示します。ハローワークが直接指定教育訓練実施者に対して問い合わせ等を行うことはありません。指定教育訓練実施者は、申請者本人からの要求があった場合、速やかに対応しなければなりません。

ただし、不正受給の疑いがある場合など本人に確認させることが適当でない場合は、ハローワークが直接指定教育訓練実施者に対して口頭または文書によって回答を求める場合があります。ハローワークからの照会があった場合も速やかに対応しなければなりません。

対象教育訓練の実績に関する報告、訓練効果の検証等

指定教育訓練実施者は、対象教育訓練に係る実績(受講修了後の資格取得状況、就職状況、受講修了者による対象教育訓練への評価状況等)等の情報を「現況報告書」で、定期的に厚生労働省に報告することが必要となります。報告された情報は、「教育訓練講座検索システム」に掲載され、広く情報提供されます。

当該報告について空欄が相当に多い場合や、空欄であることにつき正当な理由がないと判断される場合、厚生労働省が定める期限内に提出がなかった場合、内容に虚偽が認められる場合等には、指定の取消しを行う場合があります。

6.補足説明

指定教育訓練実施者の定義について

指定教育訓練実施者の定義は、雇用保険法第10条の4第2項(不正受給)に規定されています。

参考法令
雇用保険法 第10条の4第2項  前項の場合において、事業主、職業紹介事業者等(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第二条に規定する職業紹介機関又は業として職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第四条第四項に規定する職業指導(職業に就こうとする者の適性、職業経験その他の実情に応じて行うものに限る。)を行う者(公共職業安定所その他の職業安定機関を除く。)をいう。以下同じ。)、募集情報等提供事業を行う者(同条第六項に規定する募集情報等提供を業として行う者をいい、同項第三号に掲げる行為(労働者になろうとする者の依頼を受けて行う場合に限る。)を行う者に限る。以下この項及び第七十六条第二項において同じ。)又は指定教育訓練実施者(第六十条の二第一項に規定する厚生労働大臣が指定する教育訓練を行う者をいう。以下同じ。)が偽りの届出、報告又は証明をしたためその失業等給付が支給されたものであるときは、政府は、その事業主、職業紹介事業者等、募集情報等提供事業を行う者又は指定教育訓練実施者に対し、その失業等給付の支給を受けた者と連帯して、前項の規定による失業等給付の返還又は納付を命ぜられた金額の納付をすることを命ずることができる。