教育訓練経費(入学料と受講料)をクレジットで支払った場合、教育訓練給付金の支給申請の際には領収書の代わりに「クレジット契約証明書」または「クレジット伝票」を提出します。領収書を提出してはいけません。
1.教育訓練経費のクレジットカード払い
教育訓練施設がクレジット払いに対応していれば、教育訓練経費(入学料と受講料)の支払いにクレジットカードを利用してもかまいません。また、クレジットの支払方法として分割払いやボーナス一括払いなどを利用してもかまいません。
教育訓練給付金の支給を申請する際、現金払いの場合は支給申請書に「領収書」を添付しますが、クレジット払いの場合は領収書の代わりに「クレジット契約証明書」または「クレジット伝票」を添付します。
また、一般教育訓練で、教育訓練経費にキャリアコンサルティングの費用を加える場合も、キャリアコンサルティング実施者の発行したクレジット契約証明書またはクレジット伝票を添付します。
2.クレジットカード決済の仕組み
クレジットカード決済は、クレジットカードを提示していったん支払いの代わりとし、クレジットカード会社からの請求により指定口座から利用額が引き落とされる後払いの決済サービスです。
クレジット契約(カード決済)
クレジットカード決済をするためには、教育訓練施設(カード加盟店)がクレジットカード会社と加盟店契約をする必要があります。受講者(カード会員)は教育訓練施設に対してクレジットカードを提示して決済をします。
このことをいっぱんに「クレジットカード払い」といいますが、実際には金銭での支払いをしていないことから「クレジット契約」ということもあります。
立て替え払い
カード決済をすると本来受講者(カード会員)が支払うべき金額を、クレジットカード会社が教育訓練施設(カード加盟店)に対して立替払いします。
教育訓練経費を支払わなくても受講することができるのは、クレジットカード会社が教育訓練施設に対して一時的に立て替え払いをしているためです。
カード請求
クレジットカード会社は立て替え払いをした利用代金を受講者(カード会員)に対して請求します。
指定の銀行口座から引き落とされることによって支払いが完了します。
3.領収書を発行してはいけない理由
領収書の発行義務とは
受講者が教育訓練施設に対して直接、教育訓練経費を支払った場合、その支払いと同時に領収書(受取証書)の発行を請求することができ、代金と領収書を引き換えます。領収書の発行を請求されたら、発行する義務があります。銀行振り込みの場合も領収書の発行義務があります。
しかし、クレジットカード決済の場合は上記のとおり、受講者(カード会員)と教育訓練施設(カード加盟店)の間で直接的な現金または有価証券等のやりとりをしていない、つまり「領収」をしていないので領収書の発行義務はありません。
また、領収書を発行したとしても、金銭等の受け渡しの事実が無いので法的に有効な領収書ではありません。
領収書を発行するのは間違い
クレジットカード会社は教育訓練施設(加盟店)に対して教育訓練経費の立て替え払いをしますが、このときに教育訓練施設はクレジットカード会社に対して領収書を発行しています。そのため、もし受講者(カード会員)に対して領収書を発行してしまうと、受講者とクレジットカード会社から二重に支払いを受けたことになってしまいます(売上の二重計上)。
また、カードの不正利用等によりカード利用が取り消されることがあります(チャージバックという)。この場合、立て替え払いも取り消しとなるため、カード利用の時点で領収書を発行するのはリスクがあります。
したがって、クレジットカード決済の際に教育訓練施設が受講者に対して領収書を発行するのは誤りです。受講者が教育訓練施設に対して領収書の発行を請求するのも誤りです。
領収書のようなものを発行してもよい
カード利用者のなかにはカード払いでも領収書をもらえると勘違いしている人が多いため、やむを得ず領収書のようなものを発行する場合があります。この場合、二重計上を避けるため、必ず「クレジットカード払い」であることを明記します。
ただし、「領収書」という名称で発行したとしても金銭等の受け渡しの事実が無いので、正式な領収書ではありません(領収書もどきです)。正式な領収書ではないので印紙税もかかりません。
クレジット販売の場合には、信用取引により商品を引き渡すものであり、その際の領収書であっても金銭又は有価証券の受領事実がありませんから、表題が「領収書」となっていても、第17号の1文書には該当しません。
したがって、この領収書には印紙を貼付する必要はありません。
クレジット販売の場合の領収書(国税庁・質疑応答事例)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/37.htm
4.クレジット契約証明書の発行義務
お客様控えの発行義務
上記のとおり、教育訓練施設(加盟店)は受講者(カード会員)に対して領収書を発行することはできませんが、クレジット決済の内容を記載したクレジット伝票(お客様控え)を発行することになっています(インターネット上での決済を除く)。このことは、加盟店とクレジットカード会社との間で締結する「加盟店規約」に定められており、加盟店の義務とされています。
したがって、受講者が教育訓練施設に対してクレジット伝票の発行を請求したときは、教育訓練施設はクレジット伝票を発行しなければなりません。
なお、クレジット伝票は、「お客様控え」「クレジットカード売上票」「利用明細書」「利用伝票」などと記載されることもあります。
教育訓練経費(入学料と受講料)の場合
教育訓練給付金の支給を申請するには、支払った教育訓練経費(入学料と受講料)の額を証明するため、支給申請書に領収書を添付します。
しかし、上記のとおり、クレジット契約の場合は領収書を発行することができないため、教育訓練施設は領収書の代わりに「クレジット契約証明書」を発行します。一般的にはクレジット契約証明書を発行する義務はありませんが、厚生労働大臣指定の教育訓練給付金対象講座を実施する教育訓練施設は、厚生労働大臣の指定を受ける条件として「クレジット契約証明書」の発行が義務付けられています。
受講者は、領収書の代わりにクレジット契約証明書をハローワークに提出します。なお、クレジットカードの名義人は受講者本人でなければなりません。
クレジット契約証明書は決まった様式が無いので、必要記載事項をすべて記載したものであればどんな文書でもかまいません。各教育訓練施設が自由に作成してかまいません。
クレジット契約証明書の必要記載事項
- 教育訓練実施者の名称(法人名など)
- 教育訓練施設の名称(教室名など)
- 受講者(クレジット契約者)氏名
- クレジット契約額(クレジット会社に対する手数料(金利)を含まない。)
- クレジット契約日(カードの利用日)
- クレジット契約額の証明印(クレジット伝票の際は省略可)
- 教育訓練講座名または指定番号(両方でもよい)
- 領収額の内訳(入学料と受講料のそれぞれの額及び分割払の場合は第何回目の支払いであるか)
クレジット契約証明書はクレジット決済の事実を証明するものであり、領収書でも契約書でもないので印紙税は不要(収入印紙の貼付不要)です。
なお、「クレジット契約額」について訂正のあるものは無効です(訂正印があっても無効)。その他の事項について訂正する場合は教育訓練施設の訂正印が必要です(訂正印が無い場合は無効)。また、やむを得ない理由によりクレジット契約証明書を再交付することとなった場合は、再交付であることを明記します。
キャリアコンサルティングの費用の場合
一般教育訓練の場合、受講開始日前1年以内にキャリアコンサルティングを受けた場合は、その費用を教育訓練経費に加えることができます(上限2万円)。この場合、キャリアコンサルティングを実施したキャリアコンサルタントが発行した「領収書」を添付しなければなりません。
教育訓練経費(入学料と受講料)の場合と同様、キャリアコンサルティング実施者がクレジット払いに対応していれば、キャリアコンサルティングの費用をクレジットカードで支払ってもかまいません。クレジット払いの場合、キャリアコンサルティング実施者がクレジット契約証明書を発行します。
受講者は、領収書の代わりにクレジット契約証明書をハローワークに提出します。なお、クレジットカードの名義人は受講者本人でなければなりません。
クレジット契約証明書は決まった様式が無いので、必要記載事項をすべて記載したものであればどんな文書でもかまいません。各キャリアコンサルティング実施者が自由に作成してかまいません。
クレジット契約証明書の必要記載事項
- キャリアコンサルティング実施者の名称(キャリアコンサルティング実施者が個人事業主の場合は不要)
- キャリアコンサルタントの氏名
- キャリアコンサルティングを受けた者(支払者)の氏名
- クレジット契約額(クレジット会社に対する手数料(金利)を含まない。)
- クレジット契約日(カードの利用日)
- クレジット契約額の証明印(クレジット伝票の際は省略可)
なお、「クレジット契約額」について訂正のあるものは無効です(訂正印があっても無効)。その他の事項について訂正する場合はキャリアコンサルティング実施者の訂正印が必要です(訂正印が無い場合は無効)。また、やむを得ない理由によりクレジット契約証明書を再交付することとなった場合は、再交付であることを明記します。
5.クレジット契約証明書の注意点
クレジット伝票でもよい
クレジット契約証明書を発行する代わりに、クレジット伝票(お客様控え)に必要事項(クレジット契約証明書の必要記載事項)を記入したものを交付してもかまいません。クレジット伝票に足りない事項があれば手書きで追記すればよいです。
カード会社の利用明細は不可
教育訓練給付金の算定基礎となる教育訓練経費は、教育訓練実施者により証明されたものに限られます(雇用保険法第60条の2第4項)。そのため、ハローワークに提出する領収書やクレジット契約書(クレジット伝票を含む)は教育訓練施設が発行して、利用額を証明したものでなければなりません。
したがって、クレジットカード会社がカード利用者である受講者に対して発行した請求書や明細書は、教育訓練施設が発行したものではないので領収書の代わりとはなりません。
また、販売代理店が発行したクレジット契約証明書も不可です。
分割払い手数料
クレジットカードを利用する際に分割払いやリボルビング払いを選択した場合、分割払い手数料(金利)が加算されることがあります。この分割払い手数料(金利)は、受講者(カード会員)がクレジットカード会社に対して支払うものであり、教育訓練施設に対して支払うものではないので教育訓練経費に該当しません。
教育訓練経費に分割払い手数料(金利)を含めてはいけません。
また、教育訓練施設(加盟店)はクレジットカード会社に対して加盟店手数料を支払っていますが、日本では代金に加盟店手数料を上乗せして請求することが禁止されているため、教育訓練経費に加盟店手数料を含めてはいけません。
分割払いをクレジット契約で行う場合
教育訓練施設に対して複数回に分けて支払いを行う分割払い(例えば、月謝のように毎月支払う場合など)について、毎回クレジット契約によって支払いを行う場合、教育訓練施設は毎回クレジット契約証明書を発行します。受講者はすべてのクレジット契約証明書をハローワークに提出する必要があります。
また、クレジット払いと通常の支払方法が併用された場合は、受講者はその領収書とクレジット契約証明書のすべてをハローワークに提出する必要があります。
教育訓練経費以外の経費が含まれている場合
教育訓練経費とそれ以外の経費をまとめてクレジットカードで支払う場合は、クレジット契約証明書を区分して発行するか、または、クレジット決済を分けて行うことによってクレジット伝票を区分して発行しなければなりません。
ただし、教育訓練経費とそれ以外の経費についてまとめてクレジット契約証明書を発行し、内訳として明示することとしてもかまいません。
6.支払いが完了していなくてもよい
原則として教育訓練給付金の支給申請者が支給申請の時点で、教育訓練施設に対して未納としている入学料または受講料は教育訓練経費ではありません。
上記のとおり、クレジットカード支払いとは言っても実際にはクレジット契約をしただけなので、教育訓練施設に対して教育訓練経費を支払ったとは言えません。しかし、クレジット契約の場合は例外として、クレジット契約が成立(カード決済)していればよく、クレジットカード会社への支払いが支給申請の後になってもかまいません。
また、クレジットカード会社への支払いが完了したことを証明する必要もありません。
7.補足説明
返還金明細書
クレジット契約証明書の発行後に受講料の値引き等により一部還付があった場合であっても、クレジット契約額を訂正することができません(訂正した場合は無効となる)。
そのため、クレジット契約証明書の発行後、受講料の値引き等により、教育訓練経費の一部が教育訓練実施者から本人に還付された(される)場合は、教育訓練施設が当該還付額とその理由等を明記した「返還金明細書」を受講者に対して発行し、支給申請の際に提出しなければなりません。
教育訓練給付金支給申請書
「教育訓練給付金支給申請書」の教育訓練経費の欄は、クレジットカード払いの金額を含めた合計金額を記入します。
- 教育訓練給付金支給申請書の書き方【一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金】
- 教育訓練給付金支給申請書の書き方【専門実践教育訓練給付金の6か月ごとの支給】
- 追加支給用の「教育訓練給付金支給申請書」の書き方【専門実践教育訓練給付金】
教育訓練経費等確認書
「教育訓練経費等確認書」は、クレジットカード払いの金額を分けて記入します。
「実際に支払った」額の欄は領収書の金額を記入します。「クレジット契約を結んだ」額の欄はクレジット契約証明書の金額を記入します。