支給要件期間とは、教育訓練の受講開始日までに雇用保険の被保険者として雇用された期間のことです。原則として3年以上、初回の場合は1年以上または2年以上必要です。
1.支給要件期間は教育訓練給付の条件である
支給要件期間
教育訓練給付を受けるには、講座の開始日までに原則として3年以上雇用保険に加入している必要があります(ただし、初回の場合は1年または2年)。雇用保険に加入したことが無い人は教育訓練給付を受けることができません。
講座の開始日までの間に雇用保険の被保険者として雇用された期間のことを「支給要件期間」といいます(雇用保険法第60条の2第2項)。
ただし、教育訓練給付は3年に1度しか給付されないので、教育訓練給付を受けたことがある人は3年間給付を受けることができません。
支給要件期間3年以上の理由
教育訓練給付金の受給資格として支給要件期間3年以上を要件としているのは、労働者の自発的な職業能力開発を促しながら、教育訓練の受講が任意的、選択的であることを踏まえ、趣味的な受講を防ぐとともに、受講する教育訓練の慎重な選択を促すためです。
2.期間計算の基準は受講開始日
支給要件期間の計算は、その教育訓練を開始した日(受講開始日)を基準として考えます(雇用保険法第60条の2第1項第1号)。受講開始日からさかのぼるように支給要件期間を計算します。
したがって、さかのぼっている途中に支給要件期間が途切れることがあれば、その前の期間はすべて算入されません。
受講開始日とは、通学制の場合は対象教育訓練の所定の開講日です。必ずしも本人の出席第1日目とは限りません。通信制の場合は受講申込み後初めて教育訓練施設が教材等を発送した日です。いずれの場合も教育訓練実施者が受講開始日として証明する日が、受講開始日となります。
3.支給要件
支給要件期間の詳細な計算方法と具体例についてはこちらをご覧ください。
基本的には3年以上
まず、基本的なパターンとして、会社に勤めて雇用保険に3年以上継続して加入し、3年間教育訓練給付を受けたことが無く、現在も働いている人は間違いなく教育訓練給付の支給を受けることができます。
- 今まで3年間雇用保険に継続して加入している
- 今まで3年間教育訓練給付を受けたことが無い
離職後1年以内でも可
3年間教育訓練給付を受けたことが無く、雇用保険に3年以上継続して加入した会社を退職して1年以内であれば現職と同じように教育訓練給付の支給を受けることができます。
初めての場合は1年または2年で良い
原則として3年以上の加入が必要ですが、いままで全く教育訓練給付を受けたことがなく、初めて教育訓練給付を受ける人は、一般教育訓練、特定一般教育訓練については支給要件期間1年以上で良いです。専門実践教育訓練については支給要件期間2年以上で良いです。
例えば、人生において一度も教育訓練給付を受けたことが無い場合、1年間雇用保険に加入しただけで一般教育訓練給付金を受けることができます。ただし、一度、教育訓練給付を受けたら、3年間教育訓練給付を受けることができません。
- 【一般、特定一般教育訓練給付金】初めての場合は支給要件期間1年以上でよい
- 【専門実践教育訓練給付金】初めての場合は支給要件期間2年以上でよい
- 【受給制限】3年以内に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは教育訓練給付金の受給資格がない
4.教育訓練支援給付金の支給要件期間
支給要件期間はない
教育訓練支援給付金は、専門実践教育訓練給付金の給付対象者のうち一定の要件を満たす場合に、教育訓練を受講している日のうち失業している日について支給されるものです(雇用保険法附則第11条の2)。したがって、専門実践教育訓練給付金を受給する資格が無ければ、教育訓練支援給付金が支給されることはありません。
教育訓練支援給付金の支給を受けるのに支給要件期間は必要ありません。
専門実践教育訓練の支給要件期間は必要
教育訓練支援給付金を受給できるのは、専門実践教育訓練給付金の受給資格者に限られます。そして、専門実践教育訓練給付金を受給するのに必要な支給要件期間は3年以上です。
したがって、教育訓練支援給付金を受給するのに必要な支給要件期間も3年以上となります。
過去に教育訓練給付金の支給を受けたことが無く、今回初めて専門実践教育訓練給付金の支給を受ける予定の場合、支給要件期間は2年以上でよいです。教育訓練支援給付金を受給する場合も同じです。
5.必ず支給要件期間を確認しよう
ずっと働いているのに加入していない?
雇用保険に加入できる人(被保険者)は限定されているので、働いているすべての人が加入できるわけではありません。
今までずっと働いてきたのに、履歴を調べてみると未加入の期間がある場合もあります。加入していない期間が1年以上あると、それより前の期間は計算に入れません(途切れる)のでご注意ください。
支給要件照会
本人が加入していると思っていても、会社が雇用保険の手続きを怠っていることもありえるので、事前にハローワークに確認したほうが良いでしょう。
自分では「支給要件期間」を満たしていると思っていても、実際には雇用保険加入期間が足りなかったということはよくあります。教育訓練を申し込もうとしている人、教育訓練給付金を受けようとしている人は、教育訓練の申し込みをする前に必ず支給要件期間を確認しましょう。
すべての労働者の雇用保険加入履歴はハローワークが把握しています。ハローワークに行って支給要件期間の「照会」をすると、支給要件期間を調べてくれます。手数料はかかりません。無料です。
支給要件照会の手続きについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
6.基本手当や傷病手当とは無関係
雇用保険の基本手当や傷病手当等を支給されていることと、教育訓練給付の支給要件期間とは無関係です。過去に基本手当や傷病手当等を受けていたとしても支給要件期間の計算に影響はありません。
3年以内に教育訓練給付を受けている場合は教育訓練給付を受けることができませんが、過去に基本手当や傷病手当等を受けていたとしても教育訓練給付を受けることはできます。
7.補足説明
平成22年法改正関連
2009年(平成21年)までの旧船員保険法の規定による船員保険の被保険者であった期間は、支給要件期間の計算においても、現行の雇用保険の被保険者であった期間として扱われます。
被保険者資格の遡及確認
雇用保険に加入すべき労働者が加入していなかった場合は、ハローワークで被保険者資格取得の確認を受けることができます。ただし、過去にさかのぼって確認できるのは原則2年以内です。
社労士過去問
支給要件期間に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。