失業時に支給される雇用保険の基本手当は「自己の労働によって収入を得た場合」は減額されますが、教育訓練給付金は自己の労働によって得た収入ではないので減額の対象とはなりません。
1.基本手当と教育訓練給付金は無関係
基本手当
雇用保険の基本手当は、失業した時にハローワークから支給される失業者給付です。基本手当が支給されるためには、ハローワークに出頭して、失業認定を受けなければなりません。
基本手当を受給しながら教育訓練給付金を受給する
雇用保険の基本手当を受給することと、一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金を受給することは無関係です。いずれも雇用保険給付なのでハローワークで申請手続きをするのは同じですが、窓口も手続きも異なります。
基本手当と教育訓練給付金は両方受給することができます。基本手当受給中に一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金を受給してもまったく問題はありません。
基本手当は自己の労働によって収入を得た場合には減額されますが(雇用保険法第19条)、教育訓練給付金は労働によって得た収入ではありません。したがって、一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金を受給していることを理由として基本手当が減額されることはありません。また、教育訓練給付金が減額されることもありません。
2.傷病手当と教育訓練給付金は無関係
傷病手当
雇用保険(基本手当)の受給資格者が、離職後求職申し込みをしたあと疾病や負傷のため引き続き15日以上職業に就くことができなくなった場合には、基本手当の支給を受けることはできません。
雇用保険の傷病手当は、基本手当の支給を受けることができない間の生活を支援するために基本手当に代えて支給される手当で、原則として基本手当と同額の傷病手当が支給されます。
傷病手当を受給しながら教育訓練給付金を受給する
基本手当も傷病手当も、教育訓練給付金とは支給目的が異なるので、支給を受けても教育訓練給付金の支給に影響はありません。傷病手当と教育訓練給付金は両方受給することができます。傷病手当受給中に一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金を受給してもまったく問題はありません。
3.支給要件期間、適用対象期間の延長も無関係
雇用保険の基本手当や傷病手当等の支給と、教育訓練給付の支給要件期間は無関係です。過去に基本手当や傷病手当等の支給を受けていたとしても支給要件期間の計算に影響はありません。
また、適用対象期間の延長についても無関係です。傷病手当の支給を受けていたとしてもその傷病の期間は適用対象期間延長の対象となります。
4.基本手当の失業認定との関係
労働の意思及び能力を有する
基本手当の失業認定は、ハローワークが離職後28日ごとに、「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること」を確認するものです(雇用保険法第4条第3項)。
離職者が教育訓練を受講するのは、就職の促進を図るために必要な職業に関するスキルを身につけるものとして必要と言えます。したがって、基本手当の受給資格決定および失業の認定に際して、教育訓練を受講していても、原則として「労働の意思及び能力がある」ものとして取り扱われます。
また、基本手当の失業認定における「求職活動実績」も不要です。
ただし、一般教育訓練または特定一般教育訓練を受講している離職者で、その教育訓練が昼間通学制の場合、離職者本人が常にハローワークの職業紹介に応じられる状態であり、また、積極的に求職活動をする意思があることが必要です。
失業認定日の変更
離職者は28日ごとに失業認定を受けるため、ハローワークが指定した失業認定日に必ず出頭しなければなりません。教育訓練を受講している場合、受講日の変更が困難である場合に限り、認定日の変更が認められます。
5.教育訓練「支援」給付金の場合だけ例外です
基本手当受給中に教育訓練支援給付金の支給を受けられない
一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金と雇用保険の基本手当とは全く関係のない制度です。
基本手当受給中に支給が受けられないのは教育訓練支援給付金だけです。
基本手当の受給中に専門実践教育訓練を受講していた場合、基本手当の支給終了後に続けて教育訓練支援給付金を受給することが可能な場合があります。
傷病が14日以内であれば失業認定できる
労働者災害補償保険法(労災保険)の規定による休業(補償)給付や、健康保険の傷病手当金等その他これに相当する給付の支給を受けている場合であっても、教育訓練支援給付金の受給資格はあります。
ただし、休業(補償)給付や傷病手当金等その他これに相当する給付の支給を受けている場合は、一般に労働の能力がないものと判断されます。この場合、医師の証明等により雇用保険の被保険者となりうる条件での労働の能力のあることが立証できれば労働の能力があると推定されます。
療養の状態が継続した期間が14日以内の場合、出席率を満たせば失業認定を行うことができます。