失業時に支給される雇用保険の基本手当と教育訓練支援給付金は給付目的が同じであるため両方支給されることはありません。基本手当が優先であり、基本手当が終了した後で教育訓練支援給付金が支給されます。
1.教育訓練支援給付金の受給資格
教育訓練支援給付金の受給資格は、専門実践教育訓練給付金の受給資格者であって、45歳未満の年齢で受講を開始し、適切な受講のもとその修了が見込まれることと、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことのできない状態にあることです。
教育訓練支援給付金の支給を受けるにはハローワークであらかじめ受給資格の確認を受ける必要があります。受給資格があることが確認されたら、受給資格者証が交付されます。
2.受給資格があっても支給されないことがある
教育訓練支援給付金の受給資格が認められた人であっても、次に該当する期間については教育訓練支援給付金が支給されません。
教育訓練支援給付金が支給されない期間
- 基本手当が支給される期間
- 基本手当の待期期間(求職申込後7日間)
- 懲戒解雇や自己都合退職で基本手当の給付が制限されている期間(1か月~3か月)
- ハローワークの職業指導を正当な理由なく拒んだために基本手当の支給が制限されている期間
- 教育訓練支援給付金の待期期間(失業通算7日間)
雇用保険の基本手当が支給されている期間は教育訓練支援給付金が支給されません。それは、基本手当が支給される期間については、基本手当で諸経費をまかなうことができるため、教育訓練支援給付金を支給する必要が無いからです。
ただし、支給されないというだけであって、受給資格そのものが否定されるという意味ではありません。受給資格は認められるけど、支給額が0円になるという意味です。したがって、支給されない期間であっても受給資格確認の手続だけを行うことは可能です。
3.基本手当終了後の教育訓練支援給付金の支給
同時に受給資格決定を受ける場合
教育訓練支援給付金と基本手当の受給資格があり、両方の受給資格確認票が提出された場合は、両方の受給資格確認が行われます。この場合、基本手当の雇用保険受給資格者証に、教育訓練支援給付金の受給資格があること、訓練開始予定日、教育訓練支援給付金の認定日を記載されます。
上記のとおり、教育訓練支援給付金と基本手当は同時に支給されませんが、基本手当の受給資格者については基本手当を優先して支給し、基本手当の受給終了後に教育訓練支援給付金が支給されます。
すでに基本手当の受給資格決定を受けている場合
基本手当に係る受給資格決定の後、別の日に教育訓練支援給付金の受給資格決定を行うことも可能です。
すでに基本手当の受給資格決定を受けている場合、離職票をハローワークに提出しているため手元にありません。その代わりに雇用保険受給資格者証を受け取っています。教育訓練支援給付金の受給資格決定を受ける場合、離職票に代えて雇用保険受給資格者証を提出します。
4.教育訓練支援給付金と基本手当の関係
まず基本手当の受給資格を確認すること
教育訓練支援給付金を申請するには離職票が必要です。離職票を持っていれば雇用保険の基本手当の支給を受けられる可能性があります。基本手当が受けられる場合は教育訓練支援給付金の前に基本手当の受給確認手続を行います。また、教育訓練支援給付金と基本手当の受給資格確認を同時に行うことも可能です。ただし、基本手当が支給される期間は教育訓練支援給付金は支給されません。
なお、基本手当については船員を希望している場合は地方運輸局にて処理が行われますが、教育訓練支援給付金を含む教育訓練給付金の手続はハローワークで行われます。
基本手当の要件を満たさない場合
基本手当は、離職の日以前の2年間に被保険者期間が通算して12か月以上の場合に支給されますが、失業中の人がすべて基本手当を受けられるとは限りません。基本手当の要件を満たさない場合は、教育訓練支援給付金の受給資格確認のみ申請します。
なお、基本手当の受給資格決定を行わず、教育訓練支援給付金の受給資格決定のみを行う場合であっても求職の申込みは必要です。
基本手当の受給資格決定を希望しない場合
ハローワークでは、教育訓練支援給付金の受給資格決定を行う際には必ず、本人の希望にかかわらず基本手当の受給資格を有するかどうかの確認も行います。また、基本手当の受給資格決定を受けるように強く勧められます。なぜなら、基本手当が支給される期間は教育訓練支援給付金が支給されないからです。
この「基本手当が支給される期間」とは「基本手当の支給を受けることが可能な期間」のことです。つまり、基本手当の所定給付日数があり受給期間内であれば「基本手当が支給される期間」にあたります。このことは、本人が希望しているか否か、基本手当の受給資格決定がされたか否か、もしくは実際に基本手当を受け取ったか否かを問いません。給付日数を延長した場合の基本手当の範囲内であれば同様に「基本手当が支給される期間」です。
基本手当の要件を満たしているにもかかわらず基本手当の受給資格決定を希望しない場合は、教育訓練支援給付金の受給資格決定だけを申請することは可能です。しかし、基本手当が支給されないのはもちろんのこと、教育訓練支援給付金も支給されませんのでまったく意味がありません。基本手当の要件を満たす場合は基本手当の受給資格決定を受けたほうが良いです。
ただし、基本手当の残日数を残して受給期間を満了した場合は「基本手当が支給される期間」では無いため、教育訓練支援給付金の支給を受けることが可能となります。
両方とも支給されない場合もある
基本手当も教育訓練支援給付金も定期的にハローワークに出頭して失業認定を受けなければ給付されません。「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」でなければ失業認定を受けることができません。労働の意思または能力に欠ける場合であっても受給資格の確認手続をすることは可能ですが、仮に受給資格が認められたとしても給付は0円となります。
5.教育訓練支援給付金以外は受給可能
基本手当や傷病手当を受給しながら教育訓練を受講することは可能です。一般教育訓練給付金、特定教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金については受給可能です。
支給されないのは教育訓練支援給付金だけです。基本手当の受給修了後は支給されます。
基本手当が支給される場合
- 一般教育訓練給付金、特定教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金は受給可能
- 教育訓練支援給付金は不可