照会とは問い合わせをして回答を得ることです。「支給要件照会」とは、教育訓練給付金の支給を受けるための条件を満たしているかをハローワークに問い合わせて、その回答を得る手続きです。
1.支給要件照会とは
支給要件とは
教育訓練給付金は雇用保険法上の保険給付なので、雇用保険に加入したことが無い人は受給できません。教育訓練給付金の支給を受けるには支給要件期間などの一定の条件(支給要件)を満たしている必要があります。
教育訓練給付金の支給要件について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
支給要件照会
教育訓練を受ける前に、教育訓練給付金の支給要件を満たすかどうかをハローワークで調べてもらうことができます。これを「支給要件照会」といいます。照会とは問い合わせをして回答を得ることです。
支給要件照会では次のことを調べてもらうことができます。手数料はかかりません。無料です。
支給要件照会をすると回答してもらえること
- 受講開始(予定)日現在における受給資格の有無
- 教育訓練給付が受けられる訓練か否か
支給要件照会を行わなくても給付金の支給申請を行うことは可能ですが(後述)、できるだけ事前に照会をしておいたほうが良いです。特に、支給要件を満たすかどうかが分からない場合は必ず照会をしたほうが良いです。
2.支給要件照会の方法
支給要件照会票を記入する
支給要件照会は、「教育訓練給付金支給要件照会票」に必要事項を記入し、本人の居住所を管轄するハローワークに提出しますが、管轄のハローワークでなくても最寄りのハローワークに行けば、照会に応じてくれます。
教育訓練給付金支給要件照会票の書き方について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
また、代理人、郵送または電子申請でも可能です。郵送の場合は、本人の居住所を管轄するハローワークに送付します。
なお、電話による照会は、本人または代理人によるものであることの確認が困難であるとともに、回答が文書によらず誤解を招く危険性があるので、行うことができません。
本人・居住所確認書類
支給要件照会は個人情報保護のため、本人確認・居住所確認書類が必要です。確認書類は次のうちの1つで良いです。ただし、支給要件照会票提出の時点で有効なもの、または発行・発給された日から6か月以内のものに限ります。写真が無いものは2つ以上必要です。
本人確認・居住所確認書類
- 運転免許証
- 住民票の写し
- 雇用保険受給資格者証(本人の写真付き)
- 出稼労働者手帳
- 国民健康保険被保険者証
- 印鑑証明書
- マイナンバーカード
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
- 在留カード
- 特別永住者証明書
- 児童扶養手当証書
- 特別児童扶養手当証書
- 官公署から発行・発給された身分証明書又は資格証明書(本人の写真付き)
郵送の場合は本人確認書類のコピーを添付します(例えば、運転免許証の原本を郵送してはいけません。)。代理人による場合は、本人確認書類と委任状が必要です。なお、支給要件照会票には個人番号(マイナンバー)を記載しないので、個人番号を証明する書類は不要です。
3.支給要件照会の結果
照会結果は、「教育訓練給付金支給要件回答書」によって、受給資格があること、または無いことが通知されます。
支給要件照会票をハローワークに直接提出すると、すぐに、職員がその場でシステムに入力することにより、だいたい10分程度で「教育訓練給付金支給要件回答書」が印刷されます。そして、すぐに本人に回答書が手渡されます。
教育訓練給付金支給要件回答書の見方について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
郵送または電子申請による照会の場合は、後日、郵送によって回答書が送られます。郵送または電子申請による照会をして回答書をハローワークに取りに行くことはできません。そのため、急いで回答が欲しい場合は直接ハローワークに行ったほうが早いです。
4.支給申請手続を忘れずに
支給要件照会はあくまで支給要件を満たすかどうかを調べてもらうだけで、照会をしただけで教育訓練給付の支給を受けられるわけではありません。支給要件照会を行った場合でも、教育訓練給付金の支給を受けるためには支給申請の手続を行うことが必要です。
一般教育訓練給付金の支給申請
一般教育訓練給付金の支給を受けるには、支給要件照会を行ったか否かにかかわらず、教育訓練を修了した日の翌日から1か月以内にあらためて、教育訓練給付金支給申請書によって支給申請を行う必要があります。
一般教育訓練給付金の支給申請について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
特定一般または専門実践教育訓練給付金の受給資格確認
特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金、教育訓練支援給付金の支給を受けるには、支給要件照会を行ったか否かにかかわらず、受講開始日の1か月前までに訓練前キャリアコンサルティングを受けたうえで、受給資格確認の手続を行う必要があります。
受給資格確認について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
5.予定が変わるかもしれないことに注意
支給要件回答書は証明書ではない
支給要件を満たすかどうかについては、その基準日である「受講開始日」によって決まります。受講を開始していないのに支給要件を満たすことを証明することは不可能です。
支給要件回答書は、支給要件照会票に記入した受講開始日(予定日)現在での受給資格を推定して回答するものです。受講開始日(予定日)が将来の日付である場合は、支給要件照会票を提出した日の状態が受講開始日(予定日)まで継続されているものと推定して回答します。
支給要件回答書のとおりにならない例
支給要件回答書はあくまで推定して回答するものであり、支給要件照会票を提出した日の状態から変動があった場合は、支給要件回答書のとおりにならないことがあります。
支給要件回答書のとおりにならない例
- 支給要件照会票に記載した受講開始(予定)日が、実際の受講開始日が異なる場合
- 照会確認の日以降に離職・就職等によって雇用保険被保険者資格に変動がある場合
- 適用対象期間の延長措置を受けた期間に変更があった場合
- 支給要件照会後に適用対象期間の延長措置を受けた場合
支給要件回答書で「支給要件を満たす」と回答されたとしても、給付金がもらえないことがあります。例えば、受講開始日が予定通りであれば支給要件期間3年以上を満たしていたのに、受講開始日が予定より早まったために支給要件期間が少なくなり要件を満たさなくなることがあります。
逆に、支給要件回答書で「支給要件を満たさない」と回答されたとしても、給付金がもらえることがあります。例えば、受講開始日が予定通りであれば適用対象期間1年超で支給要件を満たさないのに、受講開始日が予定より早まったために適用対象期間が1年以内となり受給資格が得られることもあります。
教育訓練給付金の支給要件について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
6.支給要件回答書の提出について
申し込みの際に、教育訓練施設が支給要件回答書の提出を求めることがありますが、支給要件回答書は証明書ではないのでまったく意味はありません。厚生労働省が提出を義務付けているわけでもありません。
ハローワークがサービスでやっているだけです
支給要件照会は、教育訓練給付の対象となっているかどうかをハローワークに調べてもらう手続きですが、もちろん任意の手続きです。支給要件照会を行わなくても教育訓練給付の支給申請をすることは可能です。
「教育訓練給付金支給要件照会票」や「教育訓練給付金支給要件回答書」に様式番号(様式第~号など)が無いことからも分かるように、雇用保険法施行規則で定められた法的手続きではありません。
支給要件回答書は支給要件を満たすことをハローワークが証明する書類ではありません。上記のとおり、受講の申し込みをしていないのに、受給資格の基準日である「受講開始日」が確定するわけがないのですから当たり前のことです。
ちなみに、支給要件照会の法的根拠は、厚生労働省の行政手引「雇用保険に関する業務取扱要領」です。
一般教育訓練給付金について
一般教育訓練給付金については「受給資格確認」のような事前の手続きが無いため、支給要件を満たしていないにもかかわらず給付金をもらえるものと勘違いして申し込みをしてしまうなどのトラブルが考えられます。
教育訓練施設が支給要件回答書の提出を求める理由
- 申し込み時に、教育訓練施設に対して教育訓練給付制度を利用することを申告しなければならないのに、それを知らない人がいる
- 支給要件を満たしていないにもかかわらず給付金をもらえるものと勘違いして申し込みをして、講座が終わってから教育訓練施設に対して返金を求める人がいる
教育訓練施設はこのようなトラブルを防ぐために支給要件回答書の提出を求めているのです。合理的な理由があるので黙認されているだけです。あくまで、講座の申し込みの条件を決めるのは講座を実施する教育訓練施設なので、それに従うしかありません。
ちなみに、一般教育訓練給付金以外の給付金については事前に「受給資格確認」の手続きがあるので、受給資格確認通知書または受給資格者証を提示するだけで良いです。
7.不服申し立てはできない
支給要件照会は義務ではないので、支給要件照会に対する回答は行政上の処分ではありません。したがって、支給要件回答書に対する不服申し立て(審査請求)をすることはできません。