求職者支援制度で職業訓練受講給付金を受給しても、その給付金だけでは訓練受講中の生活費が不足する場合に求職者支援資金融資を受けることができます。
1.求職者支援資金融資とは
職業訓練受講給付金について
職業訓練受講給付金は、雇用保険の失業等給付を受給できない特定求職者のうち収入や資産等の要件を満たせば、訓練受講を容易にするための給付として月額10万円を支給するものです。
求職者支援制度と職業訓練受講給付金の概要についてはこちらの記事をご覧ください。
求職者支援資金融資の概要
さらに、職業訓練受講給付金を受給する人で、世帯の状況、生計費の地域格差等によりこの給付金だけでは生活費が不足する場合、円滑な訓練受講のため、ハローワークが指定する金融機関である労働金庫(ろうきん)の融資制度「求職者支援資金融資」を利用することができます。
単身者の場合は月額5万円、同居の配偶者等を有する場合は月額10万円を上限として、労働金庫から貸付を受けることができます。なお、あくまでも貸付ですので利息を含めて返済する必要があります。就職などを理由とする返済の免除措置はありませんのでご注意ください。
2.対象者、融資の要件
融資を希望する人はあらかじめハローワークで確認申請を行い、融資の要件を満たしていることが確認されたら、「求職者支援資金融資要件確認書」が交付されます。
融資の要件
- 貸付を希望する理由が適当と認められる
- 貸付金を返済する意思があると認められる
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員ではない
- 原則として未成年者は利用できない
- 最終返済時年齢が65歳であること
交付を受けた後に、職業訓練受講給付金の支給決定を受けた支給単位期間について求職者支援資金融資を受けることができます。ただし、求職者支援資金融資要件確認書の交付を受けた場合であっても、融資にあたっては労働金庫の審査があり、審査の結果、融資を受けられない場合もあります。
3.貸付金額と利率
貸付金額
貸付の上限額は、同居または生計を一つにする配偶者・子・父母がいる場合は月10万円、それ以外は月5万円を上限とし、受講予定訓練月数の貸し付けとなります。貸付を受ける額については、月額1万円単位で、上限額の範囲内で将来返済が可能であり、かつ生活に真に必要な額として認められた額となります。
貸付の上限
- 配偶者・子・父母がいる場合・・・月10万円×受講予定訓練月数
- それ以外・・・月5万円×受講予定訓練月数
受講予定訓練月数とは、ハローワークに貸付の確認申請を行った時点で、職業訓練受講給付金の支給・不支給の決定が行われていない支給単位期間の数であり、上限は12か月です。
同一の訓練の受講予定訓練月数が12か月を超える場合(最大24か月まで)については、最初の12か月が経過するまでに再度、ハローワーク・労働金庫で貸付の手続きを行う必要があります。
貸付利率
貸付利率は、年2.0%です(信用保証料0.5%を含む)。
貸付金利は、2021年(令和3年)1月1日以降に労働金庫と求職者支援資金融資の契約を締結したものから、3.0%より2.0%に変更となります。
4.貸付方法と返済方法
融資の手続き
- ハローワークで融資要件の確認申請を行う
- ハローワークで職業訓練受講給付金の支給決定を受ける
- 労働金庫で貸付の手続きをする
ハローワークでの手続き
まず、あらかじめハローワークで確認申請(貸付要件の確認などの手続き)を行います。融資の条件を満たしていると判断された場合、「求職者支援資金融資要件確認書」が交付されます。
その後、支給単位期間にかかる指定来所日に、ハローワークに出頭して職業訓練受講給付金の支給申請をします。
労働金庫(ろうきん)での手続き
職業訓練受講給付金の支給決定を受けたら、求職者支援資金融資要件確認書と、支給決定を受けたことが分かる書類(例えば、給付金支給記録の写し)など必要書類を、近くの労働金庫に持参して貸付の手続きをします。
担保人・保証人は不要です。ただし、労働金庫が指定する信用保証機関(一般社団法人日本労働者信用基金協会)の利用が条件となります。
労働金庫の審査に通過した場合、融資を受けられます。なお、ハローワークで発行された求職者支援資金融資要件確認書の提出があったとしても、労働金庫ではあらためて金融機関としての審査を行いますので、審査の結果、貸付を受けられないこともあります。
貸付方法
本人の労働金庫の口座へ貸付金額を一括で振り込みます。労働金庫に口座がない場合は、手続きの際に口座を開設する必要があります。
返済方法
貸付金の返済は、本人の労働金庫の口座から自動引き落としとなります。
貸付日の属する月の翌月末以降、毎月末日を約定返済日とします。
訓練終了月の3か月後の末日までは元金据え置き期間として、利息のみの返済となります。訓練終了月の4か月後の末日以降、貸付日から5年以内(貸付額が50万円以上の場合は10年以内)に元利均等払いにより返済します。ただし、最終弁済時の年齢は65歳です。
5.返済が遅れた場合、途中でやめた場合など
返済が遅れた場合
元金と利息の返済が遅れた場合は、遅延している元金に対して年14.5%の損害金(遅延利息)の支払い義務が発生します。また、約定どおりに返済がなされない場合には、個人信用情報機関に遅滞状態にある旨が登録され、他の金融機関を利用する際に不利益を受ける可能性がありますので、ご注意ください。
訓練を途中で辞めた場合
就職などにより訓練を途中で辞めた場合は、辞めた日が属する月の3か月後の末日までは元金据え置き期間として、利息のみの返済となります。4か月後の末日以降、貸付日から5年以内(貸付額が50万円以上の場合は10年以内)に元利均等払いにより返済します。ただし、最終弁済時の年齢は65歳です。
訓練を途中で辞めた場合には元金据え置き期間が変更となりますので、1か月以内にハローワークに届け出たうえで、労働金庫で契約変更の手続きを行わなければなりません。訓練を辞めた日から1か月以内に契約変更の手続きを行わない場合は、債務残高の全額を一括返済しなければならなくなります。
債務残高の一括返済
次のような場合には、直ちに債務残高の全額を一括返済しなければなりません。また、詐欺罪などで処罰されることもありますので、ご注意ください。
債務残高の一括返済
- 欠席の繰り返し(やむを得ない理由による欠席を除く)
- 就職支援拒否により、職業訓練受講給付金の支給が停止された場合
- 不正受給処分により、職業訓練受講給付金の支給が停止された場合
- 確認申請書類の虚偽記載などによる貸付の不正利用が発覚した場合
- 訓練を辞めた日から1か月以内に契約変更の手続きを行わなかった場合
6.求職者支援資金融資事業のための補助金
求職者支援資金融資事業を行うための補助金として、国庫から一般社団法人日本労働者信用基金協会に対して求職者訓練受講支援補助金(求職者支援資金融資事業費)が交付されています。
これは、貸付が返済不能となった場合に、一般社団法人日本労働者信用基金協会(信用保証機関)が労働金庫に対して行う欠損補填に要した経費のうち、信用保証機関への返済が不能となった額に対して国が補助するものです。
7.補足説明
雇用保険法上の法的根拠
特定求職者に対する職業訓練受講給付金の支給と「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」については、雇用保険法第64条の能力開発事業(雇用保険二事業)として実施されています。
社労士過去問
求職者支援資金融資制度に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。