教育訓練給付の制度がスタートした当時は一般教育訓練給付金しかありませんでした。その後、2014年(平成26年)に専門実践教育訓練給付金、2019年(令和元年)に特定一般教育訓練給付金が追加されました。
1.給付率の違い
教育訓練給付には4種類の給付金があります。
ハローワークが実施する教育訓練給付
このうち、一般教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の20%(上限10万円)です。
特定一般教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の40%(上限20万円)です。
専門実践教育訓練給付金は教育訓練経費の50%(上限120万円)であり、追加給付の要件を満たした場合は教育訓練経費の70%となります。
2.内容の違い
一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金
教育訓練給付制度は1998年(平成10年)12月に創設され、2019年(令和元年)10月から特定一般教育訓練給付金の制度が始まりました。
一般教育訓練給付金の給付率は20%ですが、特定一般教育訓練給付金が支給される特定一般教育訓練は、一般教育訓練のうち特にキャリアアップ効果の高い講座を指定して、給付率を40%に引き上げました。
専門実践教育訓練を導入した趣旨
専門実践教育訓練給付金の制度は教育訓練給付制度を拡充するため、2014年(平成26年)10月から始まりました。
2013年(平成25年)6月14日に「日本再興戦略」が閣議決定され、「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換(失業なき労働移動の実現)」として、社会人の学び直しを促進するために雇用保険制度を見直すことになりました。
非正規雇用労働者である若者等がキャリアアップ・キャリアチェンジできるよう、中長期的なキャリア形成に資する教育訓練を自発的に受講する場合の給付率を引き上げ、さらに、訓練修了や資格取得の上で雇用保険被保険者として職に就いた場合に20%を上乗せして支給することになりました。
20%の追加給付があるのは専門実践教育訓練給付金だけです。
訓練期間の違い
一般教育訓練と特定一般教育訓練は原則として1か月以上1年以内の短期の講座を想定したものです。
これに対して、専門実践教育訓練は上記の趣旨から原則として1年以上4年以内の長期の教育訓練を想定しています。専門実践教育訓練の対象となるのは次の7つです(後述)。
- 業務独占資格、名称独占資格の取得を目指す養成施設の課程
- 専門学校の職業実践専門課程、キャリア形成促進プログラム
- 専門職大学院
- 職業実践力育成プログラム
- 情報通信技術に関する資格取得を目標とした課程
- 第四次産業革命スキル習得講座
- 専門職大学、専門職短期大学、専門職学科の課程
3.取得資格の違い、目標資格一覧
それぞれの指定基準と目標資格については次の記事をご覧ください。
4.事前手続きの違い
一般教育訓練給付金
一般教育訓練給付金は、受講を開始する前に手続きをすることはありませんが、受講開始日前1年前までにキャリアコンサルティング(任意)を受けた場合はその費用を教育訓練経費に含めることができます。
特定一般、専門実践教育訓練給付金
特定一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金は、受講を開始する1か月前までにハローワークで訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成したうえで、受給資格確認の決定を受けなければなりません。
また、過去に特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金を受給したことがある場合は、受給資格確認の際に「再受給時報告」を提出しなければなりません。
5.申請時期、給付時期の違い
一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金は一時金として支給されます。つまり、教育訓練を修了した場合に一括で(1回払いで)支給されます。
これに対して、専門実践教育訓練給付金は支給単位期間ごとの支給となります(6か月ごとの分割払い)。それは、専門実践教育訓練は訓練期間が長期であり、ハローワークにおいて受講状況と修了する見込みがあることを確認する必要があるからです。
なお、追加給付の20%分については、教育訓練の修了と資格取得等と就職をしたことに対するインセンティブなので、条件を満たした後、一時金としての支給となります(厳密に言えば、専門実践教育訓練給付金の一部として支給されるにすぎないので、正式には一時金とは言わない)。
6.初回の場合の支給要件期間の違い
原則として受給することができるのは在職者または1年以内の離職者(最大20年以内)で、支給要件期間(雇用保険に加入していた期間)は3年以上です。
ただし、過去に教育訓練給付金の支給を受けたことが無く、初めて一般教育訓練給付金または特定一般教育訓練給付金の支給を受けようとする場合、支給要件期間は1年以上でよいです。
2014年(平成26年)10月1日以降に教育訓練給付金を受けたことがなく、はじめて専門実践教育訓練給付金を受給する場合、支給要件期間は2年以上です。
7.受給時報告の有無
教育訓練を修了し、教育訓練給付金の支給を申請するときに受給時報告を提出します。受給時報告とは教育訓練の内容に関するアンケートのようなものですが、法令で提出が義務付けられています。
特定一般教育訓練給付金の場合は受給時報告、専門実践教育訓練給付金の場合は最終受給時報告の提出が必要です。一般教育訓練給付金は不要です。
8.補足:教育訓練「支援」給付金との違いについて
教育訓練「支援」給付金との違いについてはこちらの記事をご覧ください。