教育訓練給付金の手続き(受給資格確認、支給申請)は原則として本人がハローワークに出頭して行いますが、やむを得ない理由がある場合はその理由を記載した書類を添付して、郵便、電子申請、代理で行うこともできます。
1.本人出頭の原則
特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金については教育訓練の受講を開始する日の1か月前までにハローワークに「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」を提出します。また、教育訓練給付金の支給を受けるにはハローワークに「教育訓練給付金支給申請書」を提出します。
教育訓練給付金関連の手続はお金にかかわる重要な事項なので、面倒であっても申請者本人がハローワークに出頭するのが原則です。手続きについて不明な点があれば職員に聞きながら記入することができ、書類の誤りがあればその場で修正することもできます。
教育訓練給付金の手続は、疾病、負傷その他やむを得ない理由のためにハローワークに出頭することができない場合に限り、代理人、郵送または電子申請によって行うことができません。当該やむを得ない理由のためにハローワークに出頭することができない場合、その理由を記載した証明書を添付のうえ、代理人、郵送または電子申請により提出することができます。ただし、1つでも不備や誤りがある場合は返戻されますから、間違いの無いように提出しなければなりません。
2.理由を記載した証明書の提出
疾病、負傷等の場合は「出頭できないことの証明書」、在職中の場合は「出頭が困難であることの理由説明書」です。違いを理解しましょう。
疾病、負傷等の場合
疾病、負傷または1か月を超える長期の海外出張その他やむを得ない理由のために期間内にハローワークに出頭できないときは、その理由を記載した証明書を添付の上、代理人、郵送または電子申請により提出することができます。
この場合の「証明書」とは、本人が記載した書面ではなく、第三者が発行したもので当該やむを得ない理由の事実を確認することのできる書類のことです。疾病または負傷の場合は医師の診断書等、1か月を超える長期の海外出張の場合は辞令、パスポート、査証の写し等です。
出頭できない理由を記載した証明書
- 疾病または負傷:医師の診断書等
- 1か月を超える長期の海外出張:辞令、パスポート、査証の写し等
- その他やむを得ない理由:事実を確認することのできる書類
なお、インフルエンザ、新型コロナウィルス等に感染した場合も出頭できない理由となりますが、感染の予防を理由とすることはできません(出頭できないことを第三者が証明できないため)。
在職中であることを理由とする場合
申請者本人が在職中であることを理由にハローワークへの出頭が困難であることを申し出た場合は、上記の「やむを得ない理由」があるものとみなします。つまり、在職中であることの申し出をすれば代理人、郵送または電子申請により提出することができます。
在職中であることの申出をするには、「安定所への出頭が困難であることの理由説明書」を提出します。
この場合の「説明書」とは、申請者本人が作成してその理由を記載した書面のことであり、事実を確認できる書類を提出する義務はありません。在職中であることの申出をするだけでよいので、原則として第三者が発行する書類を提出する必要はありませんし、勤務先を記載する必要もありません。
なお、理由説明書によって申出をした場合、ハローワークでは「雇用保険被保険者台帳」を照会することによって在籍していることを確認します。したがって、雇用保険未加入の場合(雇用保険の未適用事業所で就労している場合、公務員など雇用保険適用除外の場合、雇用保険の被保険者資格の取得が行われていない場合)にはハローワークで確認することができません。この場合は、理由説明書に、在職している勤務先の事業所名を記載するとともに、勤務先事業所が発行する「在職証明書」もあわせて提出しなければなりません。
出頭が困難であることの理由説明書
- 本人が作成した理由説明書
- 雇用保険未加入の場合は勤務先事業所名の記載と在職証明書の添付が必要
確認のため、後日ハローワークから連絡がある可能性がありますので、勤務先事業所に教育訓練を受講していることがバレるおそれがあることもあわせて注意したほうが良いです。
3.証明書または理由説明書の様式について
本人がハローワークに行けないことをの理由を説明するための証明書または理由説明書の様式は定められていません。理由の内容が明示されていれば、任意(自由)の形式で作成することができるものとされています。適当に作ってもかまいませんし、メモ書きのようなものでも有効ですが、ハローワークの文書管理の便宜上、A4用紙で作ってあげたほうが良いと思います。
雇用保険に関する記載内容確認書や教育訓練経費等確認書、欠席したことの申告書などの様式が公開されていますので、それをもとに作成すればよいでしょう。当サイトでPDFを6種類用意しましたが、ハローワーク公式の様式ではありません。
文書作成上の注意
適用対象期間延長申請書は適用対象期間を確定するためにその事由の期間を記載しますが、ハローワークに出頭できないことの理由を説明するのに期間を記載する必要はありません。つまり、申請書提出の時点でやむを得ない理由があることを申告すれば良く、当該理由の「期間」の記載は不要です。
受給資格確認票または支給申請書に、雇用保険の被保険者番号と現住所を記入しますので、証明書または理由説明書に被保険者番号や現住所を記載する必要はありません。また、個人番号(マイナンバー)の記載は禁止されています。
個人情報は教育訓練経費等確認書と同様、氏名の記載のみで良いです(手書き署名または押印により文書の真正性が法律上推定される)。押印を省略してはいけないことになっていますが、手書きの署名があれば押印をしてもしなくてもかまいません。
【疾病、負傷】証明書の様式
疾病、負傷または1か月を超える長期の海外出張その他やむを得ない理由の場合、その理由を記載した診断書等の証明書を提出します。しかし、提出を受けたハローワークが診断書だけを見ても、何の意味か(何のために提出したものか)が分からないため、本人が作成した「出頭できないことの説明書」を添付したほうが良いです。
【在職中】理由説明書の様式
在職中であることを理由とする場合は、「安定所への出頭が困難であることの理由説明書」を本人が作成して提出します。
雇用保険被保険者でない場合は、勤務先事業所名の記載と在職証明書の添付をしたほうがよいでしょう。
4.郵送の場合
郵送にて提出を行う場合、本人の住居所管轄のハローワーク宛てに郵送します(「〇〇公共職業安定所 御中」で良い)。受給資格確認票や支給申請書の原本と、添付書類のコピーを添付します。
受給資格確認票や支給申請書には個人番号(マイナンバー)が含まれ、その添付書類にも個人情報が含まれるため、このような書類を普通郵便で送付するのは適切ではありません。郵便事故があってもハローワークは一切関知しません。申請書を誤って普通郵便で郵送しても受理してくれますが、郵送により申請を行う場合には事故防止のため、追跡可能な簡易書留等により提出します。
申請書にマイナンバーの記載があるにも関わらず、マイナンバー及び身元(実在)の確認を行うことのできる書類が添付していなかった場合は、郵送された書類はハローワークが一時的に預かり、マイナンバー及び身元(実在)確認書類を追加で提出することになります。マイナンバーの記載がない申請書を郵送した場合、既に雇用保険被保険者番号とマイナンバーの紐付けがなされている場合を除いて不受理となり返送されます。
5.代理人の場合
代理人を通じて個人番号(マイナンバー)を記載した申請書を提出する場合、申請者本人の個人番号等の確認書類のほか、本人と代理人の間柄、代理人の所属、代理申請の理由を明記した委任状と、代理人の身元(実在)を確認することのできる書類の写しが必要です。
なお、委任は申請者本人が代理人に対して提出代行を委託する意思表示(申請者本人と代理人の間の契約)であり、その委任状をハローワークに提出するからといって「〇〇公共職業安定所長 殿」などと記載してはいけません。
委任状の文例
委任状
令和XX年XX月XX日
私は(代理申請の理由)のため下記の者を代理人に定めて、(本人住居所管轄安定所)に教育訓練給付金支給申請書及び確認書類を提出することを委任します。
(本人住居所・氏名・印)
記
(代理人氏名)
(代理人住所)
(本人と代理人の間柄)
(代理人の所属)
ただし、社会保険労務士が提出代行を行う場合に、次の事項がすべて確認できれば、委任状の添付を省略してもかまいません。
委任状の添付を省略できる条件
- 社会保険労務士が提出代行をすること
- 申請書の備考欄又は欄外に、手書きの署名または昭和62年3月24日労徴発第18号に規定する定型印の押印があること
- 「個人番号の提供について代理人に委任する」旨の記載があること
- 申請者本人の署名、住所の記載及び押印があること
6.電子申請の場合
電子申請は365日、24時間いつでも申請できるうえ、時間やコストの節減になります。
電子申請は、総務省オンライン総合窓口「e-Gov」で行います。e-Govで雇用保険関係手続きの電子申請を行うには電子署名が必要です。この電子署名を行うためには、あらかじめ厚生労働省が指定する認証局が発行する「電子証明書」を入手する必要があります。マイナンバーカード(個人番号カード)の発行の際に署名用電子証明書も発行されている場合はそれを利用することもできます。
ただし、ICカードの読み取りやスキャナのほか、パソコンのスキルが無いと難しいと思われます。電子申請より郵送するか、ハローワークに出頭したほうが早いと思います。電子申請について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
7.補足説明
支給要件照会の場合
支給要件照会も本人出頭のほか、代理人、郵送、電子申請によっても行うことができます。支給要件照会については「やむを得ない理由」が無くても代理人、郵送、電子申請による照会が可能であり、その理由を説明する必要はなく、理由説明書等の添付書類も不要です。
代理の禁止
やむを得ない理由に該当する場合であっても、指定教育訓練実施者及び教育訓練施設、その販売代理店等(契約関係の有無及びいかなる名称によるかを問わず、販売代理店、販売取次店、販売代理員その他、支給申請に係る対象教育訓練を販売するすべての者)に所属する者及び訓練前キャリアコンサルティングを行った訓練対応キャリアコンサルタントを代理人とすることはできません。
教育訓練支援給付金の場合
教育訓練支援給付金の場合は代理人、郵送または電子申請が認められていません。それは、ハローワークに出頭することによって、失業状態=就労する能力がある状態であることの確認を受ける必要があるからです。
本人が出頭できなければ失業とは認められません。