教育訓練給付金に関する手続きについてはハローワークに直接出頭する代わりに電子申請によって行うことが推奨されていますが、パソコンのスキルが無い人はハローワークに行ったほうが早いです。
1.電子申請について
電子申請とは、窓口に出頭して紙を提出することによって行われていた行政手続を、窓口に出頭することなくインターネットを利用して申請を行うことをいいます。
「e-Gov電子申請」は総務省・デジタル庁が運営するポータルサイトe-Gov(イーガブ)のうち、各省庁への申請や届出を受け付ける電子申請システムです。
システムメンテナンス等のサービス停止時間を除いて24時間365日いつでも申請が行えるだけでなく、複数の窓口を回る時間や交通費等がかからないこと、手書きをしなくても良いことなどから、慣れている人にとってはこれほど便利なサービスはありません。
電子申請のメリット
- 休日に関係なくいつでも申請できる
- 窓口へ行く時間や経費がかからない
- 手書きしなくてもよい
2.教育訓練給付関連の電子申請一覧
「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」では、「教育訓練給付金について、マイナンバーカードによる認証で電子申請が可能であることを周知する等により、電子申請を推進する」とされています。
e-Gov電子申請では、支給要件照会、受給資格確認、給付金支給、適用対象期間延長の電子申請をすることができます。
教育訓練給付関連で電子申請可能なもの
- 支給要件照会
- 受給資格確認票の提出
- 給付金支給申請
- 適用対象期間延長申請
このうち、受給資格確認または給付金支給申請の場合は、その理由を記載した証明書(在職中の支給対象者は安定所への出頭が困難であることの理由説明書)を添付します。
3.電子申請のデメリット
電子申請をおすすめできるのはパソコン操作に慣れた人だけです。
書類のやり取りはパソコンのみ
e-Gov電子申請には、行政手続の検索、申請・届出、処理状況とメッセージ通知、ダウンロードの機能があります。
このうち、行政手続の検索と処理状況とメッセージ通知についてはスマホとパソコンの両方で行うことができますが、申請・届出とダウンロード、つまり各省庁への書類の提出と各省庁からの文書の受け取り(書類のやり取り)はパソコンでしかできません。そのため、パソコンが無ければ申請を行うことができません。
- スマホも可:行政手続の検索、処理状況、メッセージ通知
- パソコンのみ:申請・届出、ダウンロード
便利と簡単は違います
「電子申請=便利=簡単」は、あくまでパソコンを用いた電子的な書類のやり取りを普段から行っている人だけです。マイナポイントの取得を1人で調べてできるくらいのスキルがあれば「電子申請=簡単」と言えます。
残念ながら、慣れていないと初めての操作や知識があまりにも多すぎて断念してしまうかもしれません。普段からパソコンの便利な機能や知識を少しずつ学ぶ習慣をつけておくと「便利=簡単」となります。
必要なスキル
パソコンを用いた電子申請は基本的な情報リテラシを結集した操作であって、何も分からない人がいきなり電子申請を行うには膨大な知識が必要となります。
まず、電子申請をするにはインターネットに接続されているパソコンが必要であり、1人で、添付ファイル付きの電子メールのやり取りができる程度のパソコンスキルが必須です。その他、ファイル操作、ログイン、ダウンロード、インストール、添付書類のPDF化の操作、ICチップに入っているデータを読み込んでパソコンへ入れる作業(後述)などが必要となります。
電子申請のために最低限必要となるスキル
- 操作説明書の手順に従ってパソコンを操作できること
- 文字入力、コピペ
- ファイルの保存とフォルダ管理
- アカウントの取得とログイン
- ソフトのインストール
- ICカードリーダライタの接続と読み込み
- 紙の書類をスキャンしてPDFで保存
- パソコン内のファイルを指定して送信
- ファイルをダウンロードして名前を付けて保存
- 基本的な情報セキュリティの知識
逆に時間とコストがかかるかも
ハローワークに出頭すれば分からないところがあれば職員に聞くことができ、細かいミスをその場で補正することも可能です。また、窓口で少し待つだけで手続きが終わることもあります。
しかし、郵送や電子申請の場合は教えてくれる人がいませんのですべて1人で処理しなければなりません。入力の不備があっても修正されず再提出となります。1つでも添付書類の不足があれば完璧に揃うまで何度でもやり直しとなります。そのため、手続きの完了までに何日も待たされることになります。
必要な環境(パソコンやICカードリーダライタ、インターネット環境など)が無い場合はそのコストがかかります。パソコン操作に不慣れな人はあきらめて、ハローワークに出頭して手書きの申請書を提出したほうが早く、費用もそんなにかからないと思われます。
4.マイナンバーカードの電子証明書
電子証明書とは
電子証明書は、暗号化されて外部から読み取られるおそれのない文字の羅列が保存された「ファイル」です。WordやExcelで作られた文書と同じ電子データです。パソコンはもちろんのこと、SDカードやUSBメモリなどに媒体に保存することが可能なものです。
電子申請をする際、指定されたフォームに入力し、確認書類を添付して送信します。しかし、受け取った側は本当に本人から提出されたものであるかどうかの判別ができず(本人以外の人が勝手に送っている可能性がある)、厳密な本人確認ができないため、本人しか持っていない電子証明書(という名のファイル)を含めた形で送信しなければならないのです。
電子証明書には、署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書の2種類があります。このうち電子申請には署名用電子証明書を使用します。
電子証明書
- 署名用電子証明書:送信した電子文書が、本人が作成した真正なものであり、本人が送信したものであることを証明する
- 利用者証明用電子証明書:マイナポータルへのログイン、コンビニでの公的な証明書の交付など、ログインした者が本人であることを証明する
マイナンバーカード電子証明書の発行
電子証明書は第三者である認証局(電子証明書発行機関)が発行します。認証局は複数の機関がありますがどの認証局を利用してもかまいません。
認証局のうち、地方公共団体情報システム機構による公的個人認証サービス(JPKI=Japanese Public Key Infrastructure)は、住民票のある住人に対して当該住人専用の電子証明書(公開鍵Public Keyを含む公開鍵証明書)を発行する方式を採用しており、市区町村窓口で受け取ることができます。電子証明書はマイナンバーカード(個人番号カード)のICチップに記録されます。発行手数料は無料です。
通常は、初めてマイナンバーカードを作成する際に署名用電子証明書のパスワード(6桁~16桁の英数字)と利用者証明用電子証明書のパスワード(4桁の数字)を設定して、2つの電子証明書がマイナンバーカードに記録された状態で発行されています。
取得していない場合は市区町村受付窓口に発行申請書とマイナンバーカードを提出して記録してもらいます。
電子証明書の再発行
マイナンバーカードの有効期間は発行日から10回目(18歳未満は5回目)の誕生日まで、電子証明書の有効期間は年齢を問わず発行日から5回目の誕生日までです。ただし、マイナンバーカードの有効期間が満了となった時点で、そのカードに記録されている電子証明書の有効期間も満了します。有効期限が過ぎた場合には電子証明書が使えなくなります。
マイナンバーカードまたは電子証明書の有効期限が近づくと有効期限通知書が届きます。新しい電子証明書を発行することを「更新」といいます。
更新は有効期間満了の3か月前から可能です。電子証明書を更新する場合も市区町村受付窓口に発行申請書とマイナンバーカードを提出して記録してもらいます。更新すると、有効期間は更新日から6回目の誕生日までとなります。発行手数料は無料です。
なお、有効期間内であっても、署名用電子証明書には本人の氏名、住所、生年月日、性別が含まれており、引っ越しや婚姻、離婚等をすると電子証明書の記載と住民票の記載内容が異なることになるため失効します。この場合も更新が必要です。利用者証明用電子証明書には、氏名、住所、生年月日、性別は記載されないので失効しません。
5.電子申請に必要な環境と事前準備
パソコンとICカードリーダライタの接続
ICカードについているICチップは、電子ファイルを保存できるカード型の電磁的記録媒体です。
例えば、パソコンにCDやDVDを差す場所があれば直接差して読み込むことができますが、無ければ、USBやBluetoothなどで接続できる外付けのCD/DVDドライブを購入する必要があります。
それと同様に、パソコンにICカードのデータを読み込む機能が無ければ、ICカードのデータをパソコンに読み込む装置である「ICカードリーダライタ」を購入して、USBなどで接続する必要があります。スマホでも可能ですが、パソコン用のICカードリーダ(マイナンバーカード対応タイプ)をおすすめします。
パソコンにICカードリーダライタを接続します。機種によってはドライバをインストールする必要がある場合もあります(接続するだけで自動的にデバイスの準備が完了する場合もある)。
JPKI利用者クライアントソフト
公的個人認証サービス利用者クライアントソフト(JPKI利用者ソフト)は、JPKIを利用した電子申請を行うときにマイナンバーカードに記録された電子証明書を使用して署名を付与するためのソフトです。
JPKI利用者ソフト(exe)を公的個人認証サービスポータルサイトよりダウンロード、保存、実行、インストールします。
ただし、JPKI以外に電子署名の手段を持っている場合はインストール不要です。
初期設定ではICカードリーダライタを自動検出するように設定されていますが、ICカードリーダライタの自動検出ができない場合、PC/SC対応ICカードリーダとして手動で設定をします。
e-Govアカウント
e-Govで利用できるアカウント(e-Govアカウント、GビズID、Microsoftアカウント)を持っていない場合はe-Govアカウントを取得します。個人事業主はGビズID・パスワードを利用することができます。
e-Gov電子申請アプリケーション
e-Gov電子申請アプリケーションは、e-Gov電子申請を使って電子申請をするときに必要となるソフトです。e-Gov電子申請ソフト(exe)をe-Gov電子申請サイトよりダウンロード、保存、実行、インストールします。
電子申請をするには、e-Gov電子申請アプリケーションを起動します。
e-Govアカウントを利用する場合、初回のログイン時に2要素認証(Authenticatorによるスマホ認証)または追加認証(秘密の質問と答え)が必要となります。GビズIDやMicrosoftアカウントの場合は2要素認証・追加認証の設定は不要です。
6.電子申請の手順
電子署名を利用して送信
e-Gov電子申請アプリケーションでログインして、申請する手続きを検索します。そして、申請フォームを必要事項を入力するとともに、添付書類をPDFで添付します。
マイナンバーカードがセットされていることを確認したうえで、申請時に、署名用電子証明書暗証番号(アルファベットは大文字)を入力して電子署名をします。電子署名を付すことによって、手書き署名または押印と同様に、本人が作成した私文書が真正に成立したものと推定されます。
公文書のダウンロード
後日、申請が受理されると、公文書(被保険者証や通知書等)がダウンロードできるようになります。
e-Gov電子申請アプリケーションにログインして、「公文書をダウンロード」でダウンロードをします。ZIPなので解凍をします。
7.補足説明
教育訓練支援給付金の場合
教育訓練支援給付金の失業認定は、就業できる能力があることを確認するため、必ずハローワークに出頭しなければなりません。したがって、教育訓練支援給付金の電子申請はできません。