専門実践教育訓練給付金の金額は教育訓練経費の50%です。ただし、1年間の上限は40万円、6か月の下限は4,001円です。追加給付の条件を満たしたときは教育訓練経費の70%となります。
1.専門実践教育訓練給付金の計算方法
専門実践教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練を受け、修了の見込みをもって受講することで、6か月ごと(支給単位期間ごと)に支給を受けることができます。
専門実践教育訓練給付金の支給額は、専門実践教育訓練を受講するために支払った費用(教育訓練経費)の50%です。例えば、6か月間(支給単位期間)の教育訓練経費が3万円の場合はその50%にあたる15,000円が支給されます。
30,000円×50%=15,000円
ただし、支給額に1円未満の端数が生じた場合、小数点以下を切り捨てて整数とします。教育訓練経費が33,333円の場合は16,666円となります。
33,333円×50%=16,666.5円 → 切り捨て16,666円
2.専門実践教育訓練給付金の上限と下限
支給単位期間
専門実践教育訓練給付金は、受講開始日から6か月ごとの期間(支給単位期間)を単位として計算します。
1年間の上限額は40万円
訓練開始後12か月ごと(連続した2支給単位期間ごと)の給付金は、40万円が上限です。3年間の場合は合計で120万円となります。
専門実践教育訓練給付金の上限
- 教育訓練期間が1年以下の訓練の場合、40万円が上限となります。
- 教育訓練期間が2年以下の訓練の場合、全部で80万円が上限となります。
- 教育訓練期間が3年以下の訓練の場合、全部で120万円が上限となります。
- 教育訓練期間が4年以下の長期訓練の場合、全部で160万円が上限となります(後述)。
12か月間において40万円を超えた場合、給付金は40万円となりますが、その次の12か月間において40万円未満になったとしても、その前の期間で超えた部分は支給されません(繰り越されない)。
6か月の下限額は4,001円
6か月間(支給単位期間)の教育訓練経費が8,001円の場合、その50%は4,000円となりますが、4,000円を超えない場合、専門実践教育訓練給付金は支給されません。
8,001円×50%=4,000円(切り捨て) → 支給されない
4,001円以上の場合に支給されます。6か月間(支給単位期間)の教育訓練経費が8,001円以下の場合は専門実践教育訓練給付金は支給されまず、教育訓練経費が8,002円以上の場合は専門実践教育訓練給付金は支給されます。
専門実践教育訓練給付金の計算
- 6か月間の教育訓練経費が1円~8,001円の場合、その50%が4,000円を超えないので専門実践教育訓練給付金は支給されません。
- 6か月間の教育訓練経費が8,002円以上の場合、その50%(小数点以下切り捨て、年間上限40万円)となります。
3.追加給付の計算
教育訓練経費の70%、年間上限56万円
専門実践教育訓練を修了し、定められた資格の取得等をし、修了した日の翌日から起算して1年以内に一般被保険者等として雇用されている場合(追加給付)は、教育訓練経費の70%となります。小数点以下切り捨てです。
訓練開始後12か月ごと(連続した2支給単位期間ごと)の給付金は56万円が上限です。3年間の場合は合計で168万円となります。
追加給付を含む上限
- 教育訓練期間が1年以下の訓練の場合、56万円が上限となります。
- 教育訓練期間が2年以下の訓練の場合、全部で112万円が上限となります。
- 教育訓練期間が3年以下の訓練の場合、全部で168万円が上限となります。
- 教育訓練期間が4年以下の長期訓練の場合、全部で224万円が上限となります(後述)。
ただし、追加給付については、ある12か月間にかかる教育訓練経費についての支給額が上限56万円に達した場合であっても、その他の支給単位期間においてその教育訓練経費について限度額まで支給対象とします(後述)。
下限4,001円
6か月間の下限は4,001円ですが、50%で4,000円以下であっても、70%で4,001円以上になる場合は支給対象となります。
4.専門実践教育訓練給付金の支給方法
まず、専門実践教育訓練受講中及び修了後に各支給単位期間ごとに50%で支給申請をします。専門実践教育訓練給付金(50%)の支給を決定したときは、その日の翌日から起算して7日以内に、その支給単位期間についての給付金が振り込まれます。
その後、追加給付の要件を満たしたときに別途支給申請をします。追加給付の申請の際にあらためて各支給単位期間ごとに70%として計算をやりなおします。そして、追加給付の支給を決定した日の翌日から起算して7日以内に、すでに支給した額との差額が一括で振り込まれます。
また、申請期限を過ぎてしまったために不支給決定を受けた場合または申請がなかった場合、50%で支給申請をすることはできませんが、追加給付の要件を満たしたときはその金額も含めて教育訓練経費の70%で追加給付の申請をすることができます。
5.教育訓練経費の範囲
訓練期間が3年以内の場合
教育訓練経費とされるのは、専門実践教育訓練給付金の申請者(受講者)本人が自らが教育訓練実施者に対して支払った入学料と受講料の合計です。いずれも消費税込みの金額です。
教育訓練経費=入学料+受講料
入学料とは、対象専門実践教育訓練の受講の開始に際し当該指定教育訓練実施者に納付する入学金または登録料です。また、受講料とは、受講に際して支払った受講費、教科書代及び教材費であって最大3年分の金額です。
訓練期間が3年を超える場合(長期専門実践教育訓練)
2019年(平成31年)4月1日から、4年課程の教育訓練を受講している場合、3年目受講終了時に上限額168万円に、4年目受講相当分として56万円が上乗せされます。専門実践教育訓練給付金の支給額は4年間で160万円、追加給付を含めると224万円となります。
ただし、次の場合は4年目の上乗せの対象外となります。
4年目の上乗せ対象外
- 過去10年以内に専門実践教育訓練を受講したことがある場合
- 高収入の在職者
- 法令改正前に受講を開始した場合
教育訓練経費とはならない費用
申請者(受講者)本人が教育訓練施設に支払う費用であっても、すべて「教育訓練経費」となるわけではありません。教育訓練経費とならない金額を含めて申請し、教育訓練給付金の支給を受けた場合は不正受給となります。
6.支給額の計算の例
事例1:年間上限の考え方
訓練期間2年の専門実践教育訓練を受講し、入学金30万円、半年ごとの受講料30万円の場合
最初の支給単位期間(1年目の前期)の教育訓練経費は60万円、1年目の後期以降は各30万円となります。
専門実践教育訓練給付金は教育訓練経費の50%であり、最初の支給単位期間(1年目の前期)は30万円、1年目の後期以降は各15万円となります。しかし、上記のとおり、年間上限(12か月ごとの上限)は40万円であり、1年目の合計が上限を超えています。
そのため、1年目の後期は10万円に減額して、上限を超えないように支給されることになります。減額された5万円が次の期間に繰り越して支給されることはありません。
さらに、追加給付の条件を満たした場合は70%として計算をしなおします。最初の支給単位期間(1年目の前期)は42万円、1年目の後期以降は各21万円となります。
追加給付の年間上限は56万円であり1年目が上限を超えています。しかし、前述のとおり、追加給付の場合は、年間上限56万円を超えていても減額されることはなく、他の期間が上限に達していなければ上限に達するまで支給されます。つまり、2年間で112万円(56万円×2)まで支給されます。
その結果、専門実践教育訓練給付金の合計は105万円となりますが、すでに70万円が支給されていますので、差額である35万円が一括で支給されることになります。
事例2:奨学金が支給される場合
訓練期間2年の専門実践教育訓練を受講し、入学金10万円、半年ごとの受講料50万円で、教育訓練施設またはその関連団体から給付型奨学金100万円が支給される場合 (1) 入学時に100万円の奨学金が支給される場合 (2) 半年ごとに25万円ずつ計100万円の奨学金が支給される場合
最初の支給単位期間(1年目の前期)の教育訓練経費は60万円、1年目の後期以降は各50万円となります。
専門実践教育訓練給付金は教育訓練経費の50%であり、最初の支給単位期間(1年目の前期)は30万円、1年目の後期以降は各25万円となります。そして、年間上限(12か月ごとの上限)は40万円であり、1年目も2年目も上限を超えています。それぞれの後期(第2期、第4期)は上限を超えないように支給されることになります。
(1) 入学時に100万円の奨学金が支給される場合
教育訓練施設またはその関連団体から支給される奨学金のうち、返済義務が無く教育訓練経費に充当する性質の給付型奨学金の場合、受講者が自らの名で支払った費用とは認められないことから、教育訓練経費から差し引く必要があります。
入学時に100万円の奨学金が支給される場合、第1期に60万円、第2期に40万円が充当され、教育訓練経費から差し引かれます。1年目は年間上限を下回りましたが、2年目は上限を超えたままです。
(2) 半年ごとに25万円ずつ計100万円の奨学金が支給される場合
半年ごとに25万円ずつ充当すると、最初の支給単位期間(1年目の前期)の教育訓練経費は35万円、1年目の後期以降は各25万円となります。専門実践教育訓練給付金は教育訓練経費の50%であり、最初の支給単位期間(1年目の前期)は17.5万円、1年目の後期以降は各12.5万円となります。年間上限を超えないのでこの金額が支給されます。
各支給単位期間に支払われる奨学金の額によって教育訓練給付金の額が異なりますので注意が必要です。
7.支給限度期間による上限
支給限度期間(10年)の間に複数回専門実践教育訓練を受講する場合は、最初の専門実践教育訓練の受講開始日を起点として10年を経過するまでの間で開始した専門実践教育訓練の給付金の合計額の上限は168万円となります。
また、最初の専門実践教育訓練が長期専門実践教育訓練である場合は224万円となります。
8.補足説明
教育訓練支援給付金
専門実践教育訓練給付金と同時に、教育訓練支援給付金を受給する場合の金額の計算方法について、詳しくはこちらをご覧ください。
教育訓練経費の変更承認があった場合
教育訓練経費の変更承認があった場合、変更有効日以降の支給申請において変更後の金額を「教育訓練経費」とします。
ただし、変更前の経費によってすでに申請を行った支給単位期間(給付を受けた場合を含む)の教育訓練経費に変更があったとしても、受講者が教育訓練施設に対して納付した変更前の経費が教育訓練経費となります。変更後の経費を教育訓練経費としてはいけません。
平成29年までに開始した場合
2017年(平成29年)までに専門実践教育訓練を開始した場合は、改正前の規定が適用されます。
支給額は教育訓練経費の40%、上限額は96万円、連続した2支給単位期間ごとの上限額は32万円です。
また、追加給付は教育訓練経費の60%、上限額は144万円、連続した2支給単位期間ごとの上限額は48万円です。