教育訓練給付制度を利用するときはそのデメリットのほか、雇用保険給付のなかで教育訓練給付が最も利用しにくい制度であることを理解しましょう。
1.教育訓練給付制度を正しく知ろう
教育訓練給付金対象講座を実施する教育訓練施設(大学やスクールなど)は給付金をもらえることをアピールするため、できるだけデメリットが分からないように宣伝します。また、教育訓練給付のメリットを必要以上に強調して、リスクを告知していないサイトも散見されます。
当サイトは、教育訓練給付制度を研究するサイトであり、強引に勧誘したり、無理やり資料請求をさせるようなことは絶対にありません。資料請求や受講申し込みをする前に、教育訓練給付は簡単にはもらえないことをしっかりと理解しましょう。
2.受講前に必ず知っておきたいリスク
必ず教育訓練給付金が支払われる保証はありません。また、支給申請しても給付が認められず、授業料等が全額自己負担となることもあります。
全額先払いであること
- Q講座を申し込むときには教育訓練給付金(2割~7割)を差し引いて受講料を支払えば良いのでしょうか?
- A
いいえ。講座を申し込む際は、入学料、受講料その他教育訓練を受けるのに必要な経費を全額100%支払います。教育訓練給付金の割合を差し引いて支払ってはいけません。また、講座を申し込んだらすぐに受け取れるというわけではありません。
一般教育訓練と特定一般教育訓練については、講座を申し込むときに費用を自己負担で全額支払います。全額100%先払いです。講座のカリキュラムをすべて修了した後で、ハローワークに支給申請をすれば教育訓練給付金が振り込まれます。
専門実践教育訓練についても半年分または1年分などの費用を自己負担で全額支払います。全額100%先払いです。6か月間適切に受講した後で、ハローワークに支給申請をすれば6か月分の教育訓練給付金が振り込まれます。
- 一般教育訓練給付金、一般教育訓練給付制度をわかりやすく解説します
- 特定一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付制度をわかりやすく解説します
- 専門実践教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付制度をわかりやすく解説します
先払いをしていない金額(支給申請時点での未納の金額)については給付金の計算対象外です。支給申請後に支払った金額は対象外です。
受講しても給付金をもらえないことがあること
- Q受講すれば教育訓練給付金は必ずもらえるのでしょうか?
- A
いいえ、教育訓練給付をもらえる保証はまったくありません。教育訓練を受講しても教育訓練給付をまったくもらえないこともあります。そのような場合であっても入学料や授業料等が返金されることは絶対にありません。
修了または修了見込みが必要
教育訓練を受講するだけで教育訓練給付が支給されるわけではありません。教育訓練を修了するかまたは修了の見込みをもって受講しなければなりません。
「修了」とは、教育訓練施設が定める修了認定基準(定期試験の評価、出席率、課題の提出などの基準)をクリアすることを言います。単に出席するだけではダメです。カンニングや不正行為、代理の出席は適切な修了ではありません。
教育訓練を修了しなければ、給付金は1円ももらえません。入学料や授業料等は全額自己負担となります。
給付金の途中打ち切り
専門実践教育訓練給付金は半年ごとに支給されますが、半年ごとに修了見込み、つまり教育訓練施設が定める受講認定基準をクリアしなければなりません。出席していても、6か月間の成績が不良の場合は給付金が支給されないだけでなく、その後の支給も差し止めとなります。卒業までの授業料等は全額自己負担となります。
仮に、補講等により教育訓練を修了できたとしても、途中で打ち切りとなった専門実践教育訓練給付金がさかのぼって支給されることはありません。
また、教育訓練支援給付金は2か月ごとに支給される生活支援の給付金ですが、原則として出席率8割以上でなければ支給されません。1度でも出席率が悪ければ給付金が支給されないだけでなく、その後の支給も差し止めとなります。その後、教育訓練を修了できたとしても、途中で打ち切りとなった教育訓練支援給付金がさかのぼって支給されることはありません。
途中で留年、休学、退学すると給付金が打ち切りとなります。当初の予定の訓練期間で修了できる見込みが無くなった時点で打ち切りとなります。
指定の取消しに注意
教育訓練給付は、厚生労働大臣があらかじめ指定する「教育訓練給付金対象講座」を受講しなければなりません。
しかし、その講座が厚生労働省の指定基準に合致しなくなった場合は指定が取消されることがあります。指定の取り消しがあった場合、給付金は支給されません。支払い済みの入学料や授業料等が返金されることは絶対にありません。教育訓練の実績、信頼のある学校(スクール)を選びましょう。
支払った金額がすべて対象になるとは限らないこと
- Q教育訓練施設に対して支払った費用はすべて教育訓練給付金の対象ですか?
- A
いいえ。教育訓練経費の範囲外の経費は給付金の対象外なので、全額自己負担です。また、教育訓練給付金として計算した金額がそのまま支給されないこともあります。
教育訓練経費の対象外に注意
教育訓練給付金の対象となる教育訓練経費は入学料と受講料だけです。
検定試験の受験料、補助教材費、交通費は対象外です。補講・追試等にかかる追加的な経費は教育訓練経費に含まれません。クレジット払いで、クレジット会社に支払う分割手数料(金利)も対象外です。
奨学金、割引や入学金免除があった場合は、差し引いた後の金額が対象となります。
勤務先の会社などが本人の代わりに支払った金額や、手当などの名目で入学料または受講料を補助する場合も、その金額は対象外なので教育訓練経費から差し引いて申請しなければなりません。
2つ以上は不可
同時に複数の教育訓練講座を受講することは可能ですが、同時に複数の教育訓練講座について支給申請を行うことはできません。申請者がいずれか1つを選択して支給申請します。支給申請をしなかったものは全額自己負担となります。
教育訓練給付金の上限、下限
それぞれの教育訓練給付金には上限額があります。教育訓練給付金として計算した金額が上限を超えた場合、超えた部分は支給されません。また、教育訓練給付金として計算した金額が4,000円以下の場合は支給されません。教育訓練経費対象外の金額を差し引いた結果、4,000円以下となった場合も支給されません。
誰でももらえるわけではないこと
- Q教育訓練講座を受講して適切に修了すれば誰でも給付金をもらえるのでしょうか?
- A
いいえ。教育訓練給付金の支給の対象となるのは、教育訓練給付対象者が支給要件期間を満たしたうえで、その他所定の条件を満たした場合に限られます。
雇用保険に入っている人または入っていた人だけが対象
教育訓練給付金の支給を受けるには、教育訓練給付対象者(在職者または離職1年以内)が一定の期間、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として加入していた実績がある場合に限られます。いままでに勤務していた会社が雇用保険の加入手続きを怠っていた場合は対象とはなりません。また、他の保険(健康保険・年金・労災保険など)とは加入できる条件が異なります。
教育訓練給付金の支給要件を満たしていないにもかかわらず、誰でも教育訓練給付金をもらえるものと勝手に勘違いして申し込みをする人がいるようです。教育訓練を受講する前には必ず、ハローワークで支給要件照会を行い、自分が教育訓練給付の支給要件を満たしていることを確認しましょう。
なお、一般教育訓練を実施する教育訓練施設の中には、申し込み時に支給要件回答書の提出を求める場合もあります。しかし、支給要件回答書は支給要件を満たしていることの証明書ではないので、支給要件を満たしているとの回答があったとしても教育訓練給付金をもらえないこともあります。
他人に譲渡できないこと
教育訓練給付金の支給を受けられるのは、教育訓練給付金の支給対象者となっている本人が教育訓練を受講し、教育訓練経費を支払った場合に限られます。教育訓練を受ける権利や教育訓練給付金を受け取る権利を第三者に譲渡することはできません。
本人の代わりに家族や親族が受講してはいけません。また、本人の代わりに他人が教育訓練経費を支払った場合も対象とはなりません。本人の代わりに事業主が経費を負担した場合はその金額を差し引いて支給申請をしなければなりません。教育訓練の申し込み者、実際に講義に出席する人、領収書の名義、教育訓練給付金の振込先口座の名義は、すべて本人でなければなりません。
バレた場合は不正受給処分を受けます。
3.教育訓練給付の支給を受けたときのデメリット
受給すると3年間受給できなくなること
- Q教育訓練給付金を受給した直後に、別の教育訓練を受講すると教育訓練給付金を受給することはできますか?
- A
いいえ。教育訓練給付金を受給すると最低でも3年間は受給することができなくなります。安易に教育訓練を受講してはいけません。
教育訓練給付金の受給に回数制限はありませんが、一度、教育訓練給付金の支給を受けると、その支給決定日から3年が経過しなければ支給されません。専門実践教育訓練給付金のように複数回支給される給付金の場合は、最終の支給決定日から3年が経過しなければ支給されません。
必要もないのに安易に教育訓練を受けてしまうと、教育訓練給付金をもらいたい時にもらえなくなってしまいます。また、過去に教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合、前回の教育訓練の受講開始日以降にさらに3年間雇用保険に加入する必要があります。
教育訓練支援給付金を受給できなくなる
- Q教育訓練支援給付金は何度でも受給できますか?
- A
いいえ。一度でも教育訓練給付金・教育訓練支援給付金を受給すると二度と教育訓練支援給付金を受給することができなくなります。
教育訓練給付金(一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金)の受給に回数制限はありませんが、教育訓練支援給付金は人生で1回限りです。一度でも教育訓練支援給付金の支給を受けると二度と受給することができなくなります。
さらに、一度でも教育訓練給付金(一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金)を受給した場合も、教育訓練支援給付金を受給することができなくなります。
そのため、安易に教育訓練給付金の支給を受けてしまうと、教育訓練支援給付金を受給したことが無くても、失業したときに教育訓練支援給付金を受給することができなくなります。
不正の意思が無くても不正受給処分を受けること
- Q不正受給になるとは思わなかったし、そんな決まりがあるなんて知らなかったのですが、それでも不正受給処分の対象になるのですか?
- A
はい。「知らなかった」という言い訳は一切通用しません。教育訓練給付の対象でないにもかかわらず支給申請の手続きをすると問答無用で不正受給処分を受けます。
偽りその他不正の行為により教育訓練給付金の支給を受けた、または受けようとした場合、不正の行為であることを知らなかった(教育訓練施設の指示に従った、または騙された)としても不正受給処分の対象となります。教育訓練給付金の支給申請はすべて自己責任です。当該教育訓練給付金を受けることができなくなるばかりでなく、その後の給付金も差し止めとなります。
また、不正に受給した金額の返還(返還命令)と返還額の2倍の金額の納付(納付命令)を命ぜられ、特に悪質な場合は詐欺罪として刑罰に処せられることがあります。不正受給処分を受けると、最低でも3年間は教育訓練給付金を受けることができなくなります。
教育訓練経費の対象外となっている経費を含めて計算した金額で支給申請をした場合も不正受給となります。「教育訓練給付金支給申請書記載に当たっての注意事項」をよく読んで支給申請書を記入しましょう。
社会保険の収入に含まれることがある
- Q教育訓練給付は非課税だから、社会保険についても「収入」に含まれないという解釈であってますか?
- A
いいえ。専門実践教育訓練給付金と教育訓練支援給付金については、非課税であっても被扶養者の「年間収入」に含まれます。
教育訓練給付については種類を問わず、所得税、相続税、住民税等の税金はすべて非課税です。確定申告も不要です。また、税法上の配偶者控除や扶養控除の「所得金額」に含まれません。
しかし、一時金ではない給付は、非課税であっても社会保険(健康保険)の「年間収入」に含まれます。教育訓練給付のうち専門実践教育訓練給付金と教育訓練支援給付金については恒常的、継続的に得られる収入に該当するため、社会保険の被扶養者の「年間収入」に含まれます。
会社にばれるかどうか
- Q教育訓練給付の支給を受けていることを会社にばれることはありますか?
- A
原則として会社に知らされることはありませんが、専門実践教育訓練給付金の追加給付については事業主の証明が必要となります。
基本的に、教育訓練給付の受給は完全に個人情報であり、教育訓練給付を受給してもそれを本人が誰かに言わない限り、他人に知られることはありません。事業主(勤務先の会社)や同僚などに一切知られることなく受給することができます。もちろんハローワークから事業主へ連絡されることもありません。
ただし、専門実践教育訓練給付金の追加給付(給付率を50%から70%にする給付)は、支給申請の際に「事業主の証明」を必要とします。働きながら専門実践教育訓練を受講した場合は現在の職場の証明が必要です。
なお、働きながら教育訓練を受講すると、本人の勤務態度や言動、SNSなどでバレる可能性はありますが、それは自己責任です。万が一、会社にバレた場合、「労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」との禁止規定はありませんので、不利益な取扱いを受けても事業主に対する罰則はありません。
4.宣伝を信じてはいけない
広告募集等において誤解しやすい表現を用いることは厚生労働省により禁止されています。禁止されている宣伝をした場合は指定取り消しとなります。内容の良さを宣伝せず、ことさら受講料が安くなることを強調する講座はまともな教育訓練ではないので、絶対に申し込んではいけません。
強引な勧誘や不適切な宣伝を行っている講座を見つけたら通報しましょう。
教育訓練給付金の「指定校」は存在しません
- Q「本校は厚生労働省の指定校である」「厚生労働省の委託を受けた訓練である」といった宣伝は信じていいのでしょうか?
- A
いいえ。厚生労働省が特定の学校に対して「指定」することは絶対にありません。また、職業訓練とは異なり、厚生労働省が特定の学校に教育訓練を委託することは絶対にありません。
教育訓練給付金の支給を受けるには、厚生労働大臣が指定する教育訓練給付金対象講座を受講しなければなりません。
厚生労働大臣が指定するのはあくまで「講座」であって、「学校」に対して指定することは絶対にありません。教育訓練給付金対象講座の指定を受けているからといって、その講座を実施している学校の活動のすべてを厚生労働省が審査したわけではありません。
「指定校」のように、厚生労働省が特定の学校に対してお墨付きを与えたかのような宣伝をすることは禁止されています。教育訓練給付金の「指定校」は存在しません。「厚生労働省の指定を受けている学校」「厚生労働大臣指定校」といった表現は明らかなルール違反であり、指定校どころか、指定取り消しの対象となります。
また、各教育訓練施設の広告や宣伝について、厚生労働省は一切関知していません。厚生労働省から各教育訓練施設に対して受講生の募集をお願いしたり、教育訓練を委託したりすることは一切ありません。教育訓練を受講するか否かは本人の自由であり、受講する義務はまったくありませんし、受講しなかったことによるペナルティも一切ありません。
不適切な宣伝を行っている講座は絶対に申し込んではいけません。
教育訓練施設の説明を信じてはいけない
- Q「本人負担は~円となります」「最大~%返金されます」といった宣伝は信じていいのでしょうか?
- A
いいえ。本人負担額の軽減や国からの返金を約束するかのような表現は禁止されています。このような宣伝をする講座は絶対に申し込んではいけません。
自己負担が少なくなるとの宣伝は間違い
教育訓練給付の支給申請はすべて自己責任であり、教育訓練施設が保証できるものではありません。
上記のとおり、教育訓練給付金の支給対象かどうかは雇用保険の加入実績によるので、雇用保険を管理している厚生労働省・ハローワークにしか分かりません。受講申し込みをする前に、教育訓練施設がそれぞれの受講者について教育訓練給付金の支給対象者に該当するかどうかを把握することは不可能であり、本人負担が減るかどうか、国から返金されるかどうかは分かりません。
また、支給対象者に該当したとしても、修了または修了見込みの認定を受けなければ支給申請をすることはできません。
宣伝を信用して、教育訓練給付を受けられるものと信じて申し込みをした後で、支給対象外であることが判明したとしても、授業料は返ってきません。例えば、「受講料10万円のうち2万円返金され実質8万円となる」「国から最大70%返還される」などといった宣伝は禁止されています。
実質ゼロ円、パソコン無料進呈はウソです
教育訓練給付は本人が支払った経費の一部を支給するものです。
返済不要の奨学金を得たり、特別な割引を受けて本人の負担がない場合、教育訓練給付金の支給申請をすることができません。教育訓練給付金を支給されることによって自己負担が無くなるのであれば、それは不正受給です。パソコン無料進呈を受けた場合は、その金額を教育訓練経費から差し引いて支給申請をしなければなりません。
また、教育訓練給付の支給を受ける人と受けない人との間で差を設けてはならず、著しく受講料が安価になることを強調した広告は禁止されています。
ご利用は計画的に
社会人2年目または3年目の会社員に対して、教育訓練の受講をすすめる広告も見受けられます。
確かに、新卒で会社に就職して一般被保険者として1年以上または2年以上勤務すると、教育訓練給付金の支給を受けることができます。しかし、何も考えずに安易に教育訓練を受けようと思ってはいけません。
上記のとおり、一度、教育訓練給付金を受給すると最低でも3年間は教育訓練給付金を受給することができなくなるだけでなく、将来失業したときの教育訓練支援給付金を受給する権利を失います。教育訓練給付を無意味に受給してはいけません。将来の人生設計を考えたうえで、キャリアアップが必要と思われる時期が来たら受給するようにしましょう。
最大70%だと思ってはいけない
専門実践教育訓練給付金の場合、教育訓練修了後1年以内に目標として設定した資格を取得等し、雇用保険の被保険者となる就職をした場合、追加給付により教育訓練経費の70%が支給されます。そのため、「最大70%」などと宣伝している広告もありますが、必ず「70%支給される」と思ってはいけません。
追加給付の条件の一つである「資格の取得等」は目標となる資格試験に一発合格しなければならず、一度でも不合格となった場合は対象外となります。また、就職が事実であったとしても、就職先の事業主(在職者の場合は現在の職場)の証明が無ければ支給申請をすることができません。そのため、支給申請の際に会社にバレることになります。そして、事業主が追加給付の申請に協力する義務はありません。
また、雇用保険の被保険者資格を取得できない公務員等として就職した場合は支給対象とはなりません。
このように、追加給付を受けられる条件はハードルが高く、専門実践教育訓練給付金は教育訓練経費の「50%」だと思っておいたほうがよいです。
5.申請手続きは簡単ではない
手続きが煩雑であること
- Q教育訓練給付の支給を受ける手続きは簡単ですか?
- A
いいえ。教育訓練給付は、雇用保険給付のなかで最も支給申請の手続きが難しく、講座を受ける前にも手続きが必要となる場合があります。
教育訓練給付制度を利用することの申告
教育訓練施設は、教育訓練給付制度の利用を希望する受講者に対して、修了証明書や支給申請用の領収書等の書類を発行する義務があります。
そのため、教育訓練の受講申し込みをするときには、あらかじめ教育訓練施設に対して教育訓練給付制度を利用することを申告しなければなりません。事前に教育訓練給付制度を利用することを伝えていなかった場合、修了後に支給申請をすることができない場合があります。その場合であっても授業料は返金されません。
また、一般教育訓練を申し込む際に「支給要件回答書」の提出を求められることがあります。支給要件回答書はハローワークで支給要件照会をすると交付される書類です。
受給資格確認手続き
特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金の支給を受けるためには、受講開始前に訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、ジョブ・カードを作成しなければなりません。
受講予定の教育訓練が本人にとってキャリアアップの役に立つものかどうかを事前に審査されます。受講開始の1か月前までに「受給資格確認手続き」をしなければなりませんが、受給資格確認の際には担当のキャリアコンサルタントのコメントが記載されたジョブ・カードを提出します。
書類が多い
受給資格確認手続きや支給申請手続きでは、ハローワークに提出する書類が多いです。郵送で提出することもできますが、提出書類に1つでも不備があると返送されます。また、ハローワークから交付された書類は、本人が自己責任で保管しなければなりません。なくしたときは、すみやかにハローワークに申し出て再交付を受けます。
領収書の再発行は、必ず本人が教育訓練実施者に対して問い合わせをしなければなりません。ハローワークが教育訓練実施者に対して問い合わせ等を行うことはありません。
ハローワークに行くこと
- Qわざわざハローワークに行かなければならないのでしょうか?
- A
はい。相談したいことや分からないことがあればハローワークに聞いてください。給付金がほしければハローワークに出頭してください。
郵送でもよいが時間がかかる
教育訓練給付の手続きは、本人の住居所を管轄するハローワークで行います。
雇用保険の過去の加入実績は個人情報であるため、本人が身分証明書を持ってハローワークに行って相談や手続きをしなければなりません。最近は感染症予防のため、在職者に限り郵送により支給申請を行うことが推奨されています(郵送料は自己負担)。郵送の場合、直接ハローワークに行くより手続きに時間がかかるだけでなく、提出した書類に不備があれば返送されます。
授業を欠席せざるを得ない場合がある
専門実践教育訓練給付金は6か月ごと、教育訓練支援給付金は2か月ごとに支給申請手続を行います。
特に、教育訓練支援給付金については、失業認定日(ハローワーク出頭日)と受講日が重なった場合であっても、受講日の変更が困難である場合以外は失業認定日の変更は認められません。授業を受けたくても欠席せざるを得ない場合があります。
1人で全部やることの不安感
- Q教育訓練給付の手続きは本当に1人でやらないといけないのか?誰か助けてくれる人はいないのでしょうか?
- A
はい。教育訓練給付の受け取りはすべて自己責任です。原則として本人がすべての手続きを行い、ハローワークへの問い合わせも自分でやらなければなりません。
教育訓練給付については本人が第三者に言わない限り、他人に知られることはありません。その代わり、教育訓練給付に関する相談や手続きはハローワークですべて本人が行わなければなりません。雇用保険の加入の手続きは会社がやってくれますが、教育訓練給付は無関係です。
また、不正受給防止の観点から教育訓練を実施する教育訓練施設が手続きの代行をすることは禁止されています。
社会保険労務士でない限り、他人の給付金についてアドバイスしたことによって何らかの事故があっても責任を取ることができませんから、「分からない」「教えてくれ」と訴えたところで相談に乗ってくれる人も誰もいません。当サイトも、相談を受けたり手続きを代行することは絶対にありません。質問も一切受け付けておりません。
なんでもかんでも誰かに頼ろうとせず、積極的に1人で調べて、1人で行動して、1人で頑張って手続きをしましょう。
6.補足説明
法令の改正に注意
雇用保険に関する法令は毎年改正されています。教育訓練給付に関する法令もほぼ毎年改正されています。しかし、ネット上にある情報の多くは最新の改正に対応できていません。古い情報にはご注意ください。また、教育訓練給付専門ではないサイトの説明は不正確であるものが多いので、信用してはいけません。
教育訓練支援給付金は暫定措置であり、今後も継続して実施される保証はありません。
年齢計算のずれに注意
雇用保険法の年齢は、誕生日の前日において満年齢に達するものとして計算します。一般的な感覚と1日ずれますので注意が必要です。
例えば「45歳」になる日は45回目の誕生日の前日です。「受講開始日において45歳未満」とは、45回目の誕生日の前々日までに受講を開始するという意味です。「65歳に達する日」とは65回目の誕生日の前日です。65回目の誕生日の当日ではなく前日に高年齢被保険者になります。