教育訓練支援給付金は2027年(令和9年)3月31日までに受講を開始した場合に支給されますが、2027年(令和9年)4月1日以降に受講を開始した場合に支給されるかどうかは全く決まっていません。
1.教育訓練支援給付金の時限措置について
教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金は、専門実践教育訓練給付金の支給を受けている45歳未満の失業者が、雇用保険の基本手当を受けられない期間について、基本手当の60%(令和7年3月末までに受講を開始した場合は基本手当の80%)が支給される制度です。
時限措置について
教育訓練支援給付金は、雇用保険法附則第11条の2第1項の規定により2027年(令和9年)3月31日までに専門実践教育訓練の受講を「開始」した場合に支給されます。
なお、時限措置は教育訓練支援給付金だけであって、教育訓練給付金(一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金)は無関係です。
雇用保険法 附則第11条の2第1項前段(令和7年4月1日施行)
教育訓練支援給付金は、教育訓練給付対象者(前条に規定する者のうち、第六十条の二第一項第二号に該当する者であつて、厚生労働省令で定めるものに限る。)であつて、厚生労働省令で定めるところにより、令和九年三月三十一日以前に同項に規定する教育訓練であつて厚生労働省令で定めるものを開始したもの(当該教育訓練を開始した日における年齢が四十五歳未満であるものに限る。)が、当該教育訓練を受けている日(当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者によりその旨の証明がされた日に限る。)のうち失業している日(失業していることについての認定を受けた日に限る。)について支給する。
2.なくなるかもしれません
時限措置
このように、臨時的に必要とされる施策としてあらかじめ有効期間を限定して定めることを時限立法または時限措置といいます。教育訓練支援給付金の制度は時限措置です。
上記の規定が2027年(令和9年)3月31日までに延長されない場合、教育訓練支援給付金の制度は廃止となり、2027年(令和9年)4月1日以降に専門実践教育訓練の受講を開始した場合は教育訓練支援給付金が支給されないことになります(専門実践教育訓練給付金のみ支給される)。

廃止前に受講を開始すればよい
教育訓練支援給付金の支給の有無は「受講開始日」が基準です。
廃止された場合(時限措置が延長されない場合)であっても、2027年(令和9年)3月31日までに受講を開始すればよく、教育訓練の修了が2027年(令和9年)4月1日以降であってもかまいません。もちろん、2027年(令和9年)4月1日以降も支給されますのでご安心ください。

2026年度(令和8年度)入学生は卒業まで給付されます。例えば、4月入学の場合、2026年度(令和8年)4月入学であれば卒業するまで給付されます。

3.だまされてはいけません
「時限措置が終わったら一切給付されなくなる」といった誤った情報を信じてはいけません。期限までに受講を開始していれば、時限措置が終わった後も支給されますからご安心ください。
4.時限措置となっている背景
教育訓練支援給付金は、45歳未満の若年離職者・非正規雇用労働者のキャリアチェンジを目的としています。しかし、支給期間が長期にわたり高額になることと、定期的に費用対効果の検証と制度の見直しを行う必要があることから時限措置となっています。
平成26年創設:若年離職者対策
教育訓練支援給付金の制度は2014年(平成26年)10月1日に創設されました(当時は基本手当の50%)。
この当時、若年の非正規雇用労働者が増加していたことが問題となっていました。2013年(平成25年)6月14日の閣議決定「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」では、「非正規雇用労働者である若者等がキャリアアップ・キャリアチェンジできるよう、資格取得等につながる自発的な教育訓練の受講を始め、社会人の学び直しを促進するために雇用保険制度を見直す」とされました。
そこで、若年離職者の中長期的なキャリア形成のための学び直しを支援するための施策として「教育訓練支援給付金」が創設されました。
このとき、上記の目的(非正規雇用労働者対策)に反する濫給が懸念されたことと、支援措置として本当に適切かどうかを議論する必要があることから、日本再興戦略をふまえて2019年(平成31年)3月31日までの5年間の時限措置とされました。そして、施策の効果と雇用情勢の変化を見ながら延長するかどうかを再検討することとなりました。
2019年1回目の延長:働き方改革
少子高齢化により労働力人口が減少するなか、働き方改革を強力に進めていくことが重要との政府方針により、教育訓練支援給付金の制度を3年間延長し、2022年(令和4年)3月31日までとなりました。
ただし、雇用保険制度本来の役割やその置かれた状況をふまえて、教育訓練給付の実施状況について定期的に把握し、その状況に応じて適切な時期に見直す必要があるとして時限措置とされました。
また、2018年(平成30年)1月1日以降に受講開始する専門実践教育訓練から、教育訓練支援給付金の支給額は基本手当の80%となりました。
2022年2回目の延長:コロナ禍
2019年(令和元年)に発生した新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、国内でも緊急事態宣言が発令されたことに伴い完全失業率が増加しました。
その後、コロナ禍からの経済回復の兆しは見られたものの、その途上であるとして教育訓練支援給付金の制度をさらに3年間延長し、2025年(令和7年)3月31日までとなりました。
ただし、専門実践教育訓練の指定講座と実際の利用者に偏りがあることから、制度趣旨に沿った効果を上げているかの検証を行い、不断の見直しを行う必要があるとして時限措置とされました。
2025年3回目の延長
教育訓練支援給付金の制度をさらに2年間延長し、2027年(令和9年)3月31日までとなりました。ただし、給付率が60%となりました。
- 2025年(令和7年)3月31日までに受講を開始した場合は基本手当の80%
- 2025年(令和7年)4月1日以降に受講を開始した場合は基本手当の60%
5.延長はいつごろ決まるのか?
「2022年(令和4年)3月31日まで」を「2025年(令和7年)3月31日まで」とする改正は、2022年(令和4年)2月1日に閣議決定されました。その後、国会で審議したのち、3月17日に衆議院で可決、3月30日に参議院で可決され、正式に公布されたのは3月31日、つまり期限の当日でした。
このように教育訓練支援給付金の延長は期限ぎりぎりに決まるので、専門実践教育訓練を受講しようと考えている人からは「廃止されるのか?」「令和4年以降どうなるのか?」といった声が聞かれました。
離職者の生活がかかっているのですから、もう少し早く決めてほしいものです。
2027年(令和9年)3月まで延長されたのですが、今後さらに延長されるかどうかはまだ分かりません。延長が保証されているわけでもありません。