社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「失業等給付の定義、通則」です。この分野からは過去に平成23年択一問7選択肢C、平成22年択一問7選択肢B、平成16年択一問7選択肢A、平成14年択一問1選択肢A、平成11年択一問1選択肢Eで出題されています。
1.社労士過去問分析
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重要論点チェックテスト
「失業等給付の定義、通則」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q教育訓練給付は雇用保険二事業ですか?
- A
いいえ。労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことは、労働者の生活及び雇用の安定を図ることを目的とする失業等給付です。失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4つです。
- Q雇用保険の失業等給付を、在職中の労働者が受給することはありますか?
- A
はい。教育訓練給付のように、労働者の生活及び雇用の安定を図ることを目的とする失業等給付は離職者(失業者)だけでなく、在職者に対して行う給付もあります。
- Q教育訓練給付を受ける権利を家族に譲り渡しても良いですか?
- A
いいえ。失業等給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができません。他人が給付金を受給することはできませんし、他人が本人の代わりに教育訓練を受講することもできません。
- Q支給を受けた教育訓練給付金は所得税や住民税の課税対象となりますか?
- A
いいえ。租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができません。
社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.平成23年択一問7選択肢C
平成23年(2011年実施、第43回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Cです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋) 〔問 7〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 C 教育訓練給付の支給を受ける権利は、他人に譲り渡し、又は担保に供することができない。
正解
選択肢Cの記述は正しいです。
解説
雇用保険の失業等給付の支給を受ける権利は、他人に譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができません。これを「受給権の保護」といいます。
失業等給付には教育訓練給付も含まれますので、教育訓練給付の支給を受ける権利も他人に譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができません。このことは雇用保険法第11条に規定されており、選択肢Cの記述は正しいと言えます。
3.平成22年択一問7選択肢B
平成22年(2010年実施、第42回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Bです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Bのみ抜粋) 〔問 7〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 B 失業等給付は、求職者給付、教育訓練給付及び雇用継続給付の3つである。
正解
選択肢Bの記述は誤りです。
解説
雇用保険は政府が管掌する保険事業であり、失業等給付、育児休業給付、雇用保険二事業を行います。
教育訓練給付は失業等給付の一つです。
失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付の4つです(雇用保険法第10条第1項)。したがって、選択肢Bの記述は誤りです。
4.平成16年択一問7選択肢A
平成16年(2004年実施、第36回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋) 〔問 7〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 A 現に被保険者である者に対して支給された教育訓練給付及び雇用継続給付は、租税その他の公課の対象とすることができる。
正解
選択肢Aの記述は誤りです。
解説
教育訓練給付は失業等給付の一つなので(雇用保険法第10条第1項)、失業等給付に共通する規定は当然、教育訓練給付にも適用されます。
失業等給付として支給を受けた金銭は租税その他の公課の対象とすることはできません。租税は税金のことであり、公課は健康保険料や社会保険料など国や地方公共団体により賦課徴収される負担金のことです。
教育訓練給付も租税公課の対象とすることができません。このことは、雇用保険法第12条に規定されており、「租税その他の公課の対象とすることができる」とする選択肢Aの記述は誤りです。
5.平成14年択一問1選択肢A
平成14年(2002年実施、第34回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問1の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋) 〔問 1〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 A 雇用保険では、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行う失業等給付のほか、失業の有無を問わず労働者の自発的な教育訓練の受講を支援する教育訓練給付と、雇用安定、能力開発、雇用福祉のいわゆる三事業を行っている。
正解
選択肢Aの記述は誤りです。
解説
上記のように、失業等給付には教育訓練給付も含まれるので、「失業等給付のほか、教育訓練給付」とする選択肢Aの記述は誤りです。
雇用保険法第1条の目的規定や、第3条の規定のように、雇用保険では、失業等給付のほか、育児休業給付、雇用保険二事業を行います。
次のような記述であれば正しいです。
雇用保険では、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合及び失業の有無を問わず労働者が自発的に職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行う失業等給付のほか、労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付を行う育児休業給付と、雇用安定事業及び能力開発事業のいわゆる二事業を行っている。
6.平成11年択一問1選択肢E
平成11年(1999年実施、第31回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問1の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 1〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 E 教育訓練給付を受ける権利は、求職者給付を受ける権利と異なり、差し押さえられることがある。
正解
選択肢Eの記述は誤りです。
解説
失業等給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができませんので、教育訓練給付を受ける権利も差し押さえることはできません。このことは、雇用保険法第11条に規定されており、「差し押さえられることがある」とする選択肢Eの記述は誤りです。