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旅館、料理店、飲食店、接客業、娯楽場と雇用保険、教育訓練給付 _ pr
雇用保険の被保険者

旅館、料理店、飲食店、接客業、娯楽場と雇用保険、教育訓練給付

接客業または娯楽場の事業は、自分の店舗を運営する立場であれば雇用保険の対象とはなりません。また、客室や客席を借りて接客の請負をしているだけの接客員も労働者ではありません。

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1.雇用か業務請負か

旅館、料理店、飲食店、その他接客業または娯楽場の事業に雇用される者は、事業主と雇用関係が存在する限り、雇用保険の被保険者となります。しかし、業務を請け負っているだけの場合は被保険者とはなりません。

雇用は、労働者が事業主の指揮命令の下で労働に従事し、事業主がこれに対してその報酬を支払う契約であり(民法第623条)、一般的には勤務時間や出来高に応じて給与を支払います。そのため、両者には使用従属関係があり、事業主は労働者の勤務状況を管理し、給与計算を行います。

これに対して、請負は、請負人が発注された仕事をし、注文者がその仕事に対して報酬を支払う契約であり(民法第632条)、両者は対等です。最終的な成果物に対して報酬を支払うため、仕事完成に至るまでの勤務状況は管理されません。

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2.接客業または娯楽場の事業に雇用される者

旅館、料理店、飲食店

旅館、料理店、飲食店は、「日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められ」、1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入することができる事業です(労働基準法第32条の5、労働基準法施行規則第12条の5)。

オーナーである店主は労働者ではありませんが、従業員は名称のいかんを問わず原則として労働者であり、雇用関係が認められます。

セラピスト

エステティック業やリラクゼーション業のセラピストも会社員と同様の扱いであれば雇用保険法は適用されます。

しかし、出勤日や出勤時間に拘束が無いこと、出勤指示を断ることができること、完全出来高払いであること、消耗品の費用が自己負担であることなど、時間的に拘束していないと認められる場合は業務請負とされます。

接待サービス

キャバクラやパブのような接待(特定の客に対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことにより歓楽的雰囲気を醸し出す接客行為)の場合、接客係の者が、雇用されている労働者か、それとも業務請負の個人事業主かが問題となります。

労働基準監督署のホステスやキャストに関する事例では、おおむね、支配人から出勤の指示があったり、出勤がほぼ強制されている状況であれば雇用とされているようです。逆に、支配人からの出勤の指示を自由に断ることができれば業務請負とされるケースが多いようです。

書面による雇用契約書が無くても、出勤義務があり、事業主の支配と指揮監督を受けて、その規律のもとに労働を提供し、それに基づいて報酬が算出され、欠勤や損害について何らかの制裁を受ける場合は、雇用関係があると判断されます。

雇用関係がある場合であっても、チップは、接客係、運転手等が客から直接もらう金銭であって、事業主が労務の対価として支払うものではないので賃金とは認められません。ただし、固定給はもちろん、チップ、チケット代等の名目であっても一度事業主の手を通して再分配されるものはすべて賃金とみなされます。

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3.修行中の者

有償または無償の教育を受けながら資格を取得する場合は昼間学生なので雇用保険の適用除外です。しかし、勤務中の研修は労働なので修行中であっても雇用です。

料理の修行中の者

修行中や見習い期間中、試用期間中など名称のいかんを問わず、一人前の労働者でなくても雇用保険法は適用されます。見習いのバイトであっても、出勤して賃金を得て生活をしている場合は雇用関係があると言えます。

調理の見習いであっても、勤務時間中に調理場において調理全般の補助作業を行い、食事の提供にかかわる作業に従事し、清掃等も行うことから労働者と言えます。なお、調理師専門学校の学生は昼間学生なので労働者ではありません。指定を受ければ教育訓練給付金の対象ともなりうる教育訓練です。

舞妓、芸妓

京都の舞妓さんは「芸妓」になる前の修行中の人ですが、接客よりも踊りや芸の教育訓練がメインなので派遣労働者とは異なります。さらに、所属する施設(置屋と呼ばれる)が家賃や食費などの生活費や教育訓練にかかる費用を全額負担して、本人は無収入です。そのため、全寮制の学校で無償教育を受けながら資格を取ろうとしている昼間学生と同じ扱いであり「労働者ではない」とされています(接客に関しては児童福祉法等が適用される可能性がある)。

なお、舞妓の修行はその教育訓練経費を本人が負担していないので教育訓練の指定基準を満たさず、教育訓練給付金の支給対象ではありません。

ちなみに、教育訓練を修了した芸妓は個人事業主なので、雇用保険の被保険者とはなりません。

4.接客業または娯楽場の事業を営む者

事業主との間に雇用関係のない者は被保険者となりません。例えば、事業主に店舗の家賃を支払って、その店舗で飲食店を営む場合は雇用関係ではなく賃貸借契約を結んでいるだけなので、被保険者とはなりません。

また、場所または衣類の賃借の料金、食費等、その者の稼働に関係のない一定額を事業主に支払い、自営業若しくは自前で営業しているものと認められる者は被保険者となりません。

5.教育訓練給付について

教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。労働者性が認められれば教育訓練給付対象者となります。

ただし、現在労働者でない場合であっても過去1年以内に労働者だった人は雇用保険に加入した可能性があるので教育訓練給付を受けられることがあります。