電子申請、郵送、代理人による申請について改正がありました。当サイトの記述は順次改訂していきます。
長期欠勤者、試用期間中の労働者の雇用保険、教育訓練給付 _ pr
雇用保険の被保険者

長期欠勤者、試用期間中の労働者の雇用保険、教育訓練給付

長期欠勤者や試用期間であっても雇用契約が存在する限り被保険者資格も認められます。ただし、他の事業主に雇用された場合は被保険者資格の得喪が発生することがあります。

スポンサーリンク

1.長期欠勤者と試用期間中の労働者

長期欠勤者

長期欠勤者は、雇用契約を結んでいる勤務者が引き続き長期にわたり欠勤している場合をいいます。

長期欠勤者のうち、会社側の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合、使用者は休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。この場合の休業手当は賃金を支払ったものとみなされます。賃金扱いのため雇用保険料がかかります。

労働者が引き続き長期にわたり欠勤している場合であっても、解雇されない限り雇用関係は存続します。

試用期間中の労働者

試用期間は、本採用決定前の「試みの期間」であって、労働者の資質、性格、能力、勤務態度その他の適格性の有無に関連する事項を評価して、本採用するか否かを決定するための期間です。

試用期間中に労働者の資質、性格、能力その他の適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を集め、当該労働者が不適格であると認めたときは解約できる旨の「解約権の留保」と考えられています。試用期間の設定は不当に長くない限り違法ではありません。

しかし、試用期間であっても、いったん特定の事業主と雇用関係となった労働者は、本採用を期待して勤務し、他の企業への就職の機会と可能性を放棄しています。そのため、解約権が留保されていてもすでに雇用関係は正式に成立していると考えられ、解約権の行使は「解雇」にあたります。本採用を拒否することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効となります。

スポンサーリンク

2.労働者性と雇用保険

雇用保険に加入できるのは雇用されている労働者だけです。

実態として労働者として勤務していると認められる場合は労働者として扱われます。これを「労働者性がある」といいます。「勤務している」には実際に事業所に出勤している場合のほか、休業中や試用期間中も含まれます。

雇用されていることが明確でない人については、個別に労働者性を判断します。

参考法令
雇用保険法 第4条第1項  この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のものをいう。
スポンサーリンク

3.長期欠勤者と雇用保険

雇用契約を締結した労働者であれば、その後、実際に出勤していなくても離職の手続きをしていなければ労働者(雇用保険の被保険者)です。

長期欠勤者の労働者性

労働者が引き続き長期にわたり欠勤している場合であっても、雇用関係が存続する限り賃金の支払を受けていると否とを問わず、雇用保険の被保険者となります。

休業手当が支払われてる場合は賃金の支払いを受けている扱いとなりますので、雇用保険料を支払う必要があります。賃金の支払いが無ければ雇用保険料を支払う必要はありませんが、その場合であっても被保険者資格は継続します。

なお、長期欠勤の期間も、基本手当の所定給付日数等を決定するための基礎となる算定基礎期間(雇用保険法第22条第3項)に算入されます。

無断欠勤のまま転職した場合

雇用保険の被保険者が前職の事業所を無断欠勤したまま他の事業主に再就職したため、同時に2つ以上の事業主に雇用されることとなった場合は、主たる雇用関係について被保険者資格が認められます。

通常は、新たな事業主との雇用関係が主たるものであると認められ、新たな雇用関係についてのみ、その被保険者資格が認められます。この場合、前事業所での被保険者資格は喪失することになりますが、喪失日の確認が困難なことから、新たな事業主に雇用された日の前日を離職日とします。

4.試用期間中の者と雇用保険

試用であろうが、研修であろうが、一人前でなかろうが事業主の指示に従って拘束を受け、賃金が支払われるのであれば労働者(雇用保険の被保険者)です。

試用期間中の者の労働者性

試用期間においては解約権は留保されているものの、すでに雇用契約が成立しています。

試用期間中、研修期間中、見習い期間中等の名称を問わず、事業主の指揮命令に従って研修を受け、または仕事に従事することによって賃金を受けており、雇用関係にあると認められますので、雇用保険の被保険者となります。雇い入れの日、つまり試用期間開始の日から被保険者となります。

試用期間中の長期欠勤者

試用期間中の労働者が長期にわたり欠勤している場合であっても、解雇されない限り雇用関係は存続します。

試用期間を有期契約とした場合

研修期間を有期契約とし、研修期間終了後に改めて期間の定めのない雇用に切り替える場合、その趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、研修期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意がない限り、研修期間は試用期間(期間の定めのない雇用契約の解約権を留保したもの)と解されます。

この場合も雇い入れの日、つまり有期契約開始の日から雇用保険の被保険者となります。

5.トライアル雇用契約

トライアル雇用とは、未経験の職業に就くことを希望して、ハローワーク等の職業紹介を受けて「トライアル雇用求人」に応募した労働者について、本採用の前に試行雇用することにより、その適性や能力を見極めたうえで本採用へ移行する雇用契約です。原則3か月のトライアル雇用期間を経て本採用に移行した場合に、事業主がトライアル雇用助成金を受けることができます。

この場合、トライアル雇用契約の期間が31日以上であれば、雇用保険の被保険者となります。

6.インターンシップ制度の学生

インターンシップは学生が社会に出る前に仕事を体験し、労働に従事する職場体験のことです。

大学の夜間学部、高等学校の定時制以外の学生(昼間学生)は雇用保険の対象外なので、原則としてインターン生は対象外となります。ただし、インターン先の企業に就職することが決まっている場合や休学中の学生など、雇用保険の対象となる場合があります。

7.教育訓練給付について

教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。休業中や試用期間中の者も労働者性が認められれば教育訓練給付対象者となります。

ただし、現在労働者でない場合であっても過去1年以内に労働者だった人は雇用保険に加入した可能性があるので教育訓練給付を受けられることがあります。