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雇用保険の被保険者

2つ以上の事業主に雇用される場合、副業や出向する場合の雇用保険、教育訓練給付

2つ以上の仕事を掛け持ちしている人(ダブルワーク)や、2つ以上の会社に所属している人はそのうちの1つの雇用関係について雇用保険に加入します。そのため複数の仕事をしていても雇用保険の対象外となることがあります。

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1.複数の雇用関係がある場合の考え方

2つ以上加入条件を満たす場合

同時に2つ以上の雇用関係にある労働者については、そのうちの1つの雇用関係(原則として、その者が生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける雇用関係とする)についてのみ被保険者となります。2つ以上の雇用関係について、それぞれの会社で雇用保険の加入条件を満たす場合であっても、二重で加入することはできません。

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労災はそれぞれの雇用関係について労働者として扱われますが、雇用保険は主たる賃金を受ける1つの雇用関係についてのみ被保険者となります。1つの雇用関係が解除されたとしても、残りの1つの雇用関係が加入条件を満たすのであれば失業状態とは言えない(残りの雇用関係について改めて加入すればよい)ため、「2つの雇用保険」に加入させる必要が無いからです。

1つのみ加入条件を満たす場合

同時に2つ以上の雇用関係にある労働者で、そのうち1つの雇用関係についてのみ雇用保険の加入条件を満たしている場合はその雇用関係について加入をすることができます。主たる賃金を受けているか否かにかかわらず条件を満たしているほうで加入します。

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2.所定労働時間の合算

所定労働時間を合算してはいけない

雇用保険は、同一事業主の元で1週間の所定労働時間が20時間以上であれば被保険者となりますが、20時間未満の場合は被保険者とはなりません。

2つ以上の仕事を掛け持ちしていても、それぞれの所定労働時間で考えますので合算はしません。複数の雇用関係を合算して週の所定労働時間が20時間以上になったとしても、それぞれが20時間未満の場合は、雇用保険の被保険者にはなりません。

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例えば、同一事業主の元で週25時間のアルバイトをしている場合は、1週間の所定労働時間が20時間以上なので被保険者となりますが、週15時間と週10時間のアルバイトを掛け持ちしている場合、両方とも20時間未満なので被保険者となりません。

特例高年齢被保険者(マルチジョブホルダー)

雇用保険法改正により2022年(令和4年)1月1日から、1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満の2つの事業主に雇用されている65歳以上の労働者について、それらを合算して1週間の所定労働時間が20時間以上になる場合、「特例高年齢被保険者」(マルチジョブホルダー)として雇用保険の対象となりました。

ただし、雇用保険に加入するには本人がハローワークに申し出ることが必要です。本人の申出によって特例高年齢被保険者として認められた場合、ハローワークから各事業主にその旨通知されます。

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3.雇用されている労働者が自宅で副業もしている場合

原則として主たる賃金で判断する

適用事業の事業主に雇用されつつ自営業を営む者(いわゆる副業)については、雇用されている事業主の下での就業条件が被保険者となるべき要件(週所定労働時間20時間以上など)を満たす場合は被保険者となります。簡単に言えば、雇用保険の被保険者が副業をやっても被保険者であることに変わりはないということです。

また、適用事業の事業主に雇用されつつ、他の事業主の下で委任関係に基づきその事務を処理する場合(例えば、雇用関係にない法人の役員に就任する)も同様です。

いずれの場合においても、当該雇用によって得る賃金が、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金かどうかで判断します。

令和3年法改正

2021年(令和3年)1月1日以降、自営業を営んでいる場合であっても、雇用されている事業主の下での就業条件が被保険者となるべき要件を満たしている場合は、従業員としての収入と自営業等による収入のどちらが多いかに関わりなく被保険者となります。勤務していた会社を離職することとなり、同時に自営業等による収入もなくなってしまう可能性があるからです。

ただし、雇用保険に加入していた場合であっても、離職後に、自営業に専念するため求職活動を行わない場合、会社の役員として一定以上の収入がある場合などは、失業時に給付される失業等給付を受給できない場合があります。

4.出向の場合

出向(しゅっこう)は、労働者が出向元と何らかの関係(雇用とは限らない)を保ちながら、出向先との間において新たな雇用契約関係を結び、一定期間出向先で勤務することをいいます。出向元と出向先の間で出向契約を結び、出向元が労働者に対して出向を命令します。

親会社からグループ会社や子会社への異動だけではなく、実態的に関係性がない企業や異業種の企業間であっても出向契約を結ぶことで出向することが可能です。

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労働協約、就業規則の規定、個別の同意がある場合に出向を命ずることができます。ただし、出向命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には無効となります。

参考法令
労働契約法 第14条  使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

在籍出向の場合

在籍出向は、適用事業(出向元)に雇用される労働者が、その雇用関係を維持して在籍したまま他の事業主(出向先)に雇用されることによって、2つの事業主に同時に雇用される出向のことです。実際には出向元は休職扱いとなり、出向先の指揮命令関係のもとで勤務します。単に「出向」といえば在籍出向を指すことが多いです。

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この場合、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ、その被保険者資格が認められます。

したがって、出向元で賃金が支払われる場合は原則として出向元の事業主の雇用関係について被保険者資格を有することとなります。出向先で賃金が支払われる場合は原則として出向先の事業主との雇用関係について被保険者資格を有することとなります。両社が賃金を分担して支払う場合は多いほうとなります。

ただし、その者につき、主たる雇用関係がいずれにあるかの判断が困難であると認められる場合、またはこの取扱いによっては雇用保険の取扱い上、引き続き同一の事業主の適用事業に雇用されている場合に比し著しく差異が生ずると認められる場合には、本人が選択するいずれか1つの雇用関係について被保険者資格を有することとなります。

移籍出向の場合

移籍出向は、適用事業(出向元)に雇用される労働者が、出向元における雇用関係を終了させるのと同時に、他の事業主(出向先)との間に新たな雇用契約関係を成立させて、出向先の指揮命令関係のもとで勤務します。転籍や転属ともいいます。

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出向先のみ雇用契約を結ぶため、出向元を退職して、出向先に転職したのと同じ状態です。そのため、移籍出向の際に、出向元から退職金またはこれに準じた一時金が支給されることもあります。出向元との雇用関係がなくなるので、出向先の就業規則がすべて適用されます。

この場合、出向先の雇用関係についてその被保険者資格が認められます。

5.在籍専従の場合

在籍専従は、事業主との雇用関係を存続したまま労働組合や職員団体の役職員になることをいいます。在籍専従者は休職扱いとなり、労働組合や職員団体の職務に専念します。

在籍出向と同様、1つの事業主に在籍したまま、その関連する団体に雇用されることによって、2つの事業主に同時に雇用されている状態です。この場合も、主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者資格が認められます。

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6.無断欠勤のまま転職した場合

被保険者が前職の事業所を無断欠勤したまま他の事業主に再就職したため、同時に2つ以上の事業主に雇用されることとなった場合は、いずれの雇用関係について被保険者資格を認めるかを上記に準じて判断します。

通常は、新たな事業主との雇用関係が主たるものであると認められ、新たな雇用関係についてのみ、その被保険者資格が認められます。この場合、前事業所での被保険者資格は喪失することになりますが、喪失日の確認が困難なことから、新たな事業主に雇用された日の前日を離職日とします。

7.補足説明

海外への出向の場合

日本国の領域外にある他の事業主の事業に出向し、雇用された場合でも、国内の出向元事業主との雇用関係が継続している限り被保険者となります。

派遣労働者

派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結んでいますから、人材派遣会社との関係で雇用保険に加入します。

教育訓練給付について

教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。労働者性が認められれば教育訓練給付対象者となります。

ただし、現在労働者でない場合であっても過去1年以内に労働者だった人は雇用保険に加入した可能性があるので教育訓練給付を受けられることがあります。