1週間の所定労働時間が20時間未満の短時間労働者は雇用保険の被保険者とはなりません。所定労働時間とは、就業規則、雇用契約書等で定められた、1週間に勤務すべきこととされている時間です。
1.週の所定労働時間が20時間未満である者
雇用保険は週の所定労働時間が20時間ちょうどまたは20時間以上である場合に対象となります。
適用除外
適用事業に雇用される労働者であっても、1週間の所定労働時間が20時間未満の場合は、雇用保険法の適用を受けません。したがって、雇用保険法の被保険者とはなりません。
これは、通常の労働者の週所定労働時間を40時間として、フルタイムの半分にも満たない者は雇用保険の目的である失業のリスクが小さいことから適用除外としたものです。
ただし、週20時間未満であっても、特例高年齢被保険者と日雇労働被保険者に該当する場合はそれぞれ被保険者として取り扱われます。また、季節的に雇用される場合は週30時間未満の場合に適用除外となります。
合算してはいけない
2つ以上の事業主に雇用される場合は原則としてそれらの所定労働時間を合算しません。週所定労働時間の合計が20時間以上となったとしても雇用保険の被保険者とはなりません。
ただし、特例高年齢被保険者の場合に限り、2つの事業主の所定労働時間を合算します。
2.週の所定労働時間
所定労働時間とは
所定労働時間とは、企業ごとに就業規則、雇用契約書等で定められた始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた労働時間のことです。例えば、9時から17時までの勤務で休憩45分の場合、所定労働時間は7時間15分となります。
なお、労働基準法第32条の労働時間は「法定労働時間」であり、労働時間の上限を定めたものです。法定労働時間を超えた場合に割増賃金の支払義務が発生します。
1週間の所定労働時間
「1週間の所定労働時間」は、その者が通常の週に勤務すべきこととされている所定労働時間をいいます。
この場合の「通常の週」とは、祝祭日とその振替休日、年末年始の休日夏季休暇等の特別休日を含まない週をいいます。週休日その他概ね1か月以内の期間を周期として規則的に与えられる休日を除きます。
例えば、始業8時30分、終業17時30分、休憩12時から13時まで(所定労働時間8時間)の完全週休2日制の場合、1週間の所定労働時間は40時間となります。
3.週の所定労働時間が一定でない場合の計算方法
不規則な労働時間のため、週の所定労働時間が定められていない場合は、原則として平均により算定します。なお、通常の労働者で、1週間の所定労働時間が30時間以上であることが明らかな場合は概算でよく、細かく計算する必要はありません。
週の労働時間が一通りでない場合
完全ではない週休2日(例えば4週5休、4週6休)の場合、5日働く週と6日働く週があります。
このように、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、通常の週の所定労働時間が一通りでないときは、1週間の所定労働時間は、それらの平均(加重平均)により算定された時間とします。
例えば、4週間ごとに周期的に労働時間が決まっている場合は、4週間の所定労働時間の合計を4で割ります。
所定労働時間が月単位で定められている場合
1週間の所定労働時間が定められていない場合で、その代わりに1か月の単位で所定労働時間が定められている場合には、当該時間を12分の52で除して得た時間を1週間の所定労働時間とします。「12分の52で除す(割る)」とは12倍して52で割ることです。
簡単に言えば、1か月の所定労働時間を12倍して52で割ります。1か月の所定労働時間の12倍が1年間(12か月)の所定労働時間であり、1年間が52週間あるので52で割るのです。
1週間 = 1か月 × 12倍 ÷ 52週間
この場合において、夏季休暇等のため、特定の月の所定労働時間が例外的に長くまたは短く定められているときは、当該特定の月以外の通常の月の所定労働時間を12分の52で除して得た時間を1週間の所定労働時間とします。
月の労働時間が一定でない場合
通常の月の所定労働時間が一通りでないときは、週の労働時間が一定でない場合に準じてそれらの平均(加重平均)により算定された時間を算定します。
年単位でしか定められていない場合
所定労働時間が1年間の単位でしか定められていない場合には、当該時間を52で除して得た時間を1週間の所定労働時間とします。「52で除す」とは52で割ることです。
1週間 = 1年 ÷ 52週間
年、週または月が両方定められている場合
1年間の所定労働時間のほかに、1週間または1か月の所定労働時間が定められている場合は、1週間または1か月の所定労働時間の定めが優先です。
労使協定等において「1年間の所定労働時間の総枠は○○時間」と定められている場合のように、所定労働時間が1年間の単位で定められている場合であっても、さらに、週または月を単位として所定労働時間が定められている場合には、週または月を単位として定められた所定労働時間により1週間の所定労働時間を算定します。
所定労働時間が定まっていない場合
雇用契約書等により1週間の所定労働時間が定まっていない場合やシフト制などにより直前にならないと勤務時間が判明しない場合については、勤務実績に基づき平均の所定労働時間を算定します。
平均の所定労働時間が週20時間以上となった場合は、確認を行った日からさかのぼって、実際に最初に週20時間以上に至った日を被保険者資格の取得日とします。
4.契約と実態がかけ離れている場合
雇用契約書等における1週間の所定労働時間と実際の勤務時間に常態的に乖離がある場合であって、当該乖離に合理的な理由がない場合は、原則として実際の勤務時間により判断します。
具体的には、事業所における入職から離職までの全期間を平均して1週間あたりの通常の実際の勤務時間が概ね20時間以上に満たず、そのことについて合理的な理由がない場合は、原則として1週間の所定労働時間は20時間未満であると判断し、被保険者となりません。
5.労働条件の変更による得喪
週20時間未満となった場合
被保険者が、労働条件の変更等により、1週間の所定労働時間が20時間未満となった場合には、当該事実のあった日において被保険者資格を喪失します。
週20時間以上となった場合
1週間の所定労働時間が20時間未満のため適用除外となっていた者が、労働条件の変更等により、1週間の所定労働時間が20時間以上となった場合はその日から被保険者となります。
季節的に雇用され、1週間の所定労働時間が30時間未満のため適用除外であった者が、同一の事業主に引き続いて1年以上雇用されるに至った場合において、1年以上となるに至った日においてすでに1週間の所定労働時間が20時間以上である場合はその日から被保険者となります。また、1週間の所定労働時間が20時間未満の場合は、20時間以上となった日から被保険者となります。
週20時間を超えたり超えなかったりの場合
一般被保険者または高年齢被保険者が、1週間の所定労働時間が20時間以上となる労働条件に復帰することを前提として、臨時的・一時的に1週間の所定労働時間が20時間未満となる場合には、被保険者資格を喪失させず、被保険者資格を継続します。
ただし、次のように臨時的・一時的でなくなった場合には、1週間の所定労働時間が20時間未満となった日に被保険者資格を喪失したものとして扱います。
被保険者資格を喪失する例
- 従前の就業条件への復帰が、当初の予定と異なり、「臨時的・一時的」と考えられる期間を超えることが明らかとなった場合または結果的に超えるに至った場合
- 結果的に従前の就業条件に復帰しないまま離職した場合
育児、介護の場合
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者の所定労働時間を短縮した場合、その子が小学校就学の始期に達するまでに1週間の所定労働時間が20時間以上となる労働条件に復帰することが前提であることが就業規則等の書面により確認できる場合には「一時的」なものとして取り扱い、最長でその子が小学校就学の始期に達するまで被保険者資格を喪失させず、被保険者資格を継続します。
同様に、家族を介護する労働者の所定労働時間を短縮した場合、介護の必要がなくなれば1週間の所定労働時間が20時間以上となる労働条件に復帰することが前提であることが就業規則等の書面により確認できる場合には「一時的」なものとして取り扱い、最長で介護の必要がなくなるときまで被保険者資格を喪失させず、被保険者資格を継続します。
この場合、被保険者が結果的に従前の就業条件に復帰しないことが明らかになったときは、当該明らかとなった時点で、被保険者資格を喪失します。
6.補足説明
船員の場合
船員についても、船員でない労働者と同様、1週間の所定労働時間が20時間未満の船員は、被保険者となりません。
船員は、その労働の特殊性から「1日8時間以内」「基準労働期間について平均1週間当たり40時間以内」など上限の時間が定められている場合がありますが、この場合には、その上限の時間により算定した所定労働時間とします。
有期契約労働者、派遣労働者の場合
有期契約労働者は、最後の雇用契約期間の終了日の翌日において被保険者資格を喪失します。ただし、1週間の所定労働時間が20時間以上となる労働条件での雇用が開始されることが見込まれる場合には、被保険者資格は継続します。
教育訓練給付について
教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。雇用保険法の適用除外の人は、被保険者とはならないので教育訓練給付金を受けることができません。
ただし、現在1週間の所定労働時間が20時間未満となったために被保険者でなくなった場合であっても、過去1年以内に被保険者であった人は教育訓練給付を受けられる場合があります。
社労士過去問
短時間労働者、短期間労働者の適用除外、所定労働時間に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。