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雇用保険の被保険者

雇用保険の「高年齢被保険者」「特例高年齢被保険者」とは何か、教育訓練給付との関係について

高年齢被保険者は65歳以上の被保険者であり、一般被保険者と同様、教育訓練給付の対象となります。雇用保険法改正前の高年齢継続被保険者も現行の高年齢被保険者となります。

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1.雇用保険の高年齢被保険者

高年齢被保険者

雇用保険法の被保険者は、年齢や就労の実態に応じて4種類に分類されています。

高年齢被保険者とは、雇用保険法の65歳以上の被保険者であって、短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者に該当しないものをいいます(雇用保険法第37条の2第1項)。

なお、短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者に年齢制限はありませんから、65歳以上の者が高年齢被保険者に該当しなくても、要件を満たせば短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者となることは可能です。

参考法令
雇用保険法 第37条の2第1項  六十五歳以上の被保険者(第三十八条第一項に規定する短期雇用特例被保険者及び第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者を除く。以下「高年齢被保険者」という。)が失業した場合には、この節の定めるところにより、高年齢求職者給付金を支給する。

適用除外

雇用保険の被保険者のうち、短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者を除いて、65歳未満は一般被保険者、65歳以上は高年齢被保険者となります。

満65歳以上であっても、週の所定労働時間が20時間未満、継続して31日以上雇用されることが見込まれないなど雇用保険法適用除外の場合は高年齢被保険者にはなりません(特例高年齢被保険者については後述)。

また、2016年(平成28年)12月末までに退職した場合は高年齢継続被保険者でない限り被保険者にはなりません(高年齢継続被保険者については後述)。高年齢被保険者の制度が適用されるのは2017年(平成29年)以降だけです。

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2.高年齢被保険者と教育訓練給付

教育訓練給付対象者

高年齢被保険者は、教育訓練給付金の支給を受けることのできる「教育訓練給付対象者」に含まれます。現在、高年齢被保険者として雇用保険に加入している在職者と、高年齢被保険者でなくなってから1年以内の離職者が対象となります。

参考法令
雇用保険法 第60条の2第1項  教育訓練給付金は、次の各号のいずれかに該当する者(以下「教育訓練給付対象者」という。)が、厚生労働省令で定めるところにより、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合(当該教育訓練を受けている場合であつて厚生労働省令で定める場合を含み、当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により厚生労働省令で定める証明がされた場合に限る。)において、支給要件期間が三年以上であるときに、支給する。 一 当該教育訓練を開始した日(以下この条において「基準日」という。)に一般被保険者(被保険者のうち、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者をいう。次号において同じ。)又は高年齢被保険者である者 二 前号に掲げる者以外の者であつて、基準日が当該基準日の直前の一般被保険者又は高年齢被保険者でなくなつた日から厚生労働省令で定める期間内にあるもの

支給要件期間に含まれる

教育訓練給付を受けるための要件である支給要件期間に、高年齢被保険者であった期間も含まれます。

教育訓練支援給付金は対象外

一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金は受給できますが、教育訓練支援給付金については受講開始時に満45歳未満であることが条件なので対象外です。

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3.高年齢被保険者の資格を取得する例

65歳に達した日以後に雇用された場合

65歳に達した日以降に、週所定労働時間20時間以上で雇用された場合は、被保険者の要件を満たすので、雇用された時点から高年齢被保険者になります。この場合は事業主が資格取得届の提出を行うこととなります。

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65歳に達した日以後に雇用した後で要件を満たした場合

65歳に達した日以後に雇用された者で、雇用された時点では被保険者の要件を満たさない者であっても、その後に被保険者の要件を満たした場合はその時点で高年齢被保険者となります。この場合も事業主が資格取得届の提出を行うこととなります。

例えば、65歳以上の労働者が週所定労働時間20時間未満(雇用保険適用除外)で雇用されたが、その後、労働条件の変更によって週20時間以上となった場合は、変更するまでは被保険者ではなく、変更した時点から高年齢被保険者となります。このときの被保険者資格の取得日は、週20時間以上に変更された日です。

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65歳未満の被保険者を65歳になった後も雇用する場合

65歳未満の一般被保険者が65歳に達する前の日まで雇用され、さらに65歳に達した日以後も引き続き同一の事業主に雇用される場合は、65歳に達した日以降、高年齢被保険者となります。この場合、事務手続きは不要です。

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適用除外の労働者が65歳に達した後に要件を満たした場合

65歳未満で週所定労働時間20時間未満(雇用保険適用除外)で雇用された労働者が、要件を満たさないまま65歳に達する前の日まで雇用され、さらに65歳に達した日以後も同一の事業主に継続して雇用される場合、要件を満たしていなければ高年齢被保険者とはなりません。

しかし、その後、労働条件の変更によって週20時間以上となった場合は、要件を満たした日以降、高年齢被保険者となります。この場合は事業主が資格取得届の提出を行うこととなります。

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他の区分からの切り替え

65歳未満の短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者が、65歳に達した日以降に高年齢被保険者への切替え要件に該当するに至った場合は、その時点で高年齢被保険者となります。

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また、65歳に達した日以降に短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者として雇用され、その後、労働条件の変更等により高年齢被保険者への切替え要件に該当するに至った場合は、その時点で高年齢被保険者となります。

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4.特例高年齢被保険者(マルチジョブホルダー)

特例高年齢被保険者とは

2022年(令和4年)1月1日以降、次の3つの条件すべてに該当する場合、住所または居所を管轄するハローワークに申し出ることにより、当該申出を行った日から特例高年齢被保険者となることができます(雇用保険法第37条の5第1項)。この申出は任意であり申出の期限はありません。

特例高年齢被保険者は「マルチジョブホルダー高年齢被保険者」ともいいます。

特例高年齢被保険者の条件

  • 二以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の者であること。
  • 一の事業主の適用事業における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であること。
  • 二の事業主の適用事業における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること。

簡単に言えば、週の所定労働時間が20時間未満(適用除外)であっても、65歳以上で、2か所の事業所を合計して20時間以上であれば被保険者となります。なお、二の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者は、特例高年齢被保険者となりません。

特例高年齢被保険者資格の得喪

特例高年齢被保険者となる日はハローワークに申出を行った日であり、条件を満たした日にさかのぼって被保険者となるわけではないことに注意します。

特例高年齢被保険者は、二の事業主の適用事業の両方またはいずれか一方を離職した日の翌日に被保険者資格を喪失します。また、労働条件の変更等により、一の事業主の適用事業における週所定労働時間が5時間未満又は20時間以上となった場合や二の事業主の適用事業における週所定労働時間の合計が20時間未満となった場合においては、当該事実のあった日において被保険者資格を喪失します。

被保険者資格を喪失したときは、住居所を管轄するハローワークに申し出ます。死亡、行方不明、失踪その他やむを得ない理由により特例高年齢被保険者でなくなったときは、当該特例高年齢被保険者を雇用する二の事業主が届け出ます。

なお、特例高年齢被保険者が、被保険者資格を喪失した日から1日以上空いたあとに新たに特例高年齢被保険者の要件を満たした場合は、再度、本人が申出を行った日から特例高年齢被保険者となります。

同一の事業主の場合は適用されない

1週間の所定労働時間のを合計する二の事業主は異なる事業主である必要があるため、事業所が別であっても同一の事業主である場合は、適用要件を満たしません。事業所が別であっても同一の事業主で週所定労働時間の合計が20時間以上の場合は通常の高年齢被保険者となります。

三の事業主に雇用されている場合

三の事業主A、B、Cに雇用され、それぞれ週の所定労働時間が5時間以上20時間未満である場合、そのうちの二の事業主を選んで申出をします。二の事業主A、Bによって特例高年齢被保険者資格を取得し、そのうちの一の事業主Bで離職したときは被保険者資格を喪失します。しかし、残る二の事業主A、Cで週の所定労働時間の合計が20時間以上であれば、引き続き特例高年齢被保険者とします。

このとき、被保険者資格の喪失日(事業主Bの離職日の翌日)と同じ日に、残る二の事業主A、Cに係る被保険者資格を取得します。

教育訓練給付との関係

教育訓練給付については、通常の高年齢被保険者と特例高年齢被保険者はほぼ同じ扱いとなります。

  • 一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金の支給については同じ扱いとなります。
  • 専門実践教育訓練給付金の受給資格、支給要件、支給申請手続きは同じ扱いとなります。ただし、専門実践教育訓練給付金の追加給付(70%)の条件の一つである「1年以内に一般被保険者等として就職すること」について、一般被保険者等に通常の高年齢被保険者は含まれますが、特例高年齢被保険者は含まれません
  • 教育訓練支援給付金については「専門実践教育訓練の受講開始日において45歳未満であること」を満たさないため、いずれも対象とはなりません。
  • 適用対象期間の延長、事務の委嘱、住居変更、支給要件照会、未支給教育訓練給付金の手続きについては同じ扱いとなります。

5.高年齢継続被保険者について

平成29年改正の概要

2016年(平成28年)12月末までは、65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以降も雇用する場合に「高年齢継続被保険者」といい、雇用保険の対象としていました。この制度は65歳になる前から雇用していた場合だけが対象であり、65歳に達してから新たに雇用された場合は「継続」ではないので対象外でした。

2017年(平成29年)に雇用保険法が改正され、2017年(平成29年)1月1日以降は65歳以上の労働者は継続か新規かにかかわらず、「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象となりました。

高年齢継続被保険者だった人

雇用保険法等改正前の高年齢継続被保険者、または65歳以上の高年齢者の任意加入による経過措置により任意加入の認可を受けた者が、2017年(平成29年)1月1日以降に引き続き雇用される場合は、自動的に高年齢被保険者となります。自動的に被保険者区分の名称が変わるだけです。

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法改正によって新たに高年齢被保険者になる人

この法改正の経過措置として、2016年(平成28年)12月末までに65歳以上で雇用された労働者(改正前は対象外だった労働者)は、2017年(平成29年)1月1日に当該事業主に雇用されたものとみなされ、高年齢被保険者となります。

実際にはそれより前に雇用されているのですが、改正後の雇用保険法を適用する場合に限り、2017年(平成29年)1月1日に被保険者資格を取得したものとみなします。雇用された日にさかのぼって適用されるわけではありません。

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参考法令
雇用保険法等の一部を改正する法律 附則第3条 (平成28年3月31日法律第17号・平成29年1月1日施行)   六十五歳に達した日以後に雇用された者であって、施行日前から引き続いて雇用されている者(雇用保険法第三十八条第一項に規定する短期雇用特例被保険者及び同法第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者を除く。)については、施行日に当該者が当該事業主の適用事業に雇用されたものとみなして、第二条改正後雇用保険法の規定を適用する。

2017年(平成29年)1月1日に被保険者の要件を満たしていない場合は高年齢被保険者にはなりませんが、その後、被保険者の要件を満たした場合はその時点で高年齢被保険者となります。この場合は事業主が資格取得届の提出を行うこととなります。

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6.年齢の数え方

雇用保険法の年齢は、誕生日の前日において満年齢に達するものとして計算します。「65歳に達する日」とは、満65歳になる誕生日の「前日」です。誕生日の当日に65歳になるわけではなく、誕生日の前日にすでに65歳になっているのです。一般的な感覚と1日ずれますので注意が必要です。

例えば、1950年(昭和25年)10月1日に生まれた人は、65年後の2015年(平成27年)9月30日に65歳に達したことになります。ちなみに2月29日生まれの人は、生まれた年の65年後がうるう年かどうかにかかわらず2月28日です。

したがって、65歳以上とは、生まれた日の65年後の誕生日の前日以降ということです。65歳未満とは、生まれた日の65年後の誕生日の前々日以前ということになります。

7.補足説明

社労士過去問

高年齢被保険者の定義に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。