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外国人労働者、外国の労働者、外国人事業主に雇用される労働者の雇用保険、教育訓練給付 _ pr
雇用保険の被保険者

外国人労働者、外国の労働者、外国人事業主に雇用される労働者の雇用保険、教育訓練給付

外国人が事業主の場合や外資系企業に雇用される労働者、日本の企業が外国人を雇用する場合、原則として雇用保険の加入義務があります。日本人が海外へ出向する場合も転籍でない限り雇用保険の被保険者資格は継続します。

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1.外国と雇用保険

雇用保険の被保険者は、適用事業に雇用される労働者であって国籍は関係ありません(雇用保険法第4条第1項)。しかし、日本国外の領域で日本の雇用保険法が適用されないため問題となります。

参考法令
雇用保険法 第4条第1項  この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のものをいう。

外国関係で問題となるのは次のような場合です。日本国内に居住する労働者はその国籍を問わず、原則として被保険者となります。ただし、外国で雇用関係が成立した場合を除きます。

  • 日本国内で、外国の事業主が行う事業に雇用される労働者
  • 在日米軍で働く日本人従業員
  • 日本国内に在住する外国人労働者、一時的入国者、技能実習生
  • 日本の被保険者が外国の事業所に赴任する場合
  • 日本の領海以外を航行する船舶の船員
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2.外国の事業主が行う事業

外国人事業主、外資系企業

日本人以外の事業主が日本国内において行う事業が雇用保険法第5条に該当する場合(労働者が雇用される事業)は、当該事業主の国籍のいかんを問わず、また国籍の有無を問わず、その事業は雇用保険法上の適用事業または暫定任意適用事業となります。

したがって、日本国内に在住する外国人(個人事業主)や、日本の法令に準拠して設立された外資系企業(日本法人)に雇用される場合、被保険者となります。

参考法令
雇用保険法 第5条第1項  この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする。

外国、外国会社

外国とは、日本国内にある在日外国公館、在日外国軍隊等のことです。日本国内にある外国が事業主の場合も、日本国内で雇用関係が成立しているのであれば同様に被保険者となります。

外国会社とは、日本以外の国の法律に準拠して設立された外国法人(日本法に準拠して、その要求する組織を具備して法人格を与えられた外資系会社以外の会社)が、日本法人を設立することなく日本国内で活動する場合をいいます。外国会社が事業主の場合も、日本国内で雇用関係が成立しているのであれば同様に被保険者となります。

駐留軍等間接雇用労務者

駐留軍等間接雇用労務者(駐留軍等労働者)とは、簡単に言えば在日米軍で働く日本人従業員のことです。

駐留軍等労働者は日米安保条約と日米地位協定により、すべて国(防衛大臣)を経由して間接に雇用される形態をとっており、国が、雇用契約の法律上の相手方となり適用事業の事業主の地位に立つことになります。なお、事業主としての事務執行者は防衛事務所の長(防衛事務所が設置されていない場合は地方防衛局の長)です。

駐留軍等労働者は国に雇用されていることになりますが、昭和27年法律第174号第8条で「国家公務員ではない」と規定されています。そのため、国家公務員退職手当法の適用を受けないので、民間人と同様、ハウスメイド等の家事使用人を除き、被保険者となります。

駐留軍等労働者の関係法令

  • 日米安保条約:日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
  • 日米地位協定:日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定
  • 昭和27年法律第174号:日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基づく行政協定の実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律(昭和27年法律第174号)
日本国との平和条約の効力の発生及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律(昭和27年法律第174号)  第八条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき駐留するアメリカ合衆国軍隊、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第十五条第一項(a)に規定する諸機関、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定に基づき本邦内にある国際連合の軍隊又は日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定第七条の規定に基づくアメリカ合衆国政府の責務を本邦において遂行する同国政府の職員のために労務に服する者で国が雇用するもの(以下「駐留軍等労働者」という。)は、国家公務員でない。 2 駐留軍等労働者は、国家公務員法第二条第六項に規定する勤務者と解してはならない。
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3.日本国内に在住する外国人労働者

在日外国人労働者

日本国に在住する外国人労働者は、国籍を問わず、また国籍の有無を問わず被保険者となります。

ただし、外国公務員及び外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された場合は除きます。また、外国において雇用関係が成立した後、その雇用関係のまま日本に入国して日本国内にある事業所に勤務している場合で、かつ、雇用関係が終了する直前において元の国に帰国するのが明確である場合も、失業したときに失業等給付を受けることができないため被保険者になりません。

ワーキング・ホリデー制度による入国者

ワーキング・ホリデー制度は、日本と協定国の異文化交流や相互理解を促進するための海外留学制度です。滞在期間中に観光や就学のほか、その旅行資金を補うための一定の就労をすることが認められています。

ワーキング・ホリデー制度による入国者は、主として休暇を過ごすことを目的として入国し、その休暇の付随的な活動として就労が認められている(失業のリスクが無い)ことから、労働時間や雇用契約の期間にかかわらず、被保険者とはなりません。

注:厚生年金、健康保険、労災は対象となりますが、雇用保険は対象外です。

外国人技能実習生

技能実習生は、外国の青壮年労働者が、我が国の産業職業上の技術・技能・知識を習得し、母国の経済発展と産業育成の担い手となるよう、技能等の修得をする活動に従事する労働者です。出入国管理及び難民認定法の在留資格「技能実習」をもって入国し、雇用契約に基づいて報酬を受けながら実習を行います。

原則として、日本の民間企業等が技能実習生として受け入れている場合は、受入先の事業主と雇用関係にあるので、被保険者となります。

入国1年目の講習について

通常、入国1年目は、在留資格「技能実習1号イ」または「技能実習1号ロ」をもって入国し、最初に座学または見学による講習を原則2か月間実施します。この講習は雇用契約を締結しないので、講習期間中に技能実習生に業務を行わせることは一切できません。そのため、この講習期間は雇用保険法の適用を受けず、雇用保険の被保険者とはなりません。

外国人労働者、外国の労働者、外国人事業主に雇用される労働者の雇用保険、教育訓練給付 _ 2277-1

ただし、企業が受け入れをする場合(技能実習1号イ)で、入国当初から受入先の事業主と雇用契約を結び、雇用契約に基づいて事業主の事業所内で講習を実施する場合は、入国当初から雇用保険の被保険者となります。

入国当初の講習を終了したうえで、技能等の修得をする活動(実習)を行う場合には、受入先の事業主との雇用契約に基づいて国内の事業所において当該技能等に係る業務に従事することとなるため、雇用保険の被保険者となります。

また、実習期間中に実施する、工場の生産ライン等商品を生産するための施設における機械操作教育や安全衛生教育についても、雇用関係に基づいて行う必要があり雇用保険の適用があります。

在留資格「技能実習」

  • 技能実習1号(入国1年目):入国当初の座学の講習は対象外、講習後の実習は適用
  • 技能実習2号(入国2~3年目):通常の労働者と同様に適用される
  • 技能実習3号(入国4~5年目):通常の労働者と同様に適用される

第3号技能実習について

技能実習制度については、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)が2017年(平成29年)11月1日に施行され、在留資格「技能実習3号イ」、「技能実習3号ロ」が新設されました。これにより在留期間が最長3年から最長5年に延長となりました。

第3号技能実習の新設後も、厚生労働省労働基準局長通知(通達)により技能実習生に対しては通常の労働者と同様に雇用保険法が適用されることとなっています。そのため、1号~3号の区分に関係なく入国当初の講習期間を除いて、技能実習生は雇用保険の被保険者となります。

参考法令
技能実習生の労働条件の確保について(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知平成22年2月8日基発0208第2号、平成29年11月1日改正)(抜粋)  第2 技能実習生に係る労働基準関係法令の適用 2 技能実習2号又は技能実習3号について 技能実習2号又は技能実習3号の技能実習生については、実習実施者との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。  第3 技能実習生の労働条件等の確保 11 労働者災害補償保険等 実習実施者が暫定任意適用事業に該当する場合を除き、技能実習生に対しては、労働者災害補償保険が強制適用されることはいうまでもないが、「技能実習制度 運用要領」(法務省・厚生労働省)において、労働者災害補償保険の暫定任意適用事業であっても、技能実習生を受け入れる場合には、労働者災害補償保険に係る保険関係の成立又はこれに類する措置を講じる必要があるとされていること。 雇用保険についても、技能実習生に対しては、通常の労働者と同様に適用されること。

4.外国の事業所で就労する場合

日本国内の適用事業に雇用される労働者が、事業主の命により日本国の領域外において就労する場合は、原則として被保険者資格が継続します。元の事業主との雇用関係が終了した場合、または海外で採用された場合は被保険者にはなりません。

国外出張

日本国内の適用事業に雇用される被保険者が、事業主の命により日本国の領域外に出張して就労する場合は、引き続き被保険者となります。この場合、従前の適用事業に雇用されているものとして取り扱うので手続きは不要です。

外国人労働者、外国の労働者、外国人事業主に雇用される労働者の雇用保険、教育訓練給付 _ 335-1

現地採用の労働者

日本国の領域外で採用された者(現地採用の労働者)は、国籍のいかんにかかわらず被保険者となりません。海外の事業所に採用された日本人も対象外です。

外国人労働者、外国の労働者、外国人事業主に雇用される労働者の雇用保険、教育訓練給付 _ 335-2

国外転勤

日本国内で雇用された被保険者が、元の事業主に雇用されたまま日本国の領域外にある当該事業主の支店、出張所等に転勤する場合(人事異動によって国外転勤する場合)、引き続き被保険者となります。この場合、従前の適用事業に雇用されているものとして取り扱うので手続きは不要です。

ただし、元の事業主との雇用関係を終了させたうえで、海外の「子会社」へ転籍する場合は、元の事業主を退職して海外の事業主に現地採用されるのと同じなので資格喪失となります。

  • 人事異動:元の事業主に雇用されている状態で、同じ事業主の海外事業所に勤務する場合は資格継続(国外出張と同じ)
  • 転籍:元の事業主との雇用関係を終了し、海外の事業主へ転籍する場合は資格喪失(現地採用と同じ)

在籍出向

日本国内で雇用された被保険者が、元の事業主との雇用関係を残したまま、さらに、日本国の領域外にある他の事業主へ出向し、その事業主に雇用された場合(2つの雇用関係が存在する在籍出向)、国内の出向元事業主との雇用関係が継続している限り被保険者となります。国内の出向元事業主との雇用関係が終了すれば資格喪失となります。

なお、雇用関係が継続しているかどうかは、その契約内容によります。

5.国外の船員

適用事業に雇用される船員であれば、当該船員が乗船している船舶が航行する領域に関わりなく被保険者となります

6.補足説明

教育訓練給付について

教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。休業中や試用期間中の者も労働者性が認められれば教育訓練給付対象者となります。

ただし、現在労働者でない場合であっても過去1年以内に労働者だった人は雇用保険に加入した可能性があるので教育訓練給付を受けられることがあります。

社労士過去問

外国会社、在日外国人、在外邦人に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。