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国家公務員、地方公務員等は教育訓練給付金の対象とはならない _ pr
雇用保険の被保険者

国家公務員、地方公務員等は教育訓練給付金の対象とはならない

公務員は離職すると雇用保険法の失業給付の内容を超える退職手当が支給され、失業給付に満たない場合は別途、失業者の退職手当を受給することができます。そのため雇用保険法が適用されません。

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1.公務員と雇用保険

国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者(公務員等)は、原則として雇用保険法は適用されません。よって、雇用保険の被保険者とはなりません。

ただし、公務員等のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、雇用保険法の求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であって、厚生労働省令(雇用保険法施行規則第4条第1項)に定めるものに限られます。

非常勤職員や定年退職後の再任用のように、離職時の手当が雇用保険の給付と比べて少ない人については被保険者となります

参考法令
雇用保険法 第6条第6号  次に掲げる者については、この法律は、適用しない。   国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの

雇用保険法が適用される民間企業の労働者は毎月の給与から雇用保険料が天引きされます(労使とも雇用保険料を負担している)が、公務員等は適用除外なので天引きされません。

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2.適用除外の理由

民間企業の労働者との違い

公務員等について雇用保険法を適用除外とする特例を設けたのは、民間企業の労働者と比較して次の点において異なっているからです。

  • 離職時の給付
    法令、条例、規則等によって退職手当に関する制度が確立されていて、離職時に、失業時の保障として失業保険制度により支給される求職者給付及び就職促進給付の内容を超える給与(手当)が確保される仕組みが設けられていて、失業保険制度を強制的に適用し保護する必要性に乏しい。
  • 法制度がある
    離職時の退職手当等の給与(手当)の支給が法令等の確実な根拠に基づいて履行される。
  • 失業のリスクが少ない
    国家公務員法等の法制度に基づき特別な身分保障がなされ、一般の民間企業の労働者に比べて身分が安定しており、失業が起こりにくい。
  • 国が事業主となる
    仮に、公務員等に雇用保険法を適用すると、国は原則として、事業主として支払う雇用保険料を負担することとなり、その財源は国民の税金となる。しかも、公務員等に対して法令、条例、規則等によって退職給与(手当)が支給され、その財源も国民の税金によるので、国民に対し二重の負担を課す結果となる。

諸外国でも適用除外とされている

国際労働機関ILOの1934年の第44号条約「非任意的失業者に対し給付又は手当を確保する条約(失業給付条約)」において、「政府、地方機関又は公益事業の恒久的性質を有する労務に従事する労働者」について国内の法令または規則において必要な例外を設けることができるものとされています(第2条第2項-(c))。

また、1988年の第168号条約「雇用の促進及び失業に対する保護に関する条約」において、「正規の退職年齢までの雇用が国内の法律又は命令によって保証されている公的被用者は、保護対象者から除外することができる」ものとされています(第11条第2項)。

これらの条約は日本は未批准ですが、公務員等についてはイギリス、カナダ等の例外を除き、ほとんどの国で失業保険制度の対象外とされています。

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3.離職した場合の諸給与とは

諸給与の内容

離職した場合に支給を受けるべき諸給与とは、法令、条例、規則等に基づいて支給される手当で、その名称のいかんを問わず、公務員等が退職した後に失業している場合において「求職者給付及び就職促進給付の性質と同様なもの」として支払われるものをいいます。

求職者給付及び就職促進給付の性質と同様なもの

  • 雇用保険法の基本手当、高年齢求職者給付金、特例一時金に相当する手当
  • 雇用保険法の基本手当または特例一時金に相当する手当を受けることができる者に対して支給する、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当、就業促進手当、移転費、広域求職活動費に相当する手当

次のように、求職者給付及び就職促進給付と異なる性質のものは含まれません。

離職時の諸給与に該当しないものの例

  • 恩給法による恩給
  • 国家公務員共済組合法による退職共済年金
  • 本人の功績等を理由として支払われる慰労金等

差額の支給

退職時に支給された退職手当の額が、雇用保険法の求職者給付及び就職促進給付に相当する額に満たず、かつ退職後一定の期間失業(求職活動)しているときは、その差額分が「失業者の退職手当」として支給されることがあります。

4.適用除外の判断基準

国家公務員

国の事業に雇用される者(国家公務員)のうち、常時勤務に服することを要する職員(常勤職員)は、国家公務員退職手当法または同法に準じた法令等(例えば、国会議員の秘書の退職手当支給規程)によって退職手当が支給されます。

そして、国家公務員退職手当法等の規定により支給される退職手当は、雇用保険法の規定によって支給を受けるべき求職者給付及び就職促進給付の内容を超えるものと認められます。そのため、国家公務員のうち常勤職員については、雇用保険の被保険者とはなりません。

また、非常勤職員のうち、その勤務形態が常勤職員に準ずる者(国家公務員退職手当法施行令第1条第1項で定める者)も雇用保険の被保険者とはなりません。それ以外の非常勤職員は被保険者となります。

  • 常勤職員=適用除外(被保険者とならない)
  • 常勤職員に準ずる非常勤職員=適用除外(被保険者とならない)
  • それ以外の非常勤職員=被保険者となる
参考法令
国家公務員退職手当法(昭和28年法律第182号)第2条第1項  この法律の規定による退職手当は、常時勤務に服することを要する国家公務員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十一条の四第一項又は第八十一条の五第一項の規定により採用された者及びこれらに準ずる他の法令の規定により採用された者並びに独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人(以下「行政執行法人」という。)の役員を除く。以下「職員」という。)が退職した場合に、その者(死亡による退職の場合には、その遺族)に支給する。

行政執行法人に雇用される者

独立行政法人通則法第2条第4項に規定する行政執行法人は、2015年(平成27年)4月に「特定独立行政法人」から名称変更した独立行政法人であり、国立公文書館、造幣局、印刷局などがあります。

行政執行法人に雇用される者は、独立行政法人通則法第51条の規定により国家公務員とされています。したがって、原則として上記の判断基準と同様となります。

参考法令
独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第4項  この法律において「行政執行法人」とは、公共上の事務等のうち、その特性に照らし、国の行政事務と密接に関連して行われる国の指示その他の国の相当な関与の下に確実に執行することが求められるものを国が事業年度ごとに定める業務運営に関する目標を達成するための計画に基づき行うことにより、その公共上の事務等を正確かつ確実に執行することを目的とする独立行政法人として、個別法で定めるものをいう。
独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第51条  行政執行法人の役員及び職員は、国家公務員とする。

在日米軍従業員

在日米軍の従業員は国(防衛大臣)に雇用されていますが、法令の規定により国家公務員ではなく、国家公務員退職手当法が適用されません。そのため、ハウスメイド等の適用除外に該当しない限り、雇用保険の被保険者となります。

都道府県等

都道府県等の事業に雇用される者のうち、当該都道府県等の長が雇用保険法を適用しないことについて、厚生労働大臣に申請し、その承認を受けたものは被保険者とはなりません。「都道府県等」とは次のものです。

都道府県等

  • 都道府県
  • 地方自治法第284条第2項の規定による地方公共団体の組合(一部事務組合)で都道府県が加入するもの
  • 地方独立行政法人法第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人であって設立に当たり総務大臣の認可を受けたもの
  • その他都道府県に準ずるもの
雇用保険法施行規則第四条第一項第二号の規定による雇用保険法を適用しないことを承認した告示 (昭和54年7月2日労働省告示第65号)  雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第四条第一項第二号の規定により、次に掲げるものの事業に雇用される者であつて、離職した場合に条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、その者を国家公務員等退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)第二条第二項に規定する職員とみなした場合に同法の規定によりその者が支給を受けるべき退職手当の内容以上であるものについては、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)を適用しないことを承認したので告示する。  北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 群馬県競馬組合 高崎工業団地造成組合 名古屋競馬場管理組合 四日市港管理組合 有明海自動車航送船組合
雇用保険法施行規則第四条第一項第二号の規定による雇用保険法を適用しないことを承認した告示 (平成21年7月1日厚生労働省告示第344号)  雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第四条第一項第二号の規定により、次に掲げるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者については、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)を適用しないことを承認したので告示する。  地方独立行政法人岩手県工業技術センター 地方独立行政法人大阪府立病院機構 地方独立行政法人岡山県精神科医療センター 地方独立行政法人鳥取県産業技術センター 地方独立行政法人山口県産業技術センター
雇用保険法施行規則第四条第一項第二号の規定による雇用保険法を適用しないことを承認した告示 (平成22年6月25日厚生労働省告示第253号)  雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第四条第一項第二号の規定により、次に掲げるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者については、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)を適用しないことを承認したので告示する。  地方独立行政法人山梨県立病院機構

市町村等

市町村等の事業に雇用される者のうち、当該市町村等の長が雇用保険法を適用しないことについて、都道府県労働局長に申請し、その承認を受けたものは被保険者とはなりません。「市町村等」とは次のものです。

ちなみに、特別区(東京23区)は市町村等ではなく、下記の「その他これらに準ずるもの」です。

市町村等

  • 市町村
  • 地方自治法第284条第2項、第3項の規定による地方公共団体の組合(一部事務組合、広域連合)で都道府県が加入しないもの
  • 地方独立行政法人法第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人であって設立に当たり都道府県知事の認可を受けたもの
  • 国、地方公共団体若しくは特定地方独立行政法人以外の者で、学校教育法第1条の学校、学校教育法第134条第1項の各種学校、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園における教育、研究若しくは調査の事業を行うもの(ただし、法人である場合にはその事務所を除く)
  • その他市町村に準ずるもの

その他これらに準ずるもの

「その他これらに準ずるもの」とは、国、都道府県及び市町村の行政に準ずる行政を行うものをいいます。

具体的には、地方自治法で特別地方公共団体とされるもの(特別区、地方公共団体の組合、財産区、地方開発事業団)であり、港湾法に基づいて設立された港務局を含みます。なお、地方開発事業団は2022年(令和4年)3月31日に廃止されました。

5.適用除外の手続き

適用除外を申請するときは、都道府県、市町村等の長が「雇用保険適用除外申請書」を提出します。適用除外が申請された場合は手続開始の日(適用除外申請書が提出された日)からその被保険者資格が停止されます。適用除外が承認されたときは、手続開始の日から被保険者ではなかったこととなります。

国その他これに準ずるものの事業に雇用される者については、適用除外の手続を要することなく適用除外となります。

都道府県

都道府県またはこれに準ずるものの事業に雇用される者については、これらの長が厚生労働大臣に適用除外の申請を行います。雇用保険法を適用しないことについて、厚生労働大臣の承認を受けた場合に適用除外となります。

これは、「離職した場合に支給を受けるべき諸給与」の支給の根拠となる条例等が適用除外の基準に該当しているか否かを、雇用保険法の所轄庁の長である厚生労働大臣が審査する必要があるからです。

市町村

市町村またはこれに準ずるものの事業に雇用される者については、これらの長が都道府県労働局長に適用除外の申請を行います。雇用保険法を適用しないことについて、都道府県労働局長の承認を受けた場合に適用除外となります。

これは、本来、雇用保険法の所轄庁の長である厚生労働大臣が審査承認を行うべき事項であるところ、都道府県労働局長にこれを委任し、厚生労働大臣の定める基準(昭和60年8月1日労働省告示「雇用保険法施行規則第4条第1項第3号の厚生労働大臣の定める基準」)に従って審査承認を行わせることとしたものです。

6.教員、教育職員の場合

教育に携わる人たちであっても考え方は同じで、公務員か否かで判断します。

国家公務員である国立学校の教員や地方公務員である公立学校の教員は、雇用保険法の適用の対象外です。私立学校または独立行政法人(国公立大学、国公立高専など)の教員は、週所定労働時間20時間以上勤務の場合に雇用保険の被保険者となります。

7.教育訓練給付について

教育訓練給付対象者

教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。雇用保険法の適用除外の公務員は、被保険者とはならないので教育訓練給付金を受けることができません。

ただし、現在公務員となっている場合であっても、過去1年以内に被保険者であった人は教育訓練給付を受けられる場合があります。

公務員試験対策講座も対象外

一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金(教育訓練支援給付金も含む)の支給を受けるには、厚生労働大臣があらかじめ指定する「教育訓練給付金対象講座」を受講する必要があり、指定基準があります。

厚生労働省の指定基準によると、すべての指定教育訓練は、「教育訓練の受講による効果の把握及び測定の方法」が明確に定められ、適切に公開されていなければならないとされています。

公務員試験対策講座や教員採用試験対策講座等、採用試験を目標とする教育訓練は、訓練効果が明確に測定できないため、指定の対象とはなりません。また、もっぱら雇用保険被保険者となり得ない公務員等として就くことが見込まれる職業能力を習得するもの等は、指定対象となりません。

そのため、公務員試験対策講座は教育訓練給付金の対象とはなりません

8.補足説明

公務員でない場合

公務員等でない場合(民間企業の場合)は、求職者給付及び就職促進給付の内容を上回るような退職金制度があっても、被保険者となります。

諸給与を定める「他の法令、条例、規則等」とは、雇用保険法以外の失業給付を行う法的根拠(法令、条例、規則に準じるもの)のことであり、社団法人や財団法人等が任意に作成し、規定した規則は含まれません。

社労士過去問

公務員に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。