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日本の教育訓練給付制度をざっくり解説!最初に知るべき10個の注意点 _ pr
教育訓練給付金の概要

日本の教育訓練給付制度をざっくり解説!最初に知るべき10個の注意点

教育訓練給付制度とは、教育訓練を受けたら給付金(お金)を受けることができる制度です。日本の教育訓練給付制度には、厚生労働省(ハローワーク)が実施するものと、地方自治体(都道府県・市町村)が独自で実施するものがあります。

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1.職業に関係する教育に限られる

なぜ教育を受けたらお金がもらえるのか

教育訓練給付の教育訓練はどのような講座でもよいというわけではなく、職業や仕事に関係がある講座に限られます。趣味の教室は含まれません。

なぜ、仕事に関係のある教育を受けたらお金がもらえるのでしょうか?

日本はもともと資源の少ない国なので技能や知識のある人が重宝され、採用されやすいです。さらに最近では仕事が高度になっています。昔はスマホもパソコンも電子決済もありませんでしたが、今では当たり前のように使われています。お客さんの立場では便利になったのですが、仕事の場合はそのシステムに対応しなければならないのです。インターネットで検索すればわからないことがすぐに調べられ、動画サイトを見ればたいていのことは無料で勉強できます。パソコンができるのが当たり前でそれ以上の知識がなければ仕事をすることができません。

自ら進んで教育を受けようとする人に対して教育訓練給付金を支給することで、国が教育訓練の受講を奨励しているのです。

厚生労働大臣の認定講座に限る

職業能力が向上し、雇用の安定または就職に必要な教育訓練を奨励しています。仕事に直結しない次のような講座は対象にはなりません。

給付金対象外の講座

  • 趣味的または教養的な教育訓練
  • 入門的または基礎的な水準の教育訓練

厚生労働大臣が指定した講座に限り、教育訓練給付金が支給されます。事業者単位ではなく講座単位で認定されますので、一つの事業者が教育訓練給付対象の講座と対象でない講座を実施している可能性もあります。申し込みをする前に教育訓練給付制度の指定を受けている講座かどうかを必ず確認しましょう。

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2.先払いで、講座を修了しなければならない

教育訓練の費用の一部が返ってくる

例えば、ある講座の授業料が10万円だったとします。受け取れる給付額は法律で定められているんですけれども仮に2万円だったとします。この講座を申し込む時にはいったん10万円を支払いますが、修了後に国に申請をすれば2万円が給付されます。結果として8万円で授業を受けられることになります(この8万円について詳しくは後述)。

教育訓練とは特別な訓練ではなく、一般の企業や専門学校がやっている有料の授業やセミナーのことです。資格を取ったり技能を身につけたりすることを目的として行われます。通信教育も含まれます。教育訓練を受ける時には授業料を払いますが、その授業料の一部が国から給付される、つまり補助してもらえるということです。

しかも、この制度を使うか使わないかによって授業の内容が変わることはありませんので、この制度を使えるのであれば使った方がお得です。

申し込むだけではもらえない

教育訓練給付金は講座を申し込んだらすぐに受け取れるというわけではありません

教育訓練を適切に受講していることの確認が行われます。具体的には給付金を申請する際に、短い期間の講座があれば修了証明書、長い期間の講座であれば受講中であることの証明書が必要となります。何らかの事情で修了することができなかったまたは受講することができなかったとしても授業料は返ってきませんし、給付金ももらえません。

その他、教育訓練給付制度のデメリットと教育訓練を受ける前の注意点について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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3.国から支払われるお金である

授業料の割引ではない

8万円で授業が受けられるというのは、申し込む時に差額の8万円だけを支払うという意味ではありませんつまり割引きではないということです。先に授業料である10万円を全額支払って授業を受けます。ここまでは通常の申し込みと同じです。この時点でキャンセルしたければキャンセルすればよいです。

その講座を受けて、10万円の領収書を添付して国(または役所)に申請書を出したら、あとで銀行口座に2万円が振り込まれます。なお、申請をするかしないかは本人の自由です。申請したくなければしなくてもいいです。決められた期限内に申請をしなければ2万円は返ってきません。

事業者に請求するものではない

教育訓練給付金は国の施策で支給されるものなので、講座を実施している事業者から授業料の一部が返金されるわけではありません。したがって、事業者に請求しても1円も返ってきません。国(または役所)に申請書を出さなければなりません。

返済の義務が無い

いっぱんに、補助されるお金には、返済の義務が無い給付型と、奨学金や支援金のように貸付型があります。「給付」という言葉は、返済が不要な支払いに使われます。教育訓練給付金は「給付」なので、返済の義務はありません

ただし、不正な手段で給付を受けた場合は返還する必要があります。これは給付を受ける権利が無いのに受け取ったのですから、受け取ったものをただ返すだけであり、返済ではなく「返還」です。

4.教育訓練給付と職業訓練は違う

在職中でも利用できる

教育訓練給付と似た制度で、職業訓練があります。

職業訓練については、ハローワークにパンフレットが置いてありますが、失業者支援制度ということもあります。その名の通り、仕事をしていない人が受ける訓練です。仕事を辞めて失業した人、仕事が決まらない未就職者、特別な支援が必要とされる求職者に対して行われます。

これに対して教育訓練給付は、自ら進んで教育を受け、現在の仕事に役立てたり、新しい知識を習得して転職したり、キャリアアップをするための制度なので、失業者だけでなく、在職中でもこの制度を利用することができます。また、一定の条件を満たせば何度でも利用することができます。

職業訓練がお得とは限らない

職業訓練は無料で受けられて、条件を満たせば手当も支給されるので、経済的に教育訓練を受けられない失業者は職業訓練を受けた方がよいです。しかし、職業訓練は100%公共事業なので、職業訓練と通常のコースではクラスが別です。公共事業(失業者対策)のために特別に作られたコースなので授業内容が本当に良い内容かは疑問です。

これに対して、教育訓練給付は授業料の一部だけが補助され、無料で受けられるわけではありません。しかし、給付を受けるか受けないかにかかわらず講座の申込方法や授業料の支払方法はまったく同じであり、給付を受ける人と受けない人が同じコースで同じ内容の授業を受けます。

教育訓練給付対象の講座がすべて良い授業とは限りませんが、一般的に職業訓練より良い内容であると言われています(その講座の評判にかかわるから)。

5.誰でも受け取れるわけではない

給付を受けるには条件がある

教育訓練給付は教育訓練を受けたすべての人が受け取れるわけではありません。

ところで、教育訓練給付制度は、仕事に結び付く教育訓練の受講を奨励することによって、雇用を安定させ失業者を減らすことが目的です。しかし、その趣旨に反して給付金を受け取ろうとする人がいます。給付金目当てで安易に教育訓練を受講するケースが報告されています。

給付金目当てで安易に教育訓練を受講する例

  • 仕事に結び付くかどうかを考えていない
  • 目標とする資格を活用するかどうかが分からない
  • 講座の内容を理解するだけの知識や基礎学力が無い
  • 趣味として受講してみた

国の給付金が必要のない人に支給されることを「濫給(らんきゅう)」と言いますが、財源に限りがあるので、本来利用すべきではない人に支給されることは防がなければなりません。

教育訓練の安易な受講と給付金の濫給を防止するため、数年に一度しか利用できないようにし(インターバル)、さらに受給の対象となる人を制限しています。これらの条件を満たした人だけが給付を受けることができます。その条件は、利用する教育訓練給付制度の種類によって異なるので、講座を受講する前に自分が条件に当てはまるかどうかを確認しておく必要があります。

条件を満たしているかどうかは本人にしか分からない

講座を申し込む時に担当者が教育訓練給付制度を説明する義務はありませんし、仮に教育訓練給付制度の説明があったとしても、すべての人がこの制度を利用できるとは限りません。また、教育訓練給付を受け取れるという説明があったとしても、講座の担当者には申し込みをする人が条件を満たしているかどうか分からないので、安易に説明を信じてはいけません。

教育訓練給付制度の対象になっているかどうかは本人にしか分からないのです。

給付金をもらえることを前提として講座を申し込んで、授業を受け始めてから、実は教育訓練給付制度の対象外であることに気がついたとしても、授業料は返ってきません。

CMやパンフレットで単にお金がもらえることだけを宣伝している講座がありますが、だまされないように注意するべきです。授業の内容や質ではなく、給付金で宣伝するような講座は大した内容ではないと思われます。

6.教育訓練給付制度は1つではない

ハローワークが実施しているもの

単に「教育訓練給付制度」といえば、ハローワークが実施する雇用保険の教育訓練給付のことを指します。当サイトでは特段の説明が無い限り、便宜上「教育訓練給付」はハローワークの給付制度のことを言うこととします。

教育訓練給付には、一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金、教育訓練支援給付金の4つがあり、それぞれ異なる制度です。制度が一つではないので給付される割合も、条件もそれぞれ異なります。これらの相談窓口はハローワークであり、申請も管轄のハローワークで行います。

自治体が実施しているもの

雇用保険(ハローワーク)とは関係のない教育訓練給付制度もあります。母子家庭、父子家庭、障害者、女性支援などの行政上の施策として、都道府県や市町村が支援しているものがあります。これらの制度は雇用保険に入っていない人も対象で、各都道府県や市町村の福祉事務所(だいたい市役所・区役所の中にある)が窓口となります。ハローワークは無関係です。ただし、給付金を受け取る資格があるかを調べるためにハローワークに行くことはあります。

ハローワークが実施する教育訓練給付制度の対象外であったとしても、各都道府県や市町村が実施する教育訓練給付制度の対象になっている場合があります。なお、生活保護を受けている人は求職者支援制度が利用でき、さらに生活保護費として技能習得費が支給されます。

7.ハローワークの教育訓練給付は雇用保険法に基づく

なぜ、雇用保険なのか

ハローワークが実施する教育訓練給付については、雇用保険法で定められています。

参考法令
雇用保険法 第10条第1項  失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付とする。

雇用保険の目的の一つに、「労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図る」というのがあります(雇用保険法第1条)。

簡単に言えば、教育訓練給付は、労働者の生活を安定させるための制度なのです。失業を防ぐ効果と、やむを得ず失業したときに再就職しやすくする効果もあります。

雇用保険に入っている人または入っていた人だけが対象

教育訓練給付に要する費用は事業主(会社)と被保険者(労働者)が2分の1ずつ負担することとされています(労働保険徴収法第31条)。教育訓練給付は、国庫の負担はなく、すべて私たちが納めた雇用保険料でまかなわれています。

雇用保険料を財源としているので、雇用保険に入っている人または雇用保険に入ったことがある人だけが対象となります。自分が雇用保険に入っているかどうかはハローワークで確認することができます。

なお、前述のとおり、ハローワークではなく都道府県や市町村が実施する給付については、雇用保険とは無関係です。

8.教育訓練給付は「労働保険」である

雇用保険は労働保険

教育訓練給付の財源となっている雇用保険料は、通常給料から天引きされます。

給料から天引きされる税金は、健康保険料(医療保険)、介護保険料、年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税の6つです。このうち所得税と住民税以外は「保険」という名の税金です。保険とは、何もない平和なときに皆が保険料を払っておいて、それを財源にして何か不測の事態が起きたときにそのお金を返してもらうものです。給与明細には4つの保険料を合計して「社会保険合計」と記載します。これは広い意味での社会保険です。

しかし、日本では社会保険のうち、健康、介護、年金の3つだけを「社会保険」といい、雇用保険と労災のことを特に「労働保険」と呼ぶことがあります。この場合の社会保険は働いているかいないかにかかわらず国民全員が加入しなければならないという意味で使われます。労働保険は労働者を守る保険(失業で生活ができなくなるのを防ぐ保険)なので労働者だけが加入するものです。

社会保険制度

  • 社会保険(国民全員加入義務あり)…健康、介護、年金
  • 労働保険(労働者のみ)…雇用保険、(労災)
    • 労災保険料は全額事業主負担なので給与明細に書いていない

雇用保険は労働保険であり、教育訓練給付も労働保険に含まれますので、労働者でない人(労働者でなかった人)は適用対象外です。

相談窓口が異なる

社会保険の加入者は労働者に限らないのに対して、労働保険は労働者が加入する保険なので相談窓口が異なります。健康保険・厚生年金保険のような社会保険関係の事務手続は、年金事務所、健康保険組合、市区町村役場が窓口となります。労働保険はハローワークが窓口となります。雇用保険もハローワークです。年金事務所や役場に行っても相手にしてもらえません。したがって、教育訓練給付の相談と手続はハローワークで行います。

手続きを代行してもらう場合は社会保険労務士に依頼します。社会保険+労務(労働保険・労働環境)の専門家なので、雇用保険、教育訓練給付の手続も含まれます。

なお、前述のとおり、ハローワークではなく自治体が実施する給付については、ハローワークとは無関係なので、各自治体(福祉事務所)が窓口となります。

9.教育訓練給付は「失業等給付」である

失業等給付とは雇用保険の給付のこと

雇用保険に加入している人または加入していた人は、失業や休業などがあった時に備えて保険料を払っているのですから、そのような事態が実際に起きた場合には保険給付を受けることができます。雇用保険では、保険給付として4つの給付が支給されており、これらを「失業等給付」と言います。教育訓練給付も失業等給付の一つです。失業等給付はおもに、労働者が失業した場合と労働者について雇用の継続が困難となる事由が発生した場合に必要な給付を行うものとされています。

参考法令
雇用保険法 第10条第1項  失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付とする。

しかし、教育訓練給付は、雇用の安定や再就職の促進を図ることを目的としているので、失業者だけでなく在職中の労働者も支給を受けることができます。失業「」というのは在職者の支援も含まれるという意味です。

失業等給付には教育訓練給付も含まれる

雇用保険法には「失業等給付」という用語がたくさん使われています(雇用保険の給付のことを失業等給付というので当然のことですが)。例えば、第12条は公課の禁止の規定ですが、簡単に言えば、失業等給付に税金はかからない(非課税)という意味です。

参考法令
雇用保険法 第12条  租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。

失業等給付には教育訓練給付も含まれますので、教育訓練給付として受け取ったお金にも税金はかからないということになります。このように「失業等給付」という用語を用いた文章があれば、教育訓練給付も含まれることに注意します。

教育訓練給付を理解するには教育訓練給付の規定だけを読むのではなく、雇用保険法全体を理解しなければなりません。

10.事故の責任は自己責任である

原則としてハローワークに相談すべき

教育訓練給付について分からないことがあるときに、教育訓練給付対象の講座を実施している講座の担当者に聞いても答えてくれないと思います。また、Yahoo知恵袋や掲示板で聞いても誰も適切に答えてくれる人はいないと思います。

ちなみに、当サイトは教育訓練給付制度について詳しく説明していますが、個別具体的な質問や相談はお断りしております。

それは、雇用保険関係の個人情報(正確な情報)は、本人とハローワークにしか分からないうえ、教育訓練給付制度が適用されるかどうかはハローワークに聞かないと判断できないからです。また、質問内容だけで適切に答えられる保証もないからです。雇用保険と教育訓練給付についてはハローワークが相談窓口なので、分からないことがあったら本人確認書類を持ってハローワークに行って相談するべきです。

実はハローワークの職員もよく分かっていない

ハローワークに行けば大抵のことは答えてくれますが、ハローワークの職員が正しく答えられない場合があるということに注意しなければなりません。

前述の通り、教育訓練給付金はハローワーク以外にも都道府県や市区町村が実施している場合がありますが、ハローワークの職員は雇用保険のことしか分からないので、雇用保険以外のことを聞かれても分かりません。

また、ハローワークの職員は内部の業務マニュアルに従って業務を行っていますが、業務マニュアルは1000ページを超える膨大な量なのですべての内容を暗記しているわけではありません。そのため、複雑なパターンや細かい期間計算について即座に正確に答えられるわけではありません。窓口の職員も分からないことがあると「確認してまいります」と言って、上司に確認したり分厚いマニュアル集を開いたりして調べることもあります。

窓口に来た人がすべての事実を正確に話してくれるわけではなく、将来発生することを予測することもできないので、対応する職員はその時点で聞いた内容をもとに判断して答えるしかありません。したがって、窓口で相談した時点では教育訓練給付の対象であると職員が回答したとしても、後日、申請した時点では対象外になるということもあり得ます。

給付金をもらえるという説明を信じるな

講座を申し込むときに「教育訓練給付金をもらえる」という説明があったのに給付金をもらえず、トラブルになっているケースがあります。給付金の支給はハローワークが決定するものであり、講座の申し込みをしたときに「給付金をもらえる」という説明があったとしても安易に信じてはいけません。

トラブルになっている

  • ネットで調べたら給付金を受け取れると書いてあった
  • 給付金を受け取れるという宣伝を見た
  • 給付金をもらえることを前提に申し込んだ
  • 信用して会社を辞めたが、給付金をもらえなかった
  • 給付金をもらえないという説明を受けたが後で調べてみたら、もらう権利があった

給付金をもらえなくても授業料は返ってきません。完全に自己責任なのです。

また、ハローワークの職員の説明が間違っていた場合、不服申し立てや正式裁判になるケースもありますが「相談には乗ったが、聞いた範囲で一般論として答えたにすぎず、確実に給付金を受け取れることを保証したわけではない」と言われたら終わりです。録音していない限り、泣き寝入りをするしかないのです。

当サイトも責任はありません

万が一、当サイトの記述が間違っていたとしても、当サイトはハローワークとは何の関係もないので何の権限もありませんし、何の責任もありません。

というわけで、当サイトに書いてあることについては万全を期しておりますが、誤っていたとしてもどうすることもできません(誤った記述をしれっと修正するだけ)。当サイトを利用するときは、教育訓練給付制度の基本的な知識を得るのに利用していただき、実際に給付金の手続を行う場合には、ハローワークに確認しながら自己責任で行うようにしてください。