特定一般教育訓練給付金とは、雇用保険の加入者や離職者が厚生労働大臣の指定する教育訓練(1年以内の特定一般教育訓練)を受講し、修了すると、ハローワークから教育訓練経費の40%(上限20万円)が支給される制度です。対象者は一定の雇用保険加入期間を満たす必要があります。さらに条件を満たした場合は支給率が50%となります。
1.特定一般教育訓練給付金のざっくりとした説明
まず、ハローワークで「訓練前キャリアコンサルティング」を受けた後、受給資格の確認を受けます。

厚生労働大臣から「特定一般教育訓練」の指定を受けている講座を申し込み、最初に入学料と受講料を支払います(いったん全額支払う)。

その後、講座を修了してハローワークに申請すると、支払った費用の40%が「特定一般教育訓練給付金」として一括で支給されます。さらに修了後に一定の条件を満たした場合は支給率が50%となります。

2.対象者【誰が】
特定一般教育訓練給付金の対象者は、雇用保険に1年または3年以上加入した人です。
在職者または1年以内の離職者
特定一般教育訓練の受講開始日に、雇用保険の被保険者である人(在職者)または被保険者であった人(離職者)に限られます。離職者だけでなく、現在在職している人も対象となります。なお、離職者については、離職の翌日から1年以内(最大20年まで延長できる)に教育訓練を開始する場合に限ります。

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年齢制限、回数制限、給付制限
特定一般教育訓練給付金の年齢制限、回数制限はありません(給付金額の上限はあります)。
ただし、教育訓練給付金を受給したことがある場合は、今回の受講開始日が、前回の教育訓練給付金の支給決定日から3年以上経過していることが必要です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。
雇用保険に1年または3年以上加入している
教育訓練の受講開始日までの間に雇用保険に加入していた期間(支給要件期間)が3年以上であることが条件となっています。ただし、初めて教育訓練給付金を受給する場合、支給要件期間は3年ではなく、1年でよいです。
- 初めて受給する:支給要件期間1年以上
- 過去に受給したことがある:支給要件期間3年以上

この支給要件期間は、同一の事業主である必要はなく、転職しても通算されます。ただし、1年以上雇用保険に加入していない未加入期間があると、それ以前の期間は通算されません。

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3.対象となる教育訓練【何を】
特定一般教育訓練
特定一般教育訓練給付金の対象となる講座は、民間事業者の行う講座のうち、あらかじめ厚生労働大臣が「特定一般教育訓練」として指定した講座です。
特定一般教育訓練とは、民間事業者の行う講座のうち、即効性のあるキャリア形成ができ、社会的ニーズが高く、かつ、特に就職実現・キャリアアップとの結びつきの強さを客観的に評価できる教育訓練として厚生労働大臣が指定したものをいいます。原則として1か月以上1年以内の短期の講座を想定したものであり、「特定一般」は一般教育訓練のなかでも特に職業の安定につながりやすいものを指します。
- 資格取得:介護職員初任者研修、大型自動車第一種・第二種免許、税理士など
- デジタル関係:ITSSレベル2以上(基本情報技術者相当)
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特定一般教育訓練の探し方
特定一般教育訓練指定講座についてはハローワークで閲覧できるほか、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で探すこともできます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
4.給付される条件
特定一般教育訓練給付金は、対象者が特定一般教育訓練を「修了」することで給付されます。
特定一般教育訓練が始まる前に教育訓練施設に対して受講申し込みをしますが、このとき、教育訓練施設に対して入学料、受講料をいったん全額支払います。

特定一般教育訓練給付金を申請するには、各講座で定められた修了認定基準(出席率、確認テスト、レポート、修了試験など)をクリアし、教育訓練施設に「修了」を認定してもらわなければなりません。特定一般教育訓練給付金の支給申請には、教育訓練施設が発行する「教育訓練修了証明書」の提出が必要となります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
5.給付金額【いくら】
特定一般教育訓練給付金の計算方法(40%の場合)
特定一般教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の40%となります(追加給付の条件を満たして給付率が50%となる場合については後述)。支給額の上限は20万円とし、4,000円を超えない場合は支給されません。
特定一般教育訓練給付金の支給額=教育訓練経費×40%
教育訓練経費
特定一般教育訓練給付金の計算の基礎となる「教育訓練経費」は、本人が教育訓練施設に対して支払ったすべての経費ではありません。教育訓練経費の対象とならない経費を含めて給付金の支給申請をしてはいけません。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
6.手続きの場所【どこで】
特定一般教育訓練給付金は、雇用保険給付として国(ハローワーク)の予算で実施しています。つまり、国が徴収した雇用保険料を使って、ハローワークが給付しています。
修了証明書などの申請に必要な書類は教育訓練施設が発行しますが、給付金の申請はハローワークでしなければなりません。郵送または電子申請の場合もハローワーク宛てです。
ハローワークは、原則として申請者本人の住居署を管轄するハローワークです。
7.申請方法【どのように】
給付までの流れ
講座を申し込んだだけでは支給されません。特定一般教育訓練給付金を申請するには修了証明書の提出が必要となります。
- Step1受給資格確認(必須)
・ジョブ・カードを事前に作成しておく
・訓練前キャリアコンサルティングを受ける(受講開始前の1年以内)
・ジョブ・カードを、キャリアコンサルタントのチェックを受けて完成させる
・受講開始の1か月前までにハローワークで受給資格の確認を受ける - Step2特定一般教育訓練の受講と修了
・特定一般教育訓練の申込をする(いったん全額支払う)。
・特定一般教育訓練の受講
・修了(修了条件をクリアすること) - Step3申請手続き
・講習修了日の翌日から1か月以内に、ハローワークで支給申請を行う。
・支給決定後7日以内に口座振り込み(40%給付) - Step4追加給付(条件を満たした場合)
・教育訓練の修了、資格の取得、一般被保険者としての就職をしたら、ハローワークで追加給付の支給申請を行う。
・支給決定後7日以内に口座振り込み(10%分追加給付)
支給要件照会
特定一般教育訓練給付金の受給資格があるかどうかをハローワークで調べてもらうこと(支給要件照会)ができますので、あらかじめ確認しておいたほうが良いです。
さらに、受講を希望する教育訓練講座が本当に厚生労働大臣の指定を受けているかどうかについても、ハローワークに照会することができます。あらかじめ確認しておいた方が良いでしょう。
受給資格確認(必須)
特定一般教育訓練の受講申し込みする前に、住居所を管轄するハローワークに行って、訓練前キャリアコンサルティング、ジョブ・カード作成、受給資格確認の手続きをする必要があります。この手続きは必須です。
これらの事前手続きを終えたことを証明する「受給資格確認通知書」がなければ、特定一般教育訓練給付金の支給を受けることができません。

訓練前キャリアコンサルティング
特定一般教育訓練給付金の支給を受けたい人はあらかじめジョブ・カード(キャリアプラン、職務経歴、職業能力証明を記入する書類)を作成します。
そして、特定一般教育訓練の受講を前提として「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。このとき、事前に作成したジョブ・カードの添削を受けながら、受講予定の特定一般教育訓練についてコンサルティングを受けます。ジョブ・カード作成の相談をすることも可能です。
訓練前キャリアコンサルティングは受講申し込みをする前に行います。訓練前キャリアコンサルティングと受給資格確認が終わるまで受講申し込みをしてはいけません。
受給資格確認、受給資格決定
特定一般教育訓練の受講開始14日前までにハローワークに「受給資格確認票」を提出して、受給資格確認の手続きをしなければなりません。受給資格確認の手続きには、訓練前キャリアコンサルティングの時の担当コンサルタントが、受講予定の特定一般教育訓練についてのコメントを記載したジョブ・カードを提出します。
ハローワークで受給資格決定を受けると受給資格確認通知書が交付されます。修了後の特定一般教育訓練給付金の支給申請には、受給資格確認通知書を添付しなければなりません。
- 特定一般教育訓練給付金の受給資格確認の方法と提出書類
- 教育訓練給付の受給資格確認通知書、受給資格者証の見方と注意事項
- 【法令改正】教育訓練給付の受給資格確認票の提出期限の改正(令和6年4月1日施行)
特定一般教育訓練の申し込みと受講
特定一般教育訓練の申込をするときには受講費用(入学金、教材費、授業料など)を全額支払います。
特定一般教育訓練給付金の支給申請
特定一般教育訓練給付金の申請は、原則として受講修了日の翌日から起算して1か月以内に、住居所を管轄するハローワークに行って「教育訓練給付金支給申請書」を提出します。このとき教育訓練施設が発行する「教育訓練修了証明書」を添付します。
やむを得ない理由によりハローワークへの出頭が困難な場合は、代理人または郵送により手続きを行うことができます。
- 特定一般教育訓練給付金の支給申請手続まとめ
- 給付金の支給申請をハローワークに行かずに、郵便、電子申請、代理で行う方法
- 【時効】教育訓練給付金の申請期限を過ぎても、2年以内であれば申請できることがあります
8.給付金の支給【いつもらえるのか】
ハローワークで支給が決定されたら、決定から7日以内に支給されます。特定一般教育訓練給付金は、支給決定を受けた本人の普通預(貯)金口座への口座振込みによって支給します。
9.追加給付の条件を満たした場合(50%)
2024年(令和6年)10月1日以降に特定一般教育訓練の受講を開始し、当該教育訓練を修了し、あらかじめ定められた資格の取得等をし、受講修了日の翌日から起算して1年以内に雇用された場合または雇用されている場合、教育訓練経費の50%をあらためて計算します。
詳しくはこちらをご覧ください。
受講期間中にすでに40%に相当する額が支給されているので、その差額分(10%分)が一括で支給されます。ただし、50%に相当する額の上限は、25万円とし、4,000円を超えない場合は支給されません。
補足:詳しいルールとよくある質問
補足1:雇用保険の教育訓練給付制度
特定一般教育訓練給付金は雇用保険の教育訓練給付の一つであり、2019年(令和元年)10月1日に創設された制度です。資格取得やキャリアアップを目的とした通信講座やスクールなどが対象で、働きながら学び直しやスキルアップを支援する仕組みです。正式名称は「特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金」です(雇用保険法施行規則第101条の2の11の2)。
教育訓練給付制度について、詳しくはこちらをご覧ください。
他の給付金との違いについて、詳しくはこちらをご覧ください。
- 一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金の違い、なぜ給付率が違うのか
- 一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金の違い
- 教育訓練「支援」給付金と教育訓練給付金の違い、教育訓練給付と教育訓練給付金の違い
- 同時に複数の教育訓練給付金を受給する(併用する)ことは可能か
雇用保険について、詳しくはこちらをご覧ください。
雇用保険の教育訓練給付以外の給付金について、詳しくはこちらをご覧ください。
- 短期訓練受講費とはどのような制度か?【短期訓練受講費まとめ】
- 求職者支援訓練、職業訓練受講給付金10万円の概要【特定求職者支援制度】
- ひとり親家庭(母子家庭、父子家庭)自立支援事業、給付金まとめ
- 中国残留邦人等の就労に役立つ日本語等の資格取得のための教育訓練給付金事業
補足2:非課税
特定一般教育訓練給付金は課税されません。つまり、特定一般教育訓練給付金の支給を受けたとしても、所得税、相続税、住民税等の税金は非課税となりますから、確定申告をする必要はありません。また、扶養に入る際の配偶者控除や扶養控除の所得金額に含める必要もありません。
社会保険(健康保険)においても、特定一般教育訓練給付金は一時的な収入(一時金)に該当するため、被扶養者の「年間収入」には含まれません。
補足3:不正受給処分
偽りその他不正の行為により特定一般教育訓練給付金の支給を受けた場合、不正受給処分(返還命令、納付命令等)を受けます。不正受給処分について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
補足4:未支給の特定一般教育訓練給付金
特定一般教育訓練給付金の支給を受けることができる者が支給されることなく死亡した場合、その遺族が特定一般教育訓練給付金の支給を請求することができます。
未支給の特定一般教育訓練給付金の請求について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
補足5:社労士過去問
教育訓練給付金の概要、支給日、支給方法に関する社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。