教育訓練休暇給付金教育訓練給付金制度まとめ

教育訓練休暇給付金の制度をわかりやすく解説します【教育訓練休暇まとめ】

教育訓練休暇給付金は、雇用保険の一般被保険者である労働者が事業主と合意した上で社内制度に基づき、教育訓練を受けるために30日以上連続した無給の休暇を取得した場合に、賃金の一定割合が支給される制度です。

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1.教育訓練休暇給付金の簡単な説明

労働者が離職したときには失業給付(基本手当)が支給されますが、離職することなく休暇を取って教育訓練を受講する場合は、離職時と同様に失業給付(基本手当)に相当する給付として「教育訓練休暇給付金」を支給することで、教育訓練休暇期間中の生活費を保障する制度です。

これは離職を未然に防ぐための給付であって、法律的には失業給付(基本手当)を前倒しして支給されたのとほぼ同じ取り扱いとなります。

注:失業給付(基本手当)は28日ごとの給付ですが、教育訓練休暇給付金は30日ごとの給付となります。

宅建士、電気主任技術者のように有資格者が社内で優遇される場合に使える制度ですが、資格取得直後に離職した場合は失業給付等の給付金が受けられなくなる等のデメリットが考えられます。ほかの休暇制度、給付金との関係についてはこちらの記事をご覧ください。

2.対象者【誰が】

対象となる労働者

教育訓練休暇給付金は雇用保険法上の保険給付であるため、その対象となる労働者は雇用保険法が適用される一般被保険者に限られます。雇用保険に加入していない人は対象外です。

注:教育訓練給付金は一般被保険者と高年齢被保険者が対象ですが、教育訓練休暇給付金は一般被保険者のみであることに注意します。

就業規則等(就業規則、就業規則に準ずる社内規定又は労働協約)に基づき、労働者本人が自ら希望したことにより、教育訓練等を受講するため無給で休暇を取得した場合に支給されます。あくまで本人の任意の希望によって休暇を取る必要があり、事業主の業務命令であってはなりません。

注:このことは事前に事業主が証明書を提出して証明する義務があります。したがって、会社にバレずに支給を受けることは不可能です。

被保険者期間12か月以上、算定基礎期間5年以上

教育訓練休暇給付金支給対象者となる要件は、みなし被保険者期間12か月以上かつ算定基礎期間5年以上です。

みなし被保険者期間とは、教育訓練休暇開始日の前日から遡って2年の間における「雇用保険の被保険者であった期間」であり、2年間で通算して12か月以上必要です。

算定基礎期間とは、教育訓練休暇開始日の前日における「雇用保険の被保険者であった期間」であり、5年以上必要です。

注:教育訓練休暇給付金の基準日は「教育訓練休暇開始日の前日」です。教育訓練受講開始日ではありません。

離職期間があったとしてもそれが12か月以内で、失業給付等を受給していなければ離職前(前職)の期間を通算することができます。「雇用保険の被保険者であった期間」については、一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者の種類を問いません。複数の種類の被保険者になったことがあるのであればすべて合算してよいです。

注:教育訓練休暇給付金の対象は一般被保険者のみですが、過去の「被保険者であった期間」は一般、高年齢、短期雇用特例、日雇労働の種類を問わずすべて合算してかまいません。

対象となる事業所

対象となる休暇制度

雇用保険適用事業所である事業主があらかじめ、業務命令によらない30日以上の無給の教育訓練休暇を取得する制度を創設し、就業規則等の整備をしておく必要があります(休暇取得の制度を定めるのは義務ではない)。

次のような休暇制度は教育訓練休暇給付金の支給対象外です。

  • 業務命令により教育訓練を受講する場合の休暇制度
  • 30日未満の休暇制度
  • 有給の休暇制度

なお、休暇の制度は必ずしも使途を教育訓練受講に限定している必要はなく、使途を定めない休暇制度(サバティカル休暇制度等)で教育訓練受講に利用してもよいことになっている場合でも差し支えありません。

このような休暇制度を定めていない会社は対象外です。また、制度利用の対象者を限定している場合は、当該労働者がその制度の対象でなければなりません。

就業規則について

当該休暇制度を定めるのは就業規則でも労働協約でもよいです。

ただし、過去にさかのぼって制度を適用することはできないので、制度を定めている就業規則が有効になった後でなければ教育訓練休暇給付金の対象とはなりません。つまり、教育訓練休暇開始日は、就業規則の労働者への周知、労働基準監督署への届出日、就業規則等の施行日(又は改定日)より後でなければなりません。

常時雇用する労働者が10人未満で就業規則の作成・届出義務がなく、就業規則を労働基準監督署に届け出ることが義務づけられていない事業所の場合は、就業規則又は就業規則に準ずる社内規定を作成し、当該就業規則において教育訓練休暇制度を設けて周知していることについて、事業主と労働組合等の労働者代表による申立書を作成することで代替可能です。

3.対象となる教育訓練【何を】

厚生労働大臣指定の教育訓練給付金対象講座(教育訓練給付金の講座指定を受けた教育訓練実施者が行う教育訓練)だけでなく、次のような教育訓練も対象となります。

  • 学校教育法に基づく大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校又は各種学校が提供する教育訓練
  • 教育訓練休暇給付金の支給を受けようとする一般被保険者の疎明をもとに、住居所管轄安定所の長が制度趣旨に合致することを確認したもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号等の取得など)

なお、教育訓練が教育訓練給付金対象講座であれば、教育訓練休暇給付金と教育訓練給付金を両方受給できます。教育訓練休暇給付金を受給しても教育訓練給付金の支給要件期間には影響しません。

4.給付される条件

連続30日以上の無給休暇

労働者本人が業務命令によらず自らの意思で教育訓練を受けるために就業規則等に基づき取得する休暇で、連続した30日以上の無給の休暇を取得する場合に支給されます。

会社が、休暇中の生活費補助のための手当を支給する場合は「無給」の休暇を取得したといえないことから、教育訓練休暇給付金の対象外となります。なお、資格取得に必要な費用(受講料や資格試験受験料等)を補助するための手当を一時金として支給するのは差し支えありません。

そして、教育訓練休暇開始日から起算して1年以内に限られます(受給期間、後述)。1年を超えた休暇は対象外です。ただし、妊娠、出産、育児等の理由により30日以上教育訓練を受けることができない場合、その日数分だけ受給期間を延長することができます(上限は4年)。

事業主の承認を得ること

休暇を取得するときは、就業規則等に基づき、教育訓練休暇の期間、教育訓練の目標、教育訓練の内容、教育訓練の実施方法等を明らかにして事業主の承認を得る必要があります。また、教育訓練休暇の期間等を変更する場合も、同様に事業主の承認を得る必要があります。

就業や解雇が予定されていないこと

教育訓練休暇給付金は、在職者が休暇を取得して教育訓練に専念できるようにするための給付であることから、休暇期間中に就業させてはいけません。休暇開始の時点で就業する予定がある場合は受給資格がありません。

ただし、教育訓練休暇開始時点では予期し得ない事由により、教育訓練休暇開始後に一定の就業が生じた場合には、教育訓練休暇給付金の受給資格決定を取り消すのではなく、当該就業した日について教育訓練休暇給付金を支給しないものとします。就業しなかった日の分だけ支給されます(後述)。

また、事業主において当該労働者の解雇や雇止め、休業を予定している場合、教育訓練休暇給付金の対象外です。

5.給付金額【いくら】

教育訓練休暇給付金の支給額は、教育訓練休暇取得の認定を受けた日数に、日額を乗じた額です。教育訓練休暇開始日から起算して30日ごとに区切って計算します。

教育訓練休暇給付金=給付日数×給付日額

所定給付日数

教育訓練休暇給付金を支給する日数は教育訓練休暇を取得した日数であり、基本手当の通常の所定給付日数が上限となります。ただし、基本手当とは異なり、教育訓練休暇給付金支給対象者が年齢、理由及び就職が困難な者であるかどうかによる所定給付日数の差はありません。

算定基礎期間10年未満の場合の所定給付日数は90日、10年以上20年未満の場合は120日、20年以上の場合は150日です。

就業した日は支給されない

次の場合は、給付日数から除外されます。

  • 自己の労働等によって収入を得た場合(収入の発生する就労等の活動を行った日数)
  • 教育訓練休暇以外の休業・休暇を取得した場合

自己の労働等によって収入を得た場合

「自己の労働等」とは、雇用契約を締結して労働した場合に限らず、自営業を営んだ場合、他人の仕事の手助けをして収入を得た場合、有償ボランティア活動をした場合等を含みます。就労場所を問いません。

この場合の収入は、あくまで当該就労の対価として支払われるものとし、当該就労の事実と関係のない収入は含みません。例えば、会社が資格取得に必要な費用を補助するための手当を支給した場合、当該手当は福利厚生であって就労の対価として支払われる訳ではないため「収入」には当たりません。

教育訓練休暇給付金は時間単位ではなく日単位で計算するので、就労時間を問わず、労働等により収入を得た場合にはその日単位で不認定・不支給となるのであって、就労時間による減額調整ではありません。

教育訓練休暇以外の休業・休暇を取得した場合

教育訓練休暇以外の休業・休暇とは、有給、無給、又は手当が支給されているかどうかを問わず、育児休業や介護休業、病気休暇、有給休暇等、教育訓練以外を目的とする休暇・休業を取得した日のことです。

給付日額の算定

教育訓練休暇給付金の日額は、基本手当日額と同じ金額であり、教育訓練休暇開始日の前日の年齢を基準にして決定します。教育訓練休暇給付金の日額(基本手当日額)は賃金日額の50~80%程度(上限あり)です。

参考リンク

【シミュレーション】失業手当(失業保険)の給付総額を計算してみよう – 転職・求人doda(デューダ)
https://doda.jp/guide/naiteitaisyoku/koyouhoken/keisan-simulation/#movingPosition02

賃金日額

教育訓練休暇開始時の賃金日額は、教育訓練休暇開始日の前日から遡って直近の完全な賃金月6か月の間に支払われた賃金の総額を180で除して得た額を算定します。ただし、日給者(短時間労働者を除く)の場合は、基礎期間に支払われた賃金の総額をその期間中の労働日数で除して得た額の100分の70と、原則どおり算出した賃金日額とを比較し、いずれか大きいものを賃金日額とします。

完全な賃金月とは、賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までの間を1か月として算定し、当該1か月間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月です。

日額の変更

教育訓練休暇給付金の日額(基本手当日額)は毎年8月1日に改定されます。8月1日に給付日額の変更があった場合、休暇のうち7月31日までの分は変更前の日額が適用され、8月1日以降は変更後の日額が適用されます。

6.手続きの場所【どこで】

教育訓練休暇給付金に係る手続のうち、事業主が行うものについては事業所管轄のハローワーク、労働者本人が行うものについては本人の住居所を管轄するハローワークで行います。

7.申請方法【どのように】

教育訓練休暇取得確認票、賃金月額証明書

まず、事業主が教育訓練休暇制度を就業規則または労働協約等に規定します。なお、業務命令によらず本人が自発的に取得する休暇制度であることを明記しなければなりませんが、必ずしも「教育訓練休暇制度」という名称である必要はありません。

この制度を用いて労働者本人が休暇を取得する場合、労働者本人が「教育訓練休暇取得確認票」を記入して事業主に提出します(ハローワークではなく事業主に提出することに注意)。事業主は必要事項を記入して労働者本人に返却します(取得確認票は支給申請に必要です)。

事業主は、休暇開始日の翌日から起算して10日以内に賃金支払い状況等を記載した「雇用保険被保険者教育訓練休暇開始時賃金月額証明書(様式第10号の2の2)」に、就業規則等の写し、賃金支払いの確認書類等を添付して、事業所管轄のハローワークに提出します。賃金月額証明書は3枚複写式の様式なので、ハローワークに備え付けのものを使用します(ダウンロードはできません)。

教育訓練休暇給付金支給申請書

ハローワークは、事業主に対して「賃金月額証明票(賃金月額証明書の事業主控え、本人手続用)」「教育訓練休暇給付金支給申請書」が交付されますから、このうち賃金月額証明票(本人手続用)と教育訓練休暇給付金支給申請書を本人に渡します。

労働者本人は、事業主から賃金月額証明票(本人手続用)と支給申請書の交付を受けた後、速やかに支給申請書に必要事項を記載し、当該賃金月額証明票(本人手続用)及び事業主の証明を受けた取得確認票を添付して住居所管轄のハローワークに提出します。

教育訓練休暇給付金受給資格決定通知が交付されます(受給資格決定通知は支給申請に必要です)。このとき、初回の認定日が指定されます。

注:支給申請書だけでは支給されません。「支給申請書」という名称ですが、実質「受給資格確認票」のようなものです。

教育訓練休暇取得認定申告書

教育訓練休暇給付金支給対象者は、休暇開始日から起算して30日ごと、あらかじめ指定された認定日に、「教育訓練休暇取得認定申告書」に必要な書類を添えて、来所又は郵送等により住居所管轄のハローワークに提出します。ただし、やむを得ない理由がある場合には当該認定日から起算して7日以内に提出することができます。

注:基本手当における失業認定と異なり、教育訓練休暇取得の認定に係る手続については、ハローワークへの出頭は必須ではなく、郵送等により提出することができます。

教育訓練休暇給付金の支給額が決定した場合、支給決定通知を交付されます。このとき、次回の認定日が指定されます。

注:認定申告書」という名称ですが、実質「給付金請求書」のようなものです。

8.給付金の支給【いつもらえるのか】

教育訓練休暇給付金の支給は、認定された日(支給決定通知の交付日)の翌日から起算して7日以内に、原則として本人の普通預(貯)金口座へ振込みます。

9.所定給付日数と受給期間の関係

残日数がある場合

教育訓練休暇給付金の日数は実際に教育訓練休暇を取得した日数であって、所定給付日数は教育訓練休暇給付金の日数の「上限」です。休暇が所定給付日数より短い場合は、残日数(消化されない日数)があります。

このように、教育訓練休暇の終了後、教育訓練休暇給付金の所定給付日数に残日数がある場合、受給期間内(最初の教育訓練休暇開始日から起算して1年以内)であれば、事業主の承認を得た上で再度の教育訓練休暇を取得することができます。教育訓練休暇の回数に制限はありません。

受給期間内で残日数の範囲内における再度の教育訓練休暇を取得して給付金を申請したい場合は、本人が記載し、事業主の承認を得た取得確認票、受給資格決定通知及び支給申請書を、当該新たな教育訓練休暇を開始後、速やかにハローワークに提出します(改めて受給資格の確認を行う必要はありません)。

認定申告書等の提出が遅れた場合

事業主又は教育訓練休暇給付金の支給を受けようとする一般被保険者の都合で手続きが遅れ、認定日から起算して7日以内に認定申告書等の提出ができなかった場合は、当該認定日の直前の30日間について教育訓練休暇を取得したことの認定を行うことができません。そのため、当該期間に対する教育訓練休暇給付金を支給できず、遡って支給することもできません。

この場合、当該支給対象者に係る教育訓練休暇給付金の所定給付日数は減少しませんが、受給期間(最初の教育訓練休暇開始日から起算して1年以内)を徒過した以降の期間については、教育訓練休暇給付金を支給することができません。

10.補足

未支給教育訓練休暇給付金

教育訓練休暇給付の支給を受けようとする一般被保険者又は教育訓練休暇給付金支給対象者が教育訓練休暇開始後に死亡した場合において、その者に支給されるべき教育訓練休暇給付金のうち、まだ支給されていないものがあるときは、遺族が「未支給失業等給付申請書」により、その未支給の教育訓練休暇給付金を請求することができます。

手続きは他の未支給給付金と同様です。提出する書類は次の通りです(既に死亡者が提出している場合及び書類が交付されていない場合には不要)。

  • 未支給失業等給付申請書
  • 当該死亡者の受給資格決定通知又は支給決定通知
  • 当該死亡者の賃金月額証明票(本人手続用)及び支給申請書
  • 当該死亡者の取得認定申告書

未支給教育訓練休暇給付金の支給は、死亡の日以後について行うことができません。ただし、死亡時刻がおおむね正午以後である場合は、死亡した当日についても教育訓練休暇取得の認定を行います。