社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「支給要件期間の計算」です。この分野からは過去に平成27年択一問4選択肢オ、平成21年択一問6選択肢C、平成16年択一問6選択肢A,D、平成13年択一問6選択肢Bで出題されています。
1.社労士過去問分析
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重要論点チェックテスト
「支給要件期間の計算」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q短期雇用特例被保険者であった期間も支給要件期間に通算できますか?
- A
はい。支給要件期間は、同一の事業主の適用事業に引き続いて雇用された期間(日々雇われているのではなく継続的に雇われている期間)であり、日雇労働被保険者以外の被保険者であった期間が対象となります。
- Q転職した場合も支給要件期間に通算できますか?
- A
はい。2つ以上の適用事業に雇用され、その間に離職期間がある場合であっても通算することができます。ただし、その離職期間が1年を超える場合は、それより前の期間は支給要件期間から除外されます。
- Q過去に教育訓練給付金を受給した場合、その支給日より前は支給要件期間から除外されますか?
- A
いいえ。過去に教育訓練給付金の受給したことがある場合は、その教育訓練に係る受講開始日より前の期間は支給要件期間から除外されます。前回の教育訓練の受講開始日以降の支給要件期間が3年以上になれば受給できます。
- Q過去に基本手当を受給した場合、その支給日より前は支給要件期間から除外されますか?
- A
いいえ。支給要件期間の計算に影響があるのは、過去に「教育訓練給付金」の支給を受けたことがある場合であり、基本手当や傷病手当は無関係です。
支給要件期間関連の過去問
支給要件期間の要件についての過去問はこちらの記事をご覧ください。
令和4年選択式Dで支給要件期間の事例式の問題が出題されました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.平成27年択一問4選択肢オ
令和3年(2021年実施、第53回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問2の選択肢Bです。
問題
平成27年(2015年実施、第47回)の社労士試験では、択一式試験・雇用保険法問4で、教育訓練給付に関連する問題が出題されました。そのうち、選択肢オは次のような記述でした。
択一式試験・雇用保険法(選択肢オのみ抜粋) 〔問 4〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。 なお、本問において、「教育訓練」とは、雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練のことをいう。 オ 適用事業Aで一般被保険者として2年間雇用されていた者が、Aの離職後傷病手当を受給し、その後適用事業Bに2年間一般被保険者として雇用された場合、当該離職期間が1年以内であり過去に教育訓練給付金の支給を受けていないときには、当該一般被保険者は教育訓練給付金の対象となる。
正解
選択肢オの記述は正しいです。
解説
初回に限り1年以上または2年以上
現時点で一般被保険者である場合、教育訓練給付対象者となります。教育訓練給付対象者が教育訓練の受講開始日において一般被保険者であり、その教育訓練を修了した場合、支給要件期間が3年以上であるときに教育訓練給付金が支給されます。
このことは、雇用保険法第60条の2第1項に規定されており、一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金に共通する規定です。
ただし、今回の教育訓練の受講開始日より前に教育訓練給付金の支給を受けたことがない場合、一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金の場合は支給要件期間1年以上、専門実践教育訓練給付金の場合は支給要件期間2年以上でよいです(雇用保険法附則第11条、雇用保険法施行規則附則第24条)。
適用事業Bに2年間一般被保険者として雇用されている在職者は、支給要件期間が2年以上となるので、どの給付金であっても支給要件を満たしています。したがって、当該一般被保険者は教育訓練給付金の対象となるので、選択肢オの記述は正しいと言えます。
支給要件期間の通算と傷病手当
支給要件期間は、同一の事業主の適用事業に引き続いて雇用された期間ですが、2つ以上の適用事業に雇用された場合、一般被保険者であった期間を通算することができます。ただし、離職期間が1年を超える場合と教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合は、それより前の期間が支給要件期間から除外されます。
選択肢オは、「離職期間が1年以内であり過去に教育訓練給付金の支給を受けていない」ので、適用事業AとBの期間を通算することができます。この条件に傷病手当の支給の有無は無関係です。
したがって、選択肢オの支給要件期間は4年となります。
3.平成21年択一問6選択肢C
令和3年(2021年実施、第53回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問2の選択肢Bです。
問題
平成21年(2009年実施、第41回)の社労士試験では、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Cで類題が出題されました。
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、この問において「教育訓練」とは雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練とし、「教育訓練の受講のために支払った費用」とは雇用保険法第60条の2第4項に規定する厚生労働省令で定める範囲内のものとする。 C 受講開始時に適用事業Aで一般被保険者として雇用されている者が、その前に適用事業Bで一般被保険者として雇用されていた場合、Bの離職後に基本手当を受給したことがあれば、教育訓練給付金の支給要件期間の算定に当たって、Bにおける雇用期間は通算されない。
正解
選択肢Cの記述は誤りです。
解説
基本手当を受給したことは無関係なので通算することができます。なお、教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合は、それより前の期間が支給要件期間から除外されます。
4.平成16年択一問6選択肢A
平成16年(2004年実施、第36回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、本問において一般被保険者とは、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除いた被保険者をいう。 A 受講開始時に甲事業所で一般被保険者として雇用されている者が、その前に乙事業所で一般被保険者として雇用されていた場合、甲事業所で現在雇用されている期間に係る一般被保険者となった日と乙事業所で一般被保険者でなくなった日との間が1年以内でなければ、教育訓練給付金における支給要件期間として通算されない。
正解
選択肢Aの記述は正しいです。
解説
雇用保険法第60条の2第2項第1号の規定のとおり、2つの事業所で雇用された場合、その2つの間の離職期間が1年以内でなければ支給要件期間として通算されません。したがって、選択肢Aの記述は正しいと言えます。
5.平成16年択一問6選択肢D
平成16年(2004年実施、第36回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Dです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Dのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、本問において一般被保険者とは、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除いた被保険者をいう。 D 過去に教育訓練給付金を受給したことがある者は、過去の受講終了日以降の支給要件期間が3年以上にならなければ、新たに教育訓練給付金を受給する資格を有しない。
正解
選択肢Dの記述は誤りです。
解説
雇用保険法第60条の2第2項の規定のとおり、当該教育訓練の受講開始日までに教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、前回の教育訓練の受講開始日より前の期間は支給要件期間に含まれません。支給要件期間の基準日は受講開始日です。
過去の受講終了日ではなく、前回の教育訓練の受講開始日以降の支給要件期間が3年以上にならなければならないので、選択肢Dの記述は誤りです。
6.平成13年択一問6選択肢B
平成13年(2001年実施、第33回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Bです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Bのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 B 過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合でも、その教育訓練の開始日以降の支給要件期間(被保険者であった期間)が5年以上あれば、過去の教育訓練給付金の受給と合わせて4回まで、新たに教育訓練給付金を受ける資格が認められる。
正解
選択肢Bの記述は誤りです。
解説
過去の受講開始日以降の支給要件期間が3年以上で、前回の支給決定日から3年超が経過していることなど、他の要件を満たせば原則として何回でも受給可能です。したがって、選択肢Bの記述は誤りです。
7.補足説明
過去に教育訓練給付金の支給を受けていた場合
教育訓練給付金の支給を受けていた場合、その教育訓練の受講開始日より前は支給要件期間に入れることができません。また、教育訓練給付金の支給を受けたときの支給決定日から3年を経過していなければ、教育訓練給付金の支給を受けることができません。