社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「支給要件期間」です。この分野からは過去に平成29年択一問5選択肢C、平成27年択一問4選択肢オ、平成21年択一問6選択肢A,C、平成16年択一問6選択肢A,D、平成13年択一問6選択肢Bで出題されています。
1.基本手当の受給
例題(平成21年択一問6選択肢C)
平成21年(2009年実施、第41回)の社労士試験では、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Cで類題が出題されました。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋)
〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、この問において「教育訓練」とは雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練とし、「教育訓練の受講のために支払った費用」とは雇用保険法第60条の2第4項に規定する厚生労働省令で定める範囲内のものとする。
C 受講開始時に適用事業Aで一般被保険者として雇用されている者が、その前に適用事業Bで一般被保険者として雇用されていた場合、Bの離職後に基本手当を受給したことがあれば、教育訓練給付金の支給要件期間の算定に当たって、Bにおける雇用期間は通算されない。
正解
選択肢Cの記述は誤りです。
解説
基本手当を受給したことは無関係なので通算することができます。なお、教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合は、それより前の期間が支給要件期間から除外されます。
2.傷病手当の受給
例題(平成27年択一問4選択肢オ)
平成27年(2015年実施、第47回)の社労士試験では、択一式試験・雇用保険法問4で、教育訓練給付に関連する問題が出題されました。そのうち、選択肢オは次のような記述でした。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢オのみ抜粋)
〔問 4〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
なお、本問において、「教育訓練」とは、雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練のことをいう。
オ 適用事業Aで一般被保険者として2年間雇用されていた者が、Aの離職後傷病手当を受給し、その後適用事業Bに2年間一般被保険者として雇用された場合、当該離職期間が1年以内であり過去に教育訓練給付金の支給を受けていないときには、当該一般被保険者は教育訓練給付金の対象となる。
正解
選択肢オの記述は正しいです。
解説
初回に限り1年以上または2年以上
現時点で一般被保険者である場合、教育訓練給付対象者となります。教育訓練給付対象者が教育訓練の受講開始日において一般被保険者であり、その教育訓練を修了した場合、支給要件期間が3年以上であるときに教育訓練給付金が支給されます。
このことは、雇用保険法第60条の2第1項に規定されており、一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金に共通する規定です。
雇用保険法 第60条の2第1項本文
教育訓練給付金は、次の各号のいずれかに該当する者(以下「教育訓練給付対象者」という。)が、厚生労働省令で定めるところにより、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合(当該教育訓練を受けている場合であつて厚生労働省令で定める場合を含み、当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により厚生労働省令で定める証明がされた場合に限る。)において、支給要件期間が三年以上であるときに、支給する。
ただし、今回の教育訓練の受講開始日より前に教育訓練給付金の支給を受けたことがない場合、一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金の場合は支給要件期間1年以上、専門実践教育訓練給付金の場合は支給要件期間2年以上でよいです(雇用保険法附則第11条、雇用保険法施行規則附則第24条)。
適用事業Bに2年間一般被保険者として雇用されている在職者は、支給要件期間が2年以上となるので、どの給付金であっても支給要件を満たしています。したがって、当該一般被保険者は教育訓練給付金の対象となるので、選択肢オの記述は正しいと言えます。
雇用保険法 附則第11条
教育訓練給付対象者であつて、第六十条の二第一項第一号に規定する基準日前に教育訓練給付金の支給を受けたことがないものに対する同項の規定の適用については、当分の間、同項中「三年」とあるのは、「一年」とする。
雇用保険法施行規則 附則第24条
法附則第十一条の適用を受ける者(雇用保険法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第十三号)附則第四条第二項の規定により法附則第十一条に規定する者とみなされた者を含む。)については、第百一条の二の七第一号から第三号までの規定中「三年」とあるのは「一年」とし、同条第四号から第六号までの規定中「三年」とあるのは「二年」とする。
支給要件期間の通算と傷病手当
支給要件期間は、同一の事業主の適用事業に引き続いて雇用された期間ですが、2つ以上の適用事業に雇用された場合、一般被保険者であった期間を通算することができます。ただし、離職期間が1年を超える場合と教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合は、それより前の期間が支給要件期間から除外されます。
選択肢オは、「離職期間が1年以内であり過去に教育訓練給付金の支給を受けていない」ので、適用事業AとBの期間を通算することができます。この条件に傷病手当の支給の有無は無関係です。
したがって、選択肢オの支給要件期間は4年となります。
雇用保険法 第60条の2第2項
前項の支給要件期間は、教育訓練給付対象者が基準日までの間に同一の事業主の適用事業に引き続いて被保険者として雇用された期間(当該雇用された期間に係る被保険者となつた日前に被保険者であつたことがある者については、当該雇用された期間と当該被保険者であつた期間を通算した期間)とする。ただし、当該期間に次の各号に掲げる期間が含まれているときは、当該各号に掲げる期間に該当する全ての期間を除いて算定した期間とする。
一 当該雇用された期間又は当該被保険者であつた期間に係る被保険者となつた日の直前の被保険者でなくなつた日が当該被保険者となつた日前一年の期間内にないときは、当該直前の被保険者でなくなつた日前の被保険者であつた期間
二 当該基準日前に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、当該給付金に係る基準日前の被保険者であつた期間
3.離職期間
例題(平成16年択一問6選択肢A)
平成16年(2004年実施、第36回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋)
〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、本問において一般被保険者とは、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除いた被保険者をいう。
A 受講開始時に甲事業所で一般被保険者として雇用されている者が、その前に乙事業所で一般被保険者として雇用されていた場合、甲事業所で現在雇用されている期間に係る一般被保険者となった日と乙事業所で一般被保険者でなくなった日との間が1年以内でなければ、教育訓練給付金における支給要件期間として通算されない。
正解
選択肢Aの記述は正しいです。
解説
雇用保険法第60条の2第2項第1号の規定のとおり、2つの事業所で雇用された場合、その2つの間の離職期間が1年以内でなければ支給要件期間として通算されません。したがって、選択肢Aの記述は正しいと言えます。
雇用保険法 第60条の2第2項第1号
一 当該雇用された期間又は当該被保険者であつた期間に係る被保険者となつた日の直前の被保険者でなくなつた日が当該被保険者となつた日前一年の期間内にないときは、当該直前の被保険者でなくなつた日前の被保険者であつた期間
4.受講開始日
例題(平成16年択一問6選択肢D)
平成16年(2004年実施、第36回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Dです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Dのみ抜粋)
〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、本問において一般被保険者とは、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除いた被保険者をいう。
D 過去に教育訓練給付金を受給したことがある者は、過去の受講終了日以降の支給要件期間が3年以上にならなければ、新たに教育訓練給付金を受給する資格を有しない。
正解
選択肢Dの記述は誤りです。
解説
雇用保険法第60条の2第2項の規定のとおり、当該教育訓練の受講開始日までに教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、前回の教育訓練の受講開始日より前の期間は支給要件期間に含まれません。支給要件期間の基準日は受講開始日です。
過去の受講終了日ではなく、前回の教育訓練の受講開始日以降の支給要件期間が3年以上にならなければならないので、選択肢Dの記述は誤りです。
雇用保険法 第60条の2第2項第2号
二 当該基準日前に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、当該給付金に係る基準日前の被保険者であつた期間
5.回数制限
例題(平成13年択一問6選択肢B)
平成13年(2001年実施、第33回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Bです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Bのみ抜粋)
〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
B 過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合でも、その教育訓練の開始日以降の支給要件期間(被保険者であった期間)が5年以上あれば、過去の教育訓練給付金の受給と合わせて4回まで、新たに教育訓練給付金を受ける資格が認められる。
正解
選択肢Bの記述は誤りです。
解説
過去の受講開始日以降の支給要件期間が3年以上で、前回の支給決定日から3年超が経過していることなど、他の要件を満たせば原則として何回でも受給可能です。したがって、選択肢Bの記述は誤りです。
6.初回の支給要件期間
例題(平成29年択一問5選択肢C)
平成29年(2017年実施、第49回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問5の選択肢Cです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋)
〔問 5〕高年齢被保険者に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
C 雇用保険法第60条の2に規定する支給要件期間が2年である高年齢被保険者は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合、他の要件を満たしても教育訓練給付金を受給することができない。
正解
選択肢Cの記述は誤りです。
解説
高年齢被保険者
高年齢被保険者とは、65歳以上で雇用保険の対象となる事業に雇用されている労働者(雇用保険の被保険者)のことです。教育訓練の受講を開始する日において高年齢被保険者である在職者は、教育訓練給付金の給付対象者です。
支給要件期間3年以上
教育訓練給付対象者が、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合、原則として支給要件期間が3年以上であるときに教育訓練給付金の支給を受けることができます。
支給要件期間とは、教育訓練給付対象者が受講開始日までの間に同一の事業主の適用事業に引き続いて被保険者(日雇を除く)として雇用された期間です。高年齢被保険者であった期間も支給要件期間に加算することができます。
雇用保険法 第60条の2第1項
教育訓練給付金は、次の各号のいずれかに該当する者(以下「教育訓練給付対象者」という。)が、厚生労働省令で定めるところにより、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合(当該教育訓練を受けている場合であつて厚生労働省令で定める場合を含み、当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により厚生労働省令で定める証明がされた場合に限る。)において、支給要件期間が三年以上であるときに、支給する。
一 当該教育訓練を開始した日(以下この条において「基準日」という。)に一般被保険者(被保険者のうち、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者をいう。次号において同じ。)又は高年齢被保険者である者
二 前号に掲げる者以外の者であつて、基準日が当該基準日の直前の一般被保険者又は高年齢被保険者でなくなつた日から厚生労働省令で定める期間内にあるもの
初回に限り1年以上または2年以上
原則として支給要件期間は3年以上ですが、雇用保険法附則(暫定措置)の規定により、初めて教育訓練給付金の支給を受ける場合(=当該教育訓練の受講を開始する日より前に教育訓練給付金を受給したことがない場合)は条件が緩和されています。
一般教育訓練給付金または特定一般教育訓練給付金の場合は初回に限り支給要件期間1年以上でよいです。また、専門実践教育訓練給付金の場合は、2014年(平成26年)10月1日以降に教育訓練給付金の支給を受けたことがなければ支給要件期間2年以上でよいです。
このことは、雇用保険法附則第11条、雇用保険法施行規則附則第24条に規定されています。
選択肢Cの記述について、支給要件期間が2年である高年齢被保険者が、教育訓練給付金の支給を受けたことが無い場合には支給要件期間の要件を満たしているため、教育訓練給付金を受給することが可能です。したがって、「他の要件を満たしても教育訓練給付金を受給することができない」とする記述は誤りです。
雇用保険法 附則第11条
教育訓練給付対象者であつて、第六十条の二第一項第一号に規定する基準日前に教育訓練給付金の支給を受けたことがないものに対する同項の規定の適用については、当分の間、同項中「三年」とあるのは、「一年」とする。
雇用保険法施行規則 附則第24条
法附則第十一条の適用を受ける者(雇用保険法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第十三号)附則第四条第二項の規定により法附則第十一条に規定する者とみなされた者を含む。)については、第百一条の二の七第一号から第三号までの規定中「三年」とあるのは「一年」とし、同条第四号から第六号までの規定中「三年」とあるのは「二年」とする。
7.類題
平成21年択一問6選択肢A
平成21年(2009年実施、第41回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋)
〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、この問において「教育訓練」とは雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練とし、「教育訓練の受講のために支払った費用」とは雇用保険法第60条の2第4項に規定する厚生労働省令で定める範囲内のものとする。
A 教育訓練給付対象者が初めて教育訓練給付金の支給を受ける場合については、当分の間、支給要件期間が1年以上あれば、受給が可能とされている。
正解
選択肢Aの記述は正しいです。
解説
教育訓練給付対象者が教育訓練給付金の支給を受けるには、原則として支給要件期間が3年以上必要です。
ただし、上記の雇用保険法附則第11条のとおり、一般教育訓練給付金または特定一般教育訓練給付金の場合、受講しようとしている教育訓練の受講開始日より前に教育訓練給付金の支給を受けたことが無い場合は、当分の間、支給要件期間が1年以上であれば支給されます。
選択肢Aの記述は、一般教育訓練給付金の記述としては正しいです。
8.その他の論点
過去に教育訓練給付金の支給を受けていた場合
教育訓練給付金の支給を受けていた場合、その教育訓練の受講開始日より前は支給要件期間に入れることができません。また、教育訓練給付金の支給を受けたときの支給決定日から3年を経過していなければ、教育訓練給付金の支給を受けることができません。
雇用保険法附則第11条の「教育訓練給付金の支給を受けたことがない」の教育訓練給付金は、一般、特定一般、専門実践教育訓練給付金のいずれもまったく支給を受けたことが無いという意味です。例えば、今回、一般教育訓練給付金の支給を受けようとしている場合、過去に「一般教育訓練給付金の支給を受けたことがない」という意味ではありません。
一般、特定一般、専門実践の教育訓練給付金をいずれも受給したことが無いという意味です。どれか一つでも受給したことがあれば支給要件期間3年以上となります。
短期雇用特例被保険者であった期間
支給要件期間は、同一の事業主の適用事業に引き続いて雇用された期間(日々雇われているのではなく継続的に雇われている期間)であり、日雇労働被保険者以外の被保険者であった期間が対象となります。
短期雇用特例被保険者は教育訓練給付金の対象ではありませんが、短期雇用特例被保険者であった期間の支給要件期間の対象です。
支給要件期間関連の過去問
令和4年選択式Dで支給要件期間の事例式の問題が出題されました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
9.社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。








