社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「3年間の給付制限」です。この分野からは過去に平成28年択一問6選択肢Bで出題されています。
1.社労士過去問分析
当サイト内の解説記事
このページの「3年間の給付制限」は、3年以内に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは教育訓練給付金が支給されない規定(雇用保険法第60条の2第5項)のことです。
重要論点チェックテスト
「3年間の給付制限」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q「支給を受けたことがある」の基準日は、前回の教育訓練の受講開始日ですか?
- A
いいえ。「教育訓練給付金の支給を受けたことがある」の基準日は、前回の給付金の支給決定日のことであり、前回の教育訓練の受講開始日ではありません。
- Q前回の支給決定日から3年超経過し、他の要件を満たせば受講開始できますか?
- A
はい。今回の教育訓練の基準日は原則通り「受講開始日」です。支給決定日ではありません。前回の支給された日(前回の支給決定日)から、完全に3年間あけて受講を開始(今回の受講開始日)しなければなりません。
- Q受給制限の3年の期間中に、支給要件期間が3年以上となった場合は支給されますか?
- A
いいえ。教育訓練給付対象者が今回の教育訓練の受講開始日より前の3年以内に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、支給要件期間にかかわらず教育訓練給付金は支給されません。
- Q受給制限の3年の間に、支給要件期間が3年以上となることはありえますか?
- A
はい。過去に受給したことがある場合、支給要件期間の対象となるのは前回の教育訓練の受講開始日以降の期間です。受給制限は支給決定日が基準なので、3年経過する前に支給要件期間を満たすことはありえますが、支給されません。
- Q前回の訓練が専門実践教育訓練の場合、どの支給決定日が基準となりますか?
- A
専門実践教育訓練給付金の場合は最終回の支給単位期間についての支給決定日であり、さらに追加給付の支給を受けた場合はその追加給付の支給決定日です。要するに一番最後の支給決定日です。
支給要件期間の計算の過去問
支給要件期間の計算についてはこちらの記事をご覧ください。
社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.平成28年択一問6選択肢B
平成28年(2016年実施、第48回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Bです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Bのみ抜粋) 〔問 6〕専門実践教育訓練に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 B 専門実践教育訓練の受講開始日前までに、前回の教育訓練給付金の受給(平成26年10月1日よりも前のものを除く。)から10年以上経過していない場合、教育訓練給付金は支給しない。
正解
出題当時(平成28年4月15日現在施行の法令)では選択肢Bは正しい記述でしたが、現在では誤りです。
解説
給付制限
選択肢Bは給付制限の問題であって、支給要件期間の問題ではありません(後述)。
教育訓練給付金(一般、特定一般、専門実践)は支給要件期間の規定にかかわらず、今回の教育訓練の受講開始日の前日を起算点として3年以内に教育訓練給付金(一般、特定一般、専門実践の種類を問わない)の支給を受けたことがあるときは支給を受けることができません。
なお、選択肢Bの「(平成26年10月1日よりも前のものを除く。)」とは、専門実践教育訓練給付金は2014年(平成26年)10月1日にスタートした制度なので、同年9月30日までに教育訓練給付金を受給した場合はこの制限は除外されるという意味です。出題当時(平成28年)ではこの除外は有効でしたが、現在ではすでに3年以上が経過していますので関係ありません。
平成30年に改正された
出題当時(平成28年)は10年だったので選択肢Bは正しい記述でしたが、2018年(平成30年)1月1日に雇用保険法施行規則が改正され3年に短縮されました。
正解と法的根拠
以上のことは、雇用保険法第60条の2第5項、雇用保険法施行規則第101条の2の10に規定されています。
したがって、「専門実践教育訓練の受講開始日前までに、前回の教育訓練給付金の受給から3年以上経過していない場合、教育訓練給付金は支給しない。」が正しいので、選択肢Bの記述は誤りです。
3.補足説明
支給要件期間の3年とは違います
支給要件期間は、当該教育訓練の受講開始日までに被保険者として雇用された期間のことです。
当該教育訓練の受講開始日までに教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、その受講開始日より前の期間は支給要件期間に含まれません。「受講開始日前の期間」なので、前回の受講開始日以降の被保険者の期間は(受講中であっても)含まれます。
これに対して、選択肢Bで問題となっている「前回の教育訓練給付金の受給から3年を経過していないときは、専門実践教育訓練給付金を支給しない」は、受講開始日ではなく支給決定日で判断するので、前回の支給決定日から3年を経過していないことを意味しています。
前回の受講開始日から今回の受講開始日までの間に支給要件期間3年以上を満たしていたとしても、前回の支給決定日から3年超が経過していなければ支給されませんので注意が必要です。
支給要件期間も同時に改正
上記の2018年(平成30年)1月1日の改正では、給付制限だけでなく、専門実践教育訓練給付金の支給要件期間も10年から3年に改正されました。