社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「教育訓練支援給付金」です。この分野からは過去に令和3年択一問6選択肢D、平成28年択一問6選択肢E、平成27年択一問4選択肢イ、平成27年選択式Bで出題されています。
1.社労士過去問分析
当サイト内の解説記事
教育訓練支援給付金は2014年(平成26年)10月1日からスタートした制度です。
- 教育訓練支援給付金の制度をわかりやすく解説します【専門実践教育訓練】
- 教育訓練支援給付金の支給金額の計算方法、支給日額と基本手当日額と賃金日額の関係
- 教育訓練支援給付金の待期期間の計算方法、待期の7日に通算されない例
- 雇用保険の基本手当(失業保険)が支給される期間は教育訓練支援給付金が支給されない
重要論点チェックテスト
「教育訓練支援給付金」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q専門実践教育訓練給付金の受給資格を失っても、教育訓練支援給付金は支給されますか?
- A
いいえ。教育訓練支援給付金は、専門実践教育訓練給付金の受給資格者に対して支給されますから、専門実践教育訓練給付金の受給資格を失ったら、教育訓練支援給付金の受給資格も失います。
- Q教育訓練支援給付金の計算方法は?
- A
教育訓練支援給付金は失業の認定を受けた日について基本手当日額の8割が支給されます。教育訓練支援給付金の支給単位期間は2か月であり、2か月に1回、2か月分が支給されます。
- Q過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合、教育訓練支援給付金を受給することはできますか?
- A
いいえ。2014年(平成26年)10月1日以降、教育訓練給付金(一般教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金)または教育訓練支援給付金の支給を受けたことがある場合、教育訓練支援給付金は支給されません。
- Q受講開始日に45歳未満であれば、受講中に45歳になっても教育訓練支援給付金を受給することはできますか?
- A
はい。受講開始日が基準なので、受講開始日に45歳未満であれば受給資格があります。
- Q受講開始日の時点で在職者であったが受講中に離職した場合、教育訓練支援給付金を受給することはできますか?
- A
いいえ。受講開始日が基準なので、受講開始日に失業状態であれば受給資格があります。しかし、受講開始日に在職者であった場合、その後離職しても対象外です。
- Q教育訓練支援給付金を受給するには、一般被保険者でなくなった日から何年以内に受講を開始すればよいですか?
- A
最大4年以内。通常は、離職後1年以内(適用対象期間)に受講を開始しなければなりませんが、この適用対象期間の延長は最大20年まで認められます。しかし、延長が認められたとしても4年以内に受講を開始しなければ教育訓練支援給付金を受給することができません。
- Q雇用保険の基本手当が支給されないこととされている日に教育訓練支援給付金は支給されますか?
- A
いいえ。雇用保険の基本手当が支給される日、基本手当が支給されないこととされている日はいずれも教育訓練支援給付金は支給されません。
- Q待期の7日間についても失業認定を受ける必要がありますか?
- A
はい。待期期間のように教育訓練支援給付金が支給されないこととされている日であっても失業認定を受けなければなりません。
社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.令和3年択一問6選択肢D
令和3年(2021年実施、第53回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Dです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Dのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、本問において、「教育訓練」とは、雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練のことをいう。 D 専門実践教育訓練を開始した日における年齢が45歳以上の者は、教育訓練支援給付金を受けることができない。
正解
選択肢Dの記述は正しいです。
解説
教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金は、専門実践教育訓練給付金の受給資格者が失業中である場合に、専門実践教育訓練の受講を支援するために2か月ごとに基本手当日額の80%が支給される給付金です。
教育訓練支援給付金を受給できるのは専門実践教育訓練を受講している人(専門実践教育訓練給付金の受給資格のある人)に限られます。
45歳以上、45歳未満
教育訓練支援給付金は、若年離職者の再就職や、若年非正規雇用労働者のキャリアチェンジ(正規雇用への転換)を促進するための給付金であるため、45歳未満(45回目の誕生日の前々日まで)の年齢制限があります。
専門実践教育訓練の受講開始日に45歳未満の場合に支給されますから、受講開始日に45歳以上(満45歳を含む)の場合は支給されません。
基準は受講開始日
年齢は受講開始日を基準とするので、受講開始日において45歳未満であればよく、受講を開始した後に45歳以上になっても構いません。この場合、45歳になった日以降も教育訓練支援給付金は支給されます。
正解と法的根拠
以上のことは、雇用保険法附則第11条の2第1項に規定されています。したがって、専門実践教育訓練を開始した日における年齢が45歳以上の者は、教育訓練支援給付金を受けることができませんので、選択肢Dの記述は正しいと言えます。
3.平成28年択一問6選択肢E
平成28年(2016年実施、第48回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 6〕専門実践教育訓練に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 E 受給資格者が基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日が通算して7日に満たない間であっても、他の要件を満たす限り、専門実践教育に係る教育訓練支援給付金が支給される。
正解
選択肢Eの記述は誤りです。
解説
基本手当の待期
雇用保険法で単に「受給資格者」というときは、基本手当の受給資格を有する者のことです(雇用保険法第15条)。基本手当は、離職後ハローワークに出頭し、求職申し込みをしたうえで失業していることについての認定を受けた日について支給されます。
しかし、基本手当の受給資格者が離職後最初にハローワークに出頭して求職申し込みをした日以降において、失業の認定を受けた日が通算して7日に満たない場合は、基本手当が支給されません。この通算7日間の失業日のことを待期(たいき)と言います。
基本手当の待期と教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金は、教育訓練を受講している日のうち失業していることについての認定を受けた日について支給されます。しかし、基本手当が支給される期間のほか、基本手当の待期など基本手当を支給しないこととされている期間については、教育訓練支援給付金は支給されません。
正解と法的根拠
以上のことは雇用保険法附則第11条の2第4項、雇用保険法第21条に規定されています。したがって、選択肢Eの「失業している日が通算して7日に満たない間であっても、他の要件を満たす限り、専門実践教育に係る教育訓練支援給付金が支給される」という記述は誤りです。
4.平成27年択一問4選択肢イ
平成27年(2015年実施、第47回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問4の選択肢イです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢イのみ抜粋) 〔問 4〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。 なお、本問において、「教育訓練」とは、雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練のことをいう。 イ 教育訓練支援給付金は、教育訓練給付の支給に係る教育訓練を修了してもなお失業している日について支給する。
正解
選択肢イの記述は誤りです。
解説
受講している日のうち失業している日
教育訓練支援給付金は受講中の生活を支援するための給付金であり、専門実践教育訓練を受けている日のうち失業している日について支給されます。
正確には、教育訓練支援給付金の受給資格者が、当該専門実践教育訓練を出席率80%以上で受講している期間(指定教育訓練実施者によりその旨の証明がされた日)のうち、失業していることについての認定を受けた日について支給されます。
終了の場合の支給単位期間
教育訓練支援給付金は、受講開始日から「支給単位期間」である2か月間ごとに区切って金額を計算して支給されます。そして、専門実践教育訓練を終了する場合はその日までが支給単位期間となります。そのため、最後の支給単位期間は2か月より短くなることがあります。
最後の支給単位期間は専門実践教育訓練の終了日までで教育訓練を受講している日かつ失業している日について教育訓練支援給付金が支給されます。専門実践教育訓練を修了した後に支給されることはありません。
正解と法的根拠
以上のことは雇用保険法附則第11条の2第1項に規定されており、教育訓練支援給付金は専門実践教育訓練が終了した時点で支給されなくなります。したがって、「教育訓練を修了しても」支給されるとする選択肢イの記述は誤りです。
5.平成27年選択式B
平成27年(2015年実施、第47回)社労士試験、選択式試験・雇用保険法Bです。
問題
問題文中の条文の文言は平成27年当時のものです。
選択式試験・雇用保険法(Bのみ抜粋) 次の文中の[ ]の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。 雇用保険法附則第11条の2第3項は、「教育訓練支援給付金の額は、第17条に規定する賃金日額(以下この項において単に「賃金日額」という。)に100分の50(2,320円以上4,640円未満の賃金日額(その額が第18条の規定により変更されたときは、その変更された額)については100分の80、4,640円以上11,740円以下の賃金日額(その額が第18条の規定により変更されたときは、その変更された額)については100分の80から100分の50までの範囲で、賃金日額の逓増に応じ、逓減するように厚生労働省令で定める率)を乗じて得た金額に [ B ] を乗じて得た額とする。」と規定している。
空欄 [ B ] の選択肢(平成27年当時のものです)
(1) 100分の30 (2) 100分の40 (3) 100分の50 (4) 100分の60
正解
出題当時「100分の50」が正解でしたが、現在は雇用保険法が改正されて「100分の80」が正解となります。
解説
空欄[ B ]は、教育訓練支援給付金の計算方法を定めた雇用保険法附則第11条の2第3項の条文の穴埋めです。出題当時の2015年(平成27年)と現在では、平均給与額が異なるので条文の金額も改正されていますが、教育訓練支援給付金の計算の仕方は変わっていません。
教育訓練支援給付金は基本手当日額の80%です。そして、基本手当日額は賃金日額に50%~80%をかけて求めます。したがって、空欄Bは「100分の80」が正解です。
- 教育訓練支援給付金=基本手当日額×80%
- 基本手当日額=賃金日額×(50%~80%)
6.補足説明
教育訓練支援給付金への準用
基本手当と教育訓練支援給付金はいずれもハローワークで失業していることについての認定を受けた日について支給されます。基本手当の受給権が無い教育訓練支援給付金受給資格者もハローワークで失業認定を受けなければなりません。
雇用保険法第21条の規定は教育訓練支援給付金について準用されています。つまり、基本手当の受給権がなくても教育訓練支援給付金の受給資格者として、通算7日間の失業日も教育訓練支援給付金は支給されません。
支給されなくても認定は必要
教育訓練支援給付金は支給単位期間である2か月ごとに失業認定を受ける必要があります。
通算7日間とは、離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日から7日間経過すればいいということではありません。求職申し込み後、最初の失業認定日にハローワークに出頭し、2か月間の失業認定を受け、失業認定を受けた日のうち最初の7日分は教育訓練支援給付金が支給されないという意味です。
通算7日間の失業日は支給されませんが、失業していることについての認定を受けなければ「支給されない7日間」が確定しないので、失業の認定を受ける必要はあります。