社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「教育訓練給付金の受給資格確認手続き」です。
1.社労士過去問分析
当サイト内の解説記事
- 教育訓練給付金の「受給資格確認手続き」とは何か【受給資格確認まとめ】
- 特定一般教育訓練給付金の受給資格確認の方法と提出書類
- 専門実践教育訓練給付金の受給資格確認の方法と提出書類
- 教育訓練支援給付金の受給資格確認
重要論点チェックテスト
「教育訓練給付金の受給資格確認手続き」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q一般教育訓練給付金を受給するには「受給資格確認」を受ける必要がありますか?
- A
いいえ。一般教育訓練給付金に「受給資格確認」の手続きはありません。
- Q受給資格確認票の提出期限は?
- A
受給資格確認票の提出期限は原則として受講開始日の1か月前までです。ただし、教育訓練支援給付金については受講開始のギリギリになってもかまいません(受講開始の直前に失業状態になる可能性があるから)。
- Q受給資格確認を受けるには受給資格確認票と本人確認書類を提出すればよいですか?
- A
いいえ。特定一般教育訓練給付金または専門実践教育訓練給付金の受給資格確認は、住居所管轄のハローワークに、受給資格確認票と本人確認書類のほか、職務経歴等記録書(ジョブ・カード)や所定の添付書類を提出します。
- Q職務経歴等記録書は職務経歴書でも良いですか?
- A
いいえ。職務経歴等記録書(ジョブ・カード)を事前に作成したうえでキャリアコンサルティングを受け、今回の教育訓練の受講に関して、担当コンサルタントが職務経歴等記録書の所定の欄にコメントを記載したものを提出します。
- Q教育訓練支援給付金を受給するには「受給資格確認」を受ける必要がありますか?
- A
はい。教育訓練支援給付金を受給するには、専門実践教育訓練給付金と教育訓練支援給付金の両方の受給資格確認を受ける必要があります。これら2つを同時に申請しても良いですが、教育訓練支援給付金だけ別の日になってもかまいません。
社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.令和5年択一問7選択肢C
令和5年(2023年実施、第55回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Cです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋) 〔問 7〕教育訓練給付金の支給申請手続に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 C 特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金の支給を受けようとする者は、管轄公共職業安定所長に教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票を提出する際、職務経歴等記録書を添付しないことができる。
正解
選択肢Cの記述は誤りです。
受給資格確認
特定一般教育訓練給付金は、特定一般教育訓練を修了したときに教育訓練経費の40%が支給される給付金です。
特定一般教育訓練給付金の支給を受けるためには、まず、受講開始日の1か月前までに「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」を管轄公共職業安定所に提出し、受給資格確認の決定を受けなければなりません。
職務経歴等記録書
受給資格確認の手続きをする前に、訓練対応キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受けるとともに、職務経歴等記録書(いわゆるジョブ・カード)を作成します。ジョブ・カード自体は職務経歴を記載するものなので本人が書くものです。キャリアコンサルティングを受ける前に準備しておきます。
このキャリアコンサルティングは単に受講相談をするだけでなく、受講を予定している特定一般教育訓練が受講予定者にとって就業につながるものであるかどうかを判断します。コンサルティングを行った後、担当のキャリアコンサルタントがジョブ・カードに「受講しても良い」とする旨の記載をしなければ、受給資格確認の手続きをすることができません。
つまり、この受給資格確認の手続きは、特定一般教育訓練受講予定者が作成したジョブ・カードについて、担当のキャリアコンサルタントが承認したことを、ハローワークが確認する手続きでもあります。
したがって、受給資格確認の手続きでジョブ・カードを省略することは絶対にできません。
添付を省略できる書類とは
受給資格確認票に添付しないことができる書類は、第四号の「その他職業安定局長が定める書類」だけです。
具体的には、教育訓練給付適用対象期間延長申請書、委任状、やむを得ない理由を記載した証明書(出頭が困難であることの理由説明書)、払渡希望金融機関指定届、個人番号確認書類、代理人の身元確認書類などです。
正解と法的根拠
以上のことは、雇用保険法施行規則第101条の2の11の2に規定されています。したがって、選択肢Cの「職務経歴等記録書を添付しないことができる」とする記述は誤りです。
3.令和5年択一問7選択肢E
令和5年(2023年実施、第55回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 7〕教育訓練給付金の支給申請手続に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 E 専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金の支給を受けようとする者は、当該専門実践教育訓練の受講開始後遅滞なく所定の書類を添えるなどにより教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票を管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。
正解
選択肢Eの記述は誤りです。
解説
受給資格確認と支給申請
専門実践教育訓練給付金の支給を受けるには、専門実践教育訓練を受講する前にあらかじめ「受給資格確認」の決定を受けるとともに、受講中(6か月ごと)または修了後に「支給申請」をします。
受給資格確認を受けるには、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」に必要事項を記入して管轄公共職業安定所の長に提出します。受給資格確認票はハローワークに対して受給資格確認を求める書類です。
専門実践教育訓練受講予定者は、当該専門実践教育訓練を開始する日の1か月前までに受給資格確認の手続きを終わらせなければなりません。その際、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」のほか必要な書類を提出します。
正解と法的根拠
以上のことは雇用保険法施行規則第101条の2の12第1項に規定されています。したがって、選択肢Eの「当該専門実践教育訓練の受講開始後遅滞なく」提出しなければならないとする記述は誤りです。
4.令和3年択一問6選択肢A
令和3年(2021年実施、第53回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、本問において、「教育訓練」とは、雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練のことをいう。 A 特定一般教育訓練受講予定者は、キャリアコンサルティングを踏まえて記載した職務経歴等記録書を添えて管轄公共職業安定所の長に所定の書類を提出しなければならない。
正解
選択肢Aの記述は正しいです。
解説
特定一般教育訓練受講予定者
特定一般教育訓練給付金は、特定一般教育訓練を修了したときに教育訓練経費の40%が支給される給付金です。
特定一般教育訓練受講予定者とは、支給要件を満たして特定一般教育訓練給付金の支給を受けようとする者のことです。つまり、特定一般教育訓練を受講する前(受講申し込みをする前)の者です。
特定一般教育訓練給付金の支給を受けるためには、まず、受講開始日の1か月前までにハローワークで受給資格確認の決定を受けなければなりません。給付金の支給申請は教育訓練の修了後に行います。
キャリアコンサルティング
キャリアコンサルティングは、通常のキャリアコンサルティングではなく、訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」でなければなりません。
しかし、雇用保険法施行規則の条文には「訓練前」の文言が無いので、選択肢の文に「訓練前」の文言が無くても良いです。
職務経歴等記録書
受給資格確認の手続きをする前に、訓練対応キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受けるとともに、職務経歴等記録書(いわゆるジョブ・カード)を作成します。ジョブ・カード自体は職務経歴を記載するものなので本人が書くものです。キャリアコンサルティングを受ける前に準備しておきます。
このキャリアコンサルティングは単に受講相談をするだけでなく、受講を予定している特定一般教育訓練が受講予定者にとって就業につながるものであるかどうかを判断します。コンサルティングを行った後、担当のキャリアコンサルタントがジョブ・カードに「受講しても良い」とする旨の記載をしなければ、受給資格確認の手続きをすることができません。
つまり、この受給資格確認の手続きは、特定一般教育訓練受講予定者が作成したジョブ・カードについて、担当のキャリアコンサルタントが承認したことを、ハローワークが確認する手続きでもあります。
正解と法的根拠
以上のことは、雇用保険法施行規則第101条の2の11の2第1項に規定されています。
特定一般教育訓練受講予定者は、キャリアコンサルティングを踏まえて記載した職務経歴等記録書(ジョブ・カード)を添えて管轄公共職業安定所の長に受給資格確認票その他の書類を提出しなければならないので、選択肢Aの記述は正しいと言えます。
5.平成28年択一問6選択肢A
平成28年(2016年実施、第48回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋) 〔問 6〕専門実践教育訓練に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 A 教育訓練給付対象者であって専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金の支給を受けようとする者は、当該専門実践教育訓練を開始する日の1か月前までに、教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票その他必要な書類を管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない。
正解
選択肢Aの記述は正しいです。
解説
受給資格確認と支給申請
専門実践教育訓練給付金の支給を受けるには、専門実践教育訓練を受講する前にあらかじめ「受給資格確認」の決定を受けるとともに、受講中(6か月ごと)または修了後に「支給申請」をします。
受給資格確認をする前はまだ支給されることが決まっていないので「専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金の支給を受けようとする者(受講予定者)」であり、支給申請の際にはすでに確認を受けているので「専門実践教育訓練給付金の受給資格者」となります。
- 受給資格確認(事前手続き)=支給を受けようとする者(受講予定者)
- 支給申請(受講中または終了後)=専門実践教育訓練給付金の受給資格者
受給資格確認の手続きでは、支給要件を満たしていることを確認するとともに、訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成し、担当のキャリアコンサルタントがジョブ・カードにコンサルティングの内容を記載していることを確認します。
受給資格確認の期限
受給資格確認を受けるには、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」に必要事項を記入して管轄公共職業安定所の長に提出します。受給資格確認票はハローワークに対して受給資格確認を求める書類です。
専門実践教育訓練受講予定者は、当該専門実践教育訓練を開始する日の1か月前までに受給資格確認の手続きを終わらせなければなりません。その際、「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」のほか必要な書類を提出します。
正解と法的根拠
以上のことは雇用保険法施行規則第101条の2の12第1項に規定されています。したがって、選択肢Aの記述は正しいと言えます。
6.補足説明
一般教育訓練給付金の場合は不要
受給資格確認の手続きが必要なのは、特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金、教育訓練支援給付金の支給を受ける場合です。一般教育訓練給付金の場合は不要です。