プロのドライバーとして働くために、教育訓練給付制度を利用して自動車運転免許を取得することができます。しかし、給付金をもらえると思っていたのに、制度を正しく理解しないと教育訓練給付金を1円ももらえないことがありますので注意しなければなりません。
1.教育訓練給付制度を正しく理解しよう
教育訓練給付金と自動車運転免許
教育訓練給付金制度は1998年(平成10年)12月1日に創設され、現在では全国各地の指定自動車教習所で教育訓練給付対象コースが設置されています。
教育訓練給付金は、労働者が一定期間雇用保険に加入し、雇用保険料を支払っている場合に給付される雇用保険給付です。一定期間、被保険者として雇用保険に加入していた人は、自動車学校に支払った教習費用の20%(特定一般教育訓練の指定を受けている場合は40%)が給付されます。
教育訓練給付金の受給資格と支給申請手続き
教育訓練給付金の受給資格と支給される条件、具体的な給付金の支給申請手続きについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ハローワークで申請すること
教育訓練給付金は自動車学校の割引特典ではありません。また、自動車学校が支払うものではありません。
まず、自動車学校で入校申し込みをする際にはその教習料金を全額(100%)支払います。このとき教育訓練給付金に相当する額を差し引いて支払ってはいけません。全額支払わなければ教習を受けることができません。
そして、自動車学校ですべての教習を修了し、卒業した後で、ハローワークに行って支給申請するとその一部が給付されます(ハローワークで給付金の振込先口座を届け出る)。
2.指定自動車教習所と指定教育訓練実施者の違い
指定自動車教習所
自動車教習所( driving school )は、自動車を運転するのに必要な知識と技能を教習する施設であり、「自動車学校」「自動車練習所」「ドライバーズスクール」「ドライビングスクール」「モータースクール」「ドライビングカレッジ」「車校」「自練」などと呼ばれることがあります。
本来、運転免許を取得するのに教習所に通う必要はありません。警察の施設である運転免許試験場(運転免許センター)で適性試験、技能試験、学科試験のすべてを受験する「一発試験」に合格すれば運転免許証が交付されます。しかし、日本では一発試験ではなく、都道府県公安委員会の指定を受けた「指定自動車教習所」へ入校し、卒業することで運転免許試験場での技能試験が免除され、学科試験のみで運転免許を取得することが一般的となっています。
指定自動車教習所の「指定」とは、都道府県公安委員会(警察)が指定した教習所という意味です。ハローワークは無関係です。
指定教育訓練実施者
教育訓練給付金の支給を受けるには、厚生労働大臣指定の教育訓練給付対象講座を受講する必要があります。
ところで、教育訓練給付対象講座を実施するには事前に厚生労働大臣に対して指定の申請をしなければなりませんが、その申請をするかどうかは各自動車学校が自由に決めることができます(申請したくなければ申請しなくてもよい)。厚生労働大臣の指定を受けていなくても運転免許は取得できます(給付金がもらえないだけ)。
また、厚生労働省は講座単位で指定するので、1つの自動車教習所のなかで、厚生労働大臣の「指定を受けている教習」と「指定を受けていない教習」を両方実施することも可能です。
そのため、公安委員会指定自動車教習所が行っている教習が、必ずしも厚生労働大臣の指定を受けているとは限りませんし、すべての教習が教育訓練給付の対象であるとは限りません。
指定教育訓練実施者の「指定」とは、厚生労働大臣(ハローワーク)が指定した教育訓練を実施している施設という意味です。警察は無関係です。
卒業証明書と教育訓練修了証明書の違い
指定自動車教習所へ入校し、卒業検定に合格した卒業生には「卒業証明書・卒業検定合格証明書」が交付されます。前述のとおり、卒業証明書を運転免許試験場に提出すれば技能試験が免除されます。この卒業証明書は公安委員会指定自動車教習所として発行する文書であり、その提出先は運転免許試験場(警察)です。
これに対して、自動車教習所へ入校し、教育訓練給付対象講座の指定を受けている教習を受講し、卒業検定に合格した卒業生には運転免許試験場に提出する卒業証明書と同時に、「教育訓練修了証明書」が交付されます。教育訓練修了証明書をハローワークに提出すれば教育訓練給付金の支給を受けることができます。
この修了証明書は厚生労働大臣指定教育訓練実施者として発行する文書であり、その提出先はハローワークです。
3.教育訓練の種類
厚生労働大臣指定教育訓練には、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類があり、それぞれ厚生労働省が定める指定基準があります。
業務独占資格
運転免許証は都道府県公安委員会が交付することになっており、国家公安委員会と警察庁が管轄する国家資格です。
国家資格のうち業務独占資格(法令の規定により当該資格を有しない者による当該資格に係る業務への従事が禁止されている資格)の取得を訓練目標とする講座は、一般教育訓練または特定一般教育訓練の指定を受けることができます。運転免許は、道路交通法第64条第1項の規定により都道府県公安委員会の運転免許を受けないで自動車を運転してはならないこととされているので業務独占資格に該当します。
一般と特定一般の違い
一般教育訓練給付金の給付率は20%であり、ハローワークに事前の手続きをする必要はありません。修了後の支給申請をするだけです。
これに対して、特定一般教育訓練給付金の給付率は40%であり、受講を開始する1か月前までにハローワークに行って訓練前キャリアコンサルティングを受け、受給資格確認の手続きを行う必要があります。これをしなければ給付金は一切支給されません。
前述のとおり、教育訓練の指定を受けるかどうかは各自動車教習所が自由に決めることができます。また、一般教育訓練と特定一般教育訓練のどちらの指定をうけるかについても各自動車教習所が自由に選択して申請することができます。そのため、自動車教習所によって一般教育訓練の指定を受けている場合もあれば、特定一般教育訓練の指定を受けている場合もあります。
ただし、一般教育訓練の指定を受けている講座で特定一般教育訓練給付金の申請をすることはできませんし、逆に特定一般教育訓練の指定を受けている講座で一般教育訓練給付金の申請をすることはできません。
専門実践教育訓練給付金は対象外
指定自動車教習所の教習には教習期限があり、大型特殊第一種、けん引第一種、限定解除審査は3か月以内、その他は9か月以内に技能教習と学科教習を全て修了しなければなりません。そして、いっぱんに教習期間は1か月から3か月程度に設定されています。
通学制の教育訓練の場合、一般教育訓練と特定一般教育訓練の訓練期間は「1か月以上1年以内」、専門実践教育訓練の訓練期間は原則として「1年以上3年以内」とされています。専門実践教育訓練給付金は長期の訓練を想定しているため、運転免許の教習は対象外とされています。
教習所や教育訓練を探す方法
一般教育訓練または特定一般教育訓練の指定を受けている教習は、厚生労働省の「厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で検索することができます。
4.教育訓練給付対象講座に限られる
厚生労働大臣の指定を受けたものに限られる
雇用保険法第60条の2の規定により「厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合」に教育訓練給付金が支給されます。具体的には、厚生労働大臣が自動車学校に対して「講座指定通知書」を交付することによって指定を受けた講座に限られます。
教育訓練給付金の受給資格者と受給資格の無い受講者を区別して、教習内容を変えたり優遇したりするなど異なる取り扱いをすることは禁止されていますが、給付金を受給できるのは「最初に教育訓練給付制度を利用することを申し出て、教習を申し込んだ人」だけです。それ以外の人はすべて給付の対象外です。教習内容が同じであっても対象外です。
禁止されていること
- 教習期間の途中に教育訓練給付制度の適用を申し込むこと
- 対象外の講座を受講中に教育訓練給付対象講座にコース変更すること
- 車種の変更、追加、途中退校
- 卒業した後で教育訓練給付制度の適用を申し込むこと
自動車学校が申請したものに限られる
教育訓練給付制度の対象となる免許(後述)であっても、自動車学校が厚生労働大臣にその教習を教育訓練給付対象講座の指定を申請しなければ、給付金の対象とはなりません。申請するかどうかは各自動車学校の自由です。例えば、ある自動車学校では大型免許が給付金の対象であっても、他の自動車学校では大型免許が対象となっていない(申請していない)場合があります。
また、取得目標となる免許が同じであっても、対象者、教習内容、教習料金が異なるコースは「異なる講座」であり、それぞれ厚生労働大臣の指定を受けている必要があります。例えば、大型免許の教習はみな同じ料金ではなく、普通免許所持者、中型MT免許所持者など、もともと入校前に受講者が持っている免許(現有免許)によって教習時間や教習料金が異なります。現有免許が異なるコースは「異なる講座」です。
自動車学校の入校案内に「大型免許コースでAT限定免許所持者は教育訓練給付金の対象外です」などと書いてある場合は、その自動車学校が申し込みを受け付けていないか、またはその講座を厚生労働省に申請していないだけです。その自動車学校で対象外であるというだけで、他の自動車学校では対象となっている場合があります。
合宿免許について
自動車学校のなかには、通学だけでなく、寮やホテルなどの宿泊施設に宿泊しながら短期間で運転免許を取得する「合宿免許プラン」と呼ばれる合宿教習を行っています。合宿であっても指定講座と同様の内容を行う講座は教育訓練給付の対象となります。自動車学校が合宿免許プランで教育訓練給付制度を利用することを受け付けている場合は対象となります。
ただし、教育訓練給付制度の対象となるのは入学金と受講料だけで、合宿中の宿泊費、交通費、生活費は給付の対象外です。
また、教習の内容が同じであっても、合宿免許プランの教習料金と通常の通学講習の教習料金が異なることがありますが、異なっていてもかまいません。合宿の教習料金(宿泊費等を除く)が通常の通学講習より安くなる場合は割引扱いであり、安くなった額(合宿の教習料金)が給付の対象となります。
5.教育訓練給付制度の対象となる免許
職業に役立つ免許に限られる
雇用保険は労働者の生活と雇用の安定のための保険であり、教育訓練給付は「労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合」に支給されます。
そのため、一般教育訓練と特定一般教育訓練はいずれも職業に関する教育訓練であって、訓練目標が真に職業に役立つものとして明確であるものに限って指定されます。職業との関連が希薄なもの、職業に生かすことが困難なものは指定の対象とはなりません。
普通自動車免許は対象外
四輪以上の自動車免許はその大きさによって普通、準中型、中型、大型に分けられています。車両のサイズは関係なく、車両の総重量、最大積載量、最大乗車人数によって必要な免許が異なります。このうち、準中型、中型、大型はプロドライバーまたはプロ免許などと呼ばれ、職業に直結することが明らかであるため、いずれも教育訓練給付制度の対象となります。
しかし、普通自動車の運転に必要な普通免許(いっぱんに「運転免許」と呼ばれるもの)の教習は高校生でも修得できる程度の基礎的な内容であり、プライベートでも利用されることが多いことから、「職業との関連が必ずしも明確ではない」ものとされ、教育訓練給付制度の対象外となります。ただし、タクシー等の運転に必要な普通自動車第二種免許は職業に直結するため教育訓練給付金の指定を受けることができます(後述)。
- 普通免許(一般的な運転免許):教育訓練給付制度の対象外
- 普通自動車第二種免許(普通二種):教育訓練給付制度の対象
なお、地域によっては普通免許の取得が就職につながる場合もありますが、厚生労働省が「職業との関連が必ずしも明確ではない」と言っているのですから、いくらハローワークに文句を言っても絶対に給付金はもらえません。
バイク、原付は対象外
バイクの免許には大型二輪と普通二輪がありますが、いずれも趣味的なものであり「職業との関連が必ずしも明確ではない」ものとされているため、教育訓練給付制度の対象外です。また、原動機付自転車(原付)は、普通免許や二輪免許を取得すれば運転可能なので対象外です。
教育訓練給付制度の対象外
- 大型自動二輪車
- 普通自動二輪車
- 原動機付自転車(原付)
小型特殊自動車は対象外
特殊自動車とは特殊な用途のために特殊な構造をもつ自動車をいい、大型特殊自動車と小型特殊自動車があります。このうち、大型特殊自動車免許は職業に直結することが明らかであるため、いずれも教育訓練給付制度の対象となります。しかし、小型特殊自動車は原付免許以外の運転免許があれば運転可能であるため対象外となります。
- 大型特殊自動車(対象):キャタピラ式や装輪式など特殊な構造をもち、特殊な作業に使用する自動車で、小型特殊自動車以外のもの
- 小型特殊自動車(対象外):最高速度15km/h以下、長さ4.70m以下、幅1.70m以下、高さ2.00m以下(ヘッドガード、安全キャブ、安全フレームその他これらに類する装置が備えられている自動車で、当該装置を除いた部分の高さが2.00m以下のものは2.80m以下)
牽引免許(けん引免許)
牽引自動車(けん引自動車)は、後部の荷台や客車(被けん引車)が分離できる構造と装置を持ち、被けん引車を引っ張って走行する自動車です。このうち、車両総重量が750kgを超える車(重被けん引車)をけん引する場合には、牽引免許(けん引免許)が必要です。
けん引免許を取得することによってタンクローリー、大型トレーラー、大型キャンピングカーなどの運転が可能となり、職業に直結することが明らかであるため教育訓練給付制度の対象となります。
6.第一種と第二種の違い
運転免許は、第一種免許、第二種免許、仮免許の3種類があります。
第一種運転免許(第一種免許)
自動車を運転するのに必要な免許は第一種運転免許で、大型、中型、準中型、普通、大型特殊、大型二輪、普通二輪、小型特殊、原付、牽引(けん引)の10種類があります。いっぱんに第一種免許はわざわざ「第一種」と言うことはなく、普通自動車の第一種免許は単に「普通免許」と言います。種別を言わなければ「第一種」を意味します。
前述のとおり、第一種免許のうち、大型、中型、準中型、大型特殊、牽引(けん引)の5種類が教育訓練給付制度の対象となります。
教育訓練給付制度の対象(第一種)
- 大型免許(大型自動車第一種免許)
- 中型免許(中型自動車第一種免許)
- 準中型免許(準中型自動車第一種免許)
- 大型特殊免許(大型特殊自動車第一種免許)
- けん引免許(けん引第一種免許)
第二種運転免許(第二種免許)
自動車を単に運転するだけでなく、旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で旅客自動車を運転する場合や自動車運転代行業で普通自動車を代行運転する場合は第二種運転免許を取得しなければなりません。貨物自動車運送事業の営業用トラックは緑ナンバーですが、旅客運送ではないので第一種運転免許で運転することができます。
- 旅客自動車運送事業:他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業
- 旅客自動車:旅客自動車運送事業の用に供される自動車(バス、タクシーなど)
第二種免許は大型、中型、普通、大型特殊、牽引(けん引)の5種類があります。第二種免許を取得すれば同種の第一種免許も取得したものとみなされるため、同種の第一種免許により運転できる自動車を運転することができます。タクシーや代行運転は普通二種、バスは大型二種の免許が必要です。なお、準中型自動車の第二種免許は存在しないので、準中型自動車で旅客運送をするには中型二種が必要です。
第二種免許のうち、大型二種、中型二種、普通二種の3種類が教育訓練給付制度の対象となります。大型特殊二種とけん引二種は現在、教習に関する規程がないため、指定自動車教習所での教習(教育訓練)は行われていません。そのため、運転免許試験場の一発試験に合格しなければ免許を取得することができません。
教育訓練給付制度の対象(第二種)
- 大型二種(大型自動車第二種免許)
- 中型二種(中型自動車第二種免許)
- 普通二種(普通自動車第二種免許)
仮運転免許(仮免許)
第一種免許または第二種免許を受けないで練習や路上教習のため運転するには仮運転免許(仮免許)を取得しなければなりません。自動車学校では、第1段階の技能教習と学科教習を受講し、教習所内で仮免前学科効果測定、技能教習のみきわめ、修了検定、仮免学科試験を順に受験してすべて合格すれば仮免許が交付されます。そして、第2段階の路上教習と学科教習が始まります。
仮免許は正規の運転免許を取得する過程で必須となる免許ですが、それだけでは職業上の運転を行うことができないので教育訓練を修了したことにはなりません。したがって、仮免許取得だけでは教育訓練給付制度の対象とはなりません。
7.限定免許と限定解除
限定免許
限定免許とは、本人の身体の状態または運転の技能に応じて運転するための条件(限定条件)が付された運転免許証のことで、付された条件に違反しなければ、限定条件の無い免許と同様に運転することができます(道路交通法第91条)。
限定条件には、AT車限定、中型車(8t)限定など運転可能な自動車の種類を限定するものと、眼鏡、補聴器など本人の身体的特徴により限定するものがあります。
- 車種の限定条件:「AT車に限る」「中型車(8t)に限る」など
- 適性検査による条件:「眼鏡等」「補聴器」など
なお、教育訓練給付制度の対象となっている講座は、眼鏡等の有無にかかわらず教育訓練給付の対象です。眼鏡等の条件があっても給付額は変わりません。
AT車限定免許
AT車限定免許(オートマ限定)は、AT車に限って運転することができる免許であり、AT車であれば限定のない免許と同様に運転することができます。限定が無ければMT車(マニュアル)も運転することができます。
- MT車:ギアを手動で変えるため、ギアチェンジとクラッチペダルの操作を要する自動車
- AT車:オートマチック・トランスミッションその他のクラッチの操作を要しない機構(AT機構)がとられており、クラッチの操作装置を有しない自動車
普通免許、大型二輪、普通二輪にはAT限定がありますが、それ以外の免許にはAT限定がありません。AT限定はクラッチ操作が無いため教習時間が短く、料金が安くなりますが、準中型以上の免許を取得するにはMT車で教習を受ける必要があります。
教育訓練給付制度対象の免許のうち、普通自動車第二種免許はAT限定がありますが、それ以外はすべてMT車による教習となり、AT車限定免許は教育訓練給付制度の対象外となります。
教育訓練給付制度の対象
- 普通自動車第二種免許:AT限定あり
- 普通二種以外:AT限定なし(AT限定を持っている場合は教習を受けると限定がなくなる)
中型車(8t)限定免許
2007年(平成19年)6月2日に中型免許が新設されたことに伴い、それまで普通免許で運転することができた車両総重量8トン未満、最大積載量5トン未満の自動車が運転できなくなりました。
そして、2007年(平成19年)6月1日までに取得した普通免許は、車両総重量8トン未満の中型車を運転できる中型車(8t)限定免許となり、免許証には「中型車は中型(8t)に限る」と記載されることになりました。さらに、その普通免許がAT車限定の場合は、中型車(8t)限定・AT車限定免許となります。
ただし、この限定条件は制度改正に伴う経過措置であり、新規の取得はできません。新しい中型免許には重量やATの条件はありません。
準中型車(5t)限定免許、中型二種(5t)限定免許
2017年(平成29年)3月12日に準中型免許が新設されたことに伴い、それまで普通免許で運転することができた車両総重量5トン未満、最大積載量3トン未満の自動車が運転できなくなりました。そして、2017年(平成29年)3月11日までに取得した普通免許は、車両総重量5トン未満の準中型車を運転できる準中型車(5t)限定免許となり、免許証には「準中型車は準中型(5t)に限る」と記載されることになりました。さらに、その普通免許がAT車限定の場合は、準中型車(5t)限定・AT車限定免許となります。
また、準中型車には第二種免許がなく旅客運送をするには中型二種が必要であるため、それまでの普通二種免許は中型二種(5t)限定免許になりました。
ただし、この限定条件は制度改正に伴う経過措置であり、新規の取得はできません。新しい準中型免許、中型二種免許には重量やATの条件はありません。
限定解除
限定解除とは、限定免許を限定条件のない免許に変更するための教習です。限定解除の教習も教育訓練給付制度の対象です。例えば、中型車(8t)限定免許を持っている人が、通常の中型免許を取得する講座も教育訓練給付制度の対象です。限定解除後の免許がキャリアアップにつながるからです。
ただし、前述のとおり、限定解除の教習のすべてが必ずしも教育訓練給付制度の対象になっているとは限りません。それぞれの自動車学校が厚生労働省に申請し、指定を受けた講座に限られます。ある自動車学校では対象外であっても、他の自動車学校では対象となっている場合があります。
教育訓練給付制度の対象となる限定解除の例
- 中型(8t)限定、中型(8t)限定AT → 中型一種
- 準中型(5t)限定 → 準中型
8.同時教習コースについて
同時教習と教育訓練給付制度
原則として教育訓練給付対象講座を同時に複数利用することはできず、複数の教育訓練給付対象講座を同時に申し込んだ場合はそのうちの1つしか利用することができません(教育訓練給付金が支給されるのは1つの講座だけです)。原則として1回の利用で取得できる免許は1車種のみです。
しかし、自動車学校が複数車種の免許をまとめて取得することを目標とする講座(例えば、大型免許+大型特殊免許+けん引免許のセット)を同時教習として「1つの講座」として設置し、厚生労働省の教育訓練給付対象の指定を受けた場合は、そのコースを1つの教育訓練給付対象講座として申し込むことができます。この場合は複数車種の免許をセットで取得することが可能です。
ただし、教育訓練給付対象講座ではない別のコース(オプションコース)は教育訓練給付制度の対象外です。また、教育訓練給付対象の指定を受けたコース以外の同時教習も対象外です。
同時教習のメリットとデメリット
教育訓練給付制度を利用して一度、教育訓練給付金を受給すると、支給された日から最低3年は再び教育訓練給付金を受給することができません。そのため、時間的、経済的、精神的余裕があれば、まとめて複数の免許を取得したほうが良いです。
ただし、指定された同時講習のうちの一部の車種だけを選択して受講することはできませんし、セットされた講習を欠席することなく全部受講しなければ「修了」ではないので給付金は支給されません。同時教習コースの中にすでに持っている免許があったとしても教習は全部受講しなければなりません。
9.補足説明
給付金の支給申請手続きについて
教育訓練給付金の受給資格と支給される条件、具体的な給付金の支給申請手続きについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
フォークリフト、建設機械について
フォークリフト、建設機械の運転(作業免許)について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。