法令解説・雑記

教育訓練給付金の給付率の変遷、これまでの法改正の経緯

PR
教育訓練給付金の給付率の変遷、これまでの法改正の経緯 10836

1998年の教育訓練給付金制度の創設以来、現在まで給付率は時代背景とともに激しく変遷してきましたが、ここで最も注意すべきは「受講開始日」時点の法令が適用されるという原則です。開始日が改正前であれば、適用されるのは旧規定の給付率のままとなります。そのため現在の給付率だけでなく過去の給付率も知っておく必要があります。

教育訓練給付金の給付率の変遷、これまでの法改正の経緯 10836 2
スポンサーリンク
スポンサーリンク

1.旧・教育訓練給付金制度(1998年12月1日-2014年9月30日)

1998年(平成10年)12月1日:制度創設

教育訓練給付制度は、バブル崩壊後の深刻な雇用不安を受け、失業の予防と再就職の促進を目的に誕生しました。当時は現在のような講座の区分(一般・専門など)がなく、英会話スクールやパソコン教室など、幅広い講座が対象でした。

「学費の8割を国が持つ」という破格の条件だったため、空前の「資格ブーム」を巻き起こしました。しかし一方で、趣味に近い受講や、給付金目当ての悪質なスクール勧誘が社会問題化するきっかけにもなりました。

  • 給付率:80%(上限20万円)
  • 支給要件期間5年以上、給付制限5年

2003年(平成15年)5月1日:財源不足による大幅引き下げ

制度の普及に伴い申請が激増し、雇用保険財源が圧迫されました。また、適切な自己負担を求めることにより受講者の慎重かつ的確な受講を促すため、従来の「8割給付」が半分以下の水準まで引き下げられました。

給付金目当ての不適切な講座指定が取り消されるなど、制度の「適正化」が厳しく問われました。「何でも8割」から「真にキャリアに直結するものへ」と、国の姿勢が変化した転換点です。

  • 給付率:支給要件期間5年以上なら40%(上限20万円)、5年未満なら20%(上限10万円)
  • 支給要件期間を3年以上に緩和
  • 適用対象期間延長の制度創設(最大4年)

2007年(平成19年)10月1日:給付率20%一律化

制度の簡素化が進み、最も低い給付率で固定されることになります。雇用保険制度全体の財政立て直しの一環として行われました。この後、約7年間にわたり「一律20%」という低い水準が続くことになり、労働者の自発的な学びが停滞した時期とも言われています。これが現在の「一般教育訓練給付金」の基礎となりました。

  • 給付率:一律20%(上限10万円)
  • 若年労働者の雇用の安定のため、初回に限り支給要件期間を1年以上に緩和
  • 教育訓練事業者が不正受給を幇助した場合の連帯納付命令や報告義務を創設

2.一般・専門(2014年10月1日~2019年9月30日)

2014年(平成26年)10月1日:専門実践教育訓練給付金の創設

「人への投資」が成長戦略の柱に据えられ、中長期的なキャリア形成を支援する新区分「専門実践教育訓練給付金」が登場しました。深刻な人手不足分野(医療・介護など)への労働移動を促すため、給付率が再び上昇に転じました。単に「学ぶ」だけでなく「就職する」ことで給付を上乗せする成果主義の考え方が導入されたのが特徴です。専門実践教育訓練は、看護師、美容師、調理師などの国家資格や、MBA取得を目指す専門職大学院などが対象となりました。

45歳未満の若年離職者については長期の教育訓練の期間中の支援が必要であることを考慮し、暫定措置として「教育訓練支援給付金」を創設しました。

  • 一般:20%
  • 専門実践40%(+資格取得・就職時20%追加給付)
  • 支援:基本手当日額の50%
  • 専門実践については支給要件期間10年以上(初回は2年以上)

2018年(平成30年)1月1日:最大70%へ引き上げ

第4次産業革命を見据え、ITスキルなどの高度な専門人材を育成するため、さらに給付率がアップしました。「リスキリング」という言葉が浸透し始め、AIやデジタル技術を使いこなせる人材を国を挙げて育成しようとする動きが強まりました。プログラミングスクールやデータサイエンス講座などが続々と対象に指定されました。

  • 一般:20%
  • 専門実践:50%(+資格取得・就職時20%追加給付)
  • 支援:基本手当日額の80%
  • 専門実践については支給要件期間3年以上(初回は2年以上)10年間の支給上限あり
  • 適用対象期間の延長最大10年まで
教育訓練給付金の給付率の変遷、これまでの法改正の経緯 10836 5

3.一般・特定一般・専門(2019年10月1日~)

2019年(令和元年)10月1日:特定一般教育訓練給付金の創設

人手不足が顕著な職種への「早期の再就職」を支援するため、「特定一般教育訓練給付金」を創設し短期集中型の講座の支援が強化されました。受講前にキャリアコンサルティングを受けることが義務化されたのもこの時です。介護職員初任者研修、大型自動車免許、税理士講座などが指定されました。

2019年(令和元年)10月1日から2024年(令和6年)9月30日までに教育訓練を開始した場合に適用されます。

  • 一般:20%
  • 特定一般40%(上限20万円)
  • 専門実践:50%(+資格取得・就職時20%追加給付)
  • 支援:基本手当日額の80%
教育訓練給付金の給付率の変遷、これまでの法改正の経緯 10836 4

2024年(令和6年)10月1日:最大80%へ

単に「学ぶ」「資格を取る」だけでなく、その後の「賃上げ」にまで踏み込んだ拡充が行われました。物価高を上回る「賃上げ」を実現するため、キャリアアップに成功した人への還元を最大化しました。1998年の創設以来、26年ぶりに「8割給付」のラインに並んだ歴史的な改正です。

専門実践教育訓練を受ける45歳未満の方を対象とした「教育訓練支援給付金」については、制度の延長に伴い給付率が引き下げられました。2024年(令和6年)10月1日以降に教育訓練を開始した場合に適用されます。

  • 一般:20%
  • 特定一般:40%(+資格取得・就職時10%追加給付
  • 専門実践:50%(+資格取得・就職時20%+賃金上昇10%追加給付
  • 支援:基本手当日額の60%
教育訓練給付金の給付率の変遷、これまでの法改正の経緯 10836 2

4.法改正と給付率(経過措置)

基準は「受講開始日」

教育訓練給付金の給付率が改正(引き上げや引き下げ)される際、どの時点のルールが適用されるかという「経過措置」の考え方は、原則として「受講開始日」を基準にします。

  • 改正前に受講を開始した場合:改正前の旧ルール
  • 改正後に受講を開始した場合:改正後の新ルール

受講開始の後に法改正(給付率アップなど)があったとしても、受講開始時点での法令が適用されるので、修了時の給付は改正前の給付率が適用されます。

また、専門実践教育訓練給付金(6か月ごとの支給)や教育訓練支援給付金(2か月ごとの支給)のように定期的に支給される給付金も、教育訓練が終了するまで、受講開始時点での給付率が適用されます。

教育訓練給付金の給付率の変遷、これまでの法改正の経緯 10836 6