教育訓練給付金支給要件回答書を取得するのは義務ではありませんが、教育訓練の申し込みの際に添付を求められた場合は、申し込みの要件なので支給要件回答書を提出する必要があります。
1.支給要件照会と支給要件回答書
教育訓練給付金を受給するためには、雇用保険の被保険者であった期間としての支給要件期間3年以上(初回の場合は1年または2年以上)で、過去3年以内に受給したことが無いなどの要件を満たす必要があります。
また、在職者の場合は在職中に教育訓練給付金の支給を受けることができますが、離職者の場合は離職後1年以内(適用対象期間を延長できる場合は最大20年以内)に教育訓練を開始しなければなりません。
これらの要件を満たしているかどうかを確認するには、住居所管轄ハローワークに「教育訓練給付金支給要件照会票」を提出して、支給要件の照会(問い合わせ)をします。
支給要件の照会をすると、その回答として「教育訓練給付金支給要件回答書」が交付されます。支給要件の照会はあくまで事前の確認(任意)であって、義務ではありません。
2.一般教育訓練の場合
支給要件の照会をおすすめします
簿記や自動車運転免許のような一般教育訓練(給付率20%)の場合、一般教育訓練給付金を申請するのに事前の手続きをする必要はありませんが、支給要件の照会によってあらかじめ確認されることをおすすめいたします。
さらに、教育訓練の申し込みの際には一般教育訓練給付金制度を利用する旨を申告しなければなりません。事前に申告しなければ一般教育訓練給付金の支給申請に必要な証明書(修了証明書、領収書など)が発行されませんので、修了したとしても一般教育訓練給付金の支給を申請することができません。
申込書に教育訓練給付制度の利用について記入する欄があったり、教育訓練給付制度利用申請書を記入しなければならない場合もあります。
支給要件回答書の提出を求められた場合
教育訓練施設から申込書に「教育訓練給付金支給要件回答書」を添付するよう求められることがあります。それは、一般教育訓練給付金以外の場合(後述)のように事前に受給資格を確認する手続きがなく、受給資格が無いにもかかわらず受講料が割引されるものと勝手に勘違いして申し込みをしてしまう人がいるからです。
一般教育訓練給付金の支給申請において支給要件照会を行う法的義務はありませんが、トラブルを避けるために教育訓練施設から提出を求められた場合は、ハローワークで「教育訓練給付金支給要件回答書」を取得して提出しなければなりません。
3.特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の場合
特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の場合は、教育訓練を開始する1か月前までに受給資格確認の手続きを行う必要があります。
受給資格確認の決定を受けると、受給資格決定の証明書(受給資格確認通知書または受給資格者証)が交付されます。
教育訓練の申し込みの際には受給資格の証明書を提示することによって受給資格者であることを確認します。「教育訓練給付金支給要件回答書」があっても受給資格確認の証明にはならないので提出する必要はありません(訓練修了まで保管しておきましょう)。
4.教育訓練給付金支給要件回答書の読み方
被保険者番号、氏名などは、「教育訓練給付金支給要件照会票」に記入した情報が印字されています。
照会の際に、教育訓練講座名などを記入して照会した場合は、その講座が間違いなく「厚生労働大臣の指定」を受けていることやその指定が取り消されていないことなども同時に確認することができます。教育訓練講座名などを記入せずに照会した場合は空欄となります。
1 受講開始年月日など
「受講開始年月日」は、受講を開始する予定の日です。支給要件期間の基準となる日です。
「一般被保険者又は高年齢被保険者でなくなった年月日」は、離職の場合、直近の一般被保険者または高年齢被保険者でなくなった年月日が表示されます。この日から1年以内(適用対象期間を延長できる場合は最大20年以内)に受講を開始しなければなりません。在職者の場合は空欄となります。
「支給要件期間」は、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者としての加入実績であり、3年以上(初回の場合は1年または2年以上)必要です。
「前回受講履歴」は、過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合に、前回の教育訓練の受講開始日と訓練の種類が表示されます。
2 教育訓練経費
教育訓練経費とは、教育訓練給付金の算定基礎となる経費のことであり、入学料と受講料の合計金額です。
「教育訓練給付金支給要件照会票」で教育訓練講座名などを記入して照会した場合、その講座の入学料(第1回のみ)と受講料の内訳が印字されます。教育訓練講座名などを記入せずに照会した場合、空欄となります。
ちなみに、第1回~第8回とは、専門実践教育訓練の支給単位期間(6か月)の回数のことです。簡単に言えば、半年ごとの学費です。例えば、訓練期間4年、入学金10万円、半年分の授業料50万円の場合は次のようになります。
3 通知内容
支給要件を満たしている場合は次のような内容が印字されます。受給資格確認の手続きを行う必要があるのは特定一般教育訓練または専門実践教育訓練の場合です。
受講開始(予定)日時点で、一般教育訓練の支給要件期間を満たしています 照会した受講開始(予定)日に教育訓練講座の受講を開始し、その後修了した場合、教育訓練給付金の支給申請を行うことができます ただし、今後被保険者資格に変動がない場合に限ります なお、受講する教育訓練講座によっては、受講開始の1か月前までに教育訓練給付金受給資格確認の手続きを行う必要があります
受講開始(予定)日時点で、専門実践教育訓練の支給要件期間を満たしています 照会した教育訓練講座は、受講開始の1か月前までに教育訓練給付金受給資格確認の手続きを行ってください 受給資格確認の手続き終了後、照会した教育訓練講座の受講を開始し、その後修了した場合に教育訓練給付金の支給申請を行うことができます ただし、今後被保険者資格に変動がない場合に限ります
さらに、離職者の場合(雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者でない場合)は、受講開始期限が印字されています。
支給要件を満たしていない場合は次のようにその理由が印字されます。
受講開始(予定)日現在で下記の受講開始期限(原則として一般被保険者又は高年齢被保険者でなくなった日からの期限が1年となる日)を超えています 受講開始期限 令和3年3月31日 照会した教育訓練給付金は支給要件を満たしていないため、支給対象となりません
5.支給要件回答書の注意事項
回答書は支給要件の証明ではない
支給要件照会の結果として交付される支給要件回答書は、支給要件照会票に記入された内容が真実であり、かつ雇用保険被保険者資格の状態が継続されるものと仮定して、受講開始(予定)日現在において支給要件を満たすことが「推定される」ことを示したにすぎません。
支給要件回答書で支給要件期間を満たす旨の回答があったとしても、それだけで給付金が支給されることを保証したものではありません。また、教育訓練施設に支給要件回答書を提出したとしても給付金が支給されることの証明にも証拠にもなりません(トラブル回避のために提出しているにすぎない)。
支給申請の期限内(通常は修了後1か月以内)に、あらためてハローワークにおいて給付金の支給申請書を提出しなければ支給されることはありません。
回答書と実際の受給資格が一致しない可能性がある
教育訓練給付金の支給要件期間や適用対象期間は、その教育訓練の受講開始日を基準日として計算するため、支給要件照会票に記入された受講開始(予定)日が、実際の受講開始日と異なる場合は支給要件期間や適用対象期間も変わってきます。
また、支給要件照会を行った日から受講開始日までの間に、離職や就職等によって雇用保険被保険者資格の変動があった場合、適用対象期間の延長措置が認められた場合、適用対象期間が変更になった場合なども、支給要件回答書の通りにならないことがあります。
そのため、支給要件回答書で「支給要件がある」との回答を得たとしても給付金が支給されないことがあります。逆に、支給要件回答書で「支給要件が無い」との回答を得たとしても給付金が支給される場合もあります。
不服申し立てはできない
教育訓練給付金支給要件回答書の内容に関して不服申し立てをすることはできません。ただし、それが雇用保険の被保険者資格の得喪や適用対象期間の延長に関する不服であれば、それを理由として審査請求をすることができます。