一般教育訓練とは、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練です。
1.一般教育訓練給付金制度と指定基準
一般教育訓練給付金
一般教育訓練とは、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練です(雇用保険法施行規則第101条の2の7第1号)。
支給要件を満たす教育訓練給付対象者が、厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を受講し、修了することで、一般教育訓練給付金の支給を受けることができます。
指定基準
教育訓練給付金対象講座として指定されるための基準(指定基準)は、厚生労働省告示として定められています。一般的な指定基準は次の通りです。
2.一般教育訓練のレベル
低レベルなものは不可
一般教育訓練は、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要と認められる教育訓練であることが必要です。趣味的または教養的な教育訓練は一般教育訓練の指定の対象とはなりません。
- 職業との関連が希薄なもの
- 職業に生かすことが困難なもの
また、入門的または基礎的な水準の教育訓練は、自学自習の域を出るものではなく、真に職業に役立つものとはいえないことから、一般教育訓練の指定対象とはなりません。
- 高等学校の課程で修得できる水準のもの
- 一般ビジネス社会において通常の事務処理として行われているパソコン操作技能程度の水準のもの
公的職業資格の取得を訓練目標とするもの
一般教育訓練は、原則として公的職業資格または修士・博士の学位等の取得を訓練目標としなければなりません。「公的職業資格」とは、国、地方公共団体、国から委託を受けた機関が、法令の規定に基づいて実施する資格または試験等のことです。
訓練目標の免許資格または検定が、職業能力を評価するものとして社会一般に認知されていないものは不可です。
訓練効果の客観的な測定が可能なもの
訓練目標が公的職業資格の取得でない場合は、公的職業資格または修士・博士の学位等の取得に準じ、訓練目標が明確であり、訓練効果の客観的な測定が可能であることが必要です。「客観的な測定が可能」とは、例えば、次のような、受講修了者の知識・技能の習得度の客観的把握を適切に行い得る評価制度が設けられていることです。
- 公的機関が設定する修了認定基準及びそれに基づく評価制度
- 民間機関等の第三者が実施する能力評価試験
- 当該講座に関連する産業界等の第三者が共同で行う能力評価試験
なお、民間機関等の第三者、当該講座に関連する産業界等の第三者が行う能力評価試験等については、「公開性」「実績」「規模」等が必要です。
- 公開性:特定の団体所属者等のみを対象としたものでなく、社会一般に公開されていること
- 実績:既に能力評価の試験等の実施実績があること
- 規模:国内の受験者規模について、原則として1,000人以上(年度)の実績があること
社会一般に公開された、第三者による客観的な評価が必要であり、会社の内部で行う業務研修や社内試験などは「公開の評価」ではないので不可です。
3.一般教育訓練の目標資格、対象講座
厚生労働省が具体例として挙げている一般教育訓練の目標資格は次の通りです。
- Microsoft Office Specialist(上級)
- CAD利用技術者試験、建築CAD検定
- Webクリエイター能力認定試験、Photoshopクリエイター能力認定試験、Illustratorクリエーター能力認定試験
- VBAエキスパート
- Oracle認定資格・LPICなどでITSSレベル1の資格
- 実用英語技能検定、TOEIC、TOEFL、中国語検定試験、HSK漢語水平考試、日本語教育能力検定試験
- 建設業経理検定、簿記検定試験(日商簿記)
- 同行援護従事者研修
- インテリアコーディネーター
- 修士・博士、科目等履修、履修証明プログラム
- 土木施工管理技士、管工事施工管理技士、建築施工管理技術検定
4.複数のレベルが設定されている資格の例
取得目標となる資格試験等が入門的、初歩的又は基礎的なレベルである場合、当該資格を取得目標とした講座は原則として指定の対象とはなりません。また、資格試験等に複数のレベルが設定されている場合、入門的、初歩的又は基礎的なレベルを取得目標とした講座は、指定の対象となりません。
簡単に言えば、高校生がまじめに勉強すれば取れそうなレベルは不可ということです。
英検、TOEIC、TOEFL
実用英語技能検定試験(英検)受験を目的とする講座は、準1級以上の講座が指定対象です。
TOEIC受験を目的とする講座は、リスニング、リーディングテストについてはトータル645点以上、スピーキングテストは120点以上、ライティングテストは130点以上の講座が指定対象です。なお、TOEIC-IPテスト(IP:Institutional Program)を目標として設定することはできません。
TOEFL受験を目的とする講座は、iBT79点以上の講座が指定対象です。
その他の語学関連の講座
国連英検はB級以上の講座が指定対象です。工業英語能力検定は3級以上の講座が指定対象です。
その他の英語関係資格試験の受験を目的とする講座については、原則として、高等教育までで習得できるレベルを超える教育訓練目標レベル(英検準1級相当以上)である講座が指定対象です。
英語以外の外国語関係資格試験の受験を目的とする講座については、原則として、日常生活や職場に必要な語学を理解できるレベル(英検2級相当以上)である講座が指定対象です。
MOS試験対策講座
Microsoft Office Specialist(MOS)試験対策の講座は、階級が分かれているアプリケーションソフトについては上級レベル「エキスパート」のみが指定対象です。
エキスパートレベル・スペシャリストレベルの双方を含む講座については、エキスパートレベルへの合格を訓練目標に掲げることとし、教育訓練レベルはエキスパートレベルに適合する内容を設定することが必要です。
ICTプロフィシエンシー検定試験
ICTプロフィシエンシー検定試験(旧パソコン検定試験)の対策講座については3級以上の合格を訓練目標とする講座を指定対象とします。
ただし、講座がより実践的であることや講座の質の水準を担保する必要があることから、アプリケーションソフトの技能習得のみではなく、ネットワーク知識、情報モラル等を課程に含めるなど、当該検定試験範囲を広く網羅していることが必要です。
運転免許
普通自動車免許、二輪免許、原付免許のように、職業との関連が必ずしも明確ではない免許の取得を目標とする講座は指定されません。
タクシーなどの普通二種免許、トラックなどの大型自動車免許、バスなどの大型二種免許のほか、大型特殊免許、けん引免許、フォークリフト運転技能講習など職業に直結するものが対象となります。
- 運転免許で教育訓練給付制度を利用するときの注意点【指定自動車学校と指定講座の違い】
- フォークリフトの免許で教育訓練給付制度を利用することは可能か【特別教育と技能講習の違い】
- 建設機械の運転の資格、玉掛けの資格と教育訓練給付制度
5.訓練期間
通学制の一般教育訓練は、訓練期間が1か月以上1年以内、受講時間が50時間以上でなければなりません。また、通信制の一般教育訓練は、訓練期間が3か月以上1年以内でなければなりません。
一般教育訓練の訓練期間
- 通学制 訓練期間が1か月以上1年以内、受講時間が50時間以上
- 通信制 訓練期間が3か月以上1年以内
ただし、次の場合の訓練期間は3年以内とし、訓練の期間及び時間の下限は適用されません。
訓練期間は3年以内、下限なし
- 学校教育法に基づく大学院の修士課程、博士課程
- 国または地方公共団体の指定等を受けて実施される教育訓練の修了により公的職業資格を取得できる課程、公的職業資格に関する試験の受験資格を取得できる課程、公的職業資格に関する試験の一部免除となる課程
6.特定一般教育訓練との違い
一般教育訓練と特定一般教育訓練の違いについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。