電子申請、郵送、代理人による申請について改正がありました。当サイトの記述は順次改訂していきます。
生活援助従事者研修(ヘルパー3級)、介護に関する入門的研修と教育訓練給付制度 _ pr
資格・講座

生活援助従事者研修(ヘルパー3級)、介護に関する入門的研修と教育訓練給付制度

生活援助従事者研修(旧訪問介護員ホームヘルパー3級)は介護の仕事のうち主に生活援助を行う際に必要とされる資格であり、一般教育訓練給付制度または特定一般教育訓練給付制度の対象とされています。入門的研修は教育訓練給付制度の対象外です。

スポンサーリンク

1.訪問介護員(ホームヘルパー)の研修

介護職員初任者研修

介護の仕事のうち、利用者の身体に直接接触して行われる身体介護(入浴、排せつ、食事介助等)は専門的な知識や技術が必要です。

  • 身体介護:身体に直接触れる介護(原則として資格が必要)
  • 生活援助:身体に直接触れない日常生活の支援
  • 通院等乗降介助:通院等のための乗車、降車、移動の介助

介護職員初任者研修は、身体介護を含む知識と技術の基本を習得し、責任者の指示を受けながら介護業務を実践するためのであり、要介護度の高い利用者が暮らす介護施設の職員はもちろんのこと、訪問介護員(ホームヘルパー)も身体介護の知識を身につけておく必要があります。

生活援助従事者研修

介護職員初任者研修修了者は身体介護だけでなく、生活援助や通院等乗降介助も行うことができます。しかし、訪問介護の人材不足が深刻であることから、介護職員初任者研修以上の修了者は身体介護を中心に担うこととし、専門技術を要しない生活援助中心型については、生活援助のみの研修を修了した者が担うこととされました。

そこで、介護職員初任者研修(130時間)のカリキュラムのうち生活援助に関係する部分を抜粋した生活援助従事者研修の課程(59時間)を新設しました。

生活援助従事者研修(ヘルパー3級)、介護に関する入門的研修と教育訓練給付制度 _ 6843-1

生活援助従事者研修を修了すると生活援助のみの訪問介護は可能ですが、身体介護を伴う訪問介護に従事することはできません。なお、生活援助従事者研修は、介護保険法施行令第3条第1項、介護保険法施行規則第22条の23の規定に基づいて各都道府県が実施する公的な研修課程であり、介護施設が独自に行う新人研修とは異なります。

参考法令
介護保険法施行規則 第22条の23第1項  令第三条第一項第一号イ及びロに掲げる研修(以下この条から第二十二条の二十九までにおいて「研修」という。)の課程は、介護職員初任者研修課程及び生活援助従事者研修課程とする。

入門的研修

さらに、介護分野に興味はあるものの介護業務に対して不安を感じている人に対して、介護に関する基礎知識と介護現場への理解を深めるため、「介護に関する入門的研修」として合計21時間の研修課程が新設されました。

生活援助従事者研修(ヘルパー3級)、介護に関する入門的研修と教育訓練給付制度 _ 6843-2

これにより、入門的研修21時間、生活援助従事者研修59時間、介護職員初任者研修130時間、実務者研修450時間、そして介護福祉士へとステップアップすることができます。入門的研修、生活援助従事者研修の修了者は介護職員初任者研修のうち、それぞれ21時間、59時間の研修が免除されます。

生活援助従事者研修(ヘルパー3級)、介護に関する入門的研修と教育訓練給付制度 _ 6843-3

なお、実務者研修(介護福祉士実務者研修)について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

スポンサーリンク

2.生活援助従事者研修の概要

訓練時間は59時間

生活援助従事者研修は、都道府県知事または介護員養成研修事業者が実施します。その内容は、厚生労働省告示「介護保険法施行規則第二十二条の二十三第二項に規定する厚生労働大臣が定める基準(平成24年3月2日厚生労働省告示第71号)」で定められています。

この告示によると、生活援助従事者研修は、生活援助が中心である指定訪問介護に従事する職員が行う業務に関する知識及び技術を習得することを目的とする内容で、講義と演習あわせて59時間のカリキュラムとなっています。「こころとからだのしくみと生活支援技術」では、移動・移乗に関連した実習を2時間実施するとともに、生活援助が中心である指定訪問介護の安全な提供方法等の講習を受け、担当講師により習得状況の評価も行われます。

生活援助従事者研修の内容と訓練時間

  • 職務の理解(2時間)
  • 介護における尊厳の保持・自立支援(6時間)
  • 介護の基本(4時間)
  • 介護・福祉サービスの理解と医療との連携(3時間)
  • 介護におけるコミュニケーション技術(6時間)
  • 老化と認知症の理解(9時間)
  • 障害の理解(3時間)
  • こころとからだのしくみと生活支援技術(24時間):移動・移乗に関連した実習2時間を含む
  • 振り返り(2時間)

さらに、講義と演習とは別に、30分程度の筆記試験による「修了評価」を実施しなければならないことになっています。修了試験は各科目からまんめんなく出題され、その習得度を評価します。やむを得ない理由により研修の一部を欠席した場合や、知識と技術の習得が十分でない受講生に対しては必要に応じて補講と追試験を実施します。

修了証の発行

実習科目において担当講師により知識と技術の習得が到達目標に達するものと評価され、さらに、最後の修了試験に合格した場合に「修了証」が交付されます。修了の資格は更新不要なので無期限で使えます。

なお、生活援助従事者研修は各都道府県が主体となって実施するものですが、その「修了証」は全国で通用します。引っ越しや転職をしても使えます。

生活援助従事者研修の修了条件

  • 実技:「こころとからだのしくみと生活支援技術」で介護技術の習得が講師により評価されること
  • 修了試験:30分程度の筆記試験を実施しその結果が所定の水準を超えること
スポンサーリンク

3.入門的研修の概要

介護に関する入門的研修は、都道府県、市区町村または民間団体によって実施されます。入門的研修は基礎講座3時間と入門講座18時間の2段階で構成され、施設系介護サービスの業務に携わる上で知っておくべき基本的な技術を学びます。基礎講座だけであれば1日(3時間)、両方受講しても1週間以内(21時間)でおわります。

  • 基礎講座(3時間):介護に関する相談先、介護保険制度の概要、介護休業制度などの仕事と介護の両立支援制度の概要、介護における安全・安楽な体の動かし方、介護予防・認知症予防に使える体操
  • 入門講座(18時間):基本的な介護の方法(10時間)、認知症の理解(4時間)、障害の理解(2時間)、介護における安全確保(2時間)

実技の評価や修了試験は無く、基礎講座及び入門講座の研修を欠席することなく受講するだけで修了証明書が発行されます。

4.生活援助従事者研修と教育訓練給付制度の関係

厚生労働大臣指定教育訓練には、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類があり、それぞれ厚生労働省が定める指定基準があります。

公的職業資格と一般教育訓練

生活援助従事者研修は、教育訓練給付制度上の「公的職業資格」に該当します。

厚生労働省の定義では、公的職業資格とは、「職業に関連する公的資格・試験等であって、国若しくは地方公共団体又は国から委託を受けた機関が法令に基づいて実施する資格・試験等」であり、いわゆる国家資格のほか、法令に明確に規定されている免許の取得や研修の修了も含まれます。前述のとおり、「生活援助従事者研修修了者」は介護保険制度にかかわる公的資格であって、介護保険法施行規則の規定に基づき各都道府県が主体となって実施する研修の修了に該当します。

生活援助従事者研修のように、国または地方公共団体の指定等を受けて実施される当該教育訓練の修了により公的職業資格を取得できる課程は、「一般教育訓練」の指定を受ける対象となります。

必置資格に準ずる課程と特定一般教育訓練

厚生労働省令によると、介護保険の適用対象となる指定訪問介護事業者は、事業所ごとに2.5人以上の常勤(常勤換算方法による計算)の訪問介護員等を置く義務があり、この「訪問介護員等」には生活援助従事者研修修了者も含まれます。そのため、生活援助従事者研修は、必置資格(法令の規定により当該資格を有する者の業務のために使用される場所等に配置することが義務付けられている資格)に準ずる課程とされています。

生活援助従事者研修は、速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資するものとして、厚生労働省人材開発統括官の定める「公的職業資格のうち業務独占資格、名称独占資格又は必置資格の取得を訓練目標とする養成課程に準ずるもの」の一つであり、「特定一般教育訓練」の指定を受ける対象となります。

参考法令
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生労働省令第37号)第5条第1項  指定訪問介護の事業を行う者(以下「指定訪問介護事業者」という。)が当該事業を行う事業所(以下「指定訪問介護事業所」という。)ごとに置くべき訪問介護員等(指定訪問介護の提供に当たる介護福祉士又は法第八条第二項に規定する政令で定める者をいう。以下この節から第四節までにおいて同じ。)の員数は、常勤換算方法で、二・五以上とする。

一般と特定一般の違い

以上のことから、生活援助従事者研修は、一般教育訓練と特定一般教育訓練の対象となる教育訓練です。

一般教育訓練と特定一般教育訓練のどちらの指定をうけるかは各研修事業者が自由に選択して申請することができます。そのため、研修事業者によって一般教育訓練の指定を受けている場合もあれば、特定一般教育訓練の指定を受けている場合もあります。

一般教育訓練給付金の給付率は20%であり、ハローワークに事前の手続きをする必要はありません。修了後の支給申請をするだけです。これに対して、特定一般教育訓練給付金の給付率は40%であり、受講を開始する1か月前までにハローワークに行って訓練前キャリアコンサルティングを受け、受給資格確認の手続きを行う必要があります。これをしなければ給付金は一切支給されません。

専門実践教育訓練給付金は対象外

生活援助従事者研修は通常1年以内に終了します。一般教育訓練と特定一般教育訓練の訓練期間は「1か月以上1年以内」、専門実践教育訓練の訓練期間は原則として「1年以上3年以内」とされています。専門実践教育訓練給付金は長期の訓練を想定しているため、生活援助従事者研修は対象外とされています。

入門的研修は対象外

「介護に関する入門的研修」は、介護業界で就業することへの不安を払拭することを目的としており、職業に生かすには上位の研修を受けることが必要です。

教育訓練給付制度では、取得目標となる資格試験等に複数のレベルが設定されている場合、最下級レベルが入門的または基礎的なレベルである場合、それを取得目標とする教育訓練給付対象講座の指定の対象となりません。そのため、入門的研修は教育訓練給付制度の対象外となります。

5.教育訓練給付制度に関する注意点

厚生労働大臣の指定を受けたものに限られる

雇用保険法第60条の2の規定により「厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合」に教育訓練給付金が支給されます。

生活援助従事者研修について教育訓練の指定を受けるかどうかは各研修事業者が自由に決めることができます。受講した介護職員初任者研修が教育訓練給付制度対象講座の指定を受けていなければ給付金は支給されません(後述)。

ハローワークで申請すること

教育訓練給付金は、労働者が一定期間雇用保険に加入し、雇用保険料を支払っている場合に給付される雇用保険給付です。一定期間、被保険者として雇用保険に加入していた人は講習費用の20%(特定一般教育訓練の指定を受けている場合は40%)が給付されます。

教育訓練給付金は割引特典ではありません。また、返金されるものではありません。

まず、申し込みをする際にはその講習費用を全額(100%)支払います。このとき教育訓練給付金に相当する額を差し引いて支払ってはいけません。全額支払わなければ介護職員初任者研修を受けることができません。そして、介護職員初任者研修を修了した後で、ハローワークに行って支給申請するとその一部が給付されます(ハローワークで給付金の振込先口座を届け出る)。

修了証と教育訓練修了証明書の違い

生活援助従事者研修を修了すると「修了証」が交付されます。これは介護施設の生活援助従事者としての資格の証明書であり、本人が保管するものです。ハローワークとは無関係です。

生活援助従事者研修(ヘルパー3級)、介護に関する入門的研修と教育訓練給付制度 _ 6843-5

注:生活援助従事者研修の修了証はハローワークとは無関係の文書なので、ハローワークに提出しても給付金はもらえません。

これに対して、教育訓練給付対象講座の指定を受けている生活援助従事者研修を修了すると修了証と同時に、「教育訓練修了証明書」が交付されます。教育訓練修了証明書をハローワークに提出すれば教育訓練給付金の支給を受けることができます。

生活援助従事者研修(ヘルパー3級)、介護に関する入門的研修と教育訓練給付制度 _ 6843-4

6.現在の指定状況、実施状況

現在、全国各地で「生活援助従事者研修」「入門的研修」が実施されていますが、厚生労働大臣指定の教育訓練給付対象講座は実施されていません

生活援助従事者研修を受講するだけでは身体介護を伴う訪問介護ができないため、求人数が限られていることが原因ではないかと考えられます。

注:現在は、生活援助従事者研修を受講するだけでは教育訓練給付金は支給されません。

介護の教育訓練は「介護職員初任者研修」またはそれ以上の研修を受講することをおすすめします。

7.ホームヘルパー3級との関係

ホームヘルパー3級は廃止

ホームヘルパー3級と呼ばれていた「訪問介護員養成研修3級課程」は廃止され、2018年(平成30年)4月に「生活援助従事者研修」がスタートしました。そのため、訪問介護員養成研修3級(ホームヘルパー3級)の研修が新たに行われることはありません。

すでに廃止されている

  • 訪問介護員養成研修1級課程(ホームヘルパー1級)
  • 訪問介護員養成研修2級課程(ホームヘルパー2級)
  • 訪問介護員養成研修3級課程(ホームヘルパー3級)
  • 介護職員基礎研修課程

ホームヘルパー3級と生活援助従事者研修は異なる

ホームヘルパー3級と生活援助従事者研修は家事等を中心とした生活援助業務を行うための研修であることは同じですが、研修時間が9時間増えただけでなく、研修の内容がまったく異なるため、ホームヘルパー3級取得者は生活援助従事者研修修了者とは認められません。

  • 旧ホームヘルパー3級:50時間
  • 生活援助従事者研修:59時間

ホームヘルパー3級取得者が生活援助従事者研修を受講する場合、12時間分が免除され47時間の講習を受ける必要があります。

ホームヘルパー3級取得者の場合

  • 生活援助従事者研修:59時間→47時間(12時間免除)
  • 介護職員初任者研修:130時間→117時間(13時間免除)
  • 実務者研修:450時間→420時間(30時間免除)

8.補足説明

地方自治体が行う受講費助成金

一部の都道府県や市区町村では、生活援助従事者研修または入門的研修を無料で開催している場合や、受講料助成金の制度を実施している場合があります。制度の内容は自治体によって異なります。ただし、その自治体の住民で、その自治体の区域内にある介護事業者に就職を希望する人または就業中の介護職員に限られます。

助成金は、本人が受講料を負担したときに本人に支給される場合、事業主が受講料を負担したときに補助される場合などがあります。

短期訓練受講費

教育訓練給付金の受給資格がない場合で、事前にハローワークで受講指導を受けてから生活援助従事者研修または入門的研修を受講し修了した場合、支払った受講費用等の20%が支給されることがあります。ただし、ハローワークが受講を認めた場合で、1か月以内に修了するものに限られます。