介護職員初任者研修と生活援助従事者研修はいずれも特定一般教育訓練の指定の対象であり、特定一般教育訓練給付金は給付率が40%となります。ただし、支給を受けるには受講開始の1か月前までに事前の受給資格確認の手続きをする必要があります。
1.介護職員初任者研修と生活援助従事者研修
介護職員初任者研修(旧訪問介護員2級課程)は、身体介護を含む介護業務全般の知識と技術を習得することを目的とする研修です。また、生活援助従事者研修(旧訪問介護員3級課程)は、生活援助が中心である指定訪問介護に従事する職員が行う業務に関する知識及び技術を習得することを目的とする研修です。
介護職員初任者研修と生活援助従事者研修はいずれも教育訓練給付制度の対象であり、そのなかで一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金の対象となっています。どちらの指定を受けるかは各研修事業者が自由に選択することができます。特定一般教育訓練の指定を受けている講座は特定一般教育訓練給付金のみを受給することができ、一般教育訓練給付金を受給することはできません。
2.特定一般教育訓練給付金制度と介護職員初任者研修
ハローワークで申請をすること
介護職員初任者研修の申し込みをする際に受講料を全額支払い、修了が確認されたらハローワークから教育訓練給付が支給されます。
教育訓練給付の支給を受けるには、厚生労働大臣から教育訓練給付対象講座の指定を受けた介護職員初任者研修を受講しなければなりません。厚生労働大臣の指定を受けていない研修を受けた場合、介護職員初任者研修の修了者とはなりますが、ハローワークからの給付は受けられません。その場合は受講料は全額自己負担となります。
一般と特定一般でなぜ給付率が違うのか
もともと教育訓練給付制度は1998年(平成10年)12月1日に創設されました。一般教育訓練給付金の給付率は20%です。そして、特定一般教育訓練給付金制度は一般教育訓練給付金制度を拡充する目的で、約20年後の2019年(令和元年)10月1日からスタートしました。
特定一般教育訓練は、一般教育訓練のなかで特に「速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する」として厚生労働大臣が指定したものであり、その受講を推奨するために給付率を40%に引き上げています。特定一般教育訓練の受講者として想定しているのは、「速やかな再就職及び早期のキャリア形成」を必要とする人であり、資格を取るだけでなく、資格を取った後の転職や再就職、キャリアアップについてハローワークで職業相談をすることがセットとなっているのです。
単に給付金を「もらえる」のではないということに留意しなければなりません。
そのため、特定一般教育訓練を受講するには、受講開始日の1か月前までにハローワークでキャリアコンサルティングを受けるとともに、ハローワークの職員が受給資格の確認を行う事前の手続きをしなければなりません。一般教育訓練の場合はこのような事前の手続きは不要です。
- 一般教育訓練:給付率20%、受講するだけ
- 特定一般教育訓練:給付率40%、キャリアコンサルティングと事前手続きが必須
3.訓練前キャリアコンサルティング
特定一般教育訓練の指定を受けている講座の場合、一般教育訓練とは異なる事前手続きが必要であり、これを怠ると給付金は1円も支給されません。特定一般教育訓練給付金は、特定一般教育訓練の手続きをする必要があり、一般教育訓練給付金に切り替えて受給するといったことも不可能です。
ジョブ・カードの作成
特定一般教育訓練給付金の支給を受けるには、まず、ジョブ・カード(正式には職務経歴等記録書)を作成します。ジョブ・カードは、訓練前キャリアコンサルティングの資料として必要となります。そして、受講する特定一般教育訓練を決めておきます。
ジョブ・カードのダメ出しを受ける
ある程度、ジョブ・カードが作成できたら、住居所管轄のハローワークに行って「訓練前キャリアコンサルティング」の予約をします。訓練前キャリアコンサルティングとは、通常のキャリアコンサルティングとは異なり、これまでの職務経歴や能力を踏まえて特定一般教育訓練の受講が可能かを判断するものです。
そのため、国家資格のキャリアコンサルタント試験に合格したコンサルタントのうち、さらに特定一般教育訓練の受講予定者に対応した「訓練対応研修」を修了した「訓練対応」の資格を持つキャリアコンサルタントが実施します。
このとき、事前に作成したジョブ・カードの添削を受け、記述が不十分であれば、さらに記入するよう要求されます。簡単に言えばジョブ・カードのダメ出しを受けます。コンサルタントのアドバイスをもらいながらジョブ・カードを作成することも可能ですが、その時間内にジョブ・カードが完成しなければ「キャリアコンサルティングのやり直し」となり、別の日に予約を取る必要があります。
ちなみに、特定ではない一般教育訓練の場合、自主的にキャリアコンサルティング(訓練対応コンサルタントでなくてもよい)を受けた場合は、その費用を教育訓練経費に含めて給付金を申請することができ、その20%が一般教育訓練給付金として支給されます。
- 一般教育訓練:キャリアコンサルティング任意
- 特定一般教育訓練:訓練前キャリアコンサルティング必須
4.受講の許可と受給資格確認
受給資格確認
訓練前キャリアコンサルティングが終了したら、担当キャリアコンサルタントが、ジョブ・カードの記入欄に今回の教育訓練に関するコメント(当該特定一般教育訓練受講予定者の就業に関する目標その他職業能力の開発及び向上に関する事項)を記入します。これにより受講が許可されたことになります。これがなければ特定一般教育訓練の受講はできません。
そして、そのジョブ・カードと「受給資格確認票」をハローワークの窓口に提出します。ハローワークの職員は、本人の受給資格の有無と、担当コンサルタントのコメントの記載を確認します。
受給資格確認通知書
受給資格があるものと確認された場合は、「教育訓練給付金(特定一般教育訓練)受給資格確認通知書」が交付されます。修了後に給付金の支給を申請するときに必要となりますから、修了まで大切に保管します。
ちなみに、受給資格がないと判断された場合は「否認通知書」が交付されますが、否認されたとしても何回でもこの事前手続きを行うことができます。
5.一般教育訓練との共通点
受給資格
特定一般教育訓練給付金の受給資格は、一般教育訓練給付金と同じです。
教育訓練給付対象者(在職者または離職1年以内)が、受講開始日の時点で支給要件期間3年以上(初回に限り1年以上)を満たした場合に受給資格があります。なお、年齢制限はありません。
給付の対象となる教育訓練経費
特定一般教育訓練給付金の給付の対象となる教育訓練経費の範囲は、一般教育訓練給付金と同じです。
給付の対象となるのは、標準的な講習費用とその消費税です。ただし、割引やキャンペーンが適用された場合は割引後の金額が教育訓練経費となります。
欠席した場合の補講、振替授業、レポート再提出の添削、修了試験の追試験の場合は追加の費用が発生することがありますが、これらの費用は給付の対象外です。
6.特定一般教育訓練給付金を申請するまでの流れ
支給要件照会
支給要件照会とは、ハローワークに「支給要件照会票」を提出して受給資格の有無のほか、希望する研修事業者の講座が厚生労働大臣の指定を受けているかどうかも確認することです。支給要件照会は必須の手続きではありませんが、事前に行っておくことをおすすめします。
支給要件照会で確認できること
- 自分が受給資格があるか
- 希望するコースが厚生労働大臣の指定を受けているか
- その指定が「特定一般」か「一般」か
受給資格確認
前述のとおり、特定一般教育訓練の場合、受講開始の1か月前までにジョブ・カードの作成、訓練前キャリアコンサルティング、受給資格確認の手続きを済ませておく必要があります。一般教育訓練の場合は不要です。
なお、実習は少人数のグループワークで行われるため募集定員があります。すでに申し込みを締め切っている場合が有りますのでご注意ください(研修事業者に事前に確認しておいたほうが良い)。
申し込み
特定一般教育訓練を申し込むときは、必ず特定一般教育訓練給付制度を利用する旨を伝えます。ハローワークですでに受給資格の確認をしており「教育訓練給付金(特定一般教育訓練)受給資格確認通知書」が交付されています。この確認通知書を提示すればよいです。
なお、受給資格確認通知書を提示しなくても教育訓練給付の対象となりますので、申し込みの際に受給資格確認通知書の提示を求められていない場合は、受給資格確認通知書を添付しなくても良いです。
- 一般教育訓練:支給要件回答書
- 特定一般教育訓練:受給資格確認通知書
支給申請
特定一般教育訓練給付金の支給申請手続きは、特定一般教育訓練の修了後1か月以内に本人の住所を管轄するハローワークに「教育訓練給付金支給申請書」を提出することによって行います。このとき「教育訓練給付金(特定一般教育訓練)受給資格確認通知書」を添付します。また、研修事業者が発行した「教育訓練修了証明書」「領収書」を添付します。
支給決定7日以内にハローワークから指定の口座に給付金が振り込まれます。
7.特定一般教育訓練を実施する研修事業者一覧
介護職員初任者研修
2023年(令和5年)4月1日現在で、特定一般教育訓練の指定を受けている介護職員初任者研修を実施している研修事業者は次のとおりです。都道府県は本社の所在地であり全国各地に教室を設置している場合があります。また、介護職員初任者研修と実務者演習をセットで実施しているものも含まれます。
なお、この一覧表は当サイトが研究および分析のために独自に取得したデータであり、内容は一切保証しません。時季によっては教育訓練を実施していない場合もありますから、講座の詳細は各研修事業者へお問い合わせください。
生活援助従事者研修
生活援助従事者研修は、一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金の対象とされています。
しかし、現在のところ、生活援助従事者研修の教育訓練給付対象講座は実施されていません。生活援助従事者研修を受講するだけでは身体介護を伴う訪問介護ができないため、求人数が限られていることが原因ではないかと考えられます。「介護職員初任者研修」またはそれ以上の研修を受講することをおすすめします。