教育訓練実施者は、当該教育訓練を主体的に実施する者であり、法人登記されている法人または団体のことをいいます。教育訓練施設は、教育訓練実施者が設置した施設であって教育訓練の事務を行う本部の事務局のことです。実際に訓練を行う場所は「教室」です。
1.教育訓練実施者、教育訓練施設、教室の違い
教育訓練実施者
教育訓練実施者(指定教育訓練実施者)とは、厚生労働大臣の指定を受けて教育訓練給付対象講座を実施する者のことをいい、具体的には教育訓練施設を設置して教育訓練を実施する(登記簿上の)法人または団体のことをいいます。
教育訓練実施者については、事業の継続性及び安定性を確実なものとする観点から、日本国内の法人または団体に限られます。ただし、学校教育法上の個人設置の専修学校または各種学校であって、都道府県知事の設置認可を受けた者についてはこの限りではありません。
指定を受けるには厚生労働省告示に定める指定基準をクリアし、指定後も指定基準に定める内容を適切に実施しなければなりません。
教育訓練施設
教育訓練施設とは、教育訓練実施者(法人または団体)が実際に運営している本部または本校のことであり、具体的には教育訓練に係る講座等の運営及び付随する事務処理等を行い、実質的に対象教育訓練を受講者に提供する組織体をいいます。
(例)私立大学の場合、登記簿上の学校法人が教育訓練実施者であり、学校法人が設置した大学の本部(実際に事務を行う大学事務局のこと)が教育訓練施設である。
教育訓練施設には、教育訓練を実施する上で必要となる教室、設備、備品等が常に使用できる状態で設置され、教育訓練講座を適切に実施するだけでなく、教育訓練給付制度に係る事務等を適正に実施できる組織体制が整備されている必要があります。なお、当該教育訓練施設の長が事前に届出をすれば複数の教室で授業または事務を行うことができ、その場所で実施された対象教育訓練は教育訓練給付金の支給対象となります。
教育訓練施設も日本国内に設置される施設であることが必要です。
教室
教室とは、教育訓練施設(本校)の管理下にある複数の場所(○○校、分校、教室等の名称を問わない)であり、講座名、訓練内容、訓練期間、使用する教材等が全く同じである同一内容の対象教育訓練を実施する授業場所のことです。
当該教育訓練施設(本校)の長が届出を行い、その場所において対象教育訓練が適正に遂行され、施設事務の遂行に支障がないことが認められた場合に限って、「教室」として教育訓練給付の対象となります(届出をしなければ給付の対象ではない)。
- 教育訓練実施者:施設を運営する法人または団体(例:株式会社○○○○○)
- 教育訓練施設:授業と付随する事務処理等の全部を統括する本部または本校(例:○○○○○学校)
- 教室:1つの教育訓練施設の管理下にある複数の授業場所(校舎、分校、教室等の名称を問わない)
2.教育訓練実施者の要件
厚生労働大臣が指定する教育訓練の指定基準には、「厚生労働省が行う調査等に協力し、かつ、その指導及び助言に従うものであること」、「教育訓練給付制度に係る事務等を適正に実施するものであること」との条件があり、当該教育訓練を適正に実施するだけでなく、教育訓練給付制度全般の適正実施に協力する責務があり、事務等を迅速かつ適正に処理することが求められています。
教育訓練実施者は、次の要件をすべて満たす必要があります。
教育訓練を遂行する能力
当該教育訓練を継続的に安定して遂行する能力を有するものであること。
- 事業の継続性及び安定性を確実なものとする観点から、法人であること。
- 教育訓練実施者については日本国内の法人であり、かつ、教育訓練施設も日本国内に設置される施設であること。
- 当該教育訓練を主体的に実施している教育訓練実施者であって、当該教育訓練を開始した日以降教育訓練の指定の申請日(指定申請日)までに、定款等に記載の営業年度で実際に1営業年度以上の事業実績を有し、かつ、その間継続的に安定して運営されていること。なお、営業年度とは、定款等に記載されている会計年度等を指すものであること。
- 破産法に基づく破産手続開始、民事再生法に基づく再生手続開始、会社更生法に基づく更生手続開始、金融機関との取引停止がなされる原因となる不渡り手形の発生等、倒産のおそれがないものであること。
- 厚生労働省が貸借対照表、預貯金残高証明書、固定資産税の評価額証明書等、資産の実在を客観的に確認できる資料の提出を求めた場合、調査等に協力するものであること。
ただし、学校教育法上の個人設置の専修学校又は各種学校であって、都道府県知事の設置認可を受けた教育訓練実施者については、日本国内の法人でなくてもよいとされています。
組織及び設備
当該教育訓練を適切に実施するための組織及び設備を有するものであること。また、必要な職員数を備えており、教育訓練を実施する上で必要となる教室、設備、備品等を所有している又は賃貸借契約等に基づき、常に使用できる状態に置いていること。
なお、教育訓練を実施する上で必要となる教室、設備、備品等を賃借する場合、当該施設等を賃借する際に締結した賃借契約書等により客観的に当該賃借の事実が確認できること。
報告義務
厚生労働省が行う調査及び雇用保険法第76条第2項に基づく報告又は文書の提出の求め等に対して、適切に協力する者であるとともに、厚生労働省の指導及び助言に従うものであること。
厚生労働省は、雇用保険法第76条第2項の規定に基づく報告又は文書の提出に応じない場合その他指定講座として適正でないことが判明した場合には、指定の取消しを行うことができること。
雇用保険法 第76条第2項
行政庁は、厚生労働省令で定めるところにより、受給資格者等を雇用しようとする事業主、受給資格者等に対し職業紹介若しくは職業指導を行う職業紹介事業者等、募集情報等提供事業を行う者又は教育訓練給付金支給対象者に対し第六十条の二第一項に規定する教育訓練を行う指定教育訓練実施者に対して、この法律の施行に関して必要な報告又は文書の提出を命ずることができる。
教育訓練実施者は、それぞれ以下のとおり教育訓練修了後に調査を行い、厚生労働省に対して定期的に報告しなければならない。
- 一般教育訓練:入講者、修了者、受験者及び合格者に係る人数並びにそれぞれの人数のうち一般教育訓練給付金受給者の内数
- 特定一般教育訓練:入講者、修了者、受験者、合格者、就職者及び在職者に係る人数並びにそれぞれの人数のうち特定一般教育訓練給付金受給者の内数
- 専門実践教育訓練:入講者、修了者、受験者、合格者、就職者及び在職者に係る人数並びにそれぞれの人数のうち専門実践教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給者の内数。
さらに、専門職学位課程、職業実践力育成プログラム及び専門職大学等の課程にあっては最新の入学定員に占める定員充足率。
協力義務
教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金の支給に係る制度について次に掲げる事務等を適正に実施するとともに、制度の適正な運営について公共職業安定所及び関係機関に対して協力すること。
- 一般教育訓練修了証明書、特定一般教育訓練修了証明書、受講証明書及び専門実践教育訓練修了証明書、領収書等並びに教育訓練支援給付金受講証明書を適正に発行すること。
- 教育訓練給付金支給申請書(の用紙)を受講者に交付するとともに、教育訓練給付金等の公共職業安定所への支給申請方法及び申請期限を周知すること。
- その他受講者の本人確認、受講状況等の進捗管理等、適正な運営に必要な事務等。
体制の整備
受講者の資格取得等や再就職に向けた具体的な支援策を講ずることができる体制を整備すること。
例えば、教育訓練給付金等制度担当窓口や再就職相談支援部署の設置、求人募集等の職業関連情報の提供、関連講座の案内、資格・免許情報及び受講修了者の体験談の提供等の支援措置のほか、職業能力開発促進法第2条第5項に規定するキャリアコンサルティングを行う者として、同法第30条の3に規定するキャリアコンサルタントを施設内に配置すること等により、受講者の個々の実情に応じたきめ細かな相談支援等を行えるような体制の整備に努めること。
3.欠格事由
以下の「欠格事由」に該当する場合、教育訓練実施者は指定を受けることができません。
取消しの日から5年を経過しない場合
対象教育訓練の運営における不適正な行為等により指定を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者。
- 当該指定を取り消された者が法人又は団体である場合においては、当該取消しの理由となった事実があったときに、当該法人又は団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)であった者で、その取消しの日から5年を経過しないものを含む。
取消しの日から5年を経過しない者が役員に含まれる場合
当該対象教育訓練を実施する者が法人又は団体である場合にあっては、当該法人又は団体の役員に取消しの日から5年を経過しない者が含まれるもの。
著しく不適当であると認められる場合
上記以外に、対象教育訓練を実施する者として著しく不適当であると認められる者であって、次に該当するもの。
- ア 指定申請日から起算して5年前から当該申請に係る指定適用日の前日までの間又は指定を受けている間において、国の助成金制度に関して不正が認められた場合
- イ 指定申請日から起算して5年前から当該申請に係る指定適用日の前日までの間又は指定を受けている間において、国又は地方公共団体による許認可の取消しや事業停止命令等、重大な不利益処分を受けた場合
- ウ 法人又は団体の役員の中に、ア又はイに該当する別の法人若しくは団体の役員であった者(当該団体にア又はイに該当する行為があった時点において役員であった者に限る。)又は現に役員である者がいる場合
- エ アからウまでに掲げる者のほか、これらに準ずる著しく不適当な事実が明らかになった場合
4.特定一般、専門実践教育訓練の実施者の要件
特定一般教育訓練及び専門実践教育訓練については上記の要件の他に次の要件を満たす必要があります。
担当者の設置
当該教育訓練が行われる施設ごとに、施設責任者、苦情受付者及び事務担当者が配置されていること。
- 施設責任者:当該施設において行われる教育訓練の適正な実施の管理に係る専任の責任者
- 苦情受付者:苦情の処理に関する業務を公正かつ的確に遂行する担当者
- 事務担当者:受講者からの手続に関する問合せ等に常時対応する担当者
なお、施設責任者は専任であり、他の教育訓練施設の施設責任者との兼務はできないこと。また、苦情受付者は、施設責任者及び指導者のいずれとも兼務できないこと。さらに、施設責任者及び苦情受付者は、教育訓練実施者と直接の雇用関係にあること。
受給資格者証の確認
特定一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金の支給を受けようとする者に対し、当該教育訓練の受講前に、教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格者証が交付されているか確認すること(受給資格者証は受講開始14日前までに受講者がハローワークに申請して交付されるものである)。
5.指定の取消し
指定教育訓練実施者とその運営する教育訓練施設に対する厚生労働大臣の指定は、指定後この基準に適合しなくなったと認められるときは取消し等の対象となります。また、受講者の支給申請に当たって必要な証明をせずまたは偽りの証明をしたとき、誤った教示を繰り返している事実があるときその他教育訓練給付制度に関して不正な行為を行ったときは、指定が取り消されることとなります。
- 指定基準を満たさなくなったとき
- 受講者の支給申請に当たって必要な証明をせず又は偽りの証明をしたとき
- 誤った教示を繰り返している事実があるとき
- その他教育訓練給付金制度に関して不正な行為を行ったとき
不適正な行為等により指定の取消しを受けた者は、当該指定取消しの日から起算して5年間は指定を受けることができません。
特に受講者に対する教育訓練修了証明書を不正に発行した場合や、実際に受講者が納付した額と異なる額を記載した不正な領収書の発行等があった場合(事前・事後を問わず、また、紹介料、手数料などの名目の如何を問わず、還元的な給付等を行った場合において、当該額を差し引かない額の領収書を発行した場合を含む。)、これにより給付を受けることは、不正受給に該当し、教育訓練実施者は、不正受給者と連帯して不正に受給した金額の返還または当該額の2倍の金額の納付を命ぜられることがあります。
- 【教育訓練の指定取り消し】対象講座が取消または廃止となった場合の給付金
- 教育訓練給付金対象講座が指定取り消しとなった例【取消対象となる指定講座一覧】
- 教育訓練給付の不正受給処分のペナルティ、返還命令、納付命令
6.補足説明
指定教育訓練実施者の定義について
指定教育訓練実施者の定義は、雇用保険法第10条の4第2項(不正受給)に規定されています。
雇用保険法 第10条の4第2項
前項の場合において、事業主、職業紹介事業者等(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第二条に規定する職業紹介機関又は業として職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第四条第四項に規定する職業指導(職業に就こうとする者の適性、職業経験その他の実情に応じて行うものに限る。)を行う者(公共職業安定所その他の職業安定機関を除く。)をいう。以下同じ。)、募集情報等提供事業を行う者(同条第六項に規定する募集情報等提供を業として行う者をいい、同項第三号に掲げる行為(労働者になろうとする者の依頼を受けて行う場合に限る。)を行う者に限る。以下この項及び第七十六条第二項において同じ。)又は指定教育訓練実施者(第六十条の二第一項に規定する厚生労働大臣が指定する教育訓練を行う者をいう。以下同じ。)が偽りの届出、報告又は証明をしたためその失業等給付が支給されたものであるときは、政府は、その事業主、職業紹介事業者等、募集情報等提供事業を行う者又は指定教育訓練実施者に対し、その失業等給付の支給を受けた者と連帯して、前項の規定による失業等給付の返還又は納付を命ぜられた金額の納付をすることを命ずることができる。




