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マンション管理士、管理業務主任者と教育訓練給付制度 _ pr
資格・講座

マンション管理士、管理業務主任者と教育訓練給付制度

マンション管理士、管理業務主任者はいずれも法令で定められた国家資格であり、宅地建物取引士資格試験と共通する試験科目があるため同時に取得しやすい資格です。マンション管理士、管理業務主任者はいずれも教育訓練制度が適用される公的職業資格です。

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1.不動産の3大資格

宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者を不動産の3大資格と言うことがあります。

宅地建物取引士(宅建士)

宅地建物取引士(宅建士)は、宅地建物取引業法で定められた国家資格であり、宅地や建物の売買、交換、賃貸借の契約や申し込みを受けるときに重要事項を説明する専門家です。マンションに限らず不動産全般に関する資格であり、不動産の3大資格のなかで最も基本(土台)となる資格です。文系の国家資格の中で最も人気のある資格の一つです。

マンション管理士(マン管)

マンション管理士(マン管)は、マンションの管理に関してマンション管理組合や住民の相談に応じ、助言、指導その他コンサルタント業務を行う専門家であり、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)で定められた国土交通省の国家資格です。マンション管理士になるには、国家試験であるマンション管理士試験に合格し、登録を受ける必要があります。

参考法令
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第6条  マンション管理士試験(以下この章において「試験」という。)に合格した者は、マンション管理士となる資格を有する。

ちなみに、マンション管理士の「マンション」とは、1戸以上の専有部分をもち2名以上の区分所有者がいる建物とその敷地及び附属施設のことです(団地の場合は団地の共有部分も含む)。賃貸物件ではなく「分譲マンション」のことです。

参考リンク

マンション管理士になるには(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/about/file000067.html

管理業務主任者(管業)

管理業務主任者(管業)は、住民やマンション管理組合の運営をマンション管理業者(マンションの管理会社)に委託した場合に、そのマンション管理に関する契約を担当する専門家であり、管理業務主任者の資格もマンション管理適正化法で定められた国土交通省の国家資格です。管理業務主任者になるには、国家試験である管理業務主任者試験に合格し、登録を受け、管理業務主任者証の交付を受ける必要があります。

参考法令
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第57条第1項  管理業務主任者試験(以下この節において「試験」という。)は、管理業務主任者として必要な知識について行う。
参考リンク

マンション管理業について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000010.html

不動産3大資格の違い

宅地建物取引士は不動産取引の専門家ですが、原則として宅地建物取引業者の従業員です。適用される法律は宅地建物取引業法です。

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マンション管理士と管理業務主任者はいずれもマンション管理適正化法で定められたマンション管理の専門家です。マンション管理士は、住民の相談に応じるコンサルタントであり、業務を行うのにどこかの会社に属している必要はありません(マンション管理アドバイザーと呼ばれることもあります)。これに対して、管理業務主任者は管理会社であるマンション管理業者の従業員です。

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2.マンション管理士試験と管理業務主任者試験

マンション管理士試験の概要

マンション管理士試験は、国土交通大臣が指定した指定試験機関である公益財団法人マンション管理センターが実施しています。

参考リンク

マンション管理士試験(公益財団法人マンション管理センター)
https://www.mankan.org/

参考法令
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第11条第1項  国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより、その指定する者(以下この節において「指定試験機関」という。)に、試験の実施に関する事務(以下この節において「試験事務」という。)を行わせることができる。

受験資格は特にありません(宅建士合格者でなくてもよい)。年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験できます。

マンション管理士試験は札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市、那覇市並びにこれらの周辺地域を試験会場として、年1回、通常は11月の最終日曜日に実施されます。出題科目は主に次の4つの分野で、四肢択一のマークシート方式、50問50点満点、試験時間は2時間です。

マンション管理士試験の出題分野

  • 法令と実務:民法、区分所有法、マンション標準管理規約、建築基準法、不動産登記法、都市計画法など
  • 管理組合の運営:管理組合の組織と運営、苦情対応、会計と税務、訴訟と判例など
  • マンションの構造と設備:長期修繕計画、建物設備の診断、大規模修繕など
  • マンション管理適正化法:マンション管理適正化法、規則、指針など

管理業務主任者試験の概要

管理業務主任者試験は、国土交通大臣が指定した指定試験機関である一般社団法人マンション管理業協会が実施しています。

参考リンク

管理業務主任者試験(一般社団法人マンション管理業協会)
https://www.kanrikyo.or.jp/kanri/

参考法令
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第58条第1項  国土交通大臣は、国土交通省令で定めるところにより、その指定する者(以下この節において「指定試験機関」という。)に、試験の実施に関する事務(以下この節において「試験事務」という。)を行わせることができる。

受験資格は特にありません(宅建士合格者でなくてもよい)。年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験できます。

管理業務主任者試験は札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市、那覇市並びにこれらの周辺地域を試験会場として、年1回、通常は12月の第1日曜日に実施されます。出題科目は主に次の4つの分野で、四肢択一のマークシート方式、50問50点満点、試験時間は2時間です。

管理業務主任者試験の出題分野

  • 法令:民法、区分所有法、マンション管理適正化法、マンション標準管理規約など
  • 実務:会計と税務、訴訟と判例など
  • マンションの構造と設備:建物と附属施設の維持、修繕に関する企画、実施の調整など
  • マンション管理適正化法:マンション管理適正化法、規則、指針など
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3.資格と教育訓練給付制度

マンション管理士は名称独占資格

マンション管理士試験に合格し、国土交通大臣の登録を受けたマンション管理士でない者は、マンション管理士またはこれに紛らわしい名称を用いることができません(罰則:30万円以下の罰金)。マンション管理士は、国土交通大臣の登録を受けた登録試験機関により実施される公的職業資格のうち、名称独占資格(法令の規定により当該資格を有しない者の当該資格の名称の使用が禁止されている資格)に該当します。

参考法令
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第43条  マンション管理士でない者は、マンション管理士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。

管理業務主任者は業務独占資格、必置資格

マンション管理業者は管理組合から管理事務の委託を受ける契約(管理受託契約)を締結しようとするとき、契約の内容及びその履行に関する重要事項を説明する義務があります(マンション管理適正化法第72条)。マンションの区分所有者や管理組合の全員に対して説明会を開催し、法令で定められた説明をすべて行い、書面で交付しなければなりません。

管理業務主任者は、重要事項説明書(72条書面)と管理受託契約書(73条書面)に記名をするとともに、不動産契約をする当事者に対して、管理業務主任者証を提示して説明する義務があります。管理業務主任者の資格は国家資格のうち業務独占資格に該当します。

管理業務主任者の独占業務(マンション管理適正化法)

  • 72条:重要事項の説明会の開催、重要事項説明書の記名と交付、管理業務主任者証の提示
  • 73条:管理受託契約書に記名すること
  • 77条:管理事務に関する年次報告、管理事務報告書の交付、管理業務主任者証の提示
  • 63条:マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは管理業務主任者証を提示すること

マンション管理業者は、その事務所ごとに委託を受ける管理組合の数30件に対して1人以上の割合で専任(常勤)の管理業務主任者を置かなければなりません。管理業務主任者の資格は国家資格のうち必置資格にも該当します。

参考法令
マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則 第15条の5の3  法第五十六条第一項の国土交通省令で定める管理業務主任者の数は、マンション管理業者が管理事務の委託を受けた管理組合の数を三十で除したもの(一未満の端数は切り上げる。)以上とする。

一般教育訓練、特定一般教育訓練の対象となる

教育訓練給付金は、厚生労働省の指定基準に従って、「厚生労働大臣が教育訓練給付対象講座として指定した講座」を修了した場合に支給されます(雇用保険法第60条の2)。

厚生労働大臣が指定する教育訓練には、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類があり、公的職業資格のうち業務独占資格、名称独占資格、必置資格の取得を訓練目標とする講座で、かつ、訓練期間が1年未満の講座は一般教育訓練または特定一般教育訓練の対象となります。

「マンション管理士対策講座」「管理業務主任者対策講座」は訓練期間が1年未満であることが想定されるので、厚生労働省に指定の申請をすれば一般教育訓練または特定一般教育訓練の指定を受けます。国家試験等の受験対策のみを目的とした教育訓練については、専門実践教育訓練の対象とはなりません。

教育訓練給付金の受給資格と支給申請手続き

教育訓練給付金の受給資格と支給される条件、具体的な給付金の支給申請手続きについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

4.厚生労働大臣の指定を受けた講座に限られる

厚生労働大臣指定講座

教育訓練給付金は、「厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合」に支給されます。具体的には、雇用保険法施行規則第101条の2の2の規定により教育訓練施設があらかじめ厚生労働省に対して「教育訓練給付対象講座の指定」を申請し、厚生労働大臣が教育訓練施設に対して「講座指定通知書」を交付することによって指定を受けた講座に限られます。

参考法令
雇用保険法施行規則 第101条の2の2第1項本文  厚生労働大臣は、法第六十条の二第一項の規定による指定をしたときは、次に掲げる事項を記載した講座指定通知書を、当該教育訓練を行う指定教育訓練実施者(法第十条の四第二項に規定する指定教育訓練実施者をいう。以下同じ。)に通知するものとする。

さらに、教育訓練給付金を受給できるのは「最初に教育訓練給付制度を利用することを申し出て、講習を申し込んだ人」だけです。それ以外の人はすべて給付の対象外です。

禁止されていること

  • 講習の途中に教育訓練給付制度の適用を申し込むこと
  • 卒業した後で教育訓練給付制度の適用を申し込むこと

教育訓練を探す方法

教育訓練給付対象講座の指定を受けている宅地建物取引士資格試験対策講座は、厚生労働省の「厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で検索することができます。

5.教育訓練修了証明書

試験に合格しなくても教育訓練給付金はもらえる

教育訓練給付金は、「厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合」に支給されます。この場合の「修了」とは、教育訓練給付対象講座の指定を受けている宅地建物取引士資格試験対策講座を適切に受講して、教育訓練施設が独自に定める修了認定基準(修了試験やレポートなど)によって修了が認定されることをいいます。

「マンション管理士対策講座」「管理業務主任者対策講座」を途中でやめた場合は支給対象外ですが、対策講座が修了すれば教育訓練給付金の支給を申請することができます(修了した時点で支給を受ける権利が発生する)。

その後のマンション管理士試験、管理業務主任者試験に合格しなくてもかまいませんし、合格したかどうかをハローワークに報告する義務もありません。また、不合格だったからといって給付金を返還しなくてもよいですし、受験しなかったとしても給付金の支給を受ける権利はあります。

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教育訓練修了証明書

試験対策講座を修了したとしても試験対策の講座が終わっただけなので、マンション管理士、管理業務主任者になる資格や受験資格は得られません。そのため、通常は「修了証明書」のような書類が交付されることはありませんし、仮に交付されたとしても何の効果もありません。

しかし、教育訓練給付対象講座の指定を受けている試験対策講座を修了すると、「教育訓練修了証明書」が交付されます。この教育訓練修了証明書をハローワークに提出すると教育訓練給付金の支給を受けることができます。

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注:マンション管理士登録証、管理業務主任者証は本人が携帯するものであり、ハローワークに提出しても給付金はもらえません。

6.ダブル受験のメリット

業務や出題範囲が共通している

マンション管理業者の従業員である管理業務主任者が、マンション管理士の資格を取ると管理組合と管理委託の契約をするだけでなく、住民からのマンション管理の相談を受けることもできます。マンション関連の法令や管理規約、マンションの構造、大規模修繕に関する知識などは、管理業務主任者試験とマンション管理士試験の共通する出題範囲です。

5問免除

マンション管理士試験と管理業務主任者試験はいずれも50問で、そのうちの5問は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に関する問題です。そのため、一方の試験に合格していれば、もう1つの試験ではその「5問」が免除されます。つまり、管理業務主任者試験の合格者はマンション管理士試験の5問が免除され、マンション管理士試験の合格者は管理業務主任者試験の5問が免除されます。

参考法令
マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則 第4条  管理業務主任者試験に合格した者については、第二条に掲げる試験すべき事項のうち同条第四号に掲げるものを免除する。
マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則 第66条  マンション管理士試験に合格した者については、第六十四条に掲げる試験すべき事項のうち同条第四号に掲げるものを免除する。

ダブル受験対策講座と教育訓練給付制度

原則として、教育訓練給付対象講座を同時に複数利用することはできず、複数の教育訓練給付対象講座を同時に申し込んだ場合はそのうちの1つしか利用することができません。例えば「マンション管理士対策講座」と「管理業務主任者対策講座」を同時に受講しても、教育訓練給付金の支給対象となるのはいずれか1つだけです(1つだけ選択して支給申請する)。

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しかし、教育訓練施設が、「マンション管理士と管理業務主任者をセットで対策する講座」を設置している場合で、そのコースを「1つの講座」として厚生労働省の教育訓練給付対象の指定を受けた場合は、そのコースを1つの教育訓練給付対象講座として申し込むことができます。この場合はセットで取得することが可能です。

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セットの講座として教育訓練給付対象の指定を受けていない場合や、教育訓練給付対象講座ではないコース(オプションコース)とのセットは教育訓練給付制度の対象外です。

教育訓練給付制度を利用して一度、教育訓練給付金を受給すると、支給された日から最低3年は再び教育訓練給付金を受給することができません。そのため、時間的、経済的、精神的余裕があれば、まとめて取得したほうが良いです。

7.補足説明

登録実務講習

マンション管理士はマンション管理士試験に合格するだけで登録をすることができ「マンション管理士登録証」が交付され、業務を行うことができます。

管理業務主任者は管理業務主任者試験に合格後、実務経験2年以上が必要ですが、マンション管理業協会が行う登録実務講習を受講すれば実務経験が不要となります。登録が完了したら「管理業務主任者証」が交付され、業務を行うことができます。なお、登録実務講習は教育訓練給付制度の対象外です。