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キャリアコンサルタント国家資格と教育訓練給付制度、キャリアコンサルタント養成講習の概要 _ pr
資格・講座

キャリアコンサルタント国家資格と教育訓練給付制度、キャリアコンサルタント養成講習の概要

キャリアコンサルタントは職業選択や職業能力の開発に関するアドバイス(面談)をする専門職であり、国家資格(名称独占資格)です。キャリアコンサルタント国家試験の受験資格を取得できるキャリアコンサルタント養成講習は、「専門実践」教育訓練給付制度の対象となっています。

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1.キャリアコンサルタントの概要

国家資格キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントEmployment Counselor)とは、キャリアコンサルティングを業として行う者をいいます。キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいいます(職業能力開発促進法第30条の3、第2条第5項)。

これまで民間資格であったキャリアコンサルタントは、2016年(平成28年)に職業能力開発促進法が改正され、国家資格となりました。職業能力開発促進法第30条の4の規定によって実施される「キャリアコンサルタント試験」に合格し、厚生労働省に備えるキャリアコンサルタント名簿に登録されたキャリアコンサルタントでない者は、キャリアコンサルタントまたは紛らわしい名称を用いることができません(罰則:30万円以下の罰金)。

キャリアコンサルタントは、厚生労働大臣の登録を受けた登録試験機関により実施される公的職業資格のうち、名称独占資格(法令の規定により当該資格を有しない者の当該資格の名称の使用が禁止されている資格)に該当します。

参考法令
職業能力開発促進法 第30条の28  キャリアコンサルタントでない者は、キャリアコンサルタント又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。

キャリアコンサルタントの仕事

職業能力開発促進法では、事業主は、その雇用する労働者が多様な職業訓練を受けること等により職業能力の開発及び向上を図ることができるように、キャリアコンサルタントを有効に活用して、キャリアコンサルティングの機会を確保するように配慮することとされています(第8条、第10条の3)。企業の人事、総務、管理職が人材育成において「良い面談」ができるようにキャリアコンサルティングの専門知識を持つことは重要です。

また、企業以外では、教育機関、人材派遣、職業紹介施設などで職業相談を行う業務があります。キャリアコンサルタントの資格のみで独立開業するのは難しく、ダブルライセンスを持ったほうが活躍できます。

キャリアコンサルタントの仕事

  • 企業内:人事評価、人材育成、労務相談、企業内研修の企画、メンタルヘルスケア
  • 学校:高校、大学、大学院、専門学校の就職指導、キャリアデザイン講師
  • 人材派遣:コーディネーター、コンサルタント
  • 公的機関:ハローワーク、職業訓練校、訓練前キャリアコンサルティング
  • 独立開業:社会保険労務士、社会福祉士、精神保健福祉士、SNSカウンセラー
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2.キャリアコンサルタント試験の概要

試験形式

キャリアコンサルタント試験は、年3回、東京、大阪、名古屋など全国約10か所で実施されます。試験科目は次の5つです。

キャリアコンサルタント試験の試験科目

  • 職業能力開発促進法その他関係法令に関する科目
  • キャリアコンサルティングの理論に関する科目
  • キャリアコンサルティングの実務に関する科目
  • キャリアコンサルティングの社会的意義に関する科目
  • キャリアコンサルタントの倫理と行動に関する科目

キャリアコンサルタント試験は学科試験と実技試験によって行われます。学科試験と実技試験の両方に合格しなければなりません。ただし、学科試験と実技試験のどちらか一方だけ合格した場合は、次回以降の試験において合格した試験の免除を受けることができます。

学科試験は、50問100点満点の択一式試験で、35問以上の正解(70点以上)で合格となります。実技試験は、論述試験と面接試験(ロールプレイングと口頭設問)があります。このうち、学科試験と論述試験は同日に行われ、面接試験は別の日に行われます。

試験実施機関(厚生労働大臣登録試験機関)

キャリアコンサルタント試験は厚生労働大臣の登録を受けた登録試験機関によって実施され、現在は、キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)と日本キャリア開発協会(JCDA)の2機関が指定されています。どちらかの試験に合格すればよいです。

参考リンク

特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)
https://www.career-shiken.org/

特定非営利活動法人日本キャリア開発協会(JCDA)
https://www.jcda-careerex.org/

なお、自動車運転免許などと同じ国家資格なので履歴書に主催者を記載する必要はありませんが、主催者を記載する必要がある場合は、いずれの試験に合格しても「厚生労働省」が主催者です。

受験資格

キャリアコンサルタント試験は、次のいずれかの要件を満たした人が受験できます。このうち、キャリアコンサルタント試験受験者の約9割が養成講習の修了者です。実務経験の受験者と比べて、キャリアコンサルタント養成講習の修了者のほうが合格率が高いです。

キャリアコンサルタント試験の受験資格

  • 養成講習(後述):キャリアコンサルティングに必要な知識及び技能に関する講習で厚生労働省令で定めるものの課程を修了した者
  • 実務経験:労働者の「職業の選択」「職業生活設計」または「職業能力開発及び向上」に関する相談に関し3年以上の実務の経験を有する者
  • 技能検定:キャリアコンサルティングに関し、1級または2級の技能検定において学科試験または実技試験に合格した者
参考リンク

キャリアコンサルタントになりたい方へ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consultant01.html

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3.キャリアコンサルタント養成講習の概要

キャリアコンサルタント養成講習

キャリアコンサルタント試験の受験資格を得るための「キャリアコンサルタント養成講習」は次のカリキュラムで合計150時間以上実施することが義務付けられています。このうち、全体の半分以上を通学またはオンライン講習(映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら講義または演習をする方法)によって行うこととされています。講習時間には習得度確認試験の時間も含まれます。

  • キャリアコンサルティングの社会的意義(講義2時間)
  • キャリアコンサルティングを行うために必要な知識(講義35時間)
  • キャリアコンサルティングを行うために必要な技能(講義16時間、演習60時間)
  • キャリアコンサルタントの倫理と行動(講義17時間、演習10時間)
  • その他キャリアコンサルティングに関する科目(講義または演習10時間)

講義は知識付与中心の講習(学科)であり、教室等における講師による説明、e-ラーニング形式やテキストを活用した独習、学習した知識を確認する課題の作成等が含まれます。演習は技能修得中心の講習(論述と実技)であり、ロールプレイの実施とその振り返り、その前提となる課題(逐語記録)の作成等が含まれます。

参考リンク

キャリアコンサルタント養成講習の認定申請のご案内(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/career_consulting/shinsei.html

受講資格

キャリアコンサルタント養成講習の受講資格はありません。キャリアコンサルティング未経験の人が学習するのに適したカリキュラムとなっています。実務経験が無い人はキャリアコンサルタント養成講習を修了することによって、キャリアコンサルタント試験の受験資格を得ることができます。

オンライン講習やe-ラーニング形式で学ぶことができるので、在職者でも受講することができます。

試験対策の講座ではないこと

キャリアコンサルタント養成講習はキャリアコンサルタント試験を受ける前提として、キャリアコンサルティング実践の基盤となる知識、技能、 倫理、姿勢を身につけることを目的としています。あくまで未経験の人が基礎を身につけるための講習であって、試験対策の講習ではありません

そのため、養成講習の受講のほかに試験勉強が必要です。

4.キャリアコンサルタント養成講習と教育訓練給付制度

一般教育訓練、特定一般教育訓練の対象?

教育訓練給付金は、厚生労働省の指定基準に従って、「厚生労働大臣が教育訓練給付対象講座として指定した講座」を修了した場合に支給されます(雇用保険法第60条の2)。

厚生労働大臣が指定する教育訓練には、一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類があり、公的職業資格のうち名称独占資格の取得を訓練目標とする講座で、かつ、訓練期間が1年未満の講座は一般教育訓練または特定一般教育訓練の対象となります。

例えば、「キャリアコンサルタント試験対策講座」のようなキャリアコンサルタント国家資格(名称独占資格)の取得を目標とした講座は訓練期間が1年未満であることが想定されるので、厚生労働省に指定の申請をすれば一般教育訓練または特定一般教育訓練の指定を受けます。しかし、今のところこのような教育訓練給付対象講座は存在していません。

特例として専門実践教育訓練となる

専門実践教育訓練は原則として訓練期間が1年以上3年以下の長期訓練を想定しているので、1年未満で終わる講座が指定を受けることはありません。

しかし、中長期的なキャリア形成に資するものとして、厚生労働省人材開発統括官の定める養成課程で、訓練期間が1年未満、訓練時間が120時間以上の教育訓練は、特例として「専門実践教育訓練」の指定を受けることができます。キャリアコンサルタント養成講習は訓練時間が150時間以上であり、「人材開発統括官の定める養成課程」の一つです。通学制だけでなくオンライン講習やe-ラーニング形式の講座も対象です。

人材開発統括官の定める養成課程(他にもあります)

  • キャリアコンサルタント養成講習:職業能力開発促進法施行規則(昭和44年労働省令第24号)第48条の4第1項に規定する厚生労働大臣の認定を受けた講習

専門実践教育訓練の指定を受けたキャリアコンサルタント養成講習を受講して、修了すると「専門実践教育訓練給付金」が支給されます。専門実践教育訓練給付金の金額は、教育訓練施設に支払った経費の50%です(追加給付がある場合はあわせて70%)。

教育訓練給付金の受給資格と支給申請手続き

教育訓練給付金の受給資格と支給される条件、具体的な給付金の支給申請手続きについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

5.厚生労働大臣の認定と指定を受けた講座に限られる

厚生労働大臣認定講習

キャリアコンサルタント養成講習は、職業能力開発促進法施行規則第48条の4第1項の規定により、厚生労働省が定める認定基準に適合するものとして「厚生労働大臣の認定を受けた講習」に限られます。

これは、キャリアコンサルタント試験の受験資格を得るための講習であることを認定したものであり、教育訓練給付の対象であることを認定したものではありません。したがって、キャリアコンサルタント養成講習のすべてが教育訓練給付の対象となるわけではありませんのでご注意ください。

参考法令
職業能力開発促進法施行規則 第48条の4第1項本文  法第三十条の四第三項第一号の厚生労働省令で定める講習は、次に掲げる基準に適合するものであることについて、厚生労働大臣の認定を受けた講習とする。

厚生労働大臣指定講座

教育訓練給付金は、「厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合」に支給されます。具体的には、雇用保険法施行規則第101条の2の2の規定により教育訓練施設があらかじめ厚生労働省に対して「教育訓練給付対象講座の指定」を申請し、厚生労働大臣が教育訓練施設に対して「講座指定通知書」を交付することによって指定を受けた講座に限られます。

参考法令
雇用保険法施行規則 第101条の2の2第1項本文  厚生労働大臣は、法第六十条の二第一項の規定による指定をしたときは、次に掲げる事項を記載した講座指定通知書を、当該教育訓練を行う指定教育訓練実施者(法第十条の四第二項に規定する指定教育訓練実施者をいう。以下同じ。)に通知するものとする。

キャリアコンサルタント養成講習の認定と教育訓練給付対象講座の指定は、いずれも厚生労働大臣が行いますが法律が異なります。これらの認定と指定を両方受けたものに限り、教育訓練給付の対象となります。

  • キャリアコンサルタント養成講習の認定:職業能力開発促進法
  • 教育訓練給付対象講座の指定:雇用保険法

さらに、教育訓練給付金を受給できるのは「最初に教育訓練給付制度を利用することを申し出て、講習を申し込んだ人」だけです。それ以外の人はすべて給付の対象外です。教習内容が同じであっても対象外です。

禁止されていること

  • 講習の途中に教育訓練給付制度の適用を申し込むこと
  • 卒業した後で教育訓練給付制度の適用を申し込むこと

教育訓練を探す方法

専門実践教育訓練の指定を受けているキャリアコンサルタント養成講習は、厚生労働省の「厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で検索することができます。

6.修了証と教育訓練修了証明書の違い

キャリアコンサルタント養成講習修了証

キャリアコンサルタント養成講習を修了すると「キャリアコンサルタント養成講習修了証」が交付されます。修了証の様式は教育訓練施設によって異なります。

前述のとおり、キャリアコンサルタント試験を申し込む際に修了証の写し(原本ではない)を提出すると受験資格が得られ、受験することができます。この修了証は職業能力開発促進法に基づくものであり、その提出先は試験実施機関であるキャリアコンサルティング協議会(CC協議会)または日本キャリア開発協会(JCDA)です。

注:試験実施機関に提出する修了証はハローワークとは無関係の文書なので、ハローワークに提出しても教育訓練給付金の支給を受けることはできません。

専門実践教育訓練修了証明書

教育訓練給付対象講座の指定を受けているキャリアコンサルタント養成講習を修了すると修了証と同時に、「専門実践教育訓練修了証明書」が交付されます。

キャリアコンサルタント国家資格と教育訓練給付制度、キャリアコンサルタント養成講習の概要 _ 6782-1

専門実践教育訓練修了証明書の原本(写しではない)をハローワークに提出すると教育訓練給付金の支給を受けることができます。この修了証明書は雇用保険法に基づくものであり、その提出先はハローワークです。

注:ハローワークに提出する修了証明書は試験とは無関係の文書なので、試験実施機関に提出しても受験できません。

7.登録と更新講習

キャリアコンサルタント名簿に登録する

学科試験と実技試験の両方に合格した「キャリアコンサルタント試験合格者」が、キャリアコンサルタントの名称を使用するには、国家資格キャリアコンサルタントWebサイト(登録センター)に登録申請をして、キャリアコンサルタント名簿への登録を受ける必要があります。

登録センターに、キャリアコンサルタント登録申請書、キャリアコンサルタント試験の合格証の写しを提出し、登録免許税、登録手数料を納付します。キャリアコンサルタント名簿に登録されると、「キャリアコンサルタント登録証」が交付されます。

参考リンク

国家資格キャリアコンサルタントWebサイト(厚生労働省)
https://careerconsultant.mhlw.go.jp/n/index.html

更新講習

キャリアコンサルタント登録証の有効期間は5年間です。更新をするにはキャリアコンサルタント更新講習(知識講習8時間・技能講習30時間)を受講し、キャリアコンサルタント登録の有効期間満了の日の90日前から30日前までの申請受付期間中に更新申請をしなければなりません。

ちなみに、更新講習は教育訓練給付の対象外です。

8.補足説明

キャリアコンサルティング技能士

国家検定のキャリアコンサルティング技能検定に合格すると、「キャリアコンサルティング技能士」の称号が付与されます。2級キャリアコンサルタント技能士(熟練レベル)は、国家資格キャリアコンサルタントの上位資格であり、さらに1級キャリアコンサルタント技能士は指導レベルとして位置づけられています。

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キャリアコンサルティング技能検定試験は、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会が、厚生労働大臣から指定試験機関としての指定を受けて実施しています。

ちなみに、キャリアコンサルティング技能検定2級は一般教育訓練または特定一般教育訓練給付金の対象です。

参考リンク

キャリアコンサルティング技能検定(キャリアコンサルティング協議会)
https://www.career-kentei.org/

教育訓練支援給付金

教育訓練支援給付金は昼間の通学制の場合のみが対象となるため、通信講座またはオンライン講座の場合は対象外となります。