教育訓練給付金は離職後1年以内であれば受給できることと、支給要件期間を計算するうえで2つの被保険者だった期間の間の空白期間が1年以内であれば通算できることは、両方1年以内ですが無関係です。
1.適用対象期間と支給要件期間の合算
適用対象期間の離職後「1年以内」
適用対象期間は、直近の職場を離職してから受講開始日までの期間のことをいいます。教育訓練給付金は適用対象期間1年以内の人が対象です。
この「1年以内」は受講開始日から見て直前の離職までの期間です。
支給要件期間の空白期間の「1年以内」
支給要件期間は、その教育訓練の受講開始日までの間に被保険者として雇用された期間のことです。教育訓練給付の支給を受けるには、原則として支給要件期間3年以上(ただし、初回の場合は1年または2年)である必要があります。
この支給要件期間は、2つの被保険者期間の間の離職期間(空白期間)が1年以内であれば、2つの被保険者期間を合算することができます。
例えば、一般被保険者として2年以上勤務した後、転職して現在一般被保険者として1年勤務している場合、その間の離職期間が1年以内であれば、合計することができて3年以上の支給要件を満たします。
2.適用対象期間と支給要件期間の違い
適用対象期間の「1年以内」と支給要件期間の計算の「1年以内」では離職期間の見方が違います。
適用対象期間は受講開始日から見た離職期間であり、直近の離職までの期間です。在職者だけでなく、直近の仕事を離職して1年以内であれば教育訓練給付の支給を受けることができるというのは適用対象期間のルールです。
支給要件期間の計算で被保険者期間を合算できる基準は2つの被保険者であった期間の間の離職期間です。
- 適用対象期間の「1年以内」
- 受講開始日から見て直前の離職までの期間
- 支給要件期間の計算の「1年以内」
- 2つの被保険者期間の間の離職期間(空白期間)
3.延長できるのは適用対象期間だけ
適用対象期間の延長
受講開始日から見て直前の離職の日から1年以内(本来の適用対象期間)にやむを得ない事情が生じて、連続して30日以上、対象教育訓練の受講を開始することができない日がある場合には、適用対象期間の延長が認められます。
適用対象期間の「1年以内」や、適用対象期間の延長が認められる事由の発生における「1年以内」はいずれも、受講開始日から見て直前の離職までの期間です。
支給要件期間の計算には影響しない
適用対象期間の延長と支給要件期間の計算は無関係です。
例えば、離職後1年以内に連続して30日以上の負傷があったために適用対象期間の延長が認められたとしても、離職前に3年以上の支給要件期間(初回に限り1年または2年)が必要であることに変わりはありません。出産や育児などの事情があったとしても支給要件期間の計算については一切関係ありません。
4.2つの被保険者期間の間の傷病等
2つの被保険者期間の間の離職期間に疾病、負傷等があったとしても無関係です。
傷病があっても1年以内
(例1)一般被保険者として2年以上勤務した後、退職したが離職期間中に3か月の疾病があった。そして、前職を離職して1年以内に再就職して一般被保険者として1年勤務したあと退職した。
この場合、直近の離職後1年以内に教育訓練の受講を開始すれば、給付金の対象となります。適用対象期間の延長はありません(1年3か月にはならない)。それは、疾病が直近の仕事(一番最近の仕事)を離職した後に発生した事由ではないからです。
支給要件期間は合算することができて支給要件3年以上を満たします。支給要件期間の計算においては延長措置がないので、2つの仕事の間の空白期間は1年以内でなければなりません(1年3か月にはならない)。
結局、疾病3か月は計算上全く関係ないことになります。
傷病が1年以上であった場合
(例2)一般被保険者として3年以上勤務した後、退職したが離職期間中に1年6か月の疾病があった。治癒した後、再就職して一般被保険者として6か月勤務したあと退職した。
直前ではない離職日から1年以内に出産や疾病等の事情があったとしても、適用対象期間の延長はありません。
また、2つの仕事の間には1年6か月の疾病があり、少なくとも1年半以上の空白期間があります。2つの仕事の間に出産や疾病等の事情があったとしてもその間の離職期間は「1年以内」でなければ合算されません。
したがって、支給要件期間は6か月しかなく、支給要件期間3年以上(初回に限り1年または2年)を満たさないので、いつ受講を開始しても、教育訓練給付の対象にはなりません。
再就職すると給付の対象外になる
最後に、さきほどの事例で6か月の仕事をしていなかったらどうなっていたかを考えてみましょう。
適用対象期間は、「直前」の離職日から1年以内に疾病があったのですから延長措置が認められます。また、支給要件期間3年以上も満たしています。離職後2年6か月以内に受講を開始すれば、教育訓練給付の対象となります。
このように、適用対象期間の延長が認められるような事由があったしても、空白期間1年を超えて再就職をした場合は、支給要件期間が通算されず、また適用対象期間の延長もないため、教育訓練給付の支給を受けられなくなる場合があります。
5.短期雇用特例被保険者の違い
適用対象期間の場合
適用対象期間は、一般被保険者または高年齢被保険者の資格を喪失してから教育訓練の受講を開始するまでの期間であり、短期雇用特例被保険者は含まれません。受講開始の直前に短期雇用特例被保険者であった期間があったとしてもそれは無視されます。
短期雇用特例被保険者の資格を喪失してから1年以内ではなく、その前の一般被保険者または高年齢被保険者の資格を喪失してから1年以内に教育訓練を開始しなければ、教育訓練給付の対象とはなりません。
支給要件期間の場合
支給要件期間は、一般被保険者、高年齢被保険者のほか短期雇用特例被保険者であった期間も合算することができます。そして、短期雇用特例被保険者であった期間との間の離職期間が1年以内であれば合算することができます。
このように適用対象期間の対象外であっても、支給要件期間に通算することができます。