令和4年(2022年実施、第54回)の社会保険労務士試験(選択式試験)雇用保険法のDの解説です。テーマは「一般教育訓練給付金の支給要件期間」です。
1.問題文と選択肢
令和4年(2022年実施、第54回)の社労士試験では、選択式試験・雇用保険法のDで、教育訓練給付に関連する問題が出題されました。
選択式試験・雇用保険法(Dのみ抜粋) 次の文中の[ ]の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。 雇用保険法第60条の2に規定する教育訓練給付金に関して、具体例で確認すれば、平成25年中に教育訓練給付金を受給した者が、次のアからエまでの時系列において、いずれかの離職期間中に開始した教育訓練について一般教育訓練に係る給付金の支給を希望するとき、平成26年以降で最も早く支給要件期間を満たす離職の日は [ D ] である。 ア 平成26年6月1日に新たにA社に就職し一般被保険者として就労したが、平成28年7月31日にA社を離職した。このときの離職により基本手当を受給した。 イ 平成29年9月1日に新たにB社へ就職し一般被保険者として就労したが、平成30年9月30日にB社を離職した。このときの離職により基本手当を受給した。 ウ 令和元年6月1日にB社へ再度就職し一般被保険者として就労したが、令和3年8月31日にB社を離職した。このときの離職では基本手当を受給しなかった。 エ 令和4年6月1日にB社へ再度就職し一般被保険者として就労したが、令和5年7月31日にB社を離職した。このときの離職では基本手当を受給しなかった。
空欄 [ D ] の選択肢
(1) 平成28年7月31日 (2) 平成30年9月30日 (3) 令和3年8月31日 (4) 令和5年7月31日
2.正解
空欄Dは「令和3年8月31日」が正解です。教育訓練給付の問題が選択式試験で出題されたのは2015年(平成27年)以来で、8年ぶり2回目となります。
3.解説
教育訓練給付対象者
雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として就労している在職者または被保険者でなくなってから1年以内(正確に言えば適用対象期間内)の離職者は教育訓練給付対象者となります。
本問の場合は「最も早く支給要件期間を満たす離職の日」を問うものであり、離職日(=在職最後の退職日)は在職中なので教育訓練給付対象者に該当するといえます。
支給要件期間は3年以上
雇用保険法第60条の2第1項の規定によると、教育訓練給付対象者が厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合において、支給要件期間が3年以上であるときに教育訓練給付金を支給することとなっています。
ただし、過去に教育訓練給付金を受給したことが無い場合は1年以上(一般教育訓練給付金の場合)でよいです。本問の場合は問題文に「平成25年中に教育訓練給付金を受給した者」との記述があるため、支給要件期間は原則通り3年以上でなければなりません。
なお、この「教育訓練給付金」には、2014年(平成26年)10月1日の法令改正前の旧教育訓練給付金も含まれます。
離職期間が1年超の場合は通算できない
支給要件期間は原則として同一事業主に引き続いて被保険者として雇用された期間ですが、教育訓練の受講開始日までに「被保険者として就労した期間」が複数ある場合は通算することができます。複数の「被保険者として雇用された期間」は連続していなくてもよいですし、異なる事業主であっても構いません。また、同一事業主の再雇用であっても構いません。
ただし、2つの就労期間の間の離職期間(空白期間)が1年超である場合は、それよりも前の期間はすべて通算することができなくなります(後述)。つまり、1年超の離職期間がある場合はそれより前の就労はまったく考慮されなくなるということです。
基本手当の受給は無関係
教育訓練給付金の支給要件期間を算定するのに、雇用保険の基本手当や傷病手当を受給したかどうかは全く関係ありません。
あてはめ
以上のことは一般、特定一般、専門実践の種別を問いません。
アからエまでの時系列をまとめると次のようになります。アとイの間には、2016年(平成28年)8月1日から2017年(平成29年)8月末までの1年1か月の離職期間がありますから、アについてはさかのぼって通算する計算の対象外となります。
ア~エの離職日についてそれぞれ支給要件期間を計算すると次のようになります。「最も早く支給要件期間を満たす離職の日」は初めて支給要件期間3年以上となるウの離職日「令和3年8月31日」となります。
- ア 2年2か月(アのみ)
- イ 1年1か月(イのみ)
- ウ 3年4か月(イ+ウ)
- エ 4年6か月(イ+ウ+エ)
4.補足説明
支給要件期間に含まれない期間
1年超の離職期間のほかに、過去に教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合も支給要件期間の対象外であり、その給付金に係る教育訓練の受講開始日より前の期間は支給要件期間に含まれません。
本問の場合は、「平成25年中に教育訓練給付金を受給した者」であり、平成26年以降の期間は支給要件期間に含まれます。
支給要件期間に含まれない期間
- 1年超の離職期間がある場合はそれより前の就労した期間全部
- 過去に教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合はその教育訓練の受講開始日より前の期間全部
3年間の給付制限
過去に教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合、支給要件期間の計算にかかわらず、その支給決定日(支給が複数回あった場合は最後の支給決定日)から3年を経過してから今回の教育訓練の受講を開始しなければ教育訓練給付金の支給を受けることができません。
本問の場合は、「平成25年中に教育訓練給付金を受給した者」であり、受給の3年後から受講開始が可能となります。なお、この3年間の給付制限は支給要件期間の計算とは無関係なので、平成26年~平成28年の期間も支給要件期間の計算に含まれることは言うまでもありません。
平成と令和
元号を改める政令(平成31年政令第143号)により、2019年1月1日~4月30日が平成31年で、2019年5月1日以降が令和元年です。