社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「支給申請手続き、修了証明」です。
1.社労士過去問分析
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重要論点チェックテスト
「支給申請手続き、修了証明」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q申請書に、修了証明書を添付できないときは、修了したことが分かる書類でもよいですか?
- A
いいえ。教育訓練給付金の支給申請書には「指定教育訓練実施者が発行した修了証明書」を添付します。指定教育訓練実施者が修了を証明した場合に限り、教育訓練給付金を支給されますので、修了証明書以外は不可です。
- Q専門実践教育訓練給付金の場合、受講期間中は受講証明書を提出すれば良いですか?
- A
はい。専門実践教育訓練は修了していなくても当該支給単位期間を適切に受講していれば支給されるので、指定教育訓練実施者が発行する受講証明書を添付します。
- Q申請書に、所定の領収書等を添付できないときは申込みを証明できる書類でもよいですか?
- A
いいえ。教育訓練給付金の支給申請書には、教育訓練の受講のために支払った費用の額の証明書(領収書、クレジット契約書など)を添付します。領収書などは指定教育訓練実施者が発行し、支払いを証明した場合に限られ、証明が無ければ支給されません。
- Q教育訓練を途中で退学しても、教育訓練給付金は全額支給されますか?
- A
いいえ。一般教育訓練や特定一般教育訓練は途中で受講を終了したら、教育訓練給付金は支給されません。専門実践教育訓練は途中で終了したらその支給単位期間以降、支給停止となります。
- Q申請書に添付するのは修了証明書と領収書だけですか?
- A
いいえ。適用対象期間の延長が認められた場合は適用対象期間延長通知書、返金があった場合は返還金明細書、代理の場合は委任状を添付します。その他、本人確認書類の提示、教育訓練経費等確認書の提出などが必要です。
社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.令和5年択一問7選択肢B
令和5年(2023年実施、第55回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Bです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Bのみ抜粋) 〔問 7〕教育訓練給付金の支給申請手続に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 B 一般教育訓練給付金の支給を受けようとする支給対象者は、疾病又は負傷、在職中であることその他やむを得ない理由がなくとも社会保険労務士により支給申請を行うことができる。
正解
選択肢Bの記述は誤りです。
解説
本人申請の原則
一般教育訓練給付金の支給を受けようとする支給対象者は、当該教育訓練給付金の支給に係る一般教育訓練を修了した日の翌日から起算して1か月以内に、本人自ら住居所管轄公共職業安定所に出頭して、教育訓練給付金支給申請書に必要な書類を添付して提出しなければなりません。
代理申請、提出代行、郵送申請
しかし、例えば、教育訓練修了直後に負傷して1か月以上入院しなければならない場合のように、「修了した日の翌日から起算して1か月以内に」本人が出頭できない場合は申請することができません。
このように、安定所に出頭することができないやむを得ない理由がある場合は、代理人による申請、社会保険労務士による提出代行、郵送による申請、電子申請などが認められています。「やむを得ない理由」とは、疾病又は負傷の場合、在職中であることを理由に安定所への出頭が困難であることを申し出た場合などです。
このような申請方法はやむを得ない理由のために支給申請の期限内に安定所に出頭することができない場合に限られます。特に、代理申請や社会保険労務士による提出代行の場合は「委任状」だけでなく、当該やむを得ない理由を記載した「証明書」を添付しなければなりません。
このことは、雇用保険に関する業務取扱要領58015ハに規定されています。したがって、選択肢Bの「やむを得ない理由がなくとも社会保険労務士により支給申請を行うことができる」とする記述は誤りです。
3.平成25年択一問4選択肢イ
平成25年(2013年実施、第45回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問4の選択肢イです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢イのみ抜粋) 〔問 4〕教育訓練給付に関する次のアからオの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。 なお、本問において、「教育訓練」とは「雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練」のことである。 イ 教育訓練給付金の支給を受けるためには、教育訓練を受け、当該教育訓練を修了したことが必要であるが、当該教育訓練を行った指定教育訓練実施者によりその旨の証明がされていない場合にも、所定の要件を満たすことにより、支給を受けることができる。
正解
選択肢イの記述は誤りです。
解説
教育訓練の修了
教育訓練給付金は厚生労働大臣指定の教育訓練を受け、修了した場合に支給されます。
この「教育訓練を修了した場合」には、「厚生労働省令で定める場合」を含むとされています。
具体的には、「専門実践教育訓練を受けている場合であつて、当該専門実践教育訓練の受講状況が適切であると認められるとき」が含まれます。専門実践教育訓練給付金の場合は、支給単位期間である6か月ごとに受講状況を確認して支給します。
証明が必要である理由
教育訓練給付金の支給を受けるには、受講するだけでなく各教育訓練で設定されている修了条件を満たして修了しなければなりません。修了条件はそれぞれの教育訓練によって異なるため、指定教育訓練実施者(教育訓練を実施している施設)による証明が必要です。証明が無ければ給付金の対象外です。
給付金の支給申請の際には、教育訓練施設が発行した修了証明書を提出しなければなりません。また、専門実践教育訓練給付金の場合は修了証明書または受講証明書が必要です。
このことは、雇用保険法施行規則第101条の2の4に定められています。したがって、選択肢イの「指定教育訓練実施者によりその旨の証明がされていない場合にも、所定の要件を満たすことにより、支給を受けることができる」とする記述は誤りです。
教育訓練施設が証明をしなかったら指定取消
教育訓練施設は、受講前にあらかじめ修了認定基準を受講者に明示する義務があります。そして、その基準にしたがって修了を認定したときは教育訓練修了証明書を発行しなければなりません。修了証明書は、受講修了後速やかに発行し、1週間程度以内に受講修了者本人に届くことを目途に、送付または手交しなければなりません。
教育訓練施設が修了証明書や受講証明書を発行しない場合や、偽りの証明書を発行した場合は、厚生労働大臣の指定が取り消されます。
4.平成19年択一問5選択肢A
平成19年(2007年実施、第39回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問5の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋) 〔問 5〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、本問において「教育訓練」とは、雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練とし、「教育訓練の受講のために支払った費用」とは、雇用保険法第60条の2第4項に規定する厚生労働省令で定める範囲内のものし、教育訓練の開始日は平成15年5月1日以降とする。 A 教育訓練給付金は、教育訓練を修了した場合に支給されるものであり、途中で受講を中止して当該教育訓練を修了しなかった場合には受給することができない。
正解
選択肢Aの記述は正しいです。
解説
教育訓練を修了した場合
教育訓練給付金は原則として教育訓練を修了した場合において、支給要件期間が3年以上であるときに支給されます。
特に、一般教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金については教育訓練施設の発行する修了証明書を提出して支給申請をしなければなりません。したがって、途中で受講を中止して当該教育訓練を修了しなかった場合には受給することができません。このことは雇用保険法第60条の2第1項に規定されています。
専門実践教育訓練給付金の場合
専門実践教育訓練給付金の場合は、教育訓練を修了した場合のほか、支給単位期間である6か月ごとに、専門実践教育訓練の受講状況が適切であると認められるときにも支給されます。その場合であっても「教育訓練の修了」が前提となります。
雇用保険法施行規則第101条の2の3の「受講状況が適切である」とは、修了の見込みをもって受講した場合のことです。このことは、雇用保険に関する業務取扱要領58211に規定されています。
教育訓練実施者は、受講開始前にあらかじめ受講を認定する際の基準となる受講認定基準を明示したうえで、支給単位期間である6か月ごとにその基準に従って受講確認を行わなければなりません(出席率の集計や、期末試験、レポート提出のことです)。
そして、「修了の見込みがある」と認定された場合に限って「受講証明書」を発行します。修了の見込みがない場合は受講証明書は発行されません。専門実践教育訓練給付金の支給を申請するには受講証明書または修了証明書を提出しなければなりません。
修了の見込みがないと判断された場合はそれ以降、専門実践教育訓練給付金を受給することができません。また、途中で受講を中止して当該教育訓練を修了しなかった場合も受給することができません。したがって、選択肢Aの記述は正しいと言えます。
5.平成13年択一問6選択肢D
平成13年(2001年実施、第33回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Dです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Dのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 D 教育訓練給付金を受給するために、管轄公共職業安定所長に教育訓練給付金支給申請書を提出する場合、添付すべき書類は、雇用保険被保険者証又は雇用保険受給資格者証と、当該教育訓練の受講のために支払った費用の額の証明書のみである。
解説
雇用保険法施行規則第101条の2の11に定められているとおり、少なくとも教育訓練を修了したことを証する修了証明書の提出が必要です。したがって、選択肢Dの記述は誤りです。
6.平成11年択一問4選択肢D
平成11年(1999年実施、第31回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問4の選択肢Dです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Dのみ抜粋) 〔問 4〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 D 教育訓練給付金の支給を受けようとする者は、指定された教育訓練の受講開始後、速やかに、教育訓練受講届を管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。
解説
教育訓練の受講や修了は、教育訓練施設が証明するものであり、本人が届け出るのは無意味です。公共職業訓練は受講届を提出しますが、教育訓練は不要です。また、欠席する場合も受講している教育訓練施設に届け出ます。
したがって、選択肢Dの記述は誤りです。
7.補足説明
教育訓練経費も証明が必要
教育訓練給付金の額は、教育訓練の受講のために支払った費用(教育訓練経費)に給付率をかけた額です。この教育訓練経費も指定教育訓練実施者による証明が必要であり、実際には領収書またはクレジット契約証明書(または必要事項が付記されたクレジット伝票)が発行されます。
修了見込みがないとは
専門実践教育訓練給付金で、講座を修了する見込みがないとは当該教育訓練であらかじめ定められている期間内に修了できないという意味です。成績不十分である場合のほか、休学等のため受講開始当初に予定された受講期間内に修了できない場合も含まれます。
受講証明書が発行されない場合や、受講証明書において修了する見込みがないとの記載がある場合、当該支給単位期間について専門実践教育訓練給付金は支給されません。また、それ以降の全期間が不支給となります。
なお、それまでに支給された給付金は返還しなくても良いです。
追加給付
専門実践教育訓練給付金の追加給付(70%)についても修了することが条件となっているので、途中で受講を中止して当該教育訓練を修了しなかった場合には受給することができません。