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雇用保険の家事使用人(家庭内労働者)に該当するかの判断は限定的に解釈される _ pr
雇用保険の被保険者

雇用保険の家事使用人(家庭内労働者)に該当するかの判断は限定的に解釈される

家事使用人は雇用保険法の適用除外となっていますが、家事を仕事とする人がすべて家事使用人にあたるわけではありません。労働条件や指揮命令の関係等が明確な「家事代行業務」であれば雇用と言えます。

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1.家事使用人(家庭内労働者)について

家事使用人とは、家庭内労働者ともいい、一般家庭において家事一般を補助・代行する労働者のことです。いわゆる家政婦・家政夫のことです。女中、ハウスメイド、お手伝いさんなどと呼ばれることもあります。

家事使用人は労働基準法の適用除外となっており、法律上労働者としては扱われません。

それは、家事一般に携わる家事使用人の労働がその家庭の私生活と密着して行われるため、労働条件を把握することが困難で、一般家庭に対して国家による監督・規制(労働法規の規制等)を及ぼすことが私生活の自由の保障との観点から好ましくないという配慮があるからです。

参考法令
労働基準法 第116条第2項  この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。
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2.家事使用人(家庭内労働者)の労働者性と雇用保険

労働者性の判断

雇用保険に加入できるのは雇用されている労働者だけです。

実態として労働者として勤務していると認められる場合は労働者として扱われます。これを「労働者性がある」といいます。雇用されていることが明確でない人については、個別に労働者性を判断します。

参考法令
雇用保険法 第4条第1項  この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のものをいう。

家事使用人は被保険者ではないとされている

家事使用人は労働者とはみなされないため、原則として雇用保険の被保険者とはなりません。

しかし、家事使用人であっても、個人家庭の指示を受け労務を提供していることから「家庭内労働者」とも呼ばれ本来的には労働者なので、家事使用人にあたるかどうかの判断は限定的に解釈されます

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3.家事使用人にあたらない例

家事を仕事とする人がすべて家事使用人にあたるわけではないということに注意しなければなりません。

労働条件や指揮命令の関係等を把握することが容易であれば、私生活の自由の保障とは関係が無くなるので、家事使用人ではなく通常の労働者として扱われます。この場合は、家事を仕事とする人であっても雇用保険の被保険者となります

家事を仕事とする労働者(家事使用人ではない)

  • 家事以外の労働を本務としている人
  • 家事代行業者に雇われている人
  • 業務が限定的で勤怠が管理されている人

家事以外の労働を本務としている人

適用事業に雇用されて主として家事以外の労働に従事することを本務としている労働者は、本来の業務について雇用保険法の適用を受けるので、業務のなかで家事を行うことがあったとしても家事使用人にはあたりません。

例えば、社長の仕事のサポートを本来の業務としている社長秘書が、社長宅で家事を行ったとしても家事使用人ではありません。本務である秘書業務で労働契約をしているのですから、社長宅の家事も含めてすべて雇用保険法が適用されます。

家事代行業者に雇われている人

個人家庭における家事を事業として請け負う業者(家事サービス代行業者)に雇われて、その指揮命令のもとに家事を行う労働者は家事使用人ではありません。家事サービス代行業者に雇われている労働者なので雇用保険が適用されます。

例えば、ハウスクリーニング代行業者に雇われている労働者が、一般家庭を訪問して清掃作業等の家事をおこなったとしても、代行業者との雇用契約に基づいて仕事をしているだけなので、雇用保険法が適用されます。また、家事代行会社に雇われている従業員である家政婦やベビーシッターが一般家庭に派遣されて家事全般を行ったとしても、その家庭と家政婦が直接個人契約をしているわけではないので家事使用人ではありません。

さらに、仕事をしている最中に家族の指示命令を受けたとしても、家事代行業者が賃金を支払っているのですから通常の労働者といえます。

業務が限定的で勤怠が管理されている人

一般家庭内で働く使用人であっても、仕事が家事全般ではなく、仕事の内容が限定され、勤務時間が管理されている場合は家事使用人ではありません。労働者であり雇用保険が適用されます。

例えば、法人と労働契約書を取り交わし、仕事の内容がその法人の理事長宅のベビーシッター業務に限定され、マニュアルやメモにしたがって業務を行い、タイムカードに基づいて法人が給与を支給する場合、その仕事は家事代行業者と変わらないので、家事使用人ではありません(医療法人衣明会事件・東京地方裁判所平成25年9月11日判決・労働判例1085号60頁)。

仮に、ベビーシッター以外の業務が含まれていたとしても、ベビーシッターの業務を中心に行っているのであれば、一般の家事使用人より業務が限定されていると言えます。

仕事の内容が広く家事一般にかかわる家事使用人よりも限定的で、仕事の内容がマニュアル化されていることや、労働時間が決まっていて、タイムカードによる時間管理や残業手当の支給が行われるなど、労働条件や指揮命令の関係等を外部から把握することが比較的容易な場合は家事使用人とはいえません。

4.家事使用人にあたる場合

上記の「家事使用人にあたらない例」を除き、家事使用人にあたる場合は雇用保険法の対象外となります。事業主が個人か法人かを問わず、その事業主の社長や役職員の家庭で、その家族の指揮命令の下で家事一般に従事している者は家事使用人にあたります。

例えば、家政婦紹介所から紹介された家政婦が一般家庭との間で個人契約をし、日常生活の家事全般を代行する場合は家事使用人となります。

5.補足説明

家内労働者(内職者)について

家事使用人(家庭内労働者)と、家内労働者(内職者)とは全く違いますし、関係ありません。

駐留軍のハウスメイド

国(防衛大臣)に雇用され、在日米軍基地で勤務する従業員(駐留軍等労働者)は被保険者となりますが、個人的に在日米軍の家庭に雇用される家事使用人(ハウスメイド)は被保険者とはなりません。

教育訓練給付について

教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。労働者性が認められれば教育訓練給付対象者となります。

ただし、現在労働者でない場合であっても過去1年以内に労働者だった人は雇用保険に加入した可能性があるので教育訓練給付を受けられることがあります。