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授産施設の作業員や職員の雇用保険、教育訓練給付 _ pr
雇用保険の被保険者

授産施設の作業員や職員の雇用保険、教育訓練給付

授産施設は心身障害者に対して生活指導と作業指導をすることで自立を支援する施設です。授産所の作業者は訓練を受けているだけで労働者とは言えません。授産所に勤務する職員(指導員)は労働者です。

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1.授産施設について

授産施設とは

授産施設(じゅさんしせつ)とは、身体上、精神上の理由または世帯の事情により一般企業に就職することが困難な人(作業員)に対して、就労または技能の習得のために必要な機会を与えて、自立した生活を目指して働いてもらうことを目的とする社会福祉施設です。生産、産業を授ける施設です。

「授産所」「小規模作業所」等の名称で、障害者が物品の生産等の作業に従事しています。

小規模作業所等における作業に従事している障害者の多くは、当該作業に従事することを通じて社会復帰又は社会参加を目的とした訓練等を行っています。授産施設では、障害者の労働習慣の確立、職場規律や社会規律の遵守、就労意欲の向上等を主たる目的として具体的な作業指示が行われています。

生活保護法の保護施設

授産施設は、生活保護法第38条に定める保護施設の一つであり、都道府県、市町村、地方独立行政法人、社会福祉法人、日本赤十字社でなければ設置することができません。

参考法令
生活保護法 第38条第5項  授産施設は、身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている要保護者に対して、就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする施設とする。
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2.作業員の労働者性と雇用保険

労働者性の判断

雇用保険に加入できるのは雇用されている労働者だけです。

実態として労働者として勤務していると認められる場合は労働者として扱われます。これを「労働者性がある」といいます。雇用されていることが明確でない人については、個別に労働者性を判断します。

参考法令
雇用保険法 第4条第1項  この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のものをいう。

作業員は労働者ではないとされている

授産施設は作業員に対して賃金(工賃)を支払いますが、労働者ではなく訓練を受けている人という扱いなので、労働基準法や最低賃金法などの労働法が適用されません。この点については賛否両論ありますが、現在の法解釈ではそのようになっています。

授産施設の作業員は雇用されている労働者ではないので、原則として、雇用保険の被保険者とはなりません。特に、訓練等の計画が策定され、作業者本人またはその保護者との間での合意のもとに訓練等が行われる場合は労働者ではありません。

訓練等の計画が策定されている作業所

  • 小規模作業所等において行われる作業が訓練等を目的とするものである旨が定款等において明確に定められていること
  • 小規模作業所等において作業に従事する障害者またはその保護者との間の契約等において、訓練等に従事することの合意が明確であること
  • 当該目的に沿った訓練等の計画が策定され、作業実態が訓練等の計画に沿ったものであること
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3.作業員が例外的に労働者とみなされる場合

訓練等の計画が策定されていない小規模作業所等において作業に従事する障害者については、次の4つのうち1つでも該当し、作業実態を総合的に判断し、使用従属関係下にあると認められる場合には労働者とみなされます(厚生労働省労働基準局長通知)。

労働者とみなされる例(訓練ではない)

  • 所定の作業時間内であっても受注量の増加等に応じて、能率を上げるため作業が強制されている
  • 作業時間の延長や、作業日以外の日における作業指示がある
  • 欠勤、遅刻・早退に対する工賃の減額制裁がある
  • 作業量の割当、作業時間の指定、作業の遂行に関する指導命令違反に対する工賃の減額や作業品割当の停止等の制裁がある
授産施設、小規模作業所等において作業に従事する障害者に対する労働基準法第9条の適用について (都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知・平成19年5月17日基発第0517002号)(抄)  2 訓練等の計画が策定されている場合  ①小規模作業所等において行われる作業が訓練等を目的とするものである旨が定款等の定めにおいて明らかであり、②当該目的に沿った訓練等の計画(下記3の(1)から(4)の要素が含まれていないものに限る。)が策定され、③小規模作業所等において作業に従事する障害者又はその保護者との間の契約等において、これら訓練等に従事することの合意が明らかであって、④作業実態が訓練等の計画に沿ったものである場合には、当該作業に従事する障害者は、労働基準法第9条の労働者ではないものとして取り扱うこと。  3 訓練等の計画が策定されていない場合  訓練等の計画が策定されていない小規模作業所等において作業に従事する障害者については、次の(1)から(4)のいずれかに該当するか否かを、個別の事案ごとに作業実態を総合的に判断し、使用従属関係下にあると認められる場合には、労働基準法第9条の労働者であるものとして取り扱うこと。 (1) 所定の作業時間内であっても受注量の増加等に応じて、能率を上げるため作業が強制されていること (2) 作業時間の延長や、作業日以外の日における作業指示があること (3) 欠勤、遅刻・早退に対する工賃の減額制裁があること (4) 作業量の割当、作業時間の指定、作業の遂行に関する指導命令違反に対する工賃の減額や作業品割当の停止等の制裁があること

4.授産施設に勤務する職員

授産施設に勤務する「職員」とは、作業員に対して作業指示をする指導員(看護師、作業指導員、生活指導員、事務職員など)のことです。職員は、施設に雇用されている労働者であり、もちろん雇用保険の被保険者になります。

  • 作業員
    社会復帰又は社会参加を目的として訓練をしている作業者(労働者ではない)
  • 職員、指導員
    作業員に作業指示をする職員(労働者=被保険者)

5.「助産」施設とは無関係です

授産施設(じゅさん)と助産施設(じょさん)は似ていますが、全く関係のない言葉です。

  • 授産施設・授産所
    生活保護目的で働く機会を与えるための作業所です。生産、産業を授ける施設です。
  • 助産施設・助産所
    赤ちゃんを産む場所です。出産を助ける施設です。
参考法令
医療法 第2条第1項  この法律において、「助産所」とは、助産師が公衆又は特定多数人のためその業務(病院又は診療所において行うものを除く。)を行う場所をいう。
児童福祉法 第36条  助産施設は、保健上必要があるにもかかわらず、経済的理由により、入院助産を受けることができない妊産婦を入所させて、助産を受けさせることを目的とする施設とする。

6.障害者総合支援法について

障害者の就労支援を推進するため、障害者自立支援法(平成17年法律第123号、2013年(平成25年)4月から障害者総合支援法に改称)により就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)の制度が創設されました。簡単に言えば、授産施設の多くが障害福祉サービス事業所に移行しました。

このうち、就労継続支援A型事業(雇用契約有)を実施する事業所は、利用者と雇用契約を結び賃金を支払っています。A型事業所で雇用契約のある利用者は「労働者」であり、週所定労働時間20時間以上であれば雇用保険の被保険者となります。それ以外の障害福祉サービス利用者は雇用契約が無いため原則として被保険者とはなりません。

なお、生活保護法の授産施設は、障害者総合支援法に基づく就労継続支援事業を実施している施設以外
の小規模作業所(障害福祉サービス事業所に移行していない作業所)のことです。

参考法令
就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について(抜粋) (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知・平成18年10月2日障障発第1002003号)  A型利用者(雇用有)は、労働基準法上の労働者であることから、雇用するに当たっては、労働基準関係法令を遵守すること。 A型利用者(雇用有)、A型利用者(雇用無)及びB型利用者が同一事業所内で作業する際には、それぞれの作業場所、作業内容が明確に区分され、混在して作業が行われないこと。

A型事業所は「雇用契約あり」と「雇用契約なし」の両方の利用者を受け入れることができるため、混在しないように区分し、「雇用契約あり」の利用者だけ労働者として扱われるという意味です。雇用契約があれば雇用保険法の適用を受けます。

7.教育訓練給付について

教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。労働者性が認められれば教育訓練給付対象者となります。

ただし、現在労働者でない場合であっても過去1年以内に労働者だった人は雇用保険に加入した可能性があるので教育訓練給付を受けられることがあります。

8.補足説明

社労士過去問

授産施設については平成30年(2018年実施、第50回)社労士試験で出題されています。社労士試験の過去問について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。